言い訳置き場
言い訳を書いていきます。誤字の報告などあればありがたいです。 ※唐突にみゅネタややぎゅにおの外の人のかけ算が混ざるのでご注意下さい。 日常はリンクのブログから。
一応前回からの続きなんですがなんかもーあれどうでもいいや。
あ、拍手のログはブログに収録していきます。もうページ作るのめんどくさ(ry
結局答なんて出せませんよねーと言うオチで申し訳ない。
クッパやマリオやゆうてるのは別に某西部劇ソングは関係ないんです。多分。でも別に考えてたわけじゃない……悪役=クッパになってしまったのはあの歌のせいかもしれないけど。
こないだのまべらぢで彼氏とお昼寝というワードを聞きつけたまらなくなったので、書いてみて満足です。
7月①
丸井の一番が自分にならないことが悔しい。そんなことは表に出さないが、ずっと思っている。
焦がれて焦がれて手に入れた、一番大切な宝物。きれいな箱に入れて大事にしまっておきたいと思うのに、蝶のように飛び回る姿を見たいとも思う。
肌にまとわりつく湿気に顔をしかめて家を出た。晴れた空が憎らしい。これから行く先の病院は冷房が効いているだろうが、あまり気は進まなかった。丸井の手前露骨に嫌な顔をしたりはしないが、あまりおもしろくない。
しかし丸井を幸村とふたりきりにするのは、彼らふたりにそんなつもりがないのはわかっていても避けたかった。
どうもうまく行かない。彼らには仁王は心が狭い男に見えるのだろうか。丸井の家に向かいながら、憂鬱な気分になってくる。これから出会うのは、好きな人だというのに。
「おはようブンちゃん」
「おはよ」
「寝れた?」
「うん」
笑う彼に笑みで返して、行こうか、と呼ぶと手を取られた。少し驚いて丸井を見るが、顔をそらされてしまう。彼なりに気にしているのだろうと思うと愛しくて、同時に気を使わせてしまった原因の自分が疎ましくなる。心の狭い男でごめんね、
「どこ行く?」
「……病院ちゃうの?」
「……あのなー、俺はお前に会いたいって言ったんだぜ。そんなに俺に病院行ってほしいのかよ」
「あ、いや、ごめん」
「……びっくりした?」
顔をのぞき込んできて丸井は笑う。あまりかわいらしい態度をとらないでほしい、周りも気にせず抱きしめたくなる。
「お前の言いたいことは、わかるよ。今日はデートな。明日行くから、つき合って」
「ええよ」
嬉しくて頬を緩める。最近は大会のことばかりで、終わったと思えば幸村に邪魔をされていたので久しぶりだ。何も考えていなかったデートは完全に任されてしまって、困りながらもとにかく歩く。
「ほんまに行きたいとこないん?」
「ない」
「困ったのう」
「困る?」
「……いや、かわいい」
「ばーか」
いたずらっ子のように笑う丸井はつないだ手を振って、とりあえずなんか食いに行こうぜ、と言った。それを久しぶりに聞いたのは大会があったからではない。ずっと前の、幸村が倒れたときから、丸井はあまり口にしなかった。一度聞いたら聞き取りにくいほどの小さな声で、あまり食べれない、と、何か悪いことのようにつぶやいた。
言わなかったのは仁王とふたりのときだけで、クラスや部活では何でもないように与えられるものは食べていたし、かける言葉と言えば寄り道の誘いだった。
それは不謹慎でも少し嬉しかった。丸井の信頼を受けている事実。しかし同時に幸村の存在感を知った。丸井の中での幸村は、思っていたよりずっと大きかった。
「何がいいかなー。オムライスー、肉ー、パスター、牛丼……あっうなぎもいいな!夏だし!」
「うなぎィ?またえらいチョイスを……」
「安いとこあんの、行こうぜ」
丸井が目的地を決め、はいはいと着いていく。丸井が以前のような明るさを取り戻すならどこへでも着いていこう。結局のところ丸井を沈ませていたのは幸村で、原因から改善がなければ仁王には何もできない。
(もどかしいな……)
感情に、憎しみを混ぜないように気をつけている。それが丸井の負担になると知っているから。
でももしかしたら、もう。
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7月②
「……先行っとって」
辛気くさい顔を見つけ、丸井を見送って待合室に残った。この世の終わりのような顔は、病院でする顔ではないな、と思いながら彼女に近づいていく。幸村の妹は肩を張ってソファーに座っていた。生きにくいだろうな、と思う。
「こんちは」
「……こんにちは。また来たんですか」
「どうしたん?」
「ほっといて」
「……幸村はひどい男じゃ」
「お兄ちゃんを悪く言わないで」
「悪役じゃけん。俺のピーチ姫をさらってしまうから」
「……お兄ちゃんはクッパなの」
「違う。マリオの方。クッパは俺じゃろうな、バカはバカなりに踊るわ」
少し興味は持った様子でこっちを見た。丸井もこういけばいいのにと思ってしまう。手強いのはわかっていて、それを選んでそばにいるのは自分なのだが。
「悪役なの」
「俺は正義の味方じゃろ?型にはまりきった世界なんぞなんも面白くない」
