言い訳置き場
言い訳を書いていきます。誤字の報告などあればありがたいです。 ※唐突にみゅネタややぎゅにおの外の人のかけ算が混ざるのでご注意下さい。 日常はリンクのブログから。
ハロウィンに揚げるって言ってたら忘れそうだから上げとくぜ。四天でハロウィン。勝手に学校行事にしています。四天ならやってくれると思う。
設定だけ考えたけど使ってないのが千歳→じぶり的魔女っ子(デッキブラシ)・小石川→フランケン。あと千歳がジジをやってもらうために光を探すとか光が小春の乳をわしづかみにするとかいろいろ考えてたけどどうまとめたらいいのかわからなくなったのでカット。
あと多分「千日前の謙也」の話はしたことがないと思うんですが、近いうちに透子先生が語ってくれます(まるなげ)。要するに千日前がピンク街だから千日前線使ってる謙也がピンクだってことです。伝われ。多分クラスではスピードスターなんて誰も呼ばない。
どうでもいいけどハロウィン気分を味わうためにユニバに行ってきます。そのための待ち合わせの話をしていたらうっかりあえてデートのときに現地集合で待ち合わせしてみるけど耐えきれなくて光が来た途端「遅い!」って言ってしまい光様が即お帰りになるという妄想をしました。透子先生最強だな。さも当然のように透子ちんと行ってきます。
くらりんおはよう!のあいさつに白石が振り返る。小春の今日の気合はまた格別だ。笑顔の小春の後ろに同じく上機嫌のユウジがいる。更衣室が開いているのにわざわざ部室に着替えに来るのは、いろいろと小道具を仕込んでいるからだろう。
「おはようさん」
「今日はお楽しみのハロウィンねー!」
「ずっと楽しみにしとったもんなぁ」
「そうよぉー!うふふ」
「小春は今年何やんの?去年妖精やったな」
「今年は魔女にしようと思って。くらりん、セクシーなのとキュートなのとどっちがいい?」
「俺は小春のセクシー路線結構好きやで」
「ほんなら午前中はセクシーにしましょ」
「朝から濃いなあ」
「こら白石!俺の小春誘惑すんな!」
「別に小春に興味ないし」
「その言い方も腹立つわ!」
着替え始める小春を横目に見ながらユウジをあしらい、昨日の日誌の続きを片づける。
今日は四天宝寺の生徒が待ち望んでいたハロウィンだ。あかん、マイ箒忘れたわ、ぼやいた小春が掃除用具入れを開ける。ようやるわ、小春のプロ根性に苦笑した。コスプレは得意じゃない白石からすれば、小春の労力は想像しがたい。
ドアが開いて白石が顔を上げると、一歩踏み込んだ財前が顔をしかめた。一瞬足を引いてドアを閉めかけて、少し迷って結局入ってくる。
「ちっす」
「おはよう財前」
「今日1日部室開いてますよね」
「開けとくで。着替えるやろ、どうせ誰かさんがおってくれるから施錠せんでええし」
「……そっすか」
抱えていたお菓子を机に落とし、財前は白石の前に座った。早いな、白石が笑う。
「もーこれで終わりっす」
「財前、去年もさぼっとったやろ」
「こんな行事真面目にやってられませんわ」
「遠回しに俺ら馬鹿にしとるやろ」
「もー、ユウくんやめなさい」
「……小春先輩それモザイクもんですよ」
「似合うー?」
「似合うから困るんすよねえ。似合わんかったらしばいたんのに」
財前の視線の先で小春が体をくねらせた。相変わらずいったい何でできているのかわからない柔らかそうな推定Fカップを揺らし、どういう仕組みなのか谷間をむき出しにしたV字の黒いドレスは深いスリットが入って生足がのぞいている。もちろん手入れも抜かりない。それなんなんスか、財前の冷めた問いに、魔女っ子や、と白石が答えた。
「ああっ小春っ……!」
「ユウジ先輩キモい」
「ユウジ……その顔はさすがに、放送コード引っかかるわ」
