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言い訳置き場

言い訳を書いていきます。誤字の報告などあればありがたいです。 ※唐突にみゅネタややぎゅにおの外の人のかけ算が混ざるのでご注意下さい。 日常はリンクのブログから。

2025'01.11.Sat
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2009'09.04.Fri

謙光で連載置いていきます。
夏の早朝の話です。季節感を精いっぱい悪あがきで堪能していこうと思います。

めっちゃくそ眠いので、誤字脱字は帰ってきてから直します。

どうでもいいんだけど、善哉って、スプーン……?箸、やんね……?






 










頭の中をぐるぐる回るメロディにハッとして体を起こす。耳元でやかましくなる携帯に、寝坊したか、と焦った。謙也が取るより一瞬早く着信音は途切れる。ディスプレイを見ると履歴に残るのは知らない番号で、ついでに5時前という早朝だった。なんつー迷惑な間違い電話や、舌打ちをして携帯を投げ、再び布団に潜り込む。


*


「ギリッ」
「アウト」
部室に飛び込んできた謙也に白石が一言つきつける。すでに着替え終えた他の部員はあとはコートに出るだけだ。
「謙也が遅刻って珍しいな」
「……寝坊した。なんやめっちゃ早うに間違い電話で起こされてん」
「ま、言い訳は聞かんけどな」
調整していた自分のラケットを握り直し、白石は先に部室を出る。どうせ遅刻するんやったら朝練サボったればよかった、謙也が着替え始めたころ、財前があくびをしながら部室に入ってきた。彼もまだ制服姿だ。それを見つけた一氏が財前につっかかる。
「自分人起こしといて遅刻かい!」
「一氏先輩結局寝たんでしょ、ほなえーやん」
「あほか、毎回お前の朝遊びにつき合ってられんわ」
「朝遊びて。夜遊びより健全でええやないですか」
「……ユウジと財前って、そんなに仲よかったか?」
「あ?ああ……まあな」
口を濁すユウジとは対照的に財前は涼しい顔をしている。ちらと謙也を見て、おはよーございます、とだるそうに、それでも一応後輩らしいところを見せた。謙也の返事を待たずにすぐ視線をそらす。天才と呼ばれるこの1年のことは、入部してから季節が変わってもよくわからないままだ。
「やばい、めっさ眠い」
「俺のセリフや」
「なんかもー曲打ちこんどったらテンションあがってもて、寝たん2時なんすわ」
「テンションあがってる財前て想像つかんわ」
あくびを隠さない後輩を何となく目で追う。1年のくせにピアスをじゃらじゃらつけて、これでテニスがうまいから腹が立つ。白石は来年の部長は財前かもなぁと笑う。確かにその実力はあるかもしれないが、誰がこんな部長についていくかい、と謙也が言えば皆が同意した。謙也にしてみれば距離感のつかめない、やりにくい後輩だ。普段ユウジからはあいつは暗いだの辛気くさいだの、否定的な言葉ばかりを聞いていたので、こんな光景は少し意外だ。
「謙也、手ェ止まってんで」
「あ」
「起きとるかー?」
「それ財前に言えや」
「あかん。あいつは寝とる」
ジャージのファスナーが上げられずにがちゃがちゃしているのをユウジが笑う。かわええやっちゃなあ、なんて言うのに驚いて、今まで一度も財前をかわいい後輩とも思ったことがなかったことに気がついた。
「……何見てんすか、きっしょ」
「……しばくで」
こんなんのどこがかわいいねん。

 

 



