言い訳置き場
言い訳を書いていきます。誤字の報告などあればありがたいです。 ※唐突にみゅネタややぎゅにおの外の人のかけ算が混ざるのでご注意下さい。 日常はリンクのブログから。
2009'08.15.Sat
けんひか?というか、息子の話。
息子が高校生になっても相変わらずの夫婦ですよって話。
やべえ、入れたかったはずの「敦士が俺の理想の謙也さんやわ」っていう光様のセリフ入れ忘れた。
そんな感じのかっこいい息子の話です。
息子が高校生になっても相変わらずの夫婦ですよって話。
やべえ、入れたかったはずの「敦士が俺の理想の謙也さんやわ」っていう光様のセリフ入れ忘れた。
そんな感じのかっこいい息子の話です。
「え、お前できちゃったなん?」
こういう空気読めないバカっているよな、どこか冷めた気持ちでクラスメイトを見る。ファーストフード店でこの声のボリューム。いじめかもしれない。自分が生まれた経緯に誇りを持つというほどの感情はないし、何より自分が親から聞かされたときはあきれたけれど、他人の口から聞くとひどく間抜けに聞こえる。彼のリアクションもそらそうやな、と納得はする。母親が高校卒業間際に妊娠して受かった大学も蹴って家庭に入ったなどと、他人事なら敦士もアホちゃう、と笑い飛ばすかもしれない。
「もしかしておかんめっちゃ若いんちゃうん」
「まあ19のときに生んどるからな」
「19!うっわ~」
「……」
もう説明するのも面倒になり、もう両親のラブシーンを見てしまってもかまわないから帰ろう、と最後のポテトを食べきった。興味津々なクラスメイトたちはまだ何か聞きたげであったが、もう敦士にこれ以上話す気はない。
「ほな帰るわ」
「敦士」
「かわいいおかんが俺の帰り待ってんねん」
唖然とする彼らを後目に、敦士はファーストフード店を出た。仕事の事情でやむなく一泊家を空けていた父親が、今頃は「光分が足りない」などと言って母親を撫で回しているのだろうが、もう見慣れた光景で気まずさもない。
「忍足くん!」
名前を呼ばれて振り返れば、さっきまで輪の中にいたうちのひとりだ。足早いね、はにかんだように笑う彼女に、嫌な予感しかしなかった。
「一緒に帰ろ」
「……えーけど、隅田チャリちゃうん。俺今日徒歩やで」
「今日置いてきてん」
敦士が歩き出すと隣に並んでついてくる。どこまで同じ道なのかは知らないが、うっかり家まで来られないよう
に気をつけなければ。
「さっきごめんなぁ」
「何が?」
「相川の。あいつデリカシーないよなぁ」
「ああ……別に。気にしとらんし、ほんまのことやし」
「忍足くんのお母さんってどんな人?」
「フツーやフツー」
普通じゃない、と言えば会話が弾むからしたくない。何より――父親の血のせいだと実感するから嫌なのだが――他の誰かが母親に興味を持つのがおもしろくない。心が狭いのは父親譲りだ。
「会ってみたいなぁ。19歳で忍足くん生んでちゃんと育てとるんやろ?すごいなぁ。しっかりした人なんやろ?」
「や、しっかりっちゅーかちゃっかりしとる。19のおかんとか、ごろごろおるやろ」
「えー、そうかなぁ。だってあたしもう18やで、来年に子ども生むとか考えられん」
「おるおる」
「……忍足くんて、お母さんのこと好き?」
「好きやな。だいっ好きやな。マザコンやねん俺」
「マザコンって」
けらけら笑う彼女がどさくさにまぎれて腕に触れてくる。自分が親しくする女性はもっと上品にその仕草をするな、そんなことを思いうんざりする。頼むから俺のマザコンアピールの意味をわかってくれ。
「忍足くんマザコンって感じないやん」
「や、ほんまに。俺おかんにちゅーされんと寝れんから」
「え」
「つか家で未だにママって呼んどるしな」
「……そうなん……?」
「あ、なんか話しとったら早よ会いたなったわ。ごめん走って帰るな、気ぃつけて帰りや」
引き止める間を与えず走り出した。最近女の扱いがこなれてきたような気がしてうんざりする。
父親譲りのスピードで予定より早く家に帰れば、とりあえずリビングではいちゃついていないので安心した。ただいまー、と奥に声をかけて帰ったことは知らせておく。台所で麦茶を注いでいると母親がだるそうに入ってきて、黙って敦士の手からグラスを奪った。それを飲み干した後におかえり、と義理のようにつぶやく。きっと寝起きだ。
