言い訳置き場
言い訳を書いていきます。誤字の報告などあればありがたいです。 ※唐突にみゅネタややぎゅにおの外の人のかけ算が混ざるのでご注意下さい。 日常はリンクのブログから。
でもこれ、別に赤也だけ抜き出してもっと楽しい話書けばよかったんじゃないの?と思う。
妹の先生が子どもが小さいとき、朝起きてきたらテーブルにマグカップを3つ出しといて、サンタさんきてお話したよ!って言ってたんだそうです。それを、切原家もやればいいじゃない!?って、思っただけだったのに、なんでこんなに悲しいにおぶんの話になるのかしら!?意味がわからないわ。
そんなわけで長いのですが、セフレなんだけど好きになっちゃってどうやって状況を打開すればいいのかわからないにおぶんちゃん。景気の悪いクリスマスですいません。でもわたしもクリスマスだというのに女ふたりでネカフェにしけこみ、ミュチケットをめぐっていろいろしてました。なんて……
「もうすぐクリスマスですねー」
「……赤也、今年はサンタさんに何をお願いしたんじゃ?」
「……におー先輩、声笑ってます」
切原のふくれっ面に耐えきれずに仁王が吹き出したのをきっかけに、にやにやしていた丸井も声を上げて笑いだした。サンタクロースはいる、と言い出して部室中の笑いを誘ったのは去年のことだ。家に帰ってその話をしたら、両親に謝られたと言うからよけいにおかしい。
「純情やのう、赤也は」
「腹黒い先輩たちとは違いますからー」
「んだとぉ!?」
「あっ、じゃあ俺はここでっ!さよならっ」
「逃げんなっ」
分かれ道より少し早く、走って逃げた切原に舌打ちをする。残った仁王がなだめるように近づいてきて、握った拳に手が触れた。どきりとしたのを押し隠して手を振り払う。
「俺らも帰ろか。うち来るじゃろ?」
「……おう」
遊びに行った帰り道だった。部活を引退してから時々、切原も誘って遊びに行く。遊びにとはいえ大抵するのはテニスだった。誘うのはいつも丸井だ。先に切原やジャッカルと予定を合わせ、あとから仁王に声をかける。そんな勇気しか、ない。
仁王とは帰りの方向が同じで仲良くなった。みんなよりも学校から家が少し離れていて、一番通学時間が長い。毎日の帰りが楽しかったのは、……いつまでだろう。仁王の隣を歩いて話を続ける。
「赤也んち、すごいぜ。親が夜の間にテーブルに3人分のマグカップ置いとくんだって。サンタさん来て話したよ、って言われて信じてたんだってさ」
「ははっ、サンタさんにそんな時間あるかい」
「だよなー」
仁王のうちは戸建ての新しい家だ。マンション住まいの丸井から見ればひとり部屋が羨ましい。初めて仁王の部屋に行ったのはいつだろう。……初めてセックスをしたのは。
携帯のアラームで起こされて、仕方なく布団から這い出た。上半身を起こして携帯を見ると母親からメールがきている。夕食はどうするかという内容で、悩んでいると太ももを体温が滑って足が震えた。
「帰る?」
「……聞きながら触んなよ」
「ちょっと久しぶりやったし」
「……帰る。ハンバーグだ」
「了解」
くつくつ笑いながら仁王は起き上がった。裸の背中を見て自分も座り込んだ。太ももにこびりついた欲の残滓に気づいたが、面倒でそのまま服を着る。
「んじゃあな、また明日」
「……じゃあな!」
見送りもない仁王の家から出て、走って家に向かう。体はだるいが、そんなことよりも頭を真っ白にしたかった。からかいながら笑って自分の体をもてあそぶ仁王の顔が脳裏から離れない。それでも好きだと思っている自分が一番愚かだ。仁王の体温も熱をはらんだ声も、あの瞬間にしか自分のものにならないのに。どうして嫌いになりきれないのだろう。気づいたらもう、セックスをしなければ友達ですらいられない。
「ただいまっ」
「お帰りなさい。今日も先にお風呂入る?」
「行く。汗くさい!」
「元気ねえ」
「ブンちゃんおかえりっ」
「ただいまー」
「ぼくもブンちゃんとお風呂行きたいー!」
「えー、今度な、今度」
小さい弟の頭を撫でて、すぐに風呂へ向かう。いたずらにキスマークをつけられた体を見せられるはずがない。簡単に体を洗ってしまって湯船に浸かる。一番目の熱めの湯が丸井の体をじわじわとあたためた。足の間を見下ろして、髪の毛先が水面で上下する。
(中で出さなかったってことは、機嫌いいんだな……)
優しくされるほどに期待する自分がいる。──機嫌が悪い日の力任せなセックスも知っているのに。
初めてのセックスは強姦だった。それだけは間違いない。仁王のうちで遊んでいる間に寝てしまい、起きたときには脱がされていて、さんざん体をもてあそばれた後だった。ちょっとした雷雨ぐらいでは目覚めないこの神経を初めて恨んだあの日、確かに仁王を憎んだはずなのに、どうして今こんなにも恋しいのだろう。隠れて少し泣くぐらいは許されてもいいだろうか。好きだなどと言いはしない。そんな勇気は丸井にはなかった。