「……私は普通がいいの。お兄ちゃんも……」
「ふん、神の子やん、主役級、死ぬわけない」
「……嫌なこと言わないで」
「多少弱ればええんじゃ」
「……仁王さん、お兄ちゃんのこと嫌いなの」
「まさか」
笑ったつもりが彼女の反応は曖昧で、失敗したようだとわかる。なかなか難しいものだ。丸井相手の嘘なら、慣れているのに。なんて皮肉な。
「嫌いじゃない。でも俺にとってはよくない。いっそ奪われればいいのに、ピーチ姫に興味のないマリオなんざ役に立たん。隣に女がおっても本職の方が大事なんじゃろ」
「……」
「……で、お前さんがルイージじゃろ。役に立たんのう」
我ながらなかなか的確に役を振れたものだ。あとはどうやって幸村と戦うかで、どんな罠も餌も通用しない気がした。重い鎧は身を守ることもままならないくせにヒロインさえ寄せつけない。
「……お兄ちゃんが、テニスをするのが嫌なの。テニスばっかりになって、何も見てくれない」
「奇遇じゃの、俺も同じじゃ」
「でも、……テニスをするお兄ちゃんは好き」
「……これまた奇遇な」
行き場のない思いはどうなるのだろう。矛盾を抱えた思考は役に立たない。一番無駄なものだ。
幸村が回復して戻ってくるのはいつだろう。何気なく見た廊下を丸井が幸村に寄り添って歩いてきて、仁王を見つけて笑う。自然にこぼれた笑みにこっちも表情を緩め、立ち上がって近づいた。
「リハビリするんだって」
「お前さん大丈夫なんか。傷開いても知らんぞ」
「とりあえず腕だけ、腕。軽くだよ。もう病室にいると暇で死にそう。早く学校行きたいな」
「たくさんのクリボーが待っとるしな」
「は?」
「幸村、俺はお前がおらん方が都合がいいと思っとるよ」
さらりとこぼれた言葉に丸井が一番驚いている。何言ってんだよ、と慌てて仁王の腕を取ったが、幸村はきょとんとして仁王を見た後、笑った。まったく、腹立たしいことだ。
「お前なんかいつでも潰してやるから、せいぜい今のうちに鍛えてな」
かなわないのだろうな、と思う。嫌な夏になりそうだ。
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7月③
うつらうつらする意識を胸元のぬくもりがつなぎ止めている。規則正しい寝息で髪が揺れて、前髪が顔を半分隠した。希望を通した腕枕は少し辛くて、起こさないようにそっと腕を引き抜く。
仁王はかっこいいから好き、と説明された。幸村くんはすごいから好き。
「なあ、でも、ずっと一緒にいたい人って違うだろ?」
丸井の言うことは仁王の感覚とは合わない。いつもそのせいで振り回されるのは、自分が合わせようとするせいで、何でもそうすればいいだけではないとわかってはいる。それでもできれば、丸井が悩まない方を選びたい。
横に並んで寝顔を見る。幸せそうで憎らしくさえ見える。頬に唇を寄せて、ためらって離れた。
好きなだけでいれたら楽なのに。溜息をついて転がり、天井を仰いだ。開け放したベランダから気持ちいい風が入ってきてカーテンを揺らし、丸井を撫でて仁王の前髪を泳がせる。
マンションの5階にある丸井のうちはいつきてもどこか落ち着かない。昼寝をしようと誘われてもとても寝れる
ほどリラックスはできなかった。他に誰もいなくても、マンションの部屋は家族の気配が強い。
同じ3人兄弟でも戸建ての仁王の家ではひとりずつに部屋がある。弟たちが大きくなればまた変わるのだろうが、子ども部屋同然の丸井の部屋には現に絵本が転がっている。
あまり妙なことを言わなければよかった。内心穏やかでないことを軽く言い過ぎてしまったように思う。気を使わせてしまってやりづらい。
もうすぐ幸村は退院する。しかし以前同様の生活には戻らないだろう。幸村がかつての力を取り戻し、前以上に強くなっていたとしても、病に倒れた事実は変わらない。存在感が増しただけだ。
どうすればいいのかわからないことなんて今まであまりなかった。テニスだって試合中はあまり考えたりしない。ほとんど本能のままに。
恋愛にしたってここまでのめり込んだことはない。自分から告白したのなんて初めてだ。
つまらない嫉妬で手の内をさらした。悔しさが先に立って幸村の心配まで気が回らない。こんなことがあって、自分の思いを改めて知った。正直、自分がここまで思われると気持ち悪いほどだ。
……いや、それでも、丸井に思われたい。自分だけでいいと思うほどに。
隣で眠る丸井を見る。呼吸に合わせて腹が上下し、薄く開いた唇、額には汗が浮いていて、ほとんど無意識にまぶたにキス落とした。
「ん……」
「……起こした?」
「……寝れない?」
伸びてくる手に従って抱きしめられる。耳元で深く息を吐かれ、体を巡った衝動に耐えた。
「俺、仁王にやな思いいっぱいさせてんだろうな」
「ブン太」
「わがままで欲張りだからさ、仁王だけじゃ足りないときもあるんだよ。それでもいい?」
「……俺は我慢ばっかじゃな」
「嫌?」
「……それでも」
「そっか」
今は、腕の中のぬくもりを確かめて。
もうちょっと寝る、丸井の言葉にうなづいて、そっと抱きしめて目を閉じた。