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言い訳置き場

言い訳を書いていきます。誤字の報告などあればありがたいです。 ※唐突にみゅネタややぎゅにおの外の人のかけ算が混ざるのでご注意下さい。 日常はリンクのブログから。

2025'05.10.Sat
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2012'11.20.Tue
「しろべー!」

腹の底に響く声に、はっとして目を開けた。ひっくり返るような格好で藪の中に落ちたまま、気を失っていたらしい。体育委員会の活動中だったことは覚えているが、どうしてこんな状況になっているのかは思い出せなかった。

体は全身ずぶ濡れであった。そういえば裏山に入ったときに降っていた雨はいつの間にかやんでいる。足場の悪い中で足を滑らせて転がったのだろう。戻らなくては。

声は時友を呼び続けている。起きあがろうともがいていると人影が時友の前に飛び出した。ぐいと両腕を捕まれて引き上げられる。軽々と時友をぶらさげて満面の笑みを見せたのは、体育委員長の七松小平太であった。時友を振り回しながら、怪我はないか、と豪快な確認をする。小さな切り傷などはあるだろうが、目立つ痛みはない。揺らされながらありませんとどうにか答えれば、小平太はやはり豪快な笑い声をあげた。

「よかったよかった。金吾が四郎兵衛がいないと大騒ぎでな」

「すみません」

「何、かまわん。下見は滝夜叉丸たちに任せてきたからのんびり帰ろう」

のんびり、と言っても走るのだろう。この体育委員長がてくてく歩いているところなど見たことがない。時友を降ろした七松はじろじろと時友の全身を眺め、汚いなぁ、と明け透けに言った。確かに雨の中を走った後に転がったので全身泥だらけだ。しかしそう言う七松も同じことだ。一緒ですね、と言えば七松は初めて気がついたように自分の体を見回して、大きな口を開けて笑う。そしてきょろきょろと辺りを見回した後、屈んで時友を見ながら目を輝かせて言った。

「四郎兵衛は大人しい子だから、面白い場所に連れていってやろう。但し、私がいいと言うまでひとっ言も喋るんじゃないぞ」



*



温泉だ、と声を上げそうになって、時友は慌てて口を手で覆う。その様子を見て七松は表情だけで笑い、時友の頭を撫でた。

七松に引かれるまま山の奥へ向かった先、目の前が開けたと思えば、そこに広がるのは真っ白な湯気を上げている温泉だった。誰かの手が入っているのか岩と土で囲まれ、白く濁ったようなお湯が沸き続けている。体育委員会で学園のものである山はほとんど走り抜けたが、こんなところに温泉があるとは知らなかった。

驚いている時友を後目に、七松はさっさと汚れた着物を脱ぎ捨て、ふんどしまでも取り去った。確かに時友も全身ずぶ濡れで、下着まで雨がしみている。思い出すと不快になり、真似をするように着物を取っ払った。七松がそうしているように、隣に並んで温泉の端で着物を濯ぐ。溶けるように泥は落ち、七松はきれいになった着物を絞って近くの木に引っかけた。時友がもたもたしていると七松がそれをまとめて絞り、同様に木の枝へと放り投げる。

言葉は口にしないまま七松は時友の背を押し、促されるまま湯に足をつけた。熱すぎない湯は時友を包み込む。ゆっくり肩までお湯につかると、自然と深い溜息がこぼれた。七松が隣で豪快に体を沈め、お湯に押されて体が傾く。

ぐいと腕を引かれたかと思うと頬を拭われた。手を伸ばして七松の鼻先も拭いてやる。七松はくすぐったそうに口元を歪め、今にも笑い出しそうであった。それがおかしくて時友が肩を揺らすと沈められそうになり慌てて七松の手から逃げ出す。湯をかいて泳ぐように逃げた先で何かにぶつかり、時友は顔を上げた。かたいものではない。温泉と同じ温かさのそれは包み込むように柔らかく、月のように白い。しかしそれが「何」なのか、時友にはさっぱりわからなかった。壁のようでもあり小動物のようでもある。質量のある湯気、が一番近いだろうか。

