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言い訳置き場

言い訳を書いていきます。誤字の報告などあればありがたいです。 ※唐突にみゅネタややぎゅにおの外の人のかけ算が混ざるのでご注意下さい。 日常はリンクのブログから。

2025'01.19.Sun
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2008'03.06.Thu

終わりを眺めるブン太。

このみせんせいありがとうございました。
幸村くんもお疲れ様でした。

一番わからなのはわたしですがとりあえずいきおいだけで。また書くかもしれないし書かないかもしれない。とりあえずコミックス買うところからかなと思っている。全国見てないから書けねえ。





一人で帰るね、と彼が笑った。ぱちぱち、と瞬きをして柳と目を合わせ、彼が頷いたのを確認してから丸井は幸村の腕を取る。泣いたせいで赤い目をこすって、反対側を切原が捕まえた。戸惑った様子の幸村を初めて見たような気がする。ずっと、対等であり、しかしそれ以上の存在であった幸村もただの中学生なのだと、逃げようとする顔を覗き込んで思う。

「泣いてる」
「……ブン太は意地悪だなあ……」

さっき真田から受け取ったタオルを首に巻いていたけれど、両手を捕まえられているから幸村は涙を拭けなかった。覚えてろよ、泣いてるのに震えない声は不思議だ。だけど悲しい。
まだ幸村が負けたということが信じられなかったのに、この涙を見るとそれを実感した。そっと手を離すとその手でタオルを掴み、彼は立ち尽くしたままそれを顔に押し付ける。

「……俺、久しぶりに負けた」
「負けたことあるんだ」
「……あるよ。ブン太は俺を何だと思ってるの?」

幸村くんは。
自分にとってなんだったのだろう、と考える。尊敬する友達だった、と言えばいいのか。信頼できる部長で、命の大切さなんてものを変にリアルに教えてくれた人で。

「赤也、ああほら、お前泣きすぎだよ」
「ぶちょうが泣くからじゃないっすか~!」
「情けない声」
「……部長だって、変な顔してますよ」
「赤也に言われたくないな。ごめんね」
「あやまんな、馬鹿」

幸村が後輩を引き寄せて、一瞬動きを止めた切原はまた肩を震わせて泣き出した。そんな姿を見ながら丸井にもまた涙がこみ上げてきて、それでもこのふたりの邪魔はしたくなくてユニフォームの袖に顔を押し付けた。……もう、このユニフォームは着ないのだ。汗の匂いがする。

どうして、だろう。考えてわかることじゃないのに、コートを追い出された今は頭で考えるしかない。
もうこの場所に立つことはない。終わってしまってから、優勝がほしかったのではないのだと気付いた。この時間が終わってしまうのを惜しんでいたのだ。なのに終わりは一瞬で、色々なことがあったはずなのに頭に残るのは結果だ。

ぐいと腰を引き寄せられて、一瞬驚きで涙が止まる。視界に入るのは伸ばした髪で、毛先まで汗で濡れている。抱きしめられているのだと気付くのは少し遅れた。その熱さに息を呑む。この熱さを、多分一生忘れないだろう。
変な気分だった。仁王は普段あまり自分から近づいてこない。わずかにレギュラーぐらいしか知らないふたりの関係がばれないようにと気を使っている仁王がこんな風に抱きしめてくるとは思いもよらなかった。一緒にダブルスをした柳生でも柳でもなく、幕を閉じた幸村でもなく、ひとり残されてしまう切原でもなく。

何かが変わる瞬間というのを初めて見た気がする。負けた、だけなのだ。ずっとテニスをしていればそういうこともある。強さは絶対じゃない、それはわかっている。立海の勝利が100%だとは、柳は言わなかった。だからそういうことだ。
だけど、こんな結果は予想していなかった。思っていたよりも悲しくて、あっけない。自分を抱きしめて泣いている仁王が一番以外だった。負けたらそれはそれで面白そうじゃの、と冗談を飛ばしていた仁王は、つい昨日見たばかりなのに。そんなに勝ち負けにこだわっているとは思わなかった。

「……なあ、俺、高校でもこんなに一生懸命テニスができるかわかんねえ」
「……そんなこと言わんで」
「終わっちゃった気がする」
「違う」

もう負けたくないと思ってしまった。だからきっと、ダメだと思う。それを口にはしないで、仁王を抱き返すと体が震えた。どうしてこんなときは小さく感じるんだろう。何度も負けを経験してきたのに、どうしてこの敗北だけが丸井の胸を苛むのだろう。

「俺初めて負けた」
「……仁王」
「公式戦で初めて負けた。もうテニスなんかしとぉないけど、まだ足りん」

多分負けたということが良くわからなくなってきていた。仁王の胸から顔を上げると真田は難しい顔をしてコートを眺めていた。柳はその隣にいる。ジャッカルも少し離れた場所でコートを眺めていて、そこに何があるのだろうかと丸井も目で追ったが目に映るのはコートだけだ。それだけなのに、求めている。あの場所に行くことを。
柳生が近づいてきて仁王の頭にタオルを掛けた。眼鏡の反射で目元は見えなかったが、声が震えている。

「……柳生、夢だったらどうする?」
「……起きても、同じ夢を見るのでしょうね」

意味がわからなかった。
わかったのは、負けたことだけ。
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