01. よく晴れた日に（藤代）

ぴっかんとした快晴。こんな日にサッカーをしたらさぞや気持ちがいいだろう。

それは予想だけど自信を持った予想。何故なら過去に多分体験しているから。



あーーーーッ、走りたい！



ベンチからタクを睨みつけたら一瞬こっちに視線を送ったけど、すぐに無視してこれ見よがしに他へボールを蹴り返した。

あーあ、そりゃ悪いのは俺だよ。調子に乗って怪我したのは俺ですよ。

こんな晴れた日にサッカーしてないなんてほんとに久しぶりだ。最近では雨だって室内でサッカーしてるのに。

走りたい走りたい走りたい！

寮でもしつこいほどに叫んでいたら、ほんとにサッカーの申し子ねと寮母さんに呆れられた。



俺はほんとにサッカーが好きなんだろうな。他にも色々好きなことはあるし、ゲームなんかしたくてたまらないときもある。でもやっぱりサッカーは違う。

あー俺ほんとにサッカーしないと死んじゃうんじゃないかな。ってなんか風祭みたいだな。そうだ、暇だし明日は桜上水行ってみよう。



快晴快晴、ずるいほど快晴。

この晴れの日にサッカーしないなんて、犯罪だ。布団を干さないのと同じことだ。

…キャプテンも辰巳先輩も調子いいなぁ。あーでもそれ俺なら絶対決めれた、今の。今なら、心意気だけならキャプテンからハットトリックだって奪えるのに。



時々考える。もしサッカーしてなかったら、俺は毎日何をして過ごしてるんだろう。

１日ゲームとか絶対無理。一箇所に座りっぱなしとか耐えられない。漫画も読むだろうけど時間を潰せるほど沢山持ってない。勉強は絶対しない。洗濯だって辰巳先輩みたいに時間かからない。部屋の掃除も多分タクに任せてる。

サッカー以外に何かすることあったっけ。

三上先輩が時々言う。お前はサッカーするための生き物だな。

でもサッカーがないと駄目ってわけでもない気がする。水とか空気とは違う。



あぁ、欲しいんだな。欲しくてしょうがない。体の底から熱望する。そこにある巨大なエネルギー。

グランドからボールからスパイクから走る声から、発せられるエネルギー。俺はそれを食べて大きくなるんだろう。



早くサッカーしたいな。

傷付けてごめんね。今度からほんとに気をつけるよ、だから拗ねないでハニー、俺の足首。お前だってほら、もう走りたくなってるくせに。