言い訳置き場
言い訳を書いていきます。誤字の報告などあればありがたいです。 ※唐突にみゅネタややぎゅにおの外の人のかけ算が混ざるのでご注意下さい。 日常はリンクのブログから。
2014'06.28.Sat
「メアリー」
愛しい相手を呼ぶ声は甘く、それはかつて自分に向けられていたものだった。男なんて結局若い女の方がいいんでしょ、とアルミンがからかえば、当然、と堂々とした答えが返ってくる。その頬がみっともないほど緩んでいて、アルミンは怒る気も失せて笑ってしまった。
ジャンの腕の中に収まった小さな娘は両親のやりとりなど知らず、親指を吸ってうとうとと舟をこいでいる。それを邪魔するようにジャンが額に唇を落とせば丸い瞳はジャンを見上げるが、すぐにまた瞼が下がった。
「もうすぐ幼稚園なんて信じられないな」
「いじめられたりしねぇかな」
「ジャンみたいな子がいたらいじめられちゃうかも」
「ぜってー許さねえ」
「自分のこと棚に上げて」
「覚えてねえよ」
「僕はちゃぁんと覚えてるからね」
ジャンとは幼稚園からのつきあいだ。その頃はアルミンに興味がないどころか、鈍くさいだのなんのとアルミンをいじめていたことはしっかり覚えている。知らねえな、と嘯くジャンは笑っていた。
名残惜しげに、ジャンは眠りに落ちた娘をベッドにおろした。自分のものより高い体温の生き物を手放すときに感じるもの悲しさを、アルミンも知っている。体に合わないほど大きく上下する腹に布団をかけて、ジャンは指先で娘の額を撫でた。
「もし、僕とメアリーのどちらかしか助けられない状況になったら、ジャンはどうする?」
「そりゃ、メアリーを助けるな」
「あっそう」
「だってお前、怒るだろ」
こちらも見ずに、いう男を。
好きでいられることを、幸せだと思う。
愛しい相手を呼ぶ声は甘く、それはかつて自分に向けられていたものだった。男なんて結局若い女の方がいいんでしょ、とアルミンがからかえば、当然、と堂々とした答えが返ってくる。その頬がみっともないほど緩んでいて、アルミンは怒る気も失せて笑ってしまった。
ジャンの腕の中に収まった小さな娘は両親のやりとりなど知らず、親指を吸ってうとうとと舟をこいでいる。それを邪魔するようにジャンが額に唇を落とせば丸い瞳はジャンを見上げるが、すぐにまた瞼が下がった。
「もうすぐ幼稚園なんて信じられないな」
「いじめられたりしねぇかな」
「ジャンみたいな子がいたらいじめられちゃうかも」
「ぜってー許さねえ」
「自分のこと棚に上げて」
「覚えてねえよ」
「僕はちゃぁんと覚えてるからね」
ジャンとは幼稚園からのつきあいだ。その頃はアルミンに興味がないどころか、鈍くさいだのなんのとアルミンをいじめていたことはしっかり覚えている。知らねえな、と嘯くジャンは笑っていた。
名残惜しげに、ジャンは眠りに落ちた娘をベッドにおろした。自分のものより高い体温の生き物を手放すときに感じるもの悲しさを、アルミンも知っている。体に合わないほど大きく上下する腹に布団をかけて、ジャンは指先で娘の額を撫でた。
「もし、僕とメアリーのどちらかしか助けられない状況になったら、ジャンはどうする?」
「そりゃ、メアリーを助けるな」
「あっそう」
「だってお前、怒るだろ」
こちらも見ずに、いう男を。
好きでいられることを、幸せだと思う。
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2014'06.28.Sat
額に汗が浮いている。冷や汗に近いそれに隣のミカサが気づかないことを願いながら、ジャンはこっそり汗を拭った。