困惑する時友の頭を七松が押さえつけた。慌てて見ると隣で七松はその湯気ともつかぬ白い影に頭を下げていて、時友もそれに倣った。動いてはいけないような気がしてつい息まで止めてしまい、苦しくなってきた頃にようやく七松が手を離したので、大きく息を吸って隣を見上げた。彼の視線の先では、ぼんやりとしたそれがざぶんとお湯を溢れさせながら温泉から出ていくところだった。正体を尋ねようとした時友だったが、七松に遮られて慌てて口を閉じる。

七松が時友の手を取った。指先まで温まったか確認したようだ。手振りで温泉からあがるように示されて縁の方へ近づくと外から白い影が迫った。とっさに会釈をしてやり過ごし、通過したと同時に転がるように温泉を出る。

七松が引っ張って回収した頭巾を渡されると、それは日に干したように乾いている。訪ねようと七松を見たがまだ話してはいけないようで、口を閉じて渡された忍び装束を着た。着物もすっかり乾いている。確かに雨は上がったが、短時間で乾くほどの快晴ではない。

着替えたのを確認して、七松は来たときのように時友を誘導して走り出した。やはり来たときと同じように、よく知るはずの森の全く知らない場所を走り抜けて、ふっと空気が変わったと思えばいつものマラソンコースに出る。そこでようやく七松が声を上げて笑いだした。乱暴に時友の頭を撫でる。

「うわぁ」

「よしよし、よく我慢した!」

「あのぅ、あそこは何ですか?あのもやもやしたものも」

「知らん!」

「はぁ」

「長次も知らなかったからな。何、口を利かなければ人だとばれないから大丈夫だ」

結局七松の言うことでは何もわからなかった。しかし生き字引と呼ばれる中在家長次も知らないいとなると、誰も知らないように思える。

「滝夜叉丸には内緒だ。あいつはべらべらうるさいからな。金吾も泣き言を言いそうだし。四郎兵衛も、もしまたあそこに出たら声を出すなよ」

「声を出したら、どうなるんですか?」

「知らん!」

「……」

豪快な人だと知ってはいたが、怖くはないのだろうか。しかしあの温かい温泉を思い返し、恐怖感はなかったことを思い出す。

「あ、次屋先輩はどうですか?」

何気なく七松を見上げると、初めて難しい顔をした。藪をかき分けて学園に向かいながら小さくうなる。

「あいつには迷ったら喋るなと言ってある。あいつたまに見つからんだろう、多分ああいう場所に入ってしまってるんだ」

「はぁ……」

「滝夜叉丸はそういう勘がない。次屋は入っても気づかない。四郎兵衛、『境』はわかったか」

「……何となく」

「うん、覚えておけ。まあ何かに会っても、大体は何もしなければいいだけだ」

「はい」

「よしっ、学園までマラソンだ!いけいけどんどーん!」

「どんどーん!」

七松について走り出した裏山はいつもと変わらない。温泉に寄った割にはまだ空は明るかった。夕食には十分間に合うだろう。思い出すと腹が鳴って、それを聞いていた七松と並んで笑いあった。
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2012'11.03.Sat
「うわっ!」

笠井の声が上がったと思えば、それに続いて物が倒れる音がする。洗面所でそれを聞いていた三上は溜息をつき、封をしたばかりの段ボールに大きく洗面所、と書き残す。それから油性ペンをジーパンのポケットにねじ込みながら、笠井のいる部屋へ向かう。そこには積み上げた段ボールの中で頭を抱えてうずくまっている笠井がいて、凶器と思われる段ボールからは衣類がこぼれて広がっていた。

