言い訳置き場
言い訳を書いていきます。誤字の報告などあればありがたいです。 ※唐突にみゅネタややぎゅにおの外の人のかけ算が混ざるのでご注意下さい。 日常はリンクのブログから。
大変お待たせいたしました。だけどユウコハのターンなんだぜ!!!!!!!!がっかりしていってね!!!!!!!!!
ユウコハが好きです。友達がなんばで私たちの中では公式設定となっている捏造ユウジ設定まんまの男性を見かけてしまうぐらい好きです。具現化したぁぁぁなんばの神様パねえええ
「ユウくん、ちょっと待って」
「小春はそればっかりや、誤魔化すな!」
あれ?これ修羅場ってやつちゃう?ドアに手をかけたまま謙也は硬直する。部室の中から聞こえてくる声は間違いなく小春とユウジふたりのものだが、その声色は聞いたことがないほど真剣だ。しかし演技のうまいふたりのこと、新しいネタだろうか。そろそろラブラブコンともパターン化してきたなぁなんて小春が言っていたのを思い出す。
「ユウくん、今はその話しとったんちゃうやろ」
「人の話ばっかりもうええわ!俺は小春の本音が知りたいんや」
謙也が入るべきか迷っていると肩を叩かれ、びくりとして振り返ると白石が立っている。中のふたりより早く来ていたのかすでに着替え終えているが、困った顔で首を振った。手招きをされてついていくと、すまんけど野球部の部室借りて着替えて、と溜息交じりに言われる。
「……あのふたり、ガチで喧嘩しとんの」
「喧嘩っちゅーか、……まあ、痴話喧嘩か。ちょっとヒートアップし過ぎやな。ったくユウジのアホ、光くんにつられんなゆうたのに」
「あれほっといて大丈夫なん?コンビ解消危機ちゃう?」
「どうやろなぁ。あいつらお互いに気持ちは通じとるはずなんやけど、妙に言葉にこだわるとこがあるから。解消まではせんやろけど……」
「原因は何なん?ようわからんのやけど。あいつらがネタでももめとんの見たことない……何やその顔」
顔をしかめて嫌そうな表情で謙也を見る白石にいらっとする。顔がきれいな分余計に腹が立つ。
「謙也ほんっまに鈍いな」
「はァ?」
「そら財前があーなってもしゃーないわ」
「今財前関係ないやろ!」
野球部の部室にはまだ野球部員が残っていた。すまんけど借りるでー、白石の声にキャプテンは貸しひとつやー、と軽く返してくる。隅を借りて着替える謙也を見ながら、白石は改めて溜息をついた。
「簡単な話やん」
「だから、何が」
「コントみたいなごっこだけやなくて、ほんまの恋人同士になりたいっちゅーユウジと、それに待ったかけとる小春。前からちょいちょい揉めてんで、気づかんかったん?」
「……ハァ!?ネタやろ!?」
「微妙なラインやけどあいつらちゃんと線引きしとるで。ネタ以外でユウジは小春に触らんしな」
「ちょ、ちょちょちょちょっと待って、それって」
思わず辺りを見回して声を落とす。白石に近づくといい匂いがして複雑な気持ちに襲われた。
「それって、ユウジと小春って、ガチなん?」
「見てわかるやん」
「わからんわ!普通にホモとか……え?ホモなん?」
「まァそうなるわな、形は」
「え?えー!?」
「ほんまに気づいとらんかったんか」
「え?ドッキリちゃうよな?俺はめられてる?」
「謙也にドッキリしかけるほど暇ちゃうねん」
「うるせぇ。え?ほんまに?つか何で白石はそんな普通なん?」
「愛の形なんか人それぞれやろ。謙也やって財前のこと好きなんちゃうの?」
「は?ちゃうし!」
「どうでもいいけどさっさと着替えてや」
あきれた表情の白石に腹が立つが、その通りなので謙也は仏頂面のまま着替えてしまう。どうしてここで財前が出てくるのだ。ふと財前がユウジの好きな人がどう、と言っていたのを思い出す。それは小春のことだったのだろうか。
