言い訳置き場
言い訳を書いていきます。誤字の報告などあればありがたいです。 ※唐突にみゅネタややぎゅにおの外の人のかけ算が混ざるのでご注意下さい。 日常はリンクのブログから。
2007'01.18.Thu
ふたりでいたらどうにかなったと思うか?
聞き間違いだと思った。沖田が殺気立つのを感じてか、土方は少しだけ振り返った。引き延ばすように、煙草を落として踏みつける。
「遅い」
「……そうだな」
「今更そんなこと言うな!」
「そうだな…」
風で灰が舞い上がった。煙草や線香の灰が風の中で踊り出す。視界をよぎった落ち葉がくるりと円を描いた。
「……俺の生まれたところは、墓前で舞をやるんだ。お袋は踊り手だった」
「何の話を」
「墓の前で微笑んで舞うなんざ、狂ってるようにしか見えねなくて」
「……」
「そのせいかな、俺はよくわかんねえよ。墓ってのは何のためにあるもんだ?」
大切にしやしなかったけど、大切なものだった。小さな石に預けた命を振り返る。守ってきたつもりのものを、最後まで守れていたのか自信がない。
沖田は初めて気づいた。自分は狂った舞いをしていただけで、初めから土方の目に入っていなかったことを。
聞き間違いだと思った。沖田が殺気立つのを感じてか、土方は少しだけ振り返った。引き延ばすように、煙草を落として踏みつける。
「遅い」
「……そうだな」
「今更そんなこと言うな!」
「そうだな…」
風で灰が舞い上がった。煙草や線香の灰が風の中で踊り出す。視界をよぎった落ち葉がくるりと円を描いた。
「……俺の生まれたところは、墓前で舞をやるんだ。お袋は踊り手だった」
「何の話を」
「墓の前で微笑んで舞うなんざ、狂ってるようにしか見えねなくて」
「……」
「そのせいかな、俺はよくわかんねえよ。墓ってのは何のためにあるもんだ?」
大切にしやしなかったけど、大切なものだった。小さな石に預けた命を振り返る。守ってきたつもりのものを、最後まで守れていたのか自信がない。
沖田は初めて気づいた。自分は狂った舞いをしていただけで、初めから土方の目に入っていなかったことを。
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2006'11.26.Sun
竹刀を構えて前を見据える。敵は、誰だ。一瞬見えたのは自分の姿だった。
「あんたは準備してたんですね」
夜空に向かって煙を吐く。こいつが気配を消さないのは珍しい。竹刀を降ろして振り返り、不満そうな顔に投げた。容易にそれを受け止めた山崎は何も言わない。
女がひとり、死んだだけだ。それも死ぬとわかっていた女が。昔から女運は悪い。
煙草を吐き捨て踏みにじり、夜の風に向かって構えた。自己流で覚えた剣の型は、あの頃と変わっていない。女が見ていたあの頃と。いつになく感情が揺れる。
準備していた。死ぬのはわかっていたから。予想より少し、早かっただけで。
「ババアになるまで生きてりゃ、」
「……嫁にでもしましたか」
ほしくなっただろう。見えない剣を、振り下ろす。
「あんたは準備してたんですね」
夜空に向かって煙を吐く。こいつが気配を消さないのは珍しい。竹刀を降ろして振り返り、不満そうな顔に投げた。容易にそれを受け止めた山崎は何も言わない。
女がひとり、死んだだけだ。それも死ぬとわかっていた女が。昔から女運は悪い。
煙草を吐き捨て踏みにじり、夜の風に向かって構えた。自己流で覚えた剣の型は、あの頃と変わっていない。女が見ていたあの頃と。いつになく感情が揺れる。
準備していた。死ぬのはわかっていたから。予想より少し、早かっただけで。
「ババアになるまで生きてりゃ、」
「……嫁にでもしましたか」
ほしくなっただろう。見えない剣を、振り下ろす。
2006'11.15.Wed
公然と酔っ払ってみようと思い、お酒の入ったチョコレートを財布が許す限り買い占めて学校へ行きました。
それは金曜日のことでした。朝から天気がよく、わたしはいい気分で(中略)そしてわたしはふられました。
チョコレートを買い占めたのは次の日の土曜日です。学校は休みでしたからわたしは私服姿で、忍び込むように教室へ入りました。いつものように自分の机と決められた席に座りました。この席はベストポジションでした。授業中に眠るあの人のよだれまで見えたこともあります。
スーパーの袋から薄い箱を出して机に並べてみました。端から端まで隙間なく、ぴったりと埋めると一箱余ったのでそれから開けます。チョコレートの匂いが広がりました。
一口大のチョコレート、奥歯で噛むとお酒が弾けました。チョコレートとお酒が混ざって不思議な匂いがします。ひとつずつ食べながら箱を眺めました。アルコール度数を見ても、高いのか低いのかわかりません。お酒に弱い方は食べた後に運転するのは危険、と言うレベルのようです。生憎自動車免許は持ってませんが、今日は自転車で来てしまいました。果たしてわたしはお酒に弱いのでしょうか?酒の味がわかるほど酒飲みでないのは確かです。なんと言っても、まだあと数ヶ月はセーラー服の女子高生なのですから。