「何してんだ」

「うう……角が……」

「大丈夫か?」

口ではそう言いながら三上が手を伸ばしたのは段ボールの方で、乱れた前髪の合間から笠井が恨めしげに睨んでくる。中身は衣類だから軽いものだ、大した痛みはなかっただろう。

「三上先輩は俺と荷物とどっちが大切なんですか」

「今は明日の引っ越しまでに荷造りを済ませることが何よりも大切だ」

「人でなしっ」

わっと顔を覆ってすすり泣きをしてみせる笠井を無視して、三上は段ボールに衣服を戻した。構わずにいると飽きたのか、黙って荷造りを再開した。

「三上先輩、あのね」

「何だ」

「すごく言いにくいんだけど」

「うん」

「さっきベッドの下から三上先輩のICカードが出てきイタッ」

最後まで言うのを待たずに手が出た。再び頭を抱えて笠井は唇を尖らせる。

「俺のせいじゃないでしょ!?」

「あれはお前に貸して、お前がなくしたんだろうが!」

「俺はちゃんと返しましたぁ〜」

「返されてません〜」

「……」

「……さっさと片づけろ。お前本気でこれ片づくと思ってたのかよ、明日業者来るの9時だろ?」

「いやぁ思いの外はかどらず……」

「ずぼら」

「神経質」

じっとにらみ合った後、三上が先に手を振った。笠井はにやりと笑って作業を再開する。

「三上先輩は年々丸くなりますね」

「お前はいつまで経ってもかわいげがねぇな」

「知ってます?もう人生の半分一緒にいるんですよ」

「さっさと解放されてぇもんだな」

ひっくり返った段ボールの分だけ片づけて、立ち上がった三上はポケットの油性ペンを投げた。笠井はそれを受け損ね、ペンは部屋の端まで転がっていく。

「結局家電どうするんだ?」

「あ、誠二が一旦引き取ってくれることになったんです。後輩に聞いてみるって」

だらりと体を倒して笠井はペンに手を伸ばす。しかし寝そべっても手は届かず、唸り声をあげてそばまで這った。呆れて溜息をついたが、三上は何も言わない。今更どんな姿を見たって、三上にとっての笠井が変わるはずもなかった。

「今夜来てくれます」

「じゃあ冷蔵庫空にしなきゃなんねーのか」

「……あっ!」

「何だよ」

「アイスっ、アイスが入ってる!」

ぱっと立ち上がった笠井はさっきとはうって変わって、俊敏に部屋を飛び出した。三上は肩を落とし、結局拾われなかったペンを取って笠井が詰めた箱に衣類と書いた。更にガムテープで封をしていると、笠井がカップアイスを両手に戻ってくる。

「はい。食べて」

「ったく……冷凍は他にはねえな?」

「あとは調味料ぐらい」

並んでアイスを食べている場合ではないのだが、笠井は完全にやる気をなくしたようだ。仕方なしにさっさと片づけようとスプーンを取る。笠井が最近はまっているアイスだ。引っ越しの日程はもっと早く決まっていたのだから、もう少し計画性のある買い物をしてほしい。こんなことでこの先大丈夫なのだろうか。

今更話すこともなく、それから無言のままアイスを食べ終える。洗い物のスプーンを回収し、アイスのカップはすでに半分ほど埋まったゴミ袋に投げ入れた。

「俺次は台所片づけるから、お前はさっさとこの部屋どうにかしろよ」

「はぁ〜い」

「何でも捨てていいなら俺がやるぞ」

「わかってますぅ〜自分でしますぅ〜」

不満げな様子に苦笑しながら三上は台所へ向かった。ひとり暮らしが長い割に料理は上達しなかった。しかし嫌いではなかったようで、台所はそれなりに汚れている。

欠けているような食器は持ち主の意見を聞かないまま処分を決めて、正体不明の缶詰などの怪しい食品もさっさと分別して捨てていった。妙に生真面目かと思えばずぼらなところも多く、何度くだらないことで喧嘩しただろうか。