まだ信じ切れていない謙也をもう気にしないことにしたのか、白石は野球部の部長と親しげに話をしている。2年にして部長を任されている白石だが、謙也にはクラスメイトとしての白石の方が印象強い。こうして他の部の部長と話す姿を見ると、部長業も大変なのだろうな、と大雑把な感想しか浮かばなかった。2年だからと言ってなめられるわけにはいかないが、かといって3年の言いなりになるわけにもいかないのだと言っていたことがある。テニス部の3年は2年が部長なんておもろいやんけ、と笑っていたが、本心ではどうかわからない。
「白石部長いてます?」
聞き慣れた声にハッとして振り返ると、ドアを開けて覗き込んでいるのは財前だ。
「あ、ぶちょー、部室空いたんで」
「おー、わざわざ言いに来てくれたんか、おおきに。どうやった?」
「もー元通りっすわ」
「また表面上だけ仲直りか。何回揉めても進展せえへんなあ」
「だからユウジ先輩どんだけふっかけたってあかんねんて。部長小春先輩担当なんすから、しっかり焦らせてくれないと」
「俺がいつ小春担になったんかわからんけど、まあまた話聞いてみるわ」
「変な意地張らんとさっさとくっついたらええへん」
「……財前くんには言われたないと思うでぇ?」
にやりと笑う白石に、財前も同じように笑って返した。何も言わない財前の肩を叩き、白石は部長の顔になる。
「ほな先に出とって。そろそろみんな外周にあきとるやろからすぐ行くわ」
「はーい」
「ああ、光」
「はい?」
「靴ひも、ほどけてんで」
「あ、どーも」
閉まるドアの向こうでしゃがむ財前が見えた。しかしそれよりも気になることがあって、謙也は白石を見る。
「……あれ?」
「何?」
「白石、光って言った?」
「言ったけど」
「え?」
「え、って、財前光やろ?」
「下の名前ぐらい知っとるわ!」
「ええから、出るで。ほなお邪魔しましたー」
野球部に挨拶をし、白石は謙也を引っ張って外に出る。財前の姿はすでにない。なんか色々腑に落ちひんのやけど。どう言葉にすればいいのかわからず、唇を尖らせて白石を見ると、キモい、と一蹴される。こいつとの親友関係も考え直さなければならない。
無人の部室に荷物を置いてコートへ向かえば、ユウジと小春がいちゃついている。それでもふたりの距離は心なしか遠い。白石が溜息をつく。
「俺は好きな人もおらんけど、あいつらがアホやってのはようわかるわ」
「……ほんまにそうなん?」
「キモい?」
「や、ちゅーか、信じきれへんのやけど」
「せやから謙也にドッキリしかけてもおもんないっちゅーねん」
*
人を好きになるとはどういうことなのか、という問いまでさかのぼってしまい、眠れなくなった。電気を消した部屋でずっとベッドに潜り込んではいたが、暑さに耐えかねてタオルケットを投げて起き上がる。
水でも飲もうと部屋を出るとリビングはまだ明りがついていた。かすかに漏れるのはテレビの音声だろうか。そっと覗くと両親が寄り添って古い映画を見ている。このふたりは見合いで知り合ったと聞いた。思い出すと今まで興味はなかったのにふたりのなれそめが気になってくる。音をたてないように慎重に台所へ向かい、スポーツドリンクのペットボトルを掴んで部屋に戻る。
ユウジが小春のことを好きだった。小春もまた、ユウジが好きであるらしい。いつも部室だろうが教室だろうが、手をつないだり抱き合ったりしてはネタを披露して周囲を笑わせているふたりが、そんな気持ちを隠しているなんて知らなかった。直接本人たちから聞いたわけではないが、白石の様子からみると本当にそうなのだろう。