「……またや……」
時間は5時、昨日と同じ頃だ。番号まで覚えてはないが、こんな時間の間違い電話は昨日と同じに違いない。手の中で鳴り続ける携帯を睨み、しかしこの相手は番号の押し間違いなのではなく、元々教えられた番号が間違っている可能性がある。それなら今後もかかってくるかもしれない。また何度もかかってきては迷惑だ、と頭を掻きながら通話ボタンを押した。
「誰や?」
『……ヤクザかあんた』
「はぁ?」
『おはよーございます、謙也先輩』
「……え、ほんまに誰?」
『財前です』
「……はぁ?」
『俺めっちゃ散歩行きたいんスわ、今すぐ』
「……はぁ」
『行きません?』
「ひとりで行けや」
そのまま電話を切って布団に戻る。しかし耳に残る憎たらしい声にいらついて、眠気はとうになくなった。何が散歩、だ。意味わからんことで電話してくんな、つーかなんで俺?なんで俺?
「ないわー……」
絶対かわいない。ふと窓に目を向ければ、カーテンの隙間から薄明るい空が見える。まだ人の起き出す前の時間だ。散歩て。こんな早朝にランニングだの散歩だのしとる中学生なんか健康オタクの白石か新聞配達の苦学生ぐらいや。いつの時代やねん。起きてしまった頭は思考をやめない。完全に目が冴えてしまって体を起こす。今度かかってきたら絶対出んとこ、わかるように今の番号をアドレス帳に登録する。財前、と入れて、下の名前はわからない。もう絶対無視や、完無視や。携帯電話を手放した。


*


「自分ほんまないわ、先輩に荷物持ちさせるとかどういう神経しとん」
「負けたんユウジ先輩やん」
「普通そこで遠慮するんや!ピアス引きちぎったろか」
「警察行ったるからしてみぃや」
「うっわ、憎たらしい……」
朝からごちゃごちゃ言いながら部室に入ってきたのはユウジと財前で、ユウジは財前のバッグを持っている。それを押し返してくるユウジににやにや笑いかけ、今度は何賭けます?などと言っている財前の顔は先輩を先輩だと思っていない。
「謙也今日は早いんや」
「……今日も起こされたんや」
「ふーん」
「ユウジなんで財前と来てん」
「ああ、朝ちょっと会うとってん。そのときに負けた方が荷物持ち、って賭けてダッシュしたんやけど負けてな……」
「……財前、朝俺んとこにも電話してきよったんやけど」
「あ、そうなん?へー」
「へーちゃうわ!なんなんあいつ、朝っぱらから先輩呼び出しよって!俺の次はユウジか!」
「誰でもええんちゃう?知らんけど」
「知らんけどて、お前被害者やん!」
「別に、おもろかったし。朝イチの財前ちょっと見物やで」
「それこそ知らんわ!」
ユウジとの会話は聞こえているはずなのに、財前は口をはさむどころかこっちも見ずに着替えている。よお考えたらこいつ俺に一言ぐらい謝ってくれてもええんちゃうの?めっさ早よ起こされたんやけど?
「そういや謙也、彼女と別れたんやってな。夏休み前やのに~」
「……ユウジってほんまそういう情報早いよな」
「なんで別れたん?いじめすぎたんちゃうの」
「そんなにいじめとらんわ。ま、ゆうても俺Sやし?なんやったらドSやし?」
「キモいわ。謙也SっつーかMっぽいし」
「どこがやねん!ドSやっちゅーねん!」
主張すんなや、気持ち悪う、腹の立つリアクションのユウジを睨みつけると、ふとその向こうの財前と眼が合った。なんやねん、思わず声が出てつっかかってしまう。
「別に、謙也先輩ってSなんやー、って思っただけっスわ。俺好きな人にひどいことするとか傷つけることようしませんわ~」
「間違っても財前には関係ない話やしほっとけや!」
「あ、そースか」
謙也がドSて、ギャグか。しつこいユウジを蹴り飛ばす。さっさと着替え終えてしまった財前はコートへ出て行って、まだもたもたしている自分に焦って慌てて着替えた。出て行こうとするのをユウジに引き止められる。
「で?何で別れたん?」
「……『謙也くんについていかれてん』って言われましたけど、何か?」
「それでこそ謙也や!ありがとう!俺お前の元カノにお礼言うてくるわ」
「なんでやねん!」
「どうせ自称ドS言うていじめたんやろ」
「いじめてへんわ!小春にいじめられてよろこんどるお前よりましや」
「俺は小春限定や!つーか自分ドSとか自称すんな、キモい。財前が言うんやたらわかるけど」
「あー、あいつドSって顔しとるよな」
「本人は否定しよるけどな」
 

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