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言い訳置き場

言い訳を書いていきます。誤字の報告などあればありがたいです。 ※唐突にみゅネタややぎゅにおの外の人のかけ算が混ざるのでご注意下さい。 日常はリンクのブログから。

2024'05.18.Sat
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2013'09.21.Sat
「あれ、メアリー、くっくどこやったの?」

「あー」

「君はお靴嫌いだねえ」

散歩から帰ってきた娘を抱き上げて、その小さな足の裏を払う。この間掴まり立ちをしたと思えばあっという間に歩き始めた。運動神経がいいのは父親譲りだろうかと微笑ましく思ったのも束の間、どうも窮屈なのか、よく自分で靴を脱いでしまう。メアリーの後ろからついてきたジャンが、娘の靴を手にしていた。ジャンの手におさまってしまうほどのそれは、まるでままごとのおもちゃのようだ。きっとすぐに大きくなってはけなくなってしまうのだろうが、それも愛おしい。

「器用だなぁお前、こんなちっちゃい手で」

「メアリー、くっく嫌?かわいいのにー」

「ぶー」

「嫌のー。でもお靴ははいててほしいなぁ。掃除はしてるけど」

額を合わせるとはしゃいで笑う。汗をかいた幼い子と笑っていると、ジャンが娘を取り上げた。

「昼寝させてくる。遊び回ったからよく寝るだろ」

「ありがとう」

娘の手にキスを落として見送って、アルミンは家事に戻った。洗濯物を取り込んだから畳まなければ。小さな服を畳むたびに幸せをかみしめる。生まれたばかりに着ていた産着はもっと小さかった。すぐに着られなくなってしまったが、そんな当たり前のことも新鮮で、毎日が楽しくて仕方ない。

畳み終えた洗濯物を片づけていき、最後に寝室に向かう。そっとドアを開けると、ベッドで眠る愛しい姿があった。横になったジャンの腕を枕に、幼い娘はぐっすり眠っている。見ればジャンも一緒に寝てしまったようで、静かに寝息をたてていた。ジャンの腹にもタオルケットをかけてやり、屈んで見下ろすとどうにも頬が緩んでしまう。

「僕の特等席だったんだけどなぁ。何年後かでいいから、いつか返してね」

娘の頬にキスを落とした。そのアルミンの頭を大きな手が撫で、ゆっくり顔を上げると寝ぼけ眼のジャンがこちらを見ていた。

「反対側なら空いてっけど」

「……だめ。ご飯作らなきゃ」

身を乗り出してジャンの額にキスを落とす。小さく唸るジャンを笑い、頬を撫でて体を起こした。名残惜しいが、メアリーが寝ている間にしたいこともある。ジャンの額を撫でると目を閉じたので、アルミンはそのまま寝室を出た。

ジャンはときどき、口にはしないが嫉妬を見せる。アルミンが娘にかまいきりなのも、娘が母親の方が好きなのも、どちらもわかるがやや不満らしい。子どもがほしいと言っていたのはジャンなのに、と思うと笑いがこみ上げてくるが、もう少しふたりきりの生活を楽しみたかったな、と思うことはある。どれも全部、贅沢な悩みだ。

ジャンにはああ言ったが、今日はジャンが家にいてくれたおかげで思ったより早く片づいた。少し余裕ができ、アルミンはソファーに座って読みかけの本を開く。夕食の支度を始める時間までには読み終えるだろう。静かな午後は穏やかで、開け放した窓でカーテンがふわりと広がる。アルミンはゆっくりページをめくった。