「デレッデレやな。しまりのない顔」
「やって小春、ああっ小春!きれいや!」
「ありがと。ユウくんが作ってくれた衣装のおかげやで」
「……ユウジ、お前が何の仮装するつもりやったんか知らんけど、ミイラ男に変更しぃ。俺が包帯巻いたるわ、その顔は見せたあかん」
白石の手招きに、いまにも小春の脚にすがりつきそうだったユウジを小春が押しやる。白石が包帯を取り出して夢見心地のユウジに巻きはじめた。ハイヒールまで持参の小春を見て、財前は手持無沙汰にもらったばかりのお菓子の箱を上げた。顔を出したのはパンプキンパイ、いきなり本命が手に入ったとあってはますます部室から出る気はなくなった。
「光ちゃん、トリック・オア・トリート?」
「……トリック」
「きゃっ!」
「くぉら財前!」
「動くな!」
「イッテ」
白石にしばかれたユウジを笑うように、財前は小春の手を取る。黒い手袋の滑らかな感触を楽しむように指先を撫でた。
「小春先輩、ほんまにこんなんよう似合いますわ」
「ありがと。キュートバージョンもあるから午後をお楽しみに!でもアタシのトリックはユウくんにしかあげられへんからおかしあげるわ」
「あ、アルション」
「これで許してね」
「ま、しゃーないっすわ」
渡されたのはケーキで、あらかじめ財前に用意していたものだろう。お気に入りの店のケーキに頬が緩みそうなのを口元を引き締めてこらえると、そんなことは見通した小春につつかれる。唇を突き出してス寝たふりをすると小春は笑った。
「……白石部長はなんもコスプレしないんすか?」
「くらりん去年も何もしとらんかったわよねえ」
「……今年はやるで」
「そうなん?苦手なんやとおもっとったけど」
「つーちゃんが衣裳作ってくれたんや」
「うわ白石部長こそミイラ男の方がええんちゃいます?その顔はないわ」
「ほんま残念なイケメンやね……」
「よし、ユウジ終わり!」
完成したミイラ男は魔女の隣に並ぶ。魔女がミイラ男を撫でる姿は思ったよりシュールだ。かばんから取り出した布を広げて、吸血鬼やねん、と白石がにやけた顔をした。大体読めたわ、小春が苦笑する。
「つーちゃんが俺のために手縫いで作ってくれてん!これで着ぃひんとかどこの誰が言えるんや!喜んで練り歩くっちゅーねん!」
「ハイハイ。光ちゃんは?何かするんやったら衣裳貸すで」
「いやっす」
ケーキにかぶりつきながら他のお菓子を冷やかしていると、それに紛れて封筒があるのを見つける。何気なく中の手紙を見るとそれはまぎれもなくラブレターで、思わずぽかんとしてしまう。なぜハロウィンのお菓子にラブレターが紛れているのだろう。
「あら、光ちゃん早速」
「……何なんすかこれ」
「知らんの?四天のハロウィンパーティは裏バレンタインなのよ」
「はぁ?」
⋆
毎年10月に四天宝寺中学で行われているハロウィンパーティは、仮装コンテストだ。仮装で校舎内を練り歩き、事前にエントリーしていた参加者の中から投票をする。もっとも学校全体での行事であるから、参加者以外に仮装する者がほとんどだ。そしてコンテストは表向きのイベントで、エントリーするほどの気合のない生徒にとってはバレンタインのようなイベントになっていた。
「トリック・オア・トリート?」の合言葉でお決まりのやり取りを誰かれ構わずしていくこのイベントは、知らない人にも声をかけやすく、かつ気軽にプレゼントを贈りやすい。それはあくまでも隠れた意味で、あまり知られているものではなかった。このイベント後にカップルが増えるのは事実だが、例えば謙也のように鈍感な生徒は気づいていないだろう。
「あっ、謙也やーっ!」
「うわっ何かきっ、ぐはっ」
「謙也っお菓子ちょーだい!」
