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言い訳置き場

言い訳を書いていきます。誤字の報告などあればありがたいです。 ※唐突にみゅネタややぎゅにおの外の人のかけ算が混ざるのでご注意下さい。 日常はリンクのブログから。

2025'01.25.Sat
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2009'10.30.Fri
けんや うざい。
知ってる知ってる!

お久しぶり?かどうかわかんないけど連載です。
・謙也の自業自得を前面に押し出す
・光はイケメン
をプッシュした回。
多分これ以降は特に何も起きない回がだらだら続く、予定?正直まだまとまっていない。のでいつになるかわかりません。










着メロが流れた瞬間に体を起こした。携帯を鷲掴みにしてディスプレイを覗きこむ。財前、の名前が確かにそこにあって、泣きそうになったのをこらえて通話ボタンを押した。耳に押しつけて声を待つと、財前の声が挨拶をする。それに感動して無言になった。
『もしもし?起きてます?』
「……起きとるわい」
『だったら何か言ったらどうですか』
「ちょっと声詰まった」
『何すかそれ。暇ですか?散歩行きません?』
「早朝5時に暇ですかってお前、舐めとんな。ええよ、行こ。どこ行ったらええの」
『ほな戎橋で』
「りょーかい」
結局昨日はあれから会えなかった。だから朝の散歩中に何かしてしまったのかと思っていたが、今朝の電話に心からほっとする。部活での財前は寝直しでもして寝起きだったのだろう。きっと機嫌が悪かったのだ。――そう自分に言い聞かせ、伸びたTシャツを脱いだ。
今日は何を着ようか。下着1枚でベッドに座りこんで、時計を見る。財前はどうせいつも通りのスウェットなのだろう。自分だけ毎日着替えているのがばからしくなる。かと言って起きたままの姿で外へ出るのは嫌だった。ええかっこしいと言われても、財前に会うというのによれよれの姿では行けない。ポロシャツを手にして立ち上がる。ボトムはこれ、今日はサンダル。財布と携帯をポケットに押し込み、部屋を出た。すでに起きていた母親が眠そうに、まだ寝ている旦那の弁当を作っている。
「おかん、行ってきます」
「はい、気をつけて」
「……なあおかん、花、どうした?」
「玄関にかざっとるやろー。それぐらい気ィつかんとモテへんで」
「慎也みたいに気ィきかん男ですいませんねえ」
廊下を過ぎて玄関、一輪差しに活けられた花を見て眉をひそめる。これを財前にあげたのはどんな男だろう。ホストと言うのが事実なら、白石を思わせる男前なのだろうか。玄関の姿見に映った自分の顔が憂鬱そうなのを鼻で笑って家を出る。もう財前に振り回され始めてから長いようで、日付を数えるとそうでもない。俺どんだけ財前のこと考えてんねん。溜息をついて、それから気を切り替えて戎橋へ向かう。大学生も夏休みへ入る頃なのか、オール明けの集団が増えたような気がする。ふざけてどつきあう男子のグループを見て、自分がクラスメイトとするのと変わらないのに、どうして財前相手だとああもうまくいかないのかと思ってしまう。寝ても覚めても財前だ。
待ち合わせの戎橋で視線を巡らせていつものグレイは目に入らず、ホストを避けて公衆トイレの前に立った。今日も天気がいい。部活が始まる頃には日差しは強くなっているだろう。しゃがみこんで落ちているごみを眺める。タバコの吸殻が誰かさんの待ち時間の長さを物語る気がする。俺も大人やったら財前待ちながら何本か吸うんかな、あいつ待たすときはめっちゃ待たすからな。
「先輩」
「お、来たか」
声に反応して顔を上げる。視界に飛び込んだ白がまぶしくて一度顔を下げ、目の前に立つデニムを見てゆっくり立ち上がる。おはようございます、といつも通りの無表情の財前が立っていた。いつも通り、ではあるが、それは昼間に限る「いつも」だ。
「……私服や」
「何すか」
「いや、スウェットやないんやな」
「あー、昨日家帰ってないんすわ」
「え?」
「ユウジ先輩んち行っとったんで」
「……自分らほんま仲ええな」
「ユウジ先輩んち遠くなかったらもっとええんすけどね」
「ふーん……ほんならユウジと散歩したらよかったのに」
「あーあかんあかん。ゲームで負けたぐらいですねよって、起こしても起きんかったわ」
「代わりに俺か」
「腹減ったし先に飯食いません?もーそこのマクドでええっすわ」
「ええよ」
携帯を開いてクーポンを探しながら、橋を渡る財前の隣を歩く。今日はピアスも付けていて、髪もセットされていた。つーかこいつ早朝5時に人んちから出てきて、ちゃんと挨拶したんかな。それともそんなん気にならんぐらい親しいんかな。行き場のないざわつきを持て余していると財前に携帯と小銭を押しつけられ、謙也をレジに押しやって何番、とクーポンの番号だけ口にした。そのまま席を取りに行ってしまう。もうメニューを考えるのも億劫で、謙也は同じものをふたつ頼む。つーか俺何でナチュラルにパシられてんのかな。もう今更怒る気はないが、どうしてそうなったのか、が問題だ。あんな生意気な後輩にパシリにされて怒らないほど、謙也は温厚ではない。もう慣れたのか、諦めたのか。財前だから、――
(……ありえへん)