*
「クリスマス、丸井はどうすんの?」
「……家だよ家。俺が毎年ケーキ係りなんだからな!」
「ははっ、なるほどな」
「仁王は?」
「そりゃま、女はイベント好きじゃからのー」
「あっそ」
結局仁王はそういう女が好きなんだろう。いつもなんだかんだでイベント事には出てこない。丸井もたいてい家での毎年恒例であるから話を聞くだけだが、どうせ女といるに違いない。あまり気にしないようにと、ぱらぱらと雑誌をめくる。
「あー、映画見てえな」
「どれ?ああ、これ今日までじゃな」
「マジで!?え~、午後やってっかな……」
「一緒に行くか?俺も見たいし」
「……え?」
「だから、映画。今日午前で終わりやし授業終わってからでも」
「あ……じゃあ行くか?」
「ほんじゃ、終わったら着替えて……駅待ち合わせでええか」
携帯で時間を調べて、ちょうどいい時間を見つけてそれに決める。何となく落ち着かないのはなぜだろう、考えてから少し遅れて気がついた。
「……あ、ジャッカルとかも呼ぶ!?」
「急やしいいじゃろ、混んでるかもしれんし」
「そっか、そーだな……」
仁王はわかっているのだろうか。──ふたりで遊びに行ったことなんて、ないのに。それは丸井が意識してそうしていたからだ。でも今は仁王が誘った。丸井とふたりでいいと言ったのだ。
浮ついたまま迎えた放課後、仁王と別れて家に走る。何を着たらいいだろうか。部屋でタンスをひっくり返し、これはこの間仁王と会ったときに来たから、これは映画館のそばの店で買ったから、と頭を悩ませる。女々しい自分には気づいていた。それでも心が浮き足立つ。仁王は何も思ってなくても、これはデートだ。もう家を出ないと間に合わない。決めた服に着替えかけて、脱ぎかけた自分の姿を見て手を止める。
(パンツは……?)
──映画が終わったらセックスをするのだろうか。仁王とふたりになるということはそれしか思いつかなくて、どきりとする。これはデートじゃない。仁王がしようと言えば丸井は断れない。次がなくなるのが怖いからだ。もし誘われたら、丸井はただの友人ですらなくなる気がする──
思った瞬間に涙があふれた。携帯を握りしめ、ひと呼吸おいて行けなくなったとメールをうつ。こんな気持ちでは行くことができない。ボロが出るだけだろう。返事はわかった、と簡単に来ただけだった。怒ったかもしれない。どうしたらいいのかわからないまま、ベッドに潜ってシーツに沈んだ。仁王の匂いがする気がする。悲しいばかりで涙が止まらない。いつまでこんな思いをすればいいのだろう。仁王からは離れたくない。だけどセフレではいたくない。友人に戻りたい思いと特別になりたい思いが交差する。
*
「なあ、丸井なんで最近俺を避けとるん?」
「は?んなことねえよ」
「そう?ほんじゃ一緒に帰ろ」
「……きょーアルバムいーんだから」
「待っとる」
にこりと笑った仁王を横目で見て鞄を閉める。立ち上がった丸井の席に座ってひらひらと手を振る仁王を見て、殺した息をゆっくり吐いた。
「遅くなっても知らねえからな」
歩きだそうとすると鞄を捕まれ、するりと肩から落ちた。振り返ると表情は変えずに丸井を見上げてくる。
「置いてきんしゃい。見といたるよ」
(──機嫌悪い、な)
セックスの合間によく見る顔だ。何も言えずに教室を出る。同じ卒業アルバムの委員をしている女子とすぐ出会い、笑顔に変えて一緒に歩いた。
「ね、丸井くん、終わったら一緒に帰らない?」
「ワリ、友達待ってんだ。それに俺南の方なんだよ」
「あれ、そうだっけ?でも小学校一緒だったじゃん」
「団地に住んでたんだけど引っ越したんだよ」
「そっか、じゃあちょっと遠いんだ」
「うん」
「……あたし、丸井くんのことあんまり知らないんだなあ……」
どきりとする言葉に隣を見る。誤魔化すように笑った彼女は先に会議室に入っていった。揺れるスカートを目で追ってうつむく。
仁王のことを何も知らない。ほとんど人のいない広い家も、自分を抱く理由も。集合写真の日時やクラスページの指定をメモする女子のペン先を見つめていたら集会は終わってしまった。こんなに憂鬱なのに時間は早い。
──約束を断ったあの日から、仁王を避けていた。遊びにも誘わず、帰りの時間もずらしていた。会えばセックスをしなくてはいけないような気がする。もう2週間、そんなに開いたことはなかったから、そろそろ仁王に捕まるだろうと覚悟はしていた。仁王が他の誰かとセックスをするのかと思うと今すぐにでも仁王に駆け寄り自ら脱いでもいいぐらいの思いはあるが、もうこれ以上こんな関係ではいたくない。だから、終止符を打つつもりでいる。
「じゃあなー」
「また明日ね」