真っ白なシーツお化けに激突された謙也は腹部を抑えてしゃがみこむ。この声この動作、シーツのお化けは間違いなく金太郎だ。そこまでわかっているのに声が出ない。ゆっくり息を吸った後、じゃれつくシーツの頭らしいところを撫でる。
「金ちゃん……誰かれ構わずぶっこんだらあかんで……」
「さっき白石に謙也と千歳にやったらええって言われた」
「……あいつ……つーか白石も参加しとるんか?」
「謙也ー、えーと、なんやった?」
「『トリック・オア・トリート?』?」
「それや!」
「はい、お菓子な」
金太郎の「いたずら」には去年いたずらなんてものではないような痛い目を見た。金太郎用の駄菓子の詰め合わせを渡すとありがと!と無邪気な笑顔を向けてくる。こうしているとかわいい後輩なのだが、いかんせん身体能力が半端じゃない。一緒にいた謙也のクラスメイトはもうよく知っていて、少し離れてふたりを見ていた。
「それにしても金ちゃんの仮装簡単やな。いや、仮装なしの去年よりマシやけど」
「おかんが作ってくれてん」
「よ――よかった、な?」
外を見るための穴があいているだけに見えるが、家族円満なのはいいことだ、特につっこまないことにする。
「謙也は?それ何?」
「狼男や!」
「『千日前の忍足謙也』だけにな」
「やかましわ!」
茶化すクラスメイトを振り返るとげらげら笑っている。散々笑ったくせにまだ笑うか。『千日前の忍足謙也』は不名誉ながらクラス内では『難波のスピードスター』よりもよく言われる二つ名だ。ピンクをイメージカラーに持つ地下鉄を謙也が使っていることが面白くてしょうがないのは、そのイメージカラーはいわゆるピンク街からイメージされているからだ。
謙也の仮装は狼男と言っても簡単なもので、知人に作ってもらった耳としっぽをつけただけだ。謙也にとって今日は授業がなくなる日、程度のイベントでしかない。
「光が参加するんやったら俺ももっと凝ったんやけどなあ。そういや金ちゃん、ムアンギ見た?」
「お菓子もろたで」
「マジか!流石やな。ムアンギ何くれた?」
「これ!」
金太郎が持っていた袋から取り出したものにぎょっとする。近づいてきたクラスメイトがそれを見て、ゴディバ、と呟く。
「……金ちゃん、ムアンギどんな格好しとった?」
「えーと、きんきらしとった」
「松ケンか?」
「えらい古いな」
「いや、幸子みたいな水着」
「サンバか!」
「くそっそんだけ目立つのに何で見つからんのや!」
「でもあんま見つけたない格好やな」
ほなわい次行くわ、とシーツを翻して走り去る金太郎を見送り、謙也はクラスメイトと輪を組んだ。ハロウィンで行われているのは仮装コンテストだけではない。校長のムアンギの「トリート」は毎年校長が自腹で用意しており、その中には高価なものが含まれていることが多かった。去年は白石がちゃっかり焼肉食べ放題のチケットを手に入れていて、甘いお菓子とは限らないのが男子にも火をつける要因だ。しかし目立つ格好をしているくせになかなか見つけられないので、レアキャラ扱いになっている。
「サンバやろ、絶対他にそんな格好しとるやつおらんて」
「俺ムアンギのビキニとかあんま見たないんやけど」
「去年ムアンギ捕まえてココアシガレットもらったやつおるしな……スカだった時の残念感半端ないで」
「俺は探す」
「謙也」
「小春がムアンギのスカの割合は10%やゆうとったんや、そんな確立やったらぶっこむやろ!大吉当てるより高確率やで!」
「よっしゃ、探すか!」
「ムアンギが腹冷やす前に見つけんで!」
「けーんやっ!」
気合を入れた瞬間に女の声が飛び込んで、一瞬で冷めた目をしたクラスメイトが謙也を突き飛ばした。え、え、何?わからないまま振り返ると顔見知りの女子がいる。確か隣のクラスだ。果たして仮装なのかと言われるとただのコスプレだが、チャイナドレス姿にドキッとしたのは確かだ。
