言い訳置き場
言い訳を書いていきます。誤字の報告などあればありがたいです。 ※唐突にみゅネタややぎゅにおの外の人のかけ算が混ざるのでご注意下さい。 日常はリンクのブログから。
2010'04.28.Wed
さぁ飲んで、女に勧められる酒を、男は勢いよく煽る。飲めや歌えの大騒ぎで座敷はひどくやかましい。何人もの女が出入りをして酒や食事を運び、途中でひっそり男と消える。山崎はこっそり溜息をついた。遊郭は禁止とはいえ探れば見つかるのは、所詮上の人間に需要があるからだろう。
隣の女が酒を足し、山崎は適当に酔ったふりをしてそれを口に運ぶ。どうも山崎をさりげなく誘ってくれる女は、彼から見れば変装時の参考にしかならない。
(布団まで行っちゃってもいいんだけど、別に困ってないしな……)
というよりもつい昨日、他人と夜を共にしている。ちらりとその相手を盗み見た。上司にしきりに酒を勧められ、断れないまま飲み続けている。そんなに強くないくせに。顔を真っ赤にして女に寄り添って笑う。怪しい口元に、女は頬を染めた。どんな甘い言葉をささやいたのだろう。
「どうかなさった?」
「……ええ少し、仕事が気になって」
「仕事熱心やねえ」
「……あなたも」
「え?」
「小指を贈った方はどちらに?」
「あ……」
女はとっさに左手を隠し、少しためらって山崎を見る。柔らかい表情に安心してか、彼女も緩く笑った。
「それがねえ、行方知れずなんです」
「そうなんですか」
「あの人も悪い人やったから、おナワになったんかねえ」
「会えなくても、いいもんですか」
「――あたしにはお客さんがおりますから」
「そうでした。……見せて」
女の左手を取る。失われた小指。誓った男のもとへ贈られているはずだが、今はどうなっているだろうか。古風な女だ。大方騙されていたんじゃなかろうか。今のこの時代で指切りなどはそうそうしないことだろう。
「やぁだ、お客さんったら」
耳に届く声。ほとんど無意識にその手を撫でた。
「あたしが欲しいんと違うやろ?」
「……プロですねえ」
「わかるわよォ」
「俺も指切って送ろっかなー」
「愛しい人がおるんやね」
「……おりますねェ。あ、どうも」
注ぎ足された酒で唇を濡らした。
がははと豪快に近藤が笑う。上の者たちがこんな場に真選組を呼ぶことがあるのは、大概女に受けるからだ。沖田など寝入ってしまい女たちに囲まれておもちゃにされているが、どこまで彼が酔っているのかは分からない。
「……スパッと切っちゃって、リボンでもかけようか」
「お侍さんは刀があるからそれで切るんかしら」
「……どうやったの?」
「怖かったから包丁当てて、鉄瓶で叩いてもらった」
「……そっちの方が怖いよ」
「ふふ、せやからあたしは強いんよ」
「――うん、綺麗だ」
「その気もないのに誘わんといて。小指は後1本しかないんやから」
「はは、いい女だなぁ」
小指を失ったら、ラケットを握るのに支障が出るだろうか。ああ、それよりも刀が。
酒を煽りながら話は世間話へ移っていった。どんな話でも笑う女たちは、どこまで楽しんでいるのだろう。
(あんたのためなら、何本だって指を切って誓うけど)
ふっと思わず笑い、逆に女に酒を勧めた。注いでやりながら綺麗な指先を見る。
(誓われたいわけじゃないからなぁ)
土方が今夜、帰らないことは知っている。
隣の女が酒を足し、山崎は適当に酔ったふりをしてそれを口に運ぶ。どうも山崎をさりげなく誘ってくれる女は、彼から見れば変装時の参考にしかならない。
(布団まで行っちゃってもいいんだけど、別に困ってないしな……)
というよりもつい昨日、他人と夜を共にしている。ちらりとその相手を盗み見た。上司にしきりに酒を勧められ、断れないまま飲み続けている。そんなに強くないくせに。顔を真っ赤にして女に寄り添って笑う。怪しい口元に、女は頬を染めた。どんな甘い言葉をささやいたのだろう。
「どうかなさった?」
「……ええ少し、仕事が気になって」
「仕事熱心やねえ」
「……あなたも」
「え?」
「小指を贈った方はどちらに?」
「あ……」
女はとっさに左手を隠し、少しためらって山崎を見る。柔らかい表情に安心してか、彼女も緩く笑った。
「それがねえ、行方知れずなんです」
「そうなんですか」
「あの人も悪い人やったから、おナワになったんかねえ」
「会えなくても、いいもんですか」
「――あたしにはお客さんがおりますから」
「そうでした。……見せて」
女の左手を取る。失われた小指。誓った男のもとへ贈られているはずだが、今はどうなっているだろうか。古風な女だ。大方騙されていたんじゃなかろうか。今のこの時代で指切りなどはそうそうしないことだろう。
「やぁだ、お客さんったら」
耳に届く声。ほとんど無意識にその手を撫でた。
「あたしが欲しいんと違うやろ?」
「……プロですねえ」
「わかるわよォ」
「俺も指切って送ろっかなー」
「愛しい人がおるんやね」
「……おりますねェ。あ、どうも」
注ぎ足された酒で唇を濡らした。
がははと豪快に近藤が笑う。上の者たちがこんな場に真選組を呼ぶことがあるのは、大概女に受けるからだ。沖田など寝入ってしまい女たちに囲まれておもちゃにされているが、どこまで彼が酔っているのかは分からない。
「……スパッと切っちゃって、リボンでもかけようか」
「お侍さんは刀があるからそれで切るんかしら」
「……どうやったの?」
「怖かったから包丁当てて、鉄瓶で叩いてもらった」
「……そっちの方が怖いよ」
「ふふ、せやからあたしは強いんよ」
「――うん、綺麗だ」
「その気もないのに誘わんといて。小指は後1本しかないんやから」
「はは、いい女だなぁ」
小指を失ったら、ラケットを握るのに支障が出るだろうか。ああ、それよりも刀が。
酒を煽りながら話は世間話へ移っていった。どんな話でも笑う女たちは、どこまで楽しんでいるのだろう。
(あんたのためなら、何本だって指を切って誓うけど)
ふっと思わず笑い、逆に女に酒を勧めた。注いでやりながら綺麗な指先を見る。
(誓われたいわけじゃないからなぁ)
土方が今夜、帰らないことは知っている。
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