――人生の半分。20年や30年生きてきた程度の半分が長いのか短いのかはわからない。しかしその時間なりの出来事が多々あったはずなのに、改まると特に言えるようなこともないような気がした。まだ児戯の延長のように思えることさえある。その程度、だったのだろうか。



大方片付けて区切りをつけた頃には外は薄暗くなっていた。冷蔵庫などの家電はきれいにしたが、シンクなどはどうせ業者が入るだろうからそこそこだ。

笠井はどうしているだろう。集中していて忘れていたが、一度も邪魔しに来なかった。嫌な予感がする。手を洗って部屋に向かうと、案の定笠井は部屋の真ん中で段ボールに囲まれて横になっていた。起こしてやろうと足音を立てて近づいたが、笠井は目は開けていた。天井を見ていた視線を三上に移す。

「……思ってたより、この部屋での生活長かったなぁと思って」

「毛布と机代わりの段ボールしかなかったのにな」

「若かったなぁ」

「バカだったんだよ」

「そうかも」

笠井は目を閉じて深呼吸をした。しゃがみ込んで前髪に触れる。昔から変わらないように思えても、もう井の中の蛙だった中学生ではないのだ。

「終わらないような、気がしてました」

「……そうかもな」

「楽しかったのかも」

「……最後に」

「んー?」

「一緒にあの狭い風呂でも入るか?」

「い〜や〜で〜す〜!ばか!」

「はは。俺、帰るから」

「あ、はい」

「ちゃんと片づけ終わらせろよ。俺もう来ねぇんだからな」

「わかってますぅ」

「じゃあな」

「はい」

なんとなく名残惜しく、笠井の額を叩いて立ち上がる。仕事終わりでこの部屋に来たり、玄関で喧嘩をしたり、些細なことやくだらないことばかりだった。

玄関で靴を履いていると見送るためか笠井が出てきた。名残惜しいのは自分だけではないのかもしれない。

「何?お別れのキス?」

「ばか。鍵下さい」

「ああ」

ポケットに入れていた鍵を取り出し、笠井に渡す。キーホルダーも何もない鍵を見つめて笠井はそれを握りしめる。

「……どうなるんですかね」

「さあな。明日俺がいなくて泣くなよ」

「泣きません」

「……じゃあな」

「……明日から」

ドアに手をかけたが振り返る。笠井は三上をまっすぐ見て、困ったような笑みを見せた。

「また、同じ場所に帰るんですね」
2012'09.21.Fri
「いらっしゃいませ」

左近の声に、客は会釈ともつかない程度に頭を下げた。会社帰りであろう、スーツ姿の一人客。珍しいことじゃない。左近はお決まりの流れとして、カウンターに座った男の前にお絞りを差し出した。知らない顔だ。渡したメニューを開いているところを見ると、常連ではなさそうである。

店の奥を見る。三郎次はまだ店員の振りをして彼女といちゃついていた。呆れはするがわざわざ呼び戻すほど野暮ではない。左近は客に視線を戻す。

「決まらなければ、イメージでも結構ですよ」

左近が声をかけると彼は驚いた表情を見せたが、すぐに眉を下げて困ったように笑った。

「それじゃあ、君の好きなやつ」

「私の、ですか」

「失礼だろうが、酒ならなんでもいいんだ」

「……好みぐらいはお聞きしても?」

「そうだな、甘い酒はあまり好きじゃない」

「かしこまりました」

バーテンをしているが、実は左近はこの手の注文は苦手であった。頭がかたいのだと三郎次たちにはバカにされるが、結局お決まりのものになってしまう。元々酒好きな久作や三郎次に比べると知識面でもやや弱い。

手際よくやっていると見せかけながら目は必死でカウンター裏に並ぶボトルを睨み、最終的に失敗なしの自分の好きな味になる。注文通りなのだからと開き直り、携帯を見ていた客の前に差し出した。

