言い訳置き場
言い訳を書いていきます。誤字の報告などあればありがたいです。 ※唐突にみゅネタややぎゅにおの外の人のかけ算が混ざるのでご注意下さい。 日常はリンクのブログから。
いっぺん友達に送ったやつ。
途中で何がしたいのかわかんなくなっちゃったんだー。
友達と光がチャリ通許可書もらうの忘れて上から目線で注意されて腹立って徒歩で通学したるわい!と切れてたら謙也が乗せたろか、とあっさり2ケツで通学することになってると燃える、と話してたのが前提です。
あとは光が金ちゃん押さえつけられる人物である、というのも。
大会直後の越前との試合の後の話です。途中までは。
他にもちょこちょこ謙光書いてて夫婦パラレルとかいくつか謙光あるんですが、今はやりのウイルスちゃんが怖いのでもうしばらくはブログに乗っけていこうかと思います。あ、一応ウイルスチェックはしました。でもちょっと前だからまたチェックしとこうかしら……はぁ、怖い世の中ですねえ。
「い~や~や~!ワイはまだコシマエとやるんや~!」
「お~し~ま~い~や!一球だけってゆうたやろ!」
「ほれ金ちゃん、青学も帰ってしもうたばい。帰って俺とやらんね」
「追いかけたらまだ間に合う!」
「あかんよ金太郎さん。お約束したやろ」
全国大会決勝、敗北の余韻に浸る間もなく部内随一の頑固者が暴れている。先輩たちがあらゆる手でなだめても、今回ばかりは本当にしつこい。それほど彼にとっては意義のある試合だったのだろう。たったの一球だ。それでもレベルの高さは誰もが感じていただろう。しかしそれとこれとは別の問題だ。金太郎の世話で白石たちは着替えすらできていない。
「ほんまに金ちゃんはテニス好きやねー」
「……はぁ……」
へらへらしている謙也を見て溜息をつき、財前は立ち上がる。今まで傍観に徹していた財前が出ていくとでも思ったのか、謙也が焦った様子を見せたので視線で制しておく。そのまま先輩たちをかき分けて、金太郎の胸元を掴んで引きつけた。至近距離で目をのぞき込むと息を飲む。
「金太郎」
「ひっ……光……」
「えー加減にせえ。今日が何の日やったかわからんのか。全国の決勝や、俺ら負けたんやで」
「ワイは負けてへん!」
「でも俺らは負けたんや。……はい整列」
金太郎を押すように突き放し、財前は顔を上げて後輩を振り返る。1年2年を見回してから3年生を見て、あんたらも、と投げた。
「先輩らもそっちに整列して下さい」
「え?」
「早よう」
表情も態度もいつもと変わらないだけに、その行動にほとんどが戸惑っている。しかし金太郎が何かに気づいたように大人しくなって財前の隣でうつむいていて、察したらしい石田や白石が苦笑しながら3年を立たせて並ばせた。謙也と目が合ったが何も返さず、真正面の白石を見る。
「3年間お疲れさんでした。今年もここで終わってもうたけど、まぁ来年俺らが優勝しますから。……金太郎背中伸ばしや」
「……うん」
一度後ろを振り返り、何人か泣きそうになっている顔を見つけて財前はまた姿勢を正す。ああ、めんどいなぁ。
「……オサムちゃんも『気をつけ』や!」
「あ、はい、すんません」
へらへら笑う顧問に溜息をつき、正面に並ぶ3年を見渡した。うるさい先輩たちを本気でうっとうしいと思ったことは何度もあるが、何も学ばなかったわけではない。自分は確かにこの人たちとテニスをしていたのだ。
「ありがとうございました!」
財前の号令にみんなが続く。隣の金太郎が直立なのに気づいて頭を押さえつけた。顔を上げた時には白石が顔を緩めて、笑ってはいるが泣きそうだ。
「頼むで、財前部長」
「ま、しゃーないっすわ」
「しらいし~!堪忍な~!」
こらえきれずに泣き出した金太郎が白石に飛びついていく。金太郎だってバカじゃない、今日が3年の最後の試合だったと思い出したのだ。感動に泣きながら光ちゃぁん、と抱きついてくる小春をやり過ごしながら、金太郎に続いて泣き出した部員たちを見渡した。敗北と共に訪れた世代交代は金太郎のせいでめちゃくちゃだったが、これはこれでよかったのだろう。輪から逃れた財前をめざとく見つけて謙也が近づいてくる。
「かっこええやん、財前部長。泣かへんの?」
「泣けるかい」
「寂しいくせに~」
「せいせいしますわ」
「素直やないな~」
「先輩こそ泣けへんのですか。俺部長なったら忙しいやろしな~一緒に帰られへんかもな~」
「……寂しいことゆうなや」
控え室は変わらず金太郎が一番騒がしいが、今はこのままにしておこう。邪魔するような野暮なことはしない。謙也が溜息をついたので顔を見上げる。
「……あんた、あほやな」