商品を受け取り、トレイを手にして財前を探しに行く。けだるげに座っている財前はすぐに見つかった。眠そうな目でぼんやりと、壁のポスターを眺めている。そんなことよりも謙也の目についたのは、ちらちらと財前を見ている少し離れた席の女だった。ふたり連れは笑って話しているが、なんとなくいい気がしない。
「……おまたせ」
「ケータイ」
「はい。これ釣りな」
「どーも」
受け取った携帯ですかさず何か打ち込んでいく財前は、あの女に気づいているのだろうか。
「……はよ食べて散歩しようか」
「えー、食って動いたら腹痛なる」
「……なんしか、ここ出よ」
「……ああ、あれっすか?どうせ声かけてきぃひんて」
「……」
なんか慣れとる。余裕やん。イケメンは言うことがちゃうなあ。俺もイケメンやけど。言葉は並べてみるけれどどれも口まで出てこなくて、思わず溜息をついた。
「人の顔見て溜息つかんといてくれます?」
「いや……なんつーか……財前って黙っとったらイケメンやもんな……」
「そっくり返すし、俺しゃべってもイケメンやし」
「自分で言うな。俺かてしゃべってもイケメンや!」
「それはない」
「なんでやねん!」
「他の人も絶対それはないて言いますよ、絶対」
笑いながらも財前の目は携帯を見ていて、ずっとキーをいじっている。誰かにメールだろうか。誰かが携帯を触るのがこんなに気になったことはなくて、声をかけるのもはばかられて落ち着かない。
「……あ!」
「何すか、でかい声。うるさい」
「自分いちいちひと言多いわ。メアド、教えて」
「……は?誰の?」
「誰て、財前のや」
「……」
途端に呆れた顔をして見せた財前にどきりとする。俺何か悪いこと言うた?また地雷?戸惑う謙也をよそに財前は一度携帯に視線を戻し、しばらくいじってから謙也に画面を見せてくる。それはアドレス帳の1ページで、忍足謙也の名前の下に電話番号とメールアドレスが並んでいる。それは間違いなく自分のアドレスだ、但し、以前まで使っていた。
「……え?俺いつ教えたっけ」
「……あんた、早朝から知らんやつからの電話に出とったんすか」
「いや、番号は前かかってきたときに登録したから」
「前?」
「夏休み入る前。テスト前ぐらい?散歩しよてかけてきたやん」
「あー……あーあ……何や、しょーもな。あほらし」
「へ?」
「……あんたアドレス変えた?」
「もう、結構前」
「やろなァ送られんかったもんなあ。あー、もーどうせこんなんやろとは思っとったけど、そうですよねー、嫌いな後輩にわざわざアドレス変えましたって連絡せんわなぁ。ああ、俺からメールきたら嫌やから変えたんや?あーなるほどねほなすいません謙也先輩のデータ消しときますわ」
「ちょちょ、ちょい待って!待って下さい!え、ほんまに俺いつ教えた!?誰かに聞いた!?」
「……入部してすぐ」
「え?」
「先輩風ふかしとったあんたが1年に教えまくっとったやん。俺の携帯奪って勝手に入力して、そこに自分の送れってうざいから送ったったのに、なんやあんた登録してへんのかい。ほんま信用ならん先輩や」
「……あ」
「……なぁんて、俺知ってるんすよ?」
にこり、と笑う財前にぞっとする。やばい、思い出した。
「入部してしばらくしても先輩に懐かん俺のアドレス、どっちがはよ手に入れるかってユウジ先輩と競争してたんすよね?」
「……し、してへん、で?」
「まぁユウジ先輩から聞いたんやけどな」
「……」
「別にそれはえーんすけど、俺もかわいない後輩やし。でも、そーですか、聞くだけ聞いて登録もしてへんとか、流石に予想外やわ」
「ご……ごめん……」
「ええっすよ、どーせ使わんやろ」
「え」
「今までも使わんかったんやからこれからも使わんやろ?って言うてんねん」
こらあかん。財前は笑っているが、これは完全に怒っている。ぱたりと携帯を閉じてポケットにねじ込み、財前は何事もなかったかのように食事を始めた。ぐっと体がかたくなって、謙也は動けない。どうしてこうなるのだろう。財前に関して、物事がいい方へ転がったことがない。
「冷めますよ」
「すいません」
「何が」
「アドレス教えて下さい」
「嫌や」
「教えて下さい」
「なんで?」
「知りたい、から」
「使わんやろ。用があるなら電話でもしてきて下さい」
「だって、ユウジとかは、知っとるんやろ?」
「使いますからね」
「嫌や!」
「……意味わからん」
「ッ……ユウジが知っとるのに、俺が知らんのは、嫌や」
「……へぇ?なんで?」
「なんででも」
「……ちゃあんと説明できるようになったら、教えたりますわ」

 


「……ユウジ、財前のアドレス教えて」
「教えんなって言われてんねん」
「……」
コートで打ち合いをしている財前を見る。思わず視線が鋭くなってしまったってしょうがないはずだ。
「……謙也にだけは教えんなって言われてんねん」
「言い直すな!」
「正しく伝えた方がええかと思って」
「……自分、財前とどんなメールすんの」
「えー……新作出とったとか、こんなん売っとったとか、日常会話や」
「なんてユウジはよくて、俺はあかんの?」
「そら、嫌われとんちゃう?」
「……それ、洒落にならんのやけど」
部活へ行くとついに挨拶もされなくなった。軽い会釈でごまかされ、謙也と目も合わさなかった。朝の散歩も教えろ教えないの応酬で、途中で切れた財前に逃げられた。もうこれ以上どうすればいいのだろう。


 

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