言い訳置き場
言い訳を書いていきます。誤字の報告などあればありがたいです。 ※唐突にみゅネタややぎゅにおの外の人のかけ算が混ざるのでご注意下さい。 日常はリンクのブログから。
2008'09.30.Tue
生まれてこれまで五感に頼って生きてきた。全身で気配を感じながら。この年になって手に入れたのは経験による第六感。それでも、6つ目の感覚はただの勘だった。あれだけ頼りすぎてはいけないと、自分に言い聞かせていたはずなのに。
「……戻んねえのか」
「いえ、一時的なものだと」
「そうか」
「すいません」
深い溜息に知らずと緊張する。大体の表情の予測はつく。失った視覚の代わりに、聴覚と嗅覚が彼が煙を吐き出したと教えた。煙草はまだ残っているだろうか。いつも買いに行かされるのは自分の役割だ。
「命拾っただけ誉めてやる。あとは引っ込んでろ」
「はい」
「なげぇ休暇をやる。但し戻ったときにゃ休めると思うな」
「はいっ!」
土方が立ち上がり、畳を踏み、障子、閉まった後に廊下の軋みが遠ざかる。切り捨てられなかっただけで上等、無様に生き長らえたとは思わない。死ねば終わりだ。
ほの暗い。今が夜中であることは関係ないのだろう。昔山の中で濃い霧に遭遇したことがあるのと似ている。もっと真面目に修行をしていればよかった。後悔はいつも後でするのだ。
手探りで屯所内ぐらいは歩けるだろうが、出歩いたところで無様な姿を見せびらかすだけだ。
誰かが近づいてくる軋み。土方ではない。さっき出ていったばかりだ、用事を一度で済ませぬことはないし、足音はもう少し重い。近藤ならばなお豪快だ。これはもう少し若い、
「沖田隊長」
「……邪魔するぜィ」
「どうぞ。ちょっと座布団がわからないので、すみませんがご自分で」
「おう。……ほんとに見えねえんだな」
「情けないことです」
「何、たまにゃ休め。他の監察が張り切ってくれる」
「はは……」
「忍者の修行積んでる監察はテメェぐらいなもんだからな。便利でしょうがねえ」
よっこいせ、と目の前に座った沖田に顔を向ける。今一瞬匂ったのは。
「医務室に何の用が?」
「……ここはテメェの部屋だぜィ」
「わかってます。あなたが、医務室に行ったでしょう。匂いがする」
「ったく……見えねえくせに厄介なやつだな」
「……お怪我を?」
「見るな」
「……見えませんよ」
「目がないから見えてんだろうが。隠してんだぜィ、これでも」
「……わかりました」
畳に手をつき、い草をなぞるように沖田に近づく。強くなる消毒液の匂いに血が混じる。ひどいけがだろうか。
衣装に手をかけると隊服のままだ。はっきりとはわからないが、いつもならば彼は寝ている頃のはずだ。普段屯所では着ていないジャケットを脱がし、ベストに触れる。深くはいた息を耳元で感じた。
「あんたらしくもない、けがなんて」
「黙ってろよ。せっかく眠いの我慢して、夜を待って医務室行ったんでィ」
「ばかだな」
シャツの前をくつろげて、直接肌に触れると少し冷たい。そのままなで下ろすと包帯が触れた。脇腹。
「……弱るもんだな、人ってのはよ」
「……あんたの姉さんは、葬式に出なかったからって恨むような女ですか」
「違う」
それでも。
人は死人を忘れられないから弱くもあり強くもある。当てずっぽうで頬を寄せるとどこかに触れ、沖田に顎を捕まれキスをやり直した。包帯を撫でると体の緊張が伝わってくる。肩を押したが沖田は逆らわなかったので畳の上でけが人同士が重なりあう。
「……電気、ついてんだけど」
「見えませんよ」
「山崎、」
「あんたが傷つくのが俺のせいじゃなくてよかった」
「……半分はテメェのせいだ」
「沖田隊長」