ミカサの視線の先にはエレンがいた。ジャンがエレンを気に食わないと思う一因は、あの男がミカサの視線を気にも留めないからだ。家族のようなもの、と彼らは言うが、ジャンからみればそれは家族に向けるものではない。否、確かに母親が息子に向けるような、どこか懐かしさを感じる色を含んでいることもあるのだ。しかしそれだけではない。恋ではない。それはもっと、崇拝にさえ近いものだ。
ミカサの視線に気づかず、エレンはアニに教えてもらった格闘術でライナーと組み合っている。小柄なアニは大柄のライナーをころころと転がしてしまうが、エレンはまだ体格差には勝てないのか、代わりにライナーにころころと転がされている。いつもなら怒り出しそうなミカサだが、今回はただエレンが理不尽に攻められているのではないとわかるからか、黙ってそれを見つめていた。少しでもライナーが不振な素振りを見せたら猫のように飛びかかるだろう。それだけ集中してライナーを見ているミカサが、隣にジャンがいることをまったく意識していないことは明白だ。
――一目惚れだった。
そう一言で言えばひどくあっさりしたものだが、今は切られてしまったミカサの艶やかな黒髪に見とれたあのときの胸の高鳴りを、まだ忘れていない。
我ながら不毛な思いを抱いている自覚はある。もうミカサがエレンから離れることはないだろうと、どこかそんな諦めにも似た確信があった。
ならばさっさと忘れてしまえばいいのに、と自分に呆れる。隣に立つだけで緊張して、言葉も出なくなって、……なんと不毛な恋だろう。
「……あいつ、何回やられる気だよ」
やっと出てきたのは嘲笑を含むそんな言葉だ。ミカサの気を引けるはずもないのに。情けなさに頭を抱えたくなる。
しかしミカサはこちらに視線を降った。ここらで見ない漆黒の瞳は濡れて、きっとジャンではなくてもどきりとするだろう。
「私はジャンが羨ましい」
低く、甘い。名を呼ばれたことに戸惑って理解が遅れる。
「……は?」
「男の子は羨ましい。私はいさかいを止めることはできるけれど、興奮を共有することはできないから」
ミカサはすぐに視線をエレンに戻してしまった。
少しだけ、欲が出る。彼女が自分を認識していることに浮かれてしまう。
「どういうことだ?」
「……昔から、ずっと。私はエレンとアルミンのようにはなれない」
「あ〜……あの冒険の話のことか?」
ミカサが小さく頷いた。まともなコミュニケーションにやや声がうわずる。
「あれは、あいつらだけだろ。オレだって何がおもしろいのかわかんねえよ」
「そう?」
「ああ」
「……エレンとアルミンは、最近は少なくなったけれど、ずっと同じ話をしていた。私はずっとそれを聞いていた」
「へぇ。あいつら、もう少し気を使えってんだ」
「私は……やっぱり羨ましかったのだと思う。同じ気持ちにはなれないし、はっきり言うと興味もない。だけど、それを共有できなかった」
「あ〜……そうだな……うちの母親が言うにはだな、女はリアリストで、男はロマンチストなんだって。女は生まれた子どもを育てなきゃなんねぇから、夢ばかりみてらんねぇんだと」
ミカサがジャンを見て、ぱちりと瞬きをした。薄い瞼の裏に隠れた漆黒はすぐにジャンを見据える。こんなに美しい黒を他に知らない。
「だから……別に、ミカサが羨ましがるようなことでもなんでもないぜ。あいつらが子どもだってだけだ」
ミカサはもう一度瞬きをして、やはり視線をエレンに戻した。つられてジャンもそちらを見ると、疲れきったのか、エレンは倒れたまま起き上がらずに何かわめいている。
「男なら――ジャンならわかる?」
ぽつりとこぼす小さな声でさえ、ひとりの男を惑わせていることを、彼女は知らない。彼女は見せかけのリアリストだ。
「わかんねえよ。あんな現実を見てない馬鹿にはなれねぇ」
「そう……」
私と同じね。
そのたった一言がどれほどの力を持つのか、彼女はやはり知らないのだ。
