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言い訳置き場

言い訳を書いていきます。誤字の報告などあればありがたいです。 ※唐突にみゅネタややぎゅにおの外の人のかけ算が混ざるのでご注意下さい。 日常はリンクのブログから。

2025'01.25.Sat
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2010'05.01.Sat
前に出し損ねた女体森おそらくラスト。

後輩ズのお茶会。



女体化なので畳みます。













「ただいまー!」

「……お前門限守る気ないだろ。フォローしてほしかったらせめて言ってけよ!」

「え〜? タク大好き〜! はい、おみやげ」

「調子いいなぁ……」



それでももらうものはもらう笠井を見て根岸も笑う。上機嫌の藤代はバッグと携帯をベッドに投げて、何してんの? とテーブルを覗き込んだ。根岸と笠井が見ていたものが手帳だと知って目を輝かせる。



「何の計画?」

「あ、マカロンだ」

「かわいー」



笠井が開けたおみやげの箱を覗き、根岸の視線は釘付けになる。おもちゃのようなパステルカラーは卑怯だ。かわいいくせに食欲がわくのは、何かの罠に違いない。



「俺歯磨きしちゃった」

「つうか十一時……」



笠井は時計を睨んで眉間にしわを寄せる。しかし根岸と目を合わせ、根岸が口元を緩めるのでつられて笑った。藤代がそれを見て演技がかって肩を落とす。



「何?お前らいっつも俺を仲間外れにするよね」

「今日根岸と遊びに行っててさ」

「かわいい紅茶、買っちゃったんだよね。ストロベリーティー」

「え、飲む。俺シャワー浴びて来ちゃうから待っててよ」

「え〜」

「いいじゃん!すぐ戻る!」



言うが早いが着替えとタオルを掴んで藤代は部屋を出て行った。笠井は苦笑しながら、箱の中のお菓子を大切なもののようにテーブルにひとつずつ置いていく。見定めるようにそれを見ながら、根岸は口を開いた。



「今日は三上先輩と遊んでたんだね」

「絶対三上先輩の趣味だよね」

「やばい、かわいい。どれ食べようかな」

「あ〜、太る〜」

「笠井は少しぐらい太るべきだ!」

「ネギっちゃん太ったよね」

「……見た目でわかる?」

「うん」

「……明日から、明日から」



魔法の呪文を唱えるように繰り返し、目はかわいいお菓子から離さない。



憧れであり目標であった先輩方が卒業し、あっと言う間に半年経った。制服は冬服に戻り、季節はまた卒業へ向かっていく。部活を引退してからの毎日はまだ心許ない。先輩もこんな気持ちだったのだろうか。それとも、もっと強くいれたのだろうか。

裏返して品質表示のシールに書かれた味を見ながら、紅茶の準備をする笠井を見る。先輩が卒業してからあっという間に大人になってしまったような気がする笠井は、立派に副部長をつとめあげた。事務作業では役に立たないファンタジスタの補佐を勤めるのは容易ではなかっただろう。藤代は渋沢のように引っ張っていくタイプではなかったが、土台を固めてしっかり支える副部長がいるおかげで部はまとまった。――自分は何か変わっただろうか。勝手に自分の物と決めつけた二種類を手元に引き寄せた。



そろそろ戻るかな、笠井が紅茶を入れかけると藤代が戻ってきて、タイミングの良さに笑ってしまう。すっぴんの藤代を久しぶりに見た気がするのは、藤代が遊び歩いているからだ。



「いい匂いする〜」

「ネギっちゃん砂糖いる?」

「……やめとく」



お気に入りのマグカップに紅茶をたっぷり注いで、本当はもっと「おいしい淹れ方」があるのだろうが気にしない。甘い香りに誘われて口を付けてから、結局砂糖を入れて笠井に笑われた。食べたいときに食べるが信条の藤代はあっさりとマカロンを口に運ぶ。明日走ろうかなぁ、そう言いながらもだらだらしながらこんな時間を過ごせるのは、きっと女子に生まれた特権だ。



「三上先輩元気だった?」

「あんまり。まあでも、俺が励ましてきたし、大丈夫じゃん?」

「……三上先輩かわいそう」

「なんでよ」



けらけら笑う藤代は、なんだかんだで三上とちゃんとおつき合いをしているらしい。根岸はからかっているだけだと思っていたが、それを言うと藤代もあっさりと俺もそのつもりだった、と白状した。三上にはとても聞かせられない。彼女は誰より繊細だ。