「おー、おはよー、やなかった、トリック・オア・トリート?」
「あはは、トリート!あたし昨日クッキー焼いてん!あげる!」
「作ったん?すごいなあ」
「口に合わんかったらごめんなあ」
「何ゆうてん、自分調理実習大活躍やったんやろ?あ、関口らもあっちおんで」
「……あたし謙也にしかあげへんもん」
「へ?何で?」
「何でって……」
拗ねて見せた彼女に思わず首をかしげた時、視界にものすごいものが飛びこんできた。廊下の向こうからためらいもなく堂々と歩いてくるメイドは、男だった。しかも謙也走りすぎるほど知っているその人で、ついでに言えばかわいいはずの恋人、だ。
「謙也先輩何しとん」
「いやごめんそっくり返すわ。光何それ!」
「メイド」
「もう何からつっこんだらええんかわからんねやけど、えっ、何でそんなに似合わへんの……」
「泣きたいのはこっちっすわ」
嘆く謙也を鼻で笑い、女の隣で足を止めた財前は女を見る。一瞬ひるんだ女を舐めるように見て、笑った。
「小春先輩の方がよっぽどそそる体しとるわ。貧相」
「なっ……!」
「なあ光、なんなんそれ、俺にもうちょっと期待させてくれてもええんちゃうの!?光の女装やドキッ!ムラムラしてきた!みたいな、普通そういう展開やろ!?」
「あんたハロウィン前に散々それ言っとったけど、ちゃんと言ったやん、俺女装死ぬほど似合わんて」
「うう……予想外や……泣けてきた……」
こうして改めて見ると財前はしっかり男の体つきをしていて、肩も手足もたくましい。顔つきは元よりかわいらしいわけではないし、何より態度のでかさが雰囲気を台無しにする。後ろで様子をうかがっているだけのクラスメイトも流石に謙也の嘆きを理解するが、謙也が夢を抱いていたのが悪い。
「……で、謙也先輩は何のつもりなん?」
「狼男……」
「ああ、お姉が作っとったやつな」
「そうや……」
「あんたが狼男て、ただの千日前の謙也やん」
「もう……うわぁー、うわぁー、泣くわ……よう見たらそれユウジの衣装やんな?」
「あの人小春先輩の衣装で忙しくて、自分のまで手ェ回らんかったみたいっすね。借りました」
「ユウジが着たときはもうちょっとましやったで?でも光はホンマ似合わへん、びっくりした!」
「あー、もー、やかましい」
ぐいと胸倉を掴まれて、一気に光との距離が近くなる。途端に服などどうでもよくなった謙也は思わず光の唇を見た。
「トリート・オア・トリート?」
「は?」
「俺参加する気ィなかったんで、いたずらはなぁんも用意してないんすわ。せやし、甘いお菓子で我慢してな?」
「ひ、光……」
「ねえご主人様?トリート・オア・トリート?」
「とっ、トリート!!!」
にっこりと笑った財前がすぐそばの教室に謙也を連れ込んだ。ぴしゃりとしめられたドアががたがたと揺れる。
「あっ、光っ」
「あーあ、だめですってご主人様、こんなところで」
「光っ」
「ハイおしまーい」
ただ傍観していたクラスメイトの前に胸元のはだけた謙也が放り出され、廊下にへたりと座り込んだ。後から出てきた財前は立ち尽くす女を一瞥した後、謙也のクラスメイトの方を見る。
「俺帰るんで、見張っとって下さいね?まあ、もうアホなことせんやろけど」
にっこりと笑って見せた後、来た時と同じようにつかつかと財前は去っていく。
「……謙也、もう何回も言うたことやけど、ほんまに財前でええんか?」
「……光がええんや……」
「まあ、謙也が幸せなのはなんか腹立つけど、構うのもめんどいわ」
とりあえずそのにやけたツラ何とかせん限り、一緒に歩いたらんからな。