「はっ?」
「どうせ変わるんやったら、俺と千歳先輩入れ替えて自分が出たらよかったんすわ。最後の試合やのに」
「あ~……それはええねん。千歳との相性は光のがええし、自分もやりたかったんやろ?手塚と」
「俺は別に」
「まあ過ぎたことや」
「はいはい青少年どもよ、早よ着替えなバス出るで~。バス間に合えへんかったら金太郎みたいに大阪まで走りやぞ~」
顧問の声に場が和む。先に着替えてしまっていた財前は立ち上がり、金太郎を引き取りに行く。負けてもたなぁ、ついに泣き出した白石を見て、ゆっくり息を吐いた。気持ちは同じだ。感情表現が違うだけで。どうせ着替える気のなさそうな金太郎の背を押した。
「着替えた奴はバスに荷物運びや!」
「いや~、しっかりした部長がおってオサムちゃん次の年も楽できそうやわ~」
「誰が楽さすか。練習メニューからお笑い講座抜かれたくなかったら仕事せえよ」
「いやいや、期待してまっせ」
「誰かオサムちゃんここに縛り付けといて、置いて帰るわ」
「俺の監督人生で一番怖い部長になりそうやわ……」
*
早く帰ろうと思っていたのに、校門を出るなり財前は足を止めざるを得なかった。こちらに気づいた謙也は携帯から顔を上げて、ばつが悪そうに顔をそらす。自転車にまたがっている先輩に近づいていき、しばらく無言で見つめるがもじもじと手元の携帯をもてあそぶだけだ。仕方なく溜息をついて聞いてやる。
「……何しとん」
「え、あ、やー、……チャリがな」
「は?」
「……やから、チャリが軽いんや!」
「……へえ?」
大人しく後輩ぶってみようとすれば向こうがこうだ。笑ってやると体を強ばらせている。どっちやねん、思いながらも表情は変えない。
「チャリが軽いからなんやって?」
「や、だから~、あれ」
「わからへん」
「チャリ軽いからな、早よ家ついてな、ほんであまりにもチャリが軽いから」
「会いたなったって素直に言ったらええやん」
「……送るわ」
「だっさぁ」
「お前にかっこつけてどないすんねん」
「惚れ直すかもしれんのに」
リアクションは待たずに自転車の荷台にまたがった。はいどう、と背中を叩けば溜息が帰ってくる。
「財前部長は俺にも優しくしてくれへんのか」
「なんであんたに優しくせないかんのですか」
「……泣かされる前に帰ろ」
謙也が自転車を漕ぎ出した。速度は心なしか遅い。謙也の背中によりかかって溜息をつく。
「明日もさぁ、俺図書室にでもおるから一緒に帰らへん?」
「……うーん」
「光?」
「悪あがき」
「う……」
「どーせ先輩卒業したら一緒に帰られへんねんから、今のうちに俺がおらん寂しさに慣れとった方がええんちゃいます?」
「せやけどー」
「人が珍しく我慢したったらもうこれや」
「寂しくなるのは卒業してからでええやんけー」
自転車の振動と謙也の体温に身を任せて力を抜いた。まだ暑い夏はすぐに終わり、身を切るような寒さが訪れるまで早いのだろう。冬の風を切るスピードは身を凍らせるが、人の体温のあたたかさを知ってしまっている。抱きしめる腕の力を強めると熱が上がる気がする。
(こいつ、俺がただサービスしてるだけやと思っとるんやろなぁ……)
すれ違う少女の視線が飛んでくるのを謙也は知っているのだろうか。ただ謙也を喜ばすためだけにこんなことをしているわけじゃない。虫よけの効果があるから往来でこんなことをするのだ。俺がおらんでも小バエ追い払えるんかな、
「光さん……腹撫でるのやめて」
「ああ、無意識でした。すんません」
「帰りたくなくなるやんけー」
「俺疲れたんでまっすぐ送って下さい」
「うわぁ……。……疲れた?」
「金太郎が……」
「ああ……金太郎が光の前でちっちゃくなっとったんおもろいわ」
「昔いっぺんシメたんすよねー。一回きりやったけど覚えとったみたいやな~」
「……お前何したん」
「普通に」
謙也が言葉を失った。坂を下る自転車からみる風景の早さに慣れてしまって、明日には自分の自転車通学の許可証が手に入るのが嘘のようだった。柄にもなく少し寂しいと思っているのかもしれない。先輩のいなくなったコートは少し広かった。走り回る金太郎を押さえつけることができるのは自分だけで、その間に頼りにならないと思っていた顧問が部活を回していた。どうして部長など引き受けてしまったのか、今更自答する。俺って先輩以外のことも考えれたんやなぁ、なんてしみじみ思う。
「せんぱーい」
「なんやー」
「キスしたいから止まって」
自転車が大きく揺れた。それでもバランスは崩さずに自転車は急ブレーキで停止する。
「……光くん?」
「今すぐに!」