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言い訳置き場

言い訳を書いていきます。誤字の報告などあればありがたいです。 ※唐突にみゅネタややぎゅにおの外の人のかけ算が混ざるのでご注意下さい。 日常はリンクのブログから。

2025'01.19.Sun
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2006'11.11.Sat
やっぱり柿はここだろう。



塀を登って柿の木に乗り移る。庭に誰か見えたが気にしない。



「またやってんのかクソガキ。猿みてぇにひょいひょい登りやがって」

「あんた怒んねえから張り合いねえんだよなぁ」



縁側から沖田を見上げてくる老人を見た。赤ら顔で頭ははげ上がっている。耳の後ろに残った髪が思い思いに泳いでいてタコかカニのようだ。



この柿の木の持ち主はひとりで住んでいる。この季節になると沖田が木に登っては柿を取りにくるので顔見知りだ。足場のない塀に登れる者はあまりいないので、ほぼ沖田専用になっている。



「投げろ」



食べ頃の柿を選んで投げてやる。受け損ねて禿頭に当たって地面に落ち、沖田は笑った。呆れて柿を拾う老人を見ながら自分も柿にかぶりつく。



「老人バカにしてると罰当たるぞ」

「さるかに合戦の猿みたいに?」

「テメーみたいなバカでも知ってんのか」

「そこまでバカじゃねーや」



柿を更に幾つか投げてやる。それは全部彼めがけて投げたので、すべて頭にぶつかった。また沖田がけらけら笑ったが、老人は溜息を吐くだけだ。



「ここの柿も食いおさめだな。俺ァ冬越えたら江戸に行くんでィ」

「まだそんなこと行ってんのか」

「ちゃんと近藤さんと約束したんだぜィ」

「寂しくなるな」



食べかけの柿を手にしたまま沖田は動きを止めた。老人はそれきり黙って柿を食べている。



柿を幾つか懐にしまい、沖田は塀に戻った。少し視線を寄越しただけの老人と目を合わせ、何も言わず立ち去る。



幾つ取っても文句を言わない。沖田は彼がどんな人物か何も知らなかった。



*



故郷へ戻ったとき、柿の頃であるのを思い出して足を運んだ。塀には簡単に手が届くようになっていたが、そこに柿の木はなかった。塀の向こうからは子どもの笑い声がした。



沖田が来なくなった年の秋に切り倒し、次の秋までに倒れたと聞いた。



猿に柿でも投げつけられたのだろう。柿の味は忘れたのに、投げたことだけは覚えている。
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