グランドでは野球部が秋風の中を走っています。ぼんやりとそれを眺めながらチョコレートを食べ続けて、お酒が舌を舐めていき、どうして飲み物を買ってこなかったのかを考えていました。学校にも自動販売機はありますが、3円では買うものも買えません。
涙は少しも出なかったのです。あんなに好きだと思っていたのに、いいえ今でも好きなのですが。
山になったゴミを見て、ここはひとつ失恋したのだから奇行に走ってみようと思い、空箱をひとつ手に窓から落としてみました。おそらく酔っ払っていたのでしょう。
スパイクの音がしたので顔を出すと、野球部員が空箱を手に困惑していました。受け止められてしまったようです。その調子で、来年は甲子園まで行ってくれると卒業生としても鼻が高いのですが。
こっちを見ていた野球部員と目が合いました。わたしだってマネージャーになればもっと近づけるかもしれない、と思っていたのです。どうしてやめたのかは忘れましたが、面倒だったのだと思います。困っている彼を無視してわたしは教室へ戻りました。寒いのにわざわざ外で走り回る酔狂は、わたしにはできません。
体育館に冷水機があるのを思い出し、机に残った大量のゴミをゴミ箱に捨て、わたしは教室を出ました。少し落ち着かなければなりません。わたしは近いうちに、体重増加の事実を受け止めなくてはならないでしょうから。
それは金曜日のことでした。朝から天気がよく、わたしはいい気分で(中略)そしてわたしはふられました。
チョコレートを買い占めたのは次の日の土曜日です。学校は休みでしたからわたしは私服姿で、忍び込むように教室へ入りました。いつものように自分の机と決められた席に座りました。この席はベストポジションでした。授業中に眠るあの人のよだれまで見えたこともあります。
スーパーの袋から薄い箱を出して机に並べてみました。端から端まで隙間なく、ぴったりと埋めると一箱余ったのでそれから開けます。チョコレートの匂いが広がりました。
一口大のチョコレート、奥歯で噛むとお酒が弾けました。チョコレートとお酒が混ざって不思議な匂いがします。ひとつずつ食べながら箱を眺めました。アルコール度数を見ても、高いのか低いのかわかりません。お酒に弱い方は食べた後に運転するのは危険、と言うレベルのようです。生憎自動車免許は持ってませんが、今日は自転車で来てしまいました。果たしてわたしはお酒に弱いのでしょうか?酒の味がわかるほど酒飲みでないのは確かです。なんと言っても、まだあと数ヶ月はセーラー服の女子高生なのですから。
グランドでは野球部が秋風の中を走っています。ぼんやりとそれを眺めながらチョコレートを食べ続けて、お酒が舌を舐めていき、どうして飲み物を買ってこなかったのかを考えていました。学校にも自動販売機はありますが、3円では買うものも買えません。
涙は少しも出なかったのです。あんなに好きだと思っていたのに、いいえ今でも好きなのですが。
山になったゴミを見て、ここはひとつ失恋したのだから奇行に走ってみようと思い、空箱をひとつ手に窓から落としてみました。おそらく酔っ払っていたのでしょう。
スパイクの音がしたので顔を出すと、野球部員が空箱を手に困惑していました。受け止められてしまったようです。その調子で、来年は甲子園まで行ってくれると卒業生としても鼻が高いのですが。
こっちを見ていた野球部員と目が合いました。わたしだってマネージャーになればもっと近づけるかもしれない、と思っていたのです。どうしてやめたのかは忘れましたが、面倒だったのだと思います。困っている彼を無視してわたしは教室へ戻りました。寒いのにわざわざ外で走り回る酔狂は、わたしにはできません。
体育館に冷水機があるのを思い出し、机に残った大量のゴミをゴミ箱に捨て、わたしは教室を出ました。少し落ち着かなければなりません。わたしは近いうちに、体重増加の事実を受け止めなくてはならないでしょうから。
2006'11.11.Sat
やっぱり柿はここだろう。
塀を登って柿の木に乗り移る。庭に誰か見えたが気にしない。
「またやってんのかクソガキ。猿みてぇにひょいひょい登りやがって」
「あんた怒んねえから張り合いねえんだよなぁ」
縁側から沖田を見上げてくる老人を見た。赤ら顔で頭ははげ上がっている。耳の後ろに残った髪が思い思いに泳いでいてタコかカニのようだ。
この柿の木の持ち主はひとりで住んでいる。この季節になると沖田が木に登っては柿を取りにくるので顔見知りだ。足場のない塀に登れる者はあまりいないので、ほぼ沖田専用になっている。
