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言い訳置き場

言い訳を書いていきます。誤字の報告などあればありがたいです。 ※唐突にみゅネタややぎゅにおの外の人のかけ算が混ざるのでご注意下さい。 日常はリンクのブログから。

2025'03.20.Thu
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2006'08.07.Mon
(げっ)



どんと突き飛ばされてしりもちをついた。ぐいと唇を拭い、神楽は仁王立ちで銀八を見下ろす。



「バカにすんなヨ」

「神楽…」

「銀ちゃんのバカ!」



去り際にすねを思い切り蹴り飛ばされ、弁慶さえ泣く箇所を神楽に蹴られては、悶絶する他にない。銀八は埃っぽい廊下で身悶える。



キスをした。正確には、された。



神楽の思いを知ってはいたのだ。それを大人のずるさでやり過ごしてきた。四肢を伸ばして、冷たい廊下で体を冷やす。

夏休みに入ったが、彼の担任するクラスの大半は補習で学校に来ている。神楽も補習組だ。



(……生徒と……あ〜!)



何がまずいって、自分も惹かれてしまっている点が。

無人の廊下で頭を抱えた。
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2006'08.06.Sun
「あ、上履き持ってきてねー」



靴下のまま藤代は校舎へ入っていく。部活終わり、暑さに耐えかねて裸足になっていた笠井は一瞬迷い、結局スリッパを取ってきた。汗をかいた足に、学校の廊下は不快すぎる。スリッパも似たようなものではあるが、まだましだ。



忘れ物した、と藤代が気付いたのは、夏休みも半分ほど終わった頃だった。笠井は一生このことを忘れない。だって、課題である「夏休みの友」を忘れるとか。小学校の頃のワークのようなものではなく、プリント数十枚に及ぶ数学の課題のことだ。あれを忘れるとは、勇者と呼ぶしかない。



昇降口から入ってすぐの階段を上がって教室へ。めんどくせぇなぁと笠井がぼやいた瞬間、藤代が視界から消える。



「…び…びびったぁ…」



視線を落とすと前後に開脚した藤代がいて、何してんのと思わずバカにする。



「滑ったんだよ!」

「…あー、ワックスかけたもんなぁ」



終業式に行われる魔のワックス掛けをくじによりみごと引き当てていた笠井は顔をしかめた。あれは酷い運動だ。



「ちょっとこれおもしれえ」

「は?」



次の瞬間に藤代は無人の廊下を走り出した。笠井が止める間さえ与えない。



「…バカだなぁ」



そんなことしてる暇があれば、少しでも「夏休みの友」と仲良くするべきだ。なんたって毎日半ページやっても夏休み中には終わらないという量なのだから。



結局しりもちをつくまでは簡易スケートは続けられることになる。
2006'08.05.Sat
あっと思った瞬間は既に時遅し、伸ばした脚に獲物がかかった。



…じゃなかった。引っかかったのは女の子。

起き上がって腕からこぼしたものをかき集めているのを感じながら、高杉は狸寝入りをやめるタイミングを考える。転がってきた何かが手に触れて、思わず目を開けるとリップクリーム、それを取ろうとした彼女の手が一瞬触れた。



さらりと流れた黒髪が視界をよぎる。髪の間から覗いた目が、高杉の視線とかち合った。



(…うおっ)



誰につまづいてしまったのかわかった彼女は、リップクリームも残して逃げていく。高杉につまづいたときに擦りむきでもしたのか、若干足を気にした後ろ姿。



(……クリティカル)



内心ガッツポーズを決めて、高杉はリップクリームを拾って追いかけた。

おい、と声をかけた瞬間、彼女はかすかに悲鳴を上げてノート類をまた落とした。それを拾うのを手伝って、ついでにリップクリームも返す。彼女の脳裏によぎったのは「もりのくまさん」だったが、それは高杉の知るところではない。



