言い訳置き場
言い訳を書いていきます。誤字の報告などあればありがたいです。 ※唐突にみゅネタややぎゅにおの外の人のかけ算が混ざるのでご注意下さい。 日常はリンクのブログから。
2009'08.16.Sun
出先から。けんひかです。
『もしもし』
昨日別れたばかりなのにもう恋しい。これは病気だろうか。謙也さん?その声が紡ぐ名前に嬉しくなって、自分の名前を構成する音ごと愛せそうな気がする。鼓膜を震わす音に感じ入っていたら、次の瞬間にはツー、と通話が途切れた。慌ててかけ直すと呼び出し音が長い。かなり待たされてようやくつながり、思わず光!と叫ぶ。
『お掛けになった電話番号は、現在忍足謙也に限りおつなぎする事ができません。発信音の後に残されないメッセージをどうぞ』
「ごめんなさい!」
『……イタ電ならユウジ先輩にかけて下さい』
「ちゃうって!光の声に聞きほれてたんや!」
『へぇ~?んで、明日どこに迎えに行けばいいんすか?』
「あほ、まだ帰らんわ」
『なんや、泣いて帰ってくるんか思たのに。俺に電話してくるぐらいならさっさと帰ってきたらええんすわ』
「……ちゅーか光も来たらよかったんやん」
『しつこい』
「あい……き、切らんといてな」
『ビビりすぎ』
息をもらすような笑い声に伴う笑みも思い出されて無性に胸がときめいた。ほんま、帰りたなるだけってわかってんのに何やってんねやろ。
選抜合宿に財前が行かないとわかったときは思わず顧問を問い詰めた。自分よりもうまい財前が呼ばれていないはずがなく、金太郎も参加しているから年齢は理由じゃない。誰が選んだのか知らないがそいつの目は節穴じゃないのかと疑っていたら、なんてことはない、財前が辞退したというだけのことだった。それを謙也に何も言わなかった財前にもショックだったが、その理由も謙也には理解しがたいものだった。――パソコン触れんからって、そんなんアリか?
「なぁ、光」
『みんな感じですか?そっち』
「ん~?何も変わらへんよ」
『ええなぁ。こっちはもうユウジ先輩がやかましくて、ほんまあのおっさんうっといわ』
「健次郎が苦労しとることはようわかるわ……」
ちゃぷ、と水音がして、もしかして今風呂にいるのだろうか、と気づいた。とたんに胸がざわつく。
『ユウジ先輩のことすっかり忘れとったんすよ。俺も行った方がましやったかも』
「ほ――ほんまやで!来たらよかったんや!」
『え~、やって俺別にテニス続けるかわからんし。せやったらテニスやりたい奴が行ったらええですやん』
「それでも記念やん!二度とないで!」
『せやなぁ』
「かっる……」
『まあ頑張ってきて下さいよ』
声の後ろに聞こえる水音に気を取られる。風呂にも携帯を持ち込む財前が、浴槽に浸かったまま電話をかけてくることはたまにある。だから今も多分風呂にいるのだろう。なんとなく聞けないまま、落ち着かずさっきまで飲んでいた水のペットボトルを握った。
『どうっすか?選抜』
「ん、ああ、なんやけったいな奴ばっかやで」
『そらそうや。うちの学校だけで十分けったいやし』
「……それ、俺も入っとんの」
『金太郎役に立たんから、他校のデータ仕入れとって下さいって小春先輩に言うといて下さい』
「他校?」
『2年や1年も混ざっとるやろ』
「ああ……」
もうすっかり財前部長だ。テニスを続ける気がないと言いながら部長を任され、意識はともかくちゃんと部活のことを考えている。もしかしたら選抜に来なかったのもそのせいだろうか。副部長だった小石川やユウジも残っているとは言え、今まで部活を支えてきたメンツがごっそりと抜けた。ユウジが役に立たないのは合宿に行く前からわかりきっていたから、そんな状態ではストッパーがいないのかもしれない。
『まあ金太郎には暴れて来いって言っといたし』
「おい!」
『白石部長の最後の仕事や』
くつくつ笑う財前が今どんな顔をしているのか、もっと引いて今裸なのか、まで考えてしまって息を飲む。やばい、
『謙也先輩?』
「光、今風呂?」
『……帰ってきたら一緒に風呂入ります?』
「えっ!」
『謙也先輩体どこから洗うん?』
「腕……ひ、光は?」
『それは、帰ってきたらのお楽しみや』
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