「……おとんは?」
返ってきたグラスに自分の分を注いで口を濡らす。うなるような声を出し、光はこつりと肩に額を当ててきた。
「敦士、晩飯何がいい?」
「作んの?」
「謙也さんが」
「え~、もうチャーハンでもなんでもいいからおかんが作ったりや」
「謙也さんが作りたいって言ったんや」
「どうせおかんが言わせたんやろ」
「サービスしたったもん」
「ええ年してかわいこぶんな。……俺作ったるからおとん休ましたりや」
「お好み焼き食べたい」
「はいはい」
「ええ息子がおっておかんは幸せや。謙也さんの次に愛してんで」
「はいはい、俺は一番に愛してんで」
息子が高校を卒業しようという今になっても、昔から両親は変わらない。喧嘩もなく……かどうかはさておき、仲睦まじい夫婦を18年見つめてきた。俺に彼女がおらんでもしゃーないと思うんやけどな、と思いながら冷蔵庫を開ける。
「……あー、あかん、俺昨日豚使ったわ」
「冷凍は?」
「んー、イカとエビがある」
「ほなそれでええよ」
「量微妙……あ、俺マクド寄ったしええか。おとんも起きとるん?今から作ってええの?」
「うん」
「こら、ちょっとぐらい手伝いや」
逃げようとした母親を捕まえてボウルを押しつける。渋々材料を用意し出す姿に溜息をついた。この年になると両親の精神年齢を追い越してしまった気になる。制服の袖をまくって包丁を握り、キャベツを切り始めると隣で母親が大人しくなり、じっと手元をのぞきこんできた。
「……何」
「あっくんが男前になってもーて、おかん心配やなぁ」
「俺は箱入り娘か」
「変な女にひっかかったらすぐ言いや」
「嫌やし」
おかんと女が戦う姿なんか見たないわ、女がかわいそうで。最後の一言が気に食わなかったのか、足の甲に体重がかけられる。黙って耐えてやるとわき腹をくすぐられ、とっさに包丁を手放した。
「おかん!」
「誰が死ぬ思いでお前生んでん」
「……はいはい、俺が今ここにおるのはお母様のおかげです」
「俺めっちゃしんどかったのにー。次は絶対謙也さんに生ましたる」
「今から弟か妹ってやめてや!?」
「来世の話やん」
「……何おとんみたいなことを……」
これ以上の攻撃はなさそうなので、再び包丁を手にした。ボウルの中身をかき混ぜながら、光はわざとらしく溜息をつく。
「こんなに愛したってんのに相談もせんと進路決めよるしなぁ」
「……それもう謝ったやん!」
「もー俺の18年間なんやったん?」
「はいはいすいません。愛してるから許したって」
「医者なぁー」
「な、おかんなんで大学行かんと俺生んだん?えーとこ受かっとったんやろ」
「いや、逆。お前できたからランク上げて受験させられた。つわりで死にそうになりながらセンター受けたやつなんか俺ぐらいやろ」
「……そらそうやろ。なんでそんなことになってん」
「問題にせんと卒業させたるから合格実績残せ、って教師に脅されてん」
「……つまりおかんが脅したわけやな」
切った材料を混ぜて卵を落とし、光が混ぜている間にフライパンを出す。いっそもう少し料理に興味があれば、進路も変わったかもしれないな、とふと思った。
「なんで俺生んだん?そこじゃないにしろ大学は行くつもりやったんやろ」
「なんでも何も、敦士に会いたかったからやん」
「うっわ……」
「どうせいつかは生んどってん、謙也さんに似て敦士がちょっとせっかちやっただけやろ」
「……かなんなぁ」
口で勝てると思ったことはないけれど、言い負かされたときのこのくすぐったい気持ちはどうにかならないだろうか。両親とも照れもせず恥ずかしいことを言ってのけるが、自分はそれだけは無理だ。結局最後には自分が逃げてしまう。
「ほら、もう焼くだけやしおとん起こして来いや」
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実はこの続きに敦士と白石姉との会話があるのだけどもはや二次創作ですらないのでカット。
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