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言い訳置き場

言い訳を書いていきます。誤字の報告などあればありがたいです。 ※唐突にみゅネタややぎゅにおの外の人のかけ算が混ざるのでご注意下さい。 日常はリンクのブログから。

2024'05.18.Sat
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2010'03.10.Wed

若手俳優の謙也とキャバ嬢の光ちゃんだよ。

ページ作れるぐらいには長いんだけど、これを編集してしれっと並べるには内容があまりにも薄いので。
白石がマネージャー、小春が光の先輩です。

あ、あと特にそういう描写はしてませんがキャバ嬢ですので光も小春も女の子です。苦手な方はご遠慮ください。






 










「上條亮介の全シーン撮影終了ということで、忍足謙也さんオールアップでーす!」
「お疲れ様~!」
「お疲れ様です!あ、ありがとうございます!」
花束を受け取り、謙也は周囲に笑顔を向ける。監督とかたく握手を交わし、カメラに顔を向けた。初の連ドラを問題なく終え、充実感に浸る。主人公の親友役という役回りは周りにも好評で、ファンも増えたという話だ。ようやく仕事が軌道に乗ってきた、という気がする。

謙也の出番は終わったが撮影自体はまだ続く。挨拶を終えて控え室へ戻ると、ひと足先に戻っていたマネージャーが鏡の前で珍しく頬杖などついている。顔歪むからやめえ、と散々人に言う癖に。
「お疲れ様ぐらい言わんかい!」
「はぁ……社長が下で待ってんで」
「は?」
「オールアップ祝いしてくれるんやと」
「ほんま?ただメシや~!……なんでそんなテンション低いねん」
「……も~、この大事な時期にキャバって!」
「は?」

*

「ママ~久しぶり~!」
「あらぁ渡辺さん!お久しぶり!もう、あんまりきてくれないから顔忘れちゃうとこだった」
「すまんすまん。うちの優秀な部下が怖くてなぁ」
あー、経費で落とすために俺連れてきたんか。頑なに入店を拒否し、外で待っているマネージャーの仏頂面の意味がわかった。しかしそんなことよりも、謙也の自腹ではとても来れないような店に居心地の悪さを感じてしょうがない。
案内されたテーブルのソファは事務所のものより柔らかく、きらびやかな装飾は芝居の舞台のように思える。ドラマで見たことがある光景だ。謙也がもらった花束をママに横流しする社長を横目に、初心者丸出しで店内を見回す。
失礼します、謙也のそばでソファーが沈み、はっとして顔を向けると真っ赤なドレスが目に飛び込んだ。胸元の白さから視線をそらすとドレスに負けない赤い唇が微笑む。
「こんばんは」
きれいな瞳に射抜かれた。体をかたくした謙也に気づいた社長が身を乗り出し、光ちゃん元気やった?とその膝を叩いた。どきっとするのは謙也だけのようで、もう、ママに怒られますよ、と冗談めかして悪戯の手を叩く。その手に謙也の視線は誘われて、相変わらずクールやなぁ、なんて社長の声が邪魔だった。
「渡辺さん、こちらは?」
「うちのホープや!二十歳で拾って、もう23か?」
「ほら光ちゃん、月9の。誰やったかしら」
「えっ、あ、亮介です。主人公の友達の」
「そうそう!光ちゃん見たことない?」
「ああ、わかりました。高校生役ですよね、陸上部の」
「そう!」
顔を上げると目が合う。柔らかい笑顔に思わず背筋を伸ばし、手のひらに爪を立てた。手っ取り早く言えば、ひとめぼれだった。