「怪我してんじゃん」

「あ」

「悪かったな」

「い、いえっ、私…」



保健室行こうぜ、無理やり引っ張っていって既知の養護員に治療させた。困惑しながらも礼を言って彼女が帰るなり、高杉は表情を崩す。



「めっちゃ可愛くねぇ!?」

「…あれはやめとけ、貴様の手に負える相手じゃない。先祖は貴族だ殿様だと言う生粋のお姫様じゃ」

「まじで!?」

「……」



しまった、火をつけた。陸奥は頭を抱え、実はオタクというこの問題児がどこで脚を滑らせたのか考え始めた。
2006'08.04.Fri
転び回って砂埃にまみれたお前を見てると安心するよ。なんて言ったらもの凄く軽蔑した目で見られた。ほんとにむかつくなお前。好きだけど。



「イッテー」

「うわ、また傷増えてんじゃん。小学生かよ」



椅子に座った誠二の足元にしゃがみ、思わず溜息を吐く。こりないなぁ。

見かねたキャプテンが作ってくれた「藤代専用救急箱」は、何故か使用者は俺になっている。自分でやれ、自分で。



「絶対あと残るよ」

「別に女じゃないし、勲章勲章」

「それは名誉の負傷の場合だろ、お前転ぶだけじゃん。…綺麗な脚なのに」



治療を済ませた脚をつ、と指先で撫でてやる。一気に硬直した誠二を見上げて笑ってやれば、次の瞬間には部屋を飛び出した。トップレベルの俊足に追いつくつもりはないけれど、俺もすぐさま走り出して後を追う。



だからこりないねって言ってんのに。そんなに触らせたい?お望みなら余すとこなく隅々まで触ってあげるよ。



な〜んて俺の思考はきっとあいつにとってはだだ漏れで、だからこそ狭い廊下をグランドのように抜けていく。



そして誠二は何もないところですっころんだ。その隙を見逃さずにそれに飛びつく。



「ぎゃーっ!」

「オーイ、また笠井と藤代がいちゃついてんぞ〜」

「お前ら廊下でやめろよな〜」

「先輩助けろよッあっうわっまさぐられてる!ぎゃーっ!」

「笠井」



そっ、と優しい手つきで中西先輩が鍵を差し出してくれた。自習室の鍵だ。傍観者の三上先輩が爆笑している。



「先輩大好き」

「ばかーッ!」



暴れる誠二を一緒に押さえつけてもらって、先輩と自習室に放り込む。鍵をかけて、逃げる誠二を角に追い込んだ。



「タク!」

「ちょっとだけ」



しがみついて膝の上に体を預ける。今度は誠二が溜息をついた。薄暗い部屋。



「今度は何」

「…ちょっとしたつまづき」



膝舐めたらどうする、と聞いたら突き飛ばされて、転びそうな走りで逃げられた。
2006'08.03.Thu
山崎は地味なくせに足が速い。だけど別に陸上部にいるわけではなく、彼らと張り合って負ける程度の速さで、地味な特技だ。

非常に、便利。



「山崎ィ、パン買ってきて」

「……この時間から、あの激戦区へ行けと?」

「だからお前に頼んでるんじゃねぇか」

「……」

「お・ね・が・い」

「行ってきますッ」

「…あんなに必死になるほど俺のこと…」

「真っ青だったぞ」



土方のつっこみにウン知ってる、と可愛らしく応えてみれば、鬼だと罵られた。鬼はどっちだ。



「戻ったら上いるって言っとけ」

「…りょうか〜い」



そんなこと言わなくとも、今更じゃないか。勿論言ってやるつもりはない。土方を見送るついでに廊下を覗くと、山崎が走って戻ってきた。土方は一瞥しただけで先に行ってしまう。



「山崎ィ」

「はいっ!?」

「殺されてくんない」

「買ってきたのに何その仕打ち!」



笑いながら教室を見て、土方がいないとわかると山崎は廊下を走っていった。それと同じ速度で、恋に似たものも去っていく。



よく走る男だ────沖田は遅くはないが、早くもない。どちらかと言えば持久力はない方だ。

だからやめたのかもしれない。



(…走れる人間は、自由に見える)



角を曲がりそこねて転んだ山崎が見えた。
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