「投げろ」
食べ頃の柿を選んで投げてやる。受け損ねて禿頭に当たって地面に落ち、沖田は笑った。呆れて柿を拾う老人を見ながら自分も柿にかぶりつく。
「老人バカにしてると罰当たるぞ」
「さるかに合戦の猿みたいに?」
「テメーみたいなバカでも知ってんのか」
「そこまでバカじゃねーや」
柿を更に幾つか投げてやる。それは全部彼めがけて投げたので、すべて頭にぶつかった。また沖田がけらけら笑ったが、老人は溜息を吐くだけだ。
「ここの柿も食いおさめだな。俺ァ冬越えたら江戸に行くんでィ」
「まだそんなこと行ってんのか」
「ちゃんと近藤さんと約束したんだぜィ」
「寂しくなるな」
食べかけの柿を手にしたまま沖田は動きを止めた。老人はそれきり黙って柿を食べている。
柿を幾つか懐にしまい、沖田は塀に戻った。少し視線を寄越しただけの老人と目を合わせ、何も言わず立ち去る。
幾つ取っても文句を言わない。沖田は彼がどんな人物か何も知らなかった。
*
故郷へ戻ったとき、柿の頃であるのを思い出して足を運んだ。塀には簡単に手が届くようになっていたが、そこに柿の木はなかった。塀の向こうからは子どもの笑い声がした。
沖田が来なくなった年の秋に切り倒し、次の秋までに倒れたと聞いた。
猿に柿でも投げつけられたのだろう。柿の味は忘れたのに、投げたことだけは覚えている。
塀を登って柿の木に乗り移る。庭に誰か見えたが気にしない。
「またやってんのかクソガキ。猿みてぇにひょいひょい登りやがって」
「あんた怒んねえから張り合いねえんだよなぁ」
縁側から沖田を見上げてくる老人を見た。赤ら顔で頭ははげ上がっている。耳の後ろに残った髪が思い思いに泳いでいてタコかカニのようだ。
この柿の木の持ち主はひとりで住んでいる。この季節になると沖田が木に登っては柿を取りにくるので顔見知りだ。足場のない塀に登れる者はあまりいないので、ほぼ沖田専用になっている。
「投げろ」
食べ頃の柿を選んで投げてやる。受け損ねて禿頭に当たって地面に落ち、沖田は笑った。呆れて柿を拾う老人を見ながら自分も柿にかぶりつく。
「老人バカにしてると罰当たるぞ」
「さるかに合戦の猿みたいに?」
「テメーみたいなバカでも知ってんのか」
「そこまでバカじゃねーや」
柿を更に幾つか投げてやる。それは全部彼めがけて投げたので、すべて頭にぶつかった。また沖田がけらけら笑ったが、老人は溜息を吐くだけだ。
「ここの柿も食いおさめだな。俺ァ冬越えたら江戸に行くんでィ」
「まだそんなこと行ってんのか」
「ちゃんと近藤さんと約束したんだぜィ」
「寂しくなるな」
食べかけの柿を手にしたまま沖田は動きを止めた。老人はそれきり黙って柿を食べている。
柿を幾つか懐にしまい、沖田は塀に戻った。少し視線を寄越しただけの老人と目を合わせ、何も言わず立ち去る。
幾つ取っても文句を言わない。沖田は彼がどんな人物か何も知らなかった。
*
故郷へ戻ったとき、柿の頃であるのを思い出して足を運んだ。塀には簡単に手が届くようになっていたが、そこに柿の木はなかった。塀の向こうからは子どもの笑い声がした。
沖田が来なくなった年の秋に切り倒し、次の秋までに倒れたと聞いた。
猿に柿でも投げつけられたのだろう。柿の味は忘れたのに、投げたことだけは覚えている。
2006'11.10.Fri
子を背負い山を登る。落ち葉を踏みしめる足を見ながら。秋の色に染まった落ち葉は、母の足をも濡らしていく。目玉まで塗られた気がして目を閉じて、子を背負い直して歩き出す。雪道は足を凍らせた。かじかんだ手で子を支え、時折肩に積もった雪を払う。光る雪に目を刺されて目を閉じた。子と触れ合う肌がどくどくと鳴った。背負う子に叩かれて、若葉の上を歩き出す。柔らかい緑は視線を受け止め、受け流す。青臭い緑の匂いを胸一杯に吸い込んで深呼吸をした。脳まで達した匂いに目を伏せる。背負った子が身じろいだ。じりじりと焼ける音のする砂を踏んで前へ進む。日差しに照りつけられて息が荒れた。汗が浮いて視界を汚し、目を拭う。汗ばんだ母の手から子が滑った。
横殴りの風のような泣き声に母は目を覚ました。泣きじゃくる子に視線をやり、一度は抱き上げるが落とすように布団へ戻す。いっそう声を震わせる子の喉に手を伸ばした。暖かい皮膚に触れたとき、じくんと腹が痛んだ。幼い我が子の首を撫で、赤子を背負って立ち上がる。
横殴りの風のような泣き声に母は目を覚ました。泣きじゃくる子に視線をやり、一度は抱き上げるが落とすように布団へ戻す。いっそう声を震わせる子の喉に手を伸ばした。暖かい皮膚に触れたとき、じくんと腹が痛んだ。幼い我が子の首を撫で、赤子を背負って立ち上がる。
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