*

名刺を眺めて溜息をつく謙也を見て、白石も溜息をついた。最悪や、もう何度言ったかわからない。
「ほんまオサムちゃんいらんことしかせえへん」
「なあ、こないだの領収書いくらやったん?」
「……お前に払えへん額や。行くって言うたらクレカ止めたるからな。キャバ通って借金こさえられたら今までの努力が水の泡や。弱小事務所舐めんなよ。謙也がどっかんどっかん稼げるようなったらスキャンダルでもなんでももみ消したる。せやし今はあきらめえ、な?」
「そんなん意味ない!」
「……大体なぁ、言うたってオッサンの遊び場や、謙也が釣り合うわけないやろ。政治の話までできる女たちやで、オサムちゃんかてギリギリや」
「そうなん?賢いんやなぁ」
「はぁ……謙也が隠し事できひんアホで助かるわ」
白石は時計を見て、謙也の手から名刺を取り上げた。時間や、襟を直してやれば顔を上げて鏡を見て、仕事の顔になる。切り替えの早さはいいところだ。
「気合い入れてけ。おもろい結果以外はいらん」
前にも出たことのあるクイズ番組だ。司会者はいじる相手を間違えたりしないだろう。
「ほな行ってこい!」
「よっしゃ!ええとこ見せたるで~!」
気合いを入れて出ていく謙也を見送ったあと、違和感に気づく。見せたるって、誰に?鏡前に残された謙也の携帯に手を伸ばし、躊躇なくメール画面を開く。そこにしっかり残った「光ちゃん」の痕跡に、もう一度深く溜息をついた。遡ってメールのやりとりに目を通す。
「……ま、相手にされなさそうやしええか、どうせ高嶺の花や」
それでも少し不安が拭えず、白石もスタジオへ向かう。ドラマの番宣も兼ねたゲストなので位置はいい。早押しクイズで勢いよくボタンを押したはいいが、答えが出てこなくてバタバタ暴れている。どうせ喋ればバカはバレるから、その点は逆手にセールスポイントに切り替えた。知識がないわけではない。大学は名のしれたところを出ている。ただ、時々思考回路がうまくつながらないだけだ。
「あっ、あれ!『にぼし!』」
クイズの問題まで聞いていないが珍回答だったのだろう、回りの笑い声に首を傾げる謙也に安心する。いいところの見せようがないか。
「体育会系の番組の仕事あればえんやけどなぁ……かといってムッキムキなわけやないからガチなのは……」
「あら、蔵リン」
「はい……え?」
振り返った先にいるのは、社長行きつけの店の女の子だ。いつも見送りに出てくるので顔見知りではある。それがなぜ、スタジオにいるのだろう。
「あれ……小春さん」
「お久しぶり」
「お久しぶりです。まさかこんなところで会うなんて」
「ほんまやねぇ~!やだ~、触っちゃおうかしら」
「やめて下さい」
「傷つくから即答しないでちょうだい」
「どうしたんです?」
「ん?ああ、うちの子が出るから付き添いにね」
「出るって……」
「次のクイズ」
うふふ、と笑う彼女に、台本の内容を思い出す。スタジオが湧いてセットを見ると、着飾った5人の女性が出てきて並んでいた。一様にひと目で水商売とわかる格好をして、数字と名前の入ったプレートを手にしている。
『この5人の女性の中に、ひとりだけニューハーフの方が混ざっています!』
ああ、この手のクイズか。金かけてんなぁ、溜息をつく白石の視界の端で謙也が一瞬立ち上がった。結局席でおとなしく小さくなって、視線を追うと2番目に立っている女性に釘付けになっている。まさか。
「あの2番の子がうちの光ちゃん。やっぱりうちの子が一番かわいいわぁ」
「やっぱり……」
『忍足どうしたぁ』
挙動不審な様子に案の定司会者につっこまれてうろたえている。ああ、頭が痛い。
『なんやー、好みの子でもおるんか』
『ええっ!?』
『お前……わかりやすいな……何番や』
『え、や、進めましょ』
『ここでうまいこと知り合いなっときや!5分の1の確率でニューハーフやけどみんな別嬪やしええやろ!』
一瞬心が揺らいだのか、謙也が白石を見た。当然それは睨み返して黙らせる。それに気づいた司会者がマネージャーからアウト出ましたー!とからかって流した。2番の女は謙也に気づいているのだろうが視線も向けず、ただ営業用の笑顔を浮かべる人形として品定めされている。
「……小春さん、あの子新しい子?」
「ん?そうでもないけど、蔵リンは知らないかも。最近全然お店に入ってきはらへんし」
「どういう子?」
「……頭のええ子よ?」
「含みある言い方やなぁ~」
「あと、とぉっても一途なの。大好きな人がいるんですって」
「そんなん言うてええんすか」
「大丈夫よ、店でも言うてるから」
「変なキャバ……」
「なんでアタシを見るのよ」