「二度とみっともないとこ見せんじゃねーぞ。叩っ斬ってやる」
視力が戻る頃には沖田はもう泣かないだろう。指先に触れた涙を舐めて、幼い子がすがるように抱きしめた。
「……戻んねえのか」
「いえ、一時的なものだと」
「そうか」
「すいません」
深い溜息に知らずと緊張する。大体の表情の予測はつく。失った視覚の代わりに、聴覚と嗅覚が彼が煙を吐き出したと教えた。煙草はまだ残っているだろうか。いつも買いに行かされるのは自分の役割だ。
「命拾っただけ誉めてやる。あとは引っ込んでろ」
「はい」
「なげぇ休暇をやる。但し戻ったときにゃ休めると思うな」
「はいっ!」
土方が立ち上がり、畳を踏み、障子、閉まった後に廊下の軋みが遠ざかる。切り捨てられなかっただけで上等、無様に生き長らえたとは思わない。死ねば終わりだ。
ほの暗い。今が夜中であることは関係ないのだろう。昔山の中で濃い霧に遭遇したことがあるのと似ている。もっと真面目に修行をしていればよかった。後悔はいつも後でするのだ。
手探りで屯所内ぐらいは歩けるだろうが、出歩いたところで無様な姿を見せびらかすだけだ。
誰かが近づいてくる軋み。土方ではない。さっき出ていったばかりだ、用事を一度で済ませぬことはないし、足音はもう少し重い。近藤ならばなお豪快だ。これはもう少し若い、
「沖田隊長」
「……邪魔するぜィ」
「どうぞ。ちょっと座布団がわからないので、すみませんがご自分で」
「おう。……ほんとに見えねえんだな」
「情けないことです」
「何、たまにゃ休め。他の監察が張り切ってくれる」
「はは……」
「忍者の修行積んでる監察はテメェぐらいなもんだからな。便利でしょうがねえ」
よっこいせ、と目の前に座った沖田に顔を向ける。今一瞬匂ったのは。
「医務室に何の用が?」
「……ここはテメェの部屋だぜィ」
「わかってます。あなたが、医務室に行ったでしょう。匂いがする」
「ったく……見えねえくせに厄介なやつだな」
「……お怪我を?」
「見るな」
「……見えませんよ」
「目がないから見えてんだろうが。隠してんだぜィ、これでも」
「……わかりました」
畳に手をつき、い草をなぞるように沖田に近づく。強くなる消毒液の匂いに血が混じる。ひどいけがだろうか。
衣装に手をかけると隊服のままだ。はっきりとはわからないが、いつもならば彼は寝ている頃のはずだ。普段屯所では着ていないジャケットを脱がし、ベストに触れる。深くはいた息を耳元で感じた。
「あんたらしくもない、けがなんて」
「黙ってろよ。せっかく眠いの我慢して、夜を待って医務室行ったんでィ」
「ばかだな」
シャツの前をくつろげて、直接肌に触れると少し冷たい。そのままなで下ろすと包帯が触れた。脇腹。
「……弱るもんだな、人ってのはよ」
「……あんたの姉さんは、葬式に出なかったからって恨むような女ですか」
「違う」
それでも。
人は死人を忘れられないから弱くもあり強くもある。当てずっぽうで頬を寄せるとどこかに触れ、沖田に顎を捕まれキスをやり直した。包帯を撫でると体の緊張が伝わってくる。肩を押したが沖田は逆らわなかったので畳の上でけが人同士が重なりあう。
「……電気、ついてんだけど」
「見えませんよ」
「山崎、」
「あんたが傷つくのが俺のせいじゃなくてよかった」
「……半分はテメェのせいだ」
「沖田隊長」
「二度とみっともないとこ見せんじゃねーぞ。叩っ斬ってやる」
視力が戻る頃には沖田はもう泣かないだろう。指先に触れた涙を舐めて、幼い子がすがるように抱きしめた。
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