ミカサの視線の先にはエレンがいた。ジャンがエレンを気に食わないと思う一因は、あの男がミカサの視線を気にも留めないからだ。家族のようなもの、と彼らは言うが、ジャンからみればそれは家族に向けるものではない。否、確かに母親が息子に向けるような、どこか懐かしさを感じる色を含んでいることもあるのだ。しかしそれだけではない。恋ではない。それはもっと、崇拝にさえ近いものだ。
ミカサの視線に気づかず、エレンはアニに教えてもらった格闘術でライナーと組み合っている。小柄なアニは大柄のライナーをころころと転がしてしまうが、エレンはまだ体格差には勝てないのか、代わりにライナーにころころと転がされている。いつもなら怒り出しそうなミカサだが、今回はただエレンが理不尽に攻められているのではないとわかるからか、黙ってそれを見つめていた。少しでもライナーが不振な素振りを見せたら猫のように飛びかかるだろう。それだけ集中してライナーを見ているミカサが、隣にジャンがいることをまったく意識していないことは明白だ。
――一目惚れだった。
そう一言で言えばひどくあっさりしたものだが、今は切られてしまったミカサの艶やかな黒髪に見とれたあのときの胸の高鳴りを、まだ忘れていない。
我ながら不毛な思いを抱いている自覚はある。もうミカサがエレンから離れることはないだろうと、どこかそんな諦めにも似た確信があった。
ならばさっさと忘れてしまえばいいのに、と自分に呆れる。隣に立つだけで緊張して、言葉も出なくなって、……なんと不毛な恋だろう。
「……あいつ、何回やられる気だよ」
やっと出てきたのは嘲笑を含むそんな言葉だ。ミカサの気を引けるはずもないのに。情けなさに頭を抱えたくなる。
しかしミカサはこちらに視線を降った。ここらで見ない漆黒の瞳は濡れて、きっとジャンではなくてもどきりとするだろう。
「私はジャンが羨ましい」
低く、甘い。名を呼ばれたことに戸惑って理解が遅れる。
「……は?」
「男の子は羨ましい。私はいさかいを止めることはできるけれど、興奮を共有することはできないから」
ミカサはすぐに視線をエレンに戻してしまった。
少しだけ、欲が出る。彼女が自分を認識していることに浮かれてしまう。
「どういうことだ?」
「……昔から、ずっと。私はエレンとアルミンのようにはなれない」
「あ〜……あの冒険の話のことか?」
ミカサが小さく頷いた。まともなコミュニケーションにやや声がうわずる。
「あれは、あいつらだけだろ。オレだって何がおもしろいのかわかんねえよ」
「そう?」
「ああ」
「……エレンとアルミンは、最近は少なくなったけれど、ずっと同じ話をしていた。私はずっとそれを聞いていた」
「へぇ。あいつら、もう少し気を使えってんだ」
「私は……やっぱり羨ましかったのだと思う。同じ気持ちにはなれないし、はっきり言うと興味もない。だけど、それを共有できなかった」
「あ〜……そうだな……うちの母親が言うにはだな、女はリアリストで、男はロマンチストなんだって。女は生まれた子どもを育てなきゃなんねぇから、夢ばかりみてらんねぇんだと」
ミカサがジャンを見て、ぱちりと瞬きをした。薄い瞼の裏に隠れた漆黒はすぐにジャンを見据える。こんなに美しい黒を他に知らない。
「だから……別に、ミカサが羨ましがるようなことでもなんでもないぜ。あいつらが子どもだってだけだ」
ミカサはもう一度瞬きをして、やはり視線をエレンに戻した。つられてジャンもそちらを見ると、疲れきったのか、エレンは倒れたまま起き上がらずに何かわめいている。
「男なら――ジャンならわかる?」
ぽつりとこぼす小さな声でさえ、ひとりの男を惑わせていることを、彼女は知らない。彼女は見せかけのリアリストだ。
「わかんねえよ。あんな現実を見てない馬鹿にはなれねぇ」
「そう……」