*



頬を優しく撫でられて、ふっと意識が浮上する。しかし体はまだ起きてくれないのか、目も開けられずにいると体にブランケットがかけられたのがわかった。

「あう」

「しー。メアリー、あっちで遊ぼう」

「あ」

「ママは寝んねしてるから静かにな」

「あー」

小さな手がアルミンの頬を叩き、ジャンが慌てた気配に思わず吹き出してしまった。目を開けるとメアリーがいて、その後ろでジャンが申し訳なさそうにしている。

「メアリー起きたの」

「悪い、起こしたな」

「ううん、元々寝るつもりなかったから」

体を起こしてメアリーを撫でる。膝に上がってくる娘に手を貸して抱き上げた。

「今日はかぼちゃだよーメアリー。この間はよく食べてくれたけど今日はどうかな」

ジャンが隣に座り、じっとこちらを見る。何かと聞けば黙って首を振った。

メアリーの言葉にならない声をそのまま繰り返す。意味はない遊びだが、娘は楽しげに繰り返した。

「大きくなったら、いっぱい遊びに行こうね」

「うー」

それがまるで返事をしたようで、ジャンと視線を合わせて笑いあった。
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2013'09.20.Fri
アルミンが男か女かはお好きにどうぞ。結婚して捏造の娘(メアリー)がいます。

















よく風の通る家にしたのは正解だった。子どもはよく汗をかく。

タオルケットにくるまって、夫婦のベッドの真ん中ですうすうと寝息を立てている娘を見下ろしてジャンは頬を緩める。この間まで眠るか泣くかぐらいしかしていなかったのに、そろそろ人間らしくなってきた、とはアルミンの言葉だが、その通りだとも思う。ぺたぺたと手をついて這っていたかと思えばもう立ち上がるようになり、すぐに尻餅は着くが元気よく四肢を動かしている。

額の汗を拭ってやり、柔らかいその頬を指先でつつく。まだ年を取ったとは思いたくないが、赤ん坊の肌と言うものはどうしてこうもみずみずしいのだろうか。

「いい子だな、メアリー」

いつか嫁に行くのか、とぼやくと気が早いと笑われるが、あんなに大騒ぎした出産からもうすぐ1年、きっと10年20年なんてすぐだろう。

無心で頬をつついていると、幼い子の眉間に皺が寄る。しまった、と思った時にはすでに遅く、娘は子猫のような声を上げて泣き出した。また昼寝の邪魔をしたと怒られる。慌てて娘を抱き上げてぽんぽんと背を叩くが、機嫌を直してくれる様子はない。ふにゃふにゃと情けない泣き声はかわいらしくもあるのだが、どうも父親と言うのは母親ほどの力はなく、ジャンが抱いてもなかなか泣き止まないのはいつものことだった。立ち上がって部屋の中をうろつき、部屋を出てアルミンを探す。買い忘れたものがあると財布ひとつで出て行ったのですぐ戻るだろうが、腕の中の熱い子どもの声は激しくなるばかりだ。

「あークソ、すまん、悪かった!俺が悪かったから泣きやんでくれ!」

眠いのだろうがぐずるばかりで、完全にジャンの手には負えなくなる。ジャンの方が泣きたくなってきた頃ようやくドアの音が聞こえ、ジャンはすぐさま玄関に向かった。すでに泣き声を聞きつけていたアルミンが苦笑してジャンを見る。

「起こしたでしょ」

「すまん、悪かった。助けてくれ」

「ふふ。おいで、メアリー」

荷物を置いたアルミンが手を伸ばすと、気づいた娘もそちらに身を乗り出す。少し傷つきながらジャンはメアリーをアルミンに預け、代わりに荷物を拾い上げた。

「パパはすぐお昼寝の邪魔するから困ったねえ」

「うう、起こすつもりはねえんだよ……」

「ハンネスさんにぶどうをいただいたんだ、少し洗ってくれる?」

汗をかきながらも泣きじゃくるメアリーに額を寄せて、アルミンはジャンの手の荷物を見た。袋の中を覗くと買ってきた調味料と一緒に、立派なぶどうが入っている。キッチンで大粒のそれをいくつか房から外し、洗ってリビングに戻るとアルミンはソファーに腰掛け、向かい合うように膝にメアリーを乗せている。まだしゃくりあげてはいるが泣き止んでいて、悔しいことこの上ない。彼女もいつか父親を疎ましく思う日が来るのだろうかと思うと泣きたくなる。