「ありがとう」

携帯を手放した男はグラスを取った。氷を慣らしながらグラスを傾け、一口含んですぐに降ろす。しかしその口角は上がっていて、左近はこっそり安堵の息をはいた。



その日から男は時々店に来るようになった。甘いお酒は飲まない。つまみはあまりいらない。オリーブは好き。雨の日は来ない。金曜日は来ない。携帯で見ているのは時事ニュース。ひとり暮らし。料理は得意。



来客の足音に左近は顔を上げる。

「いらっしゃいませ」

あの男ではなかった。男女の二人連れだ。お決まりの用意を始める。

あの人に会いたいと、思っている自分には見ない振りをした。
2012'09.15.Sat
途中までだけどデータが出てきた。
補足として
謙也と光は結婚。息子(敦士)あり。


2012'09.02.Sun
「空を泳ぐ金魚は、どうやって捕まえたらいいんだろう」

誰にでもなくぽつりとつぶやく。孫次郎が日陰から見上げる初秋の青空を、真っ赤な金魚が長い尾鰭を揺らして泳いでいる。飛んでいるというのだろうか。ちらちらと自由に動き回る金魚は美しく、孫次郎は届かない手を伸ばした。

「孫次郎は金魚に見えるの」

孫次郎がびくりとして飛び上がる。ごめん、の声に振り返ると、三治郎が申し訳なさそうに眉を下げていた。しかしすぐにばっと明るいいつもの笑顔になる。

「生物委員会集合だって。また誰かが逃げたみたい」

「三治郎は何に見えるの?」

三治郎は顔をしかめる。悪いことを聞いただろうかと取り消そうとしたが、三治郎はうなって首を傾げた。



*



青空よりも、夕日に染まった空の方が金魚は生き生きしているように見えた。長屋に帰る途中に空に金魚を見つけ、孫次郎は足を止める。優雅に、力強く金魚は宙を舞う。あの金魚は金魚鉢で飼えないのだろうか。蓋をしなければ飛んでいってしまうだろうか。

見入っている孫次郎をからかうように、ひらひらと金魚は近づいてくる。日が沈むのに合わせて距離が縮まる。孫次郎は思わず手を差し出した。警戒も見せない金魚はまるで孫次郎を目指すように泳ぎ、孫次郎は嬉しくなって金魚を待つ。夕闇が迫る中で、金魚はいっそう赤く見えた。

金魚を捕まえたらそっと手で包み、竹谷に育て方を聞きにいこう。籠で飼うのなら平太に籠を作ってもらって、飼うのは難しいと言われても必ず自分で最後まで面倒を見るのだ。



手に金魚が触れんばかりに近づいた瞬間、金魚をかき消すように宙から焼け爛れた真っ黒な腕がつきだした。孫次郎が息を飲む間にその腕は孫次郎の手を鷲掴み、恐ろしい力で宙につり上げる。



「こらぁっ!」



孫次郎を引きずり降ろしたのは日向であった。普段は陽気な先生が眉をつり上げ、孫次郎を掴んだ腕を払い落とす。たくましい体に抱かれた孫次郎の背中に、三治郎が抱きついた。孫次郎の視界の端に、斜堂が何かを追っていく姿が見える。



「もう大丈夫だ」

顔を上げると日向がいつも通りの、まぶしいほどの笑みを向けていた。まだ何が起きたのか理解できないが、腕に残る痛みは確かなものだ。背中にしがみついた三治郎は肩を揺らして嗚咽をあげている。熱い涙が背中を濡らしていき、じわじわと遅れてやってきた恐怖に足がすくむ。ぼろぼろと涙がこぼれ、日向は三治郎ごと孫次郎を抱きしめた。







*







あれからも金魚は現れる。優雅に空を舞い、時折見える者を誘っている。黄昏時を泳ぐ金魚を見ながら、孫次郎は隣で同じく方を見ている三治郎に聞いた。

「三治郎には何に見えるの」

「……炎」

それもまた、美しいのだろう。
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