私と同じね。
そのたった一言がどれほどの力を持つのか、彼女はやはり知らないのだ。
2014'06.22.Sun
丸い小さな目から、ぼろぼろと涙が零れている。湯上りのまま首にかけていたタオルをその目に押しつけて、嗚咽を漏らすのに呆れて三郎次は勢いよくソファーの隣に座りこんだ。柔らかいソファーは勢いで沈み、その反動で丸い肩が三郎次にもたれてぶつかる。
「何ッ回泣くんだよ。映画館で泣いて、レンタル始まったら借りてきて泣いて、結局DVD買って、何で地上波放送わざわざ見てまた泣いて」
「うっ、うるさいっ、なぁ!」
一瞬顔を上げた伊助は三郎次を睨んだが、すぐにまたタオルに顔を押しつけた。テレビから流れるのは映画のスタッフロール。しっとりとした音楽はこの映画のラストに相応しく、目を凝らさなければ読めないほど小さな文字で関係者の名前が流れていく。それを一瞥し、三郎次はソファーに体を預けた。ずるりと体重をかけてくる伊助をそのままに、小さくすすり泣くのを聞いている。
「……ほんとに、心臓に悪いから、泣くなよ」
まだ水分を含んだ髪に頬を寄せる。すん、と鼻を鳴らして、伊助が三郎次を見上げた。
「……泣かせたくないですか?」
「勝手に泣いてろ」
「……あのね、泣いたらお腹すいたんです。ラーメン半分こしません?」
「デブ」
「一緒に太りません?」
「好きにしろ」
ぱっと伊助は立ち上がった。スンと鼻をすすって、台所へ向かっていく。散々泣いていた割にはフットワークの軽いことだ。エンドロールの途中のテレビのチャンネルを変え、適当に回すと天気予報が始まった。梅雨入りしたと言いながらさほど雨に降られた印象がないのは、運がいいからなのだろうか。
三郎次も立ち上がって台所に向かう。冷蔵庫から冷えた麦茶を取り出せば、僕も、と声だけ飛んでくる。わざと顔をしかめて、グラスをふたつ取り出した。
鍋ではぐらぐらとお湯が煮立っている。そこに落とされた乾麺を箸でつつく横顔はまだ泣いた名残が残っていて、首に巻かれたタオルで目元をぬぐってやった。
「泣きすぎ」
「あれで泣けない三郎次さんがおかしいんです。人でなし」
「おーおー、人でなしで結構。お茶はやらん」
「下さい!」
「ん」
乱暴に注いだそれを差し出す。握った冷たいグラスに頬を緩め、伊助は麺をほぐしながらグラスの縁に口をつけた。
「何か入れますか?」
「ネギ」
「たまご……」
「夜中にやめとけよ」
冷蔵庫からネギのタッパーを取り出して伊助に渡す。ざらざらと鍋に適当にネギを落とし、小袋に入ったスープも流し込む。醤油の香ばしい匂いが漂い、その気のなかった三郎次の胃袋も刺激した。
「三郎次さん、器」
「どんぶり?」
「半分にするからもっと小さくていいです」
「じゃああれか」
「うん、あれぐらい」
棚から取り出した器をシンクに並べる。一人前のインスタントラーメンを半分にした夜食を、伊助が箸と共に差し出した。
「明日雨ですか?」
「晴れのち雨。降水確率30パー」
「微妙だなぁ」
器を手に、立ったままラーメンをすする。湯気で汗を浮かせて、熱いスープを口にする。
「厚手のもの洗ってしまいたいんだけどな。あ、三郎次さんももう着ない羽織り物出しておいてくださいね」
「ああ」
「あとね、三郎次さん」
「何?」
「海に行きませんか、先輩」
「何ッ回泣くんだよ。映画館で泣いて、レンタル始まったら借りてきて泣いて、結局DVD買って、何で地上波放送わざわざ見てまた泣いて」
「うっ、うるさいっ、なぁ!」
一瞬顔を上げた伊助は三郎次を睨んだが、すぐにまたタオルに顔を押しつけた。テレビから流れるのは映画のスタッフロール。しっとりとした音楽はこの映画のラストに相応しく、目を凝らさなければ読めないほど小さな文字で関係者の名前が流れていく。それを一瞥し、三郎次はソファーに体を預けた。ずるりと体重をかけてくる伊助をそのままに、小さくすすり泣くのを聞いている。