「ありがと。ほらメアリー、ぶどうだよー。さっき味見させてもらったけどすごく甘かった」

娘を膝に抱いたままぶどうの皮をむき、大粒のそれに少し迷ってアルミンは半分を自分で食べて、残りを娘の口元に持って行く。口を開けてそれを受けたメアリーはもごもごと口を動かした。まだはっきりとした好みはないようだが、すっぱいものが少し苦手な以外は食欲も旺盛だ。

「おいしい?ぶどうだよー。ぶーどーうー」

「あー」

まだ言葉は離せないが、何かを訴えるときに声は上げるようになった。一番初めに発する意味のある言葉は何になるだろうか、とジャンはパパ、と教え込もうとしているが、この様子ではどう考えてもジャンの完敗だろう。

「ジャンも食べなよ。美味しいよ」

「ああ」

「見てるなぁ。もっといる?ぶどう好き?」

もうひとつぶどうを取り、さっきと同じようにメアリーにぶどうを食べさせる。小さな口はぶどうのかけらでもいっぱいで、小さな歯が見えたときの感動を思い出した。

「ふふ、元気になっちゃった。いつもより早く寝ちゃうかなぁ」

「すまん……」

「ごめん、ジャンを責めてるわけじゃないんだ。……でもその代り、明日の朝多分早く起きるから覚悟してね」

「はい」

幼い子は意外と規則正しい。大体決まった感覚で昼寝をして、ずれると少しずつ全部がずれていく。そのたびアルミンは笑いながら世話をしているが、手を焼いているだろう。時間の許す限り手伝いはするが、やはりジャンの助けは些細なことだ。人間をひとり育てながら家の仕事も片づけるのだから、と少し申し訳なくなる。アルミンの肩に頭を預けると、子どもが増えた、とアルミンは笑った。

「お前、よかったのか?」

「何がー?ぶどうよく食べるなぁ。ご飯入らなくなっちゃうかな、やめとこうか」

「勉強。続けたかったんじゃねえの?もう少し手がかからなくなれば、預けて学校戻ってもいいんだぜ」

「別に、家でもできるから。それに、こんなにかわいい時期を見られないなんて嫌だもの。ねえメアリー?」

かわいい子に額を寄せてアルミンは笑う。それはジャンと出会った頃と変わらなくて、いつまでもジャンを魅了してやまない。子どもの一挙一動にはしゃぐ姿に実は嫉妬を覚えているなどと口にすると笑われるだろうが、早く手がかからないようになってくれないかなと思ってしまう気持ちも少しあった。

おもちゃのような手に口元を触られて、アルミンがその手をかぷりと食べるふりをする。子どもは楽しげに笑って、ぺたぺたとアルミンの頬を叩いた。アルミンがその手を取って少し動かせば、それは容赦なくジャンの鼻先を叩く。わざとしかめっ面をしてやるとメアリーはより一層はしゃいでそれを繰り返した。

「この年で男を弄ぶとは、なんという娘だ」

「何言ってんの」

子どもをあしらうように笑われて、頭を起こしてアルミンを見る。わざとねめつけるとアルミンは笑い、黙ってジャンにキスを落とした。予想外の行動に硬直していると、メアリーもパパにちゅう、とアルミンは娘をジャンに向ける。理解はしていないだろうが娘はまっすぐジャンを見つめてきて、小さな果実のような唇にキスした。アルミンが笑うので、アルミンにもキスをする。

「大きくなったら、ファーストキスがパパだって知ってショックを受けて泣くかもしれない」

「お前だろ」

「そうだっけ?」

「お前は?」

「ん?」

「ファーストキス」

「……残念ながら、ジャンでした」

アルミンは照れ隠しのように娘を抱き直し、その柔らかい体に顔を隠してしまう。恥ずかしがられるとそれはジャンにもじわりと伝染し、言葉を失くして頭をかいた。ファーストキスなど、一体何年前の話だろう。

「オレ、幸せすぎて死ぬかも」

「……幸せで死ぬなら、僕はもう何度も死んでるよ」
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