女子と分かれて教室へ戻る、その足取りは重い。どう切り出せばいいだろう。さっきの別れの挨拶のように簡単であればいいのに。──もしかしたら仁王にとっては簡単なことかもしれない。ぎゅうと痛む胸を押さえ、ゆっくり呼吸をしながら教室に入る。電気を消した薄暗い教室、仁王は丸井の席に伏せて眠っていた。音を立てないように近づき、そっと寝顔を覗き込む。
(眉適当だなあ……)
女と遊ぶ予定はなかったのだろうか。体育があったせいか近くへ寄ると汗の匂いがする。思い出すだけかもしれない。途端に自分の中の決意は小さく萎み、机の横にかけられた鞄をそっと持ち上げて先に帰ろうとする。しかしすぐに仁王の腕に阻まれ、狸寝入りだと知った。
「まるいくん」
「帰るぜぃ、腹減った」
「うちおいで」
「無理。俺今日夕飯作んなきゃなんねーの」
「すぐ終わらすよ」
仁王の目は怒っている。すぐ終わるはずがないし、終わらされたにしても丸井に立ち上がる力が残るとは思えない。どうして機嫌のいい日に自ら抱かれに行かなかったのかを後悔する。
「……俺はもう、やだよ」
「丸井」
「セフレなんかやなんだよ、……俺はお前が好きなんだ。だからもう、セックスしたいだけなら他当たれ」
「ならつき合おう」
「……は?」
「何で今更そんなこと言いよん。好きじゃなかったら男ばっか好んで抱くかい」
立ち上がった仁王がまっすぐ丸井を見下ろす。思わず口を開けたまま仁王を見つめ返した。頭がついていかずにいると、あきれたように溜息をつかれてしまう。
「そんなことで悩んどったん?丸井が俺のこと好きなんてとっくに知っとるよ」
「なんで……」
「お前自分がセックスの最中何言っとるか覚えとらんの?」
「……俺、言ってる?」
「好き、って、俺の名前よりよう出るよ」
かあっと顔が熱くなり、後ずさると仁王も一歩踏み出してついてくる。にこりと笑った顔は機嫌よくなってはいるが、今はそれどころではない。
「俺も、丸井が好きじゃ」
「におっ……!」
強引に抱きしめられて鞄を落とす。仁王の胸のポケットに入っている何かかたいものが頬に当たって痛い。仁王の体温に包まれて、身をゆだねそうになって慌てて体を引く。
「ほんとに!?」
「ほんとじゃ。何度だって言ったるよ。好きじゃ」
「仁王……」
恐る恐る抱き返すと仁王はそれ以上の力で抱いてくる。体がぶるっと震え、涙がにじんだ。
「……な、やけん、寂しいこと言わんとって。一緒に帰ろ」
「うん」
「丸井みたいなかわいい子セフレなんかにせんよ。俺とつき合ってくれる?」
「うん!」
「泣かんでよ」
「だってっ……」
「帰ろ」
丸井の鞄も持ち上げ、仁王は手を引いて教室を出る。誰かに出会わないかどきどきしながらも手を離せなくて、まだ夢じゃないかと疑っている。
「……な、丸井、うち寄らん?」
「……セックスしなくてもいい?」
「ははっ、かわええのー。今日はのんびりしよ。久しぶりやからゆっくり話しよう」
「うん……俺……夢みたいだ」
靴をはきかえながら仁王は笑う。持たせてしまっていた鞄を受け取り、顔を合わせると目尻を拭われて急に恥ずかしくなった。
「思ってたよりも乙女じゃの」
「……だって、仁王の部屋行くのにセックスしなくてもいいって、ちょっと嬉しい」
「なんで?」
「ずっと俺は仁王のセフレだと思ってたから、もう普通に遊べない気がしたんだ」
「人を下半身だけの生き物のように」
「だってお前どきどき怖かったもん」
「そこはまあ、性格じゃけん許して」
「やだね、許さない」
笑って振り返ると仁王も笑い返す。それがうれしくて浮き足立つ自分がおかしい。さっきまではあんなに気持ちが沈んでいたのに、我ながら単純だ。
「……な、丸井、あんまりセックス好きじゃない?」
「え、いや、ていうか……セックスだけなのが、やだったんだよ。まあ、痛いの嫌いだし」
「……そうなん」
「どうかした?」
「いや、寒いしはよ帰ろ」
*
今までのセックスがすべて演技だとしたら、完全に詐欺師の名折れだ。見送りを断られた仁王は玄関で丸井の背中に手を振りながら、どこかむなしい気持ちで立ち尽くしていた。一体何度抱いたのだろう。初めこそ無理矢理ではあったとは言え、次第に丸井の気持ちが傾いているのがわかっていたからこそ遠慮はしなかったのだ。誘えば来たし、気持ちいいかと問えば反応する。今更セックスが嫌だったなんて詐欺だろう。文句ばかりを並べてみてもすっきりしないのは、どこかで気づいていたからだ。誘ったときにわずかに見せる苦笑や服を脱ぐ前のためらいを、見てみないふりをしていただけで。
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物凄く中途半端ですが終わり。
多分別れちゃうじゃないかこの展開……