「そうだネギっちゃん、いつにしようか」

「あ、そうだよ」

「何の相談?」

「中西先輩と遊びに行くんだけど」

「俺も行く」

「え〜」

「だからなんで俺仲間外れにすんのさ」

「うるさいから」

「ひでー!ネギだって似たようなもんじゃん!」

「藤代と一緒にすんなよ!」

「大学見に行くんだけど、ほんとに一緒に行く?」

「大学?中西先輩の?」

「うん。志望校にしようか迷ってて」

「え〜、笠井ちゃんたら、中西先輩のおっかけ?」

「違うよ!部活でお前の面倒見てたら音大あやしいの!」

「俺のせいにすんなよ〜」



へらへらしている藤代は推薦ですでに進路を決めてしまっている。笠井はずっと将来を考えていた。足元が固まらないのは根岸ばかりで焦らされる。思わず溜息をついた根岸にマカロンが差し出される。



「……進路、どうしよっかなぁ」

「こないだのテスト、成績どうだったの?」

「まだちゃんと見てないや」

「しっかりしろ受験生ー」



考査の総合成績を取り出すと自分が見る前に藤代に引ったくられる。それを笠井と一緒にのぞきこみ、ふたりで根岸と成績を見比べた。



「え、これ根岸の?」

「俺のだよ」

「えっ、学年21位って何!?何の冗談!?2桁って!」

「だって藤代は遊びに行っちゃうし笠井はピアノのレッスンじゃん、俺することないんだもん」

「まさか勉強してたわけ……?」

「ネギっちゃんって、ほんとやればできる子だよね……先生嘆いてた意味がわかった。この成績であの志望校はない」

「だって他のとこ遠いじゃん」

「勿体ない!」

「だって、俺やりたいことないんだもん」



溜息をつく根岸を見て笠井も溜息をついた。すっかりお姉さんポジションだ。



「もうそんなこと言ってる時間ないんだよ」

「知ってる」





*





どうも図書室と根岸は相性が悪いらしい。棚の間から出るに出れなくなってしまったのは、そこに笠井がいるからだ。正確には後輩からラブレターを渡されている笠井が、だ。盗み聞きをしたいわけではないのに、これ以上奥へも行けない。



「読んでくれるだけで、いいんです」

「……あの」

「失礼しました!」



絨毯も音を吸収しきれない足音が遠ざかる。再び静かになった図書室で、笠井が根岸の名前を呼んだ。



「ごめん……でばがめ……」

「しょうがないでしょ、今のは。帰ろ」

「うん……」



なぜ進路資料は図書室のこんな最奥にあるのだろう。絶対利用は多いから、移動すればいいのに。落ち着かない感情の行き場を図書室に投げつける。手紙はどこかにしまったようで、笠井は何事もなかったように歩いているが、よく見ると頬が赤い。



「……笠井もてるんだ」

「うえ〜?ないって……あー、恥ずかし……」

「ラブレターかぁ……今時その文化が残ってるのって武蔵森ぐらいなんじゃないの」

「レトロが現行してるよねぇ……」



図書室を出て教室へ向かう。古い校舎を歩くのもあと半年のことかと思うと複雑な気分だ。入学したばかりの頃を思い出しても、自分は何も変わらないように思うのに。

笠井は随分大人っぽくなった。中学に入学した頃を思い出すとぐんと背が伸びたせいもあるが、自分は背が伸びたぐらいでは何も変わらなかったのに、と思ってしまう。



「……俺、誰かとつき合ったりできるのかなぁ」

「いきなりどうしたの?」

「カワイイわけじゃないしきれいでもないし、かっこよくもないし。気がきくわけでも強いわけでもないし」

「別に、それが根岸の魅力じゃないでしょ」

「じゃあ俺のどの辺が魅力なのさ」

「根岸は優しいよ」

「う〜ん……それって強く言えないだけじゃない?」

「根岸の優しさを求める人だっているよ」

「そうかなぁ〜」



自分が好きだった、あの人は。今何をしているのだろう。根岸は笠井と違い、辰巳の連絡先を知らない。知っていたとしても連絡する勇気などないだろうが、それでも少しは違ったのだろうか。

夏が終わった。後の季節の過ごし方は、まだよくわからない。



「置いて行かれた気分だなぁ……」
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