*

「忍足さん」
「あっ……ひ、光ちゃん」
すれ違いざまに呼び止められて声が裏返る。笑う彼女の声に顔が熱くなった。先行ってるわね、声をかけていく先輩を見送り、光は謙也の袖を引いた。初めて店で会ったときよりは露出の少ないドレスでも、深いスリットからこぼれる太ももに目が釘付けになる。セットの裏に隠れるように移動して、辺りを伺って光は笑った。
「びっくりしました?」
「び……びっくりしたわ!」
「忍足さんすごい顔で驚くから、こっちがびっくりしましたわ」
「やって……」
「ほんまは別の子が来る予定やったんです。でも忍足さんが出るって聞いて、代わってもらったんですわ」
「えっ」
「っていうのは嘘で、予定の子が出れなくなった代打なんですけど」
「……せやんな」
肩を落とす謙也を見て光はけらけら笑う。あほやなぁ、ふざけて腕を叩いてくるのにもどぎまぎして、俺は中学生か、恥ずかしさに頭を抱えたくなる。
「そんなにわかりやすくてええんですか?」
「え?」
「そんな顔しとったら、俺のこと好きなんみんなにばれまっせ。マネージャーさんに睨まれたわ」
「えっ!ちゃ、ちゃうで!?」
「ほな嫌いなんですか?」
「ちゃうって!そんなんちゃうねん、なんか、ちゃうやろ!?」
「嫌いなんや……」
「好きやっちゅーねん!」
「ほら」
「あっ!……ごめん、迷惑やんな」
「ううん、嬉しい」
「ッ……」
「忍足さんが出るって聞かんかったら、代打なんか絶対せえへんかったし」
「……あ……あのっ」
謙也ぁー!
怒りを含んだマネージャーの声にびくりとする。時間切れやなぁ、残念そうに口をとがらせる彼女を抱き寄せそうになって慌てた。俺は何をしてんねん。
「何か言いかけてました?」
「やっ、なんでも!……また店行ってもええかなぁ」
「来てくれるん?嬉しい!」
言い切るよりも早く彼女の体が胸に飛び込んでくる。反射的に抱き寄せたが、一瞬で押し返された。見上げられると身動きがとれなくなる。
「待ってますからね」
「う、うん」
「絶対、来て下さいね」
「絶対行く!」
「楽しみにしてます」
きれいに笑った唇に視線を落とした隙に光の腕が首に回った。隙を与えず唇が重ねられ、謙也はそのままの形で硬直する。その様子を見て満足げに笑い、光は笑顔だけ残して離れていった。呆然とする謙也が覚醒したのは白石に殴られたときで、どれだけそうしていたのはわからない。
「お前なぁ!……」
つり上がった目が謙也を睨んだかと思えばすっと冷たい視線に変わる。もう知らん、白石の声は更に冷たい。
「なっ、何!?」
「楽屋戻ってこんから何してんかなぁ思ったらこんなところで逢い引きですかそうですか。今日の仕事お前は終わりやけど俺は事務所で色々あんねん、でも俺お前送らな戻れへんねん、わかる?」
「ちゃうねん!」
「うっさい証拠のグロスついとんじゃ!」
「ッ!」
「帰るで」
「ハイ……」
小さくなって白石の後ろを歩きながら口を拭った。甲に残るラメに複雑な気持ちになる。光ちゃんにとってはキスぐらい営業の一部なんかな、溜息をつくと白石の歩調が早くなった。
「……白石先生ッ!」
「キャバ嬢落とすテクニックなんか持ってへんし仮にあっても教えへんし」
「なんでわかんねん!」
「鏡でも見ろ」
「白石のいじわる!ドS!」
「なんとでも言え」
膨れっ面で控え室に戻るとメールが届いている。顔の緩みで光からだと察したのか、白石は溜息をついて荷物をまとめた。
「光ちゃん……かっこよかったって!今日の俺かっこよかった!?」
「『にぼし!』」
「あああああ」
「『にぼし!』のどこがかっこいいねん」
「それは言うたらあかんやろ!」
「見られてんねんて」
「あああああ!」
「……なぁ謙也、マジなん?」
「大真面目やったわ!」
「いやにぼしやなくて、その子や。光ちゃん?」
「ま……マジや。本気で好きや」
「キャバ嬢やで?」
「知ってる」
「そんなメール、営業やで」
「わ……わかってる!」
「……ほな好きにせえ。色恋の面倒までよう見んわ」

*

「今日もかわいかったで、やって。俺今日かわいかったですか?」
「光ちゃんはいつでもかわいいけど、忍足謙也と会うときは世界一かわいいで」
「ほんまに?」
「ほんまや」
携帯を握りしめてにやにやしている光が微笑ましく、小春は苦笑しながら頭を撫でてやる。
「でも言うたってタレントやで、お世辞ぐらい言うやろ。あんま浮かれんときや」
「わかってますよ」
「……わかってへん顔や」
「わかってますー。今はお世辞やったとしてもそのうち本気で言わせたるもん」
「……もしかして結婚するって本気なん?」
「当然」
「……何年前から言うてんの?」
「2年前」
「……そう」
今日の様子を見るに、大変なのはマネージャーの方だと思うがどうする気だろうか。なんだかんだでメールアドレスまで手に入れてしまった彼女は、すでにただのファンからは昇格した。
「せめて噂にならないようにしなさいよ」
「俺がそんなへますると思ってんすか?」
その笑顔が笑っていないことを知っている。ほんとに手に入れるためやったらマスコミも利用するんやろなあ。若手の俳優に同情しながら、小春は職場へ向かった。
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