ベッドの上へ戻ってのどを潤し、時間を見るのに携帯を開く。ベッドに入ったのは10時過ぎだから、2時間は同じことを考えていたことになる。結論の出ないことを考えていると寝れる気がしなかったが、かといって気を紛らわすようなものもない。
誰かと話がしたかったが、こんな夜中に白石が起きているはずもなかった。従妹でも起こしてやろうか、着信履歴をひらいて財前の名前が目につく。この話をするにはもっと適任がいた。ためらいは一瞬で、5時に電話をかけてくるようなやつに遠慮することはない、と開き直って財前に電話をかける。数度のコールの後呼び出し音はド切れた。何も音はないが、切られたわけではない。
「財前?」
『……はい』
「ねとった?」
『うん』
聞いたことのない甘い声にどきりとする。寝起きの声なら何度か外でも聞いているが、それとはもっと違う、甘えるような声だ。
「ちょおつき合ってや」
『んー?』
「話したいんやけど」
『うん……』
「ねんなよ」
『はい……何?』
「あ、あのー、ユウジと小春の話やねんけど」
『……ああ、今日の』
「そう」
『小春先輩はずるいんすよねー、自分の気持ちはっきりさせんのはイヤ、せやけどユウジ先輩を他のやつにとられんのもイヤ。引き留めんのもみっともなくてイヤって、どこの乙女やねん。ユウジ先輩やなかったらとっくにふられとるわ。ユウジ先輩かてあほなんよな、小春先輩の気持ちなんかほんまは自分が一番よぉわかっとるはずやのに、どんっだけ根暗なんか知らんけどいつまでもうじうじしよって、いー加減決着つけたらええねん。好きや―ゆうてキスの一発でもかましたったらええだけやん。のんびりしとったらいつどこの馬の骨ともしれん女にかっさらわれるかわからんのに、なぁ謙也先輩どう思います?』
「え、あの」
『好きで好きでしゃーないんやからさっさと自分のものにしたらええんやどっちも気持ちはあってるわけやん、ほなどーでもよくない?ちっさいことは告ってから考えろっちゅーねんユウジ先輩のくせに小春先輩と駆け引きしようっちゅーんがまちがっとるわ、相手見て戦法変えるんはテニスも一緒やろ』
「ざ、財前!」
『……謙也先輩、俺はね』
「う、うん、どうした?」
酔っ払いのようにまくし立てていたかと思えば急に静かな声でささやくようになる。寝ぼけているらしい財前に少し後悔したが、電話を切る気にはならなかった。
『俺かて、好きな人おるんスわ』
「おお、言うてたな」
『ほんで俺めっちゃ頑張ってるんすよ、ほんまあほらしいぐらい努力してますよ。やろうと思ったら押し倒してカラダ奪うぐらいできますけど、意味ないやろ?俺は一生一緒がええねん』
「物騒やな」
『純愛でしょ』
「あー、せやな、せやせや」
やばいこいつマジで酔ってんちゃうかな。自分の周囲にはすっきりと目覚める人間が多いのでよくわからないが、この寝ぼけ方はどうなのだろう。それともしっかり覚醒しているのだろうか。
『わかってます?』
「わかっとるって、財前はほんまにそいつのこと好きやねんな」
『うん』
「どうなん、その人は」
『……ハァ?』
「え?」
『あー、今頃小春先輩のことでも考えてんちゃいます?知らんけど。あー、アホくさ。……夜中やん、なんか用すか』
はっきりと目が覚めたらしい。特に何も、と濁しながら返すと舌打ちをされた。おやすみなさい、と乱暴な声がした後、通話は切られる。携帯ではなく固定電話なら、きっと受話器の音がしただろう。
何を言われたのか、ゆっくり考える。何かが財前を怒らせた。夜中に起こしたこと、だろうか。いや、それより前に財前の不機嫌な声を聞いた。謙也がたずねたのは、財前の好きな人についてだ。
「……あれ?」
今頃小春のことを考えていそうなやつって、まさか。