「……ほんとに、心臓に悪いから、泣くなよ」
まだ水分を含んだ髪に頬を寄せる。すん、と鼻を鳴らして、伊助が三郎次を見上げた。
「……泣かせたくないですか?」
「勝手に泣いてろ」
「……あのね、泣いたらお腹すいたんです。ラーメン半分こしません?」
「デブ」
「一緒に太りません?」
「好きにしろ」
ぱっと伊助は立ち上がった。スンと鼻をすすって、台所へ向かっていく。散々泣いていた割にはフットワークの軽いことだ。エンドロールの途中のテレビのチャンネルを変え、適当に回すと天気予報が始まった。梅雨入りしたと言いながらさほど雨に降られた印象がないのは、運がいいからなのだろうか。
三郎次も立ち上がって台所に向かう。冷蔵庫から冷えた麦茶を取り出せば、僕も、と声だけ飛んでくる。わざと顔をしかめて、グラスをふたつ取り出した。
鍋ではぐらぐらとお湯が煮立っている。そこに落とされた乾麺を箸でつつく横顔はまだ泣いた名残が残っていて、首に巻かれたタオルで目元をぬぐってやった。
「泣きすぎ」
「あれで泣けない三郎次さんがおかしいんです。人でなし」
「おーおー、人でなしで結構。お茶はやらん」
「下さい!」
「ん」
乱暴に注いだそれを差し出す。握った冷たいグラスに頬を緩め、伊助は麺をほぐしながらグラスの縁に口をつけた。
「何か入れますか?」
「ネギ」
「たまご……」
「夜中にやめとけよ」
冷蔵庫からネギのタッパーを取り出して伊助に渡す。ざらざらと鍋に適当にネギを落とし、小袋に入ったスープも流し込む。醤油の香ばしい匂いが漂い、その気のなかった三郎次の胃袋も刺激した。
「三郎次さん、器」
「どんぶり?」
「半分にするからもっと小さくていいです」
「じゃああれか」
「うん、あれぐらい」
棚から取り出した器をシンクに並べる。一人前のインスタントラーメンを半分にした夜食を、伊助が箸と共に差し出した。
「明日雨ですか?」
「晴れのち雨。降水確率30パー」
「微妙だなぁ」
器を手に、立ったままラーメンをすする。湯気で汗を浮かせて、熱いスープを口にする。
「厚手のもの洗ってしまいたいんだけどな。あ、三郎次さんももう着ない羽織り物出しておいてくださいね」
「ああ」
「あとね、三郎次さん」
「何?」
「海に行きませんか、先輩」
2014'06.16.Mon
マルコお誕生日おめでとう!マルコが素敵な1年を過ごせますように、メアリーから愛を込めて。
誕生日当日に届いていたポストカードは、少女らしい丸みを帯びた文字に似合わないシンプルなバースデーカード。花の女子高生である彼女がそれを選ぶ姿を想像してマルコは頬を緩めた。毎年あの手この手と趣向を凝らして誕生日を祝ってくれるのは親友の娘で、おかげでマルコは中年に足を踏み入れた今でも密かに誕生日を楽しみにしていた。
仕事に行く前に覗いた郵便受けに届いた祝いの言葉を手帳に挟み込み、マルコは今日も仕事へ出かけていった。いい年をして独り身のマルコだが、寂しいと思ったことはない。ここ数年は確かメアリーが来てくれて、一緒にディナーに行ったのだ。連絡があるかもしれないとスマートフォンには気にして目をやり、仕事も早く終わらせようと一日の計画を立てる。
本当は、今年は祝ってもらえないかもしれないと思っていた。マルコがメアリーから告白を受けたのは、まだ新生活も落ち着かない春のことだった。マルコが思っていたよりも遙かに大人だった少女はこちらの胸も苦しくなるような告白をしてくれた。それでも親子ほど年の離れた少女に、軽率な態度をとることはできない。きちんと彼女を振るのもまた、大人の役目だと思ったのだ。聡明な彼女は理解してくれたのか、少し気まずい期間もあったが今は以前と変わらず親しくしている。
――そう思っていたのは、マルコだけだったのかもしれない。
仕事が終わる頃になってもメアリーからの連絡は入らなかった。初めは彼女に何かあったのだろうかと心配になったが、帰りの電車に揺られながらはたと気がつく。
彼女には、もうわざわざマルコの誕生日に会いに来る理由がないのだ。
ちょうど止まった駅でマルコは電車を降りた。外はまだ明るいが、マルコはまっすぐ駅直結の百貨店へ足を向ける。ひとりの食事には慣れていたが、誕生日にひとりでディナーはなんとなく気恥ずかしい。奮発して総菜や酒でも買って帰ろう、と、賑やかな地下に降りていく。
誕生日をひとりで過ごすのは何年ぶりだろうか。柄にもなく寂しいなどと思ってしまう。腹周りが気になって最近控えていた揚げ物と、いいものが入っていると店員におすすめされた重めのワイン。ついでだからとチーズなどにも手を伸ばし、思っていたよりも重たい荷物を抱えて店を出る頃には辺りは暗くなっていた。
随分と、贅沢な生活をしていたのだと、今更気がついた。きっとマルコが誰かと家庭を築くことを望まなかったのは、満たされていたからだ。マルコを気にかけてくれる人がいて、無条件に愛を与えてくれた。どうして特別ではないなどと思えたのだろう。
これはいよいよ、流行の婚活とやらを検討するべきだろうか。
勿論本気でそんなことを考えたわけではない。マルコはもう腕の中のワインとチーズのことだけを考えて、浮かれたふりでマンションのエントランスを駈け上がる。
と、ガラスの自動ドアの前で立ち尽くしている少女を見つけて足を止めた。マルコが考えるより早く、足音で気づいた少女が振り返る。意志の強い瞳がマルコを射抜く。
「……メアリー」
「あっ……あの、その、たまたま……じゃなくて……びっくり……ええと、違うの」
困ったように視線をさまよわせる彼女は、もうとっくに終わっていただろうに学校帰りの制服姿だ。夏服は初めて目にする。まぶしい白い二の腕に思わず目を細めた。
「マルコ?」
「ああ……びっくりしただけ。カードありがとう」
「今日届いた?」
「うん、届いたよ」
「よかった」
メアリーは頬を綻ばせた。生まれたときからメアリーを知っているが、彼女の笑顔は変わらない。
「来るなら連絡してくれたらよかったのに。学校忙しかった?」
「ううん、あの――違うんだけど」
いつもははきはきとした彼女らしからぬ淀みが気になる。名前を呼べばうつむいてしまって、何か悪いことをしただろうかと焦った。
「あの……あのね、マルコ、お誕生日おめでとう」
「ありがとう。もうめでたい年じゃないけどね」
「ううん、私来年だって、10年後だって……」
メアリーは口を閉じた。困ったようにマルコを見上げ、首を傾げる。
「あのね、おめでとうって、直接言いたかっただけなの。……あんまり、出しゃばらないようにしたかったんだけど、何でもない日にできなかったな」
最後はひとり言のようにつぶやいて、メアリーは制服の裾を引っ張った。お嬢様学校などと囁かれる私立の女子校のセーラー服はマルコが思春期に憧れたものと変わらない。メアリーによく似合っている。
どんな思いで、彼女は今日ここまできたのだろう。
「じゃあ、帰るね」
「えっ」
「パパに何も言ってないから、早く帰らないと怒られちゃう」
「おっ、送る!ちょっと待ってて」
「いいよ、子どもじゃないもん」
「子どもじゃないから、だよ」
「……うん」
また困らせたようだが、マルコは気持ちが焦るばかりで何もフォローできなかった。メアリーをエントランスに残し、急いで車のキーを取りに行く。もどかしく鍵を開けて部屋に飛び込み、マルコはしゃがみ込んで顔を覆った。
本当はもう、気づいている。
――彼女をただの、友人の娘だと思っていない。
深く溜息をつき、重い体を持ち上げる。
願うのは、彼女の幸せ。いつか彼女が経験する本当の恋を、応援しようと誓うのだ。
誕生日当日に届いていたポストカードは、少女らしい丸みを帯びた文字に似合わないシンプルなバースデーカード。花の女子高生である彼女がそれを選ぶ姿を想像してマルコは頬を緩めた。毎年あの手この手と趣向を凝らして誕生日を祝ってくれるのは親友の娘で、おかげでマルコは中年に足を踏み入れた今でも密かに誕生日を楽しみにしていた。
仕事に行く前に覗いた郵便受けに届いた祝いの言葉を手帳に挟み込み、マルコは今日も仕事へ出かけていった。いい年をして独り身のマルコだが、寂しいと思ったことはない。ここ数年は確かメアリーが来てくれて、一緒にディナーに行ったのだ。連絡があるかもしれないとスマートフォンには気にして目をやり、仕事も早く終わらせようと一日の計画を立てる。
本当は、今年は祝ってもらえないかもしれないと思っていた。マルコがメアリーから告白を受けたのは、まだ新生活も落ち着かない春のことだった。マルコが思っていたよりも遙かに大人だった少女はこちらの胸も苦しくなるような告白をしてくれた。それでも親子ほど年の離れた少女に、軽率な態度をとることはできない。きちんと彼女を振るのもまた、大人の役目だと思ったのだ。聡明な彼女は理解してくれたのか、少し気まずい期間もあったが今は以前と変わらず親しくしている。
――そう思っていたのは、マルコだけだったのかもしれない。
仕事が終わる頃になってもメアリーからの連絡は入らなかった。初めは彼女に何かあったのだろうかと心配になったが、帰りの電車に揺られながらはたと気がつく。
彼女には、もうわざわざマルコの誕生日に会いに来る理由がないのだ。
ちょうど止まった駅でマルコは電車を降りた。外はまだ明るいが、マルコはまっすぐ駅直結の百貨店へ足を向ける。ひとりの食事には慣れていたが、誕生日にひとりでディナーはなんとなく気恥ずかしい。奮発して総菜や酒でも買って帰ろう、と、賑やかな地下に降りていく。
誕生日をひとりで過ごすのは何年ぶりだろうか。柄にもなく寂しいなどと思ってしまう。腹周りが気になって最近控えていた揚げ物と、いいものが入っていると店員におすすめされた重めのワイン。ついでだからとチーズなどにも手を伸ばし、思っていたよりも重たい荷物を抱えて店を出る頃には辺りは暗くなっていた。
随分と、贅沢な生活をしていたのだと、今更気がついた。きっとマルコが誰かと家庭を築くことを望まなかったのは、満たされていたからだ。マルコを気にかけてくれる人がいて、無条件に愛を与えてくれた。どうして特別ではないなどと思えたのだろう。
これはいよいよ、流行の婚活とやらを検討するべきだろうか。
勿論本気でそんなことを考えたわけではない。マルコはもう腕の中のワインとチーズのことだけを考えて、浮かれたふりでマンションのエントランスを駈け上がる。
と、ガラスの自動ドアの前で立ち尽くしている少女を見つけて足を止めた。マルコが考えるより早く、足音で気づいた少女が振り返る。意志の強い瞳がマルコを射抜く。
「……メアリー」
「あっ……あの、その、たまたま……じゃなくて……びっくり……ええと、違うの」
困ったように視線をさまよわせる彼女は、もうとっくに終わっていただろうに学校帰りの制服姿だ。夏服は初めて目にする。まぶしい白い二の腕に思わず目を細めた。
「マルコ?」
「ああ……びっくりしただけ。カードありがとう」
「今日届いた?」
「うん、届いたよ」
「よかった」
メアリーは頬を綻ばせた。生まれたときからメアリーを知っているが、彼女の笑顔は変わらない。
「来るなら連絡してくれたらよかったのに。学校忙しかった?」
「ううん、あの――違うんだけど」
いつもははきはきとした彼女らしからぬ淀みが気になる。名前を呼べばうつむいてしまって、何か悪いことをしただろうかと焦った。
「あの……あのね、マルコ、お誕生日おめでとう」
「ありがとう。もうめでたい年じゃないけどね」
「ううん、私来年だって、10年後だって……」
メアリーは口を閉じた。困ったようにマルコを見上げ、首を傾げる。
「あのね、おめでとうって、直接言いたかっただけなの。……あんまり、出しゃばらないようにしたかったんだけど、何でもない日にできなかったな」
最後はひとり言のようにつぶやいて、メアリーは制服の裾を引っ張った。お嬢様学校などと囁かれる私立の女子校のセーラー服はマルコが思春期に憧れたものと変わらない。メアリーによく似合っている。
どんな思いで、彼女は今日ここまできたのだろう。
「じゃあ、帰るね」
「えっ」
「パパに何も言ってないから、早く帰らないと怒られちゃう」
「おっ、送る!ちょっと待ってて」
「いいよ、子どもじゃないもん」
「子どもじゃないから、だよ」
「……うん」
また困らせたようだが、マルコは気持ちが焦るばかりで何もフォローできなかった。メアリーをエントランスに残し、急いで車のキーを取りに行く。もどかしく鍵を開けて部屋に飛び込み、マルコはしゃがみ込んで顔を覆った。
本当はもう、気づいている。
――彼女をただの、友人の娘だと思っていない。
深く溜息をつき、重い体を持ち上げる。
願うのは、彼女の幸せ。いつか彼女が経験する本当の恋を、応援しようと誓うのだ。
2014'06.07.Sat
マルコ、甘い声が鼻孔をくすぐり、力が抜ける自分の体を叱咤してマルコはジャンを押し返した。それでもこんな弱い力ではマルコが本気で嫌がっていないことなど、きっとジャンには見抜かれてしまっている。少しだけアルコールの力を借りたジャンの熱い手がマルコの手の甲を滑り、カッターシャツの袖から指先を侵入させる。手首の骨をなぞられて、背筋を震わせた。
「マルコ」
力のないマルコの抵抗など物ともせず、ジャンは顔を寄せる。出会った頃よりも年を経て肉を落とした頬は男らしく、少し鋭い目は今は甘えるようにマルコだけを見つめている。マルコ、とただ呼ぶ声は、切羽詰まったものだった。
見ていたDVDはもう本編を終了し、メニュー画面のBGMをただ流している。これがもっと激しい曲であれば誤魔化したのに、別れのシーンに使われた曲は切なくもムード作りの役にしかたたなかった。
ジャンの体温を、拒めない自分がいる。
「マルコ、マルコ」
「ジャン、駄目だ」
「マルコ」
ほとんど伸し掛かるように、マルコはソファーに押しつけられる。額同士が触れて息を飲んだ。
「マルコ」
「駄目だ、ジャン、君にはアルミンがいて、僕にも」
「なんで駄目なんだよ。オレはまだ、マルコのことが好きだ。アルミンのことだって傷つけたいわけじゃない、それでも、どうしてお前もオレを好きなのに、触れちゃいけないんだ」
「ジャン、僕は」
「好きだろ、オレのこと」
「やめてくれ」
「マルコ」
言葉と共に熱い息がかかる。それと同時に泣きたくなる。それはもう何度も、自分に聞いて、答えを出してきたことだ。もうきちんと消化したはずなのに、ジャンの言葉ひとつ、仕草ひとつで呼び起されてしまう。
「マルコ」
「ジャン、駄目だ」
それでも、もう彼の目を拒めない。
震える唇が重なる。たった一瞬の熱でも焼けるように体が熱くなり、すぐにジャンを引き離そうとした手は先手を取ってジャンに捕まれる。さっきまでのじれったさが嘘のように、噛みつくようなキスは決定的で、もうふたりは自分を止めることができなかった。
お互いを強く抱きしめ、唇を合わせる。熱い息に溺れるように貪って、濡れた舌を絡ませあい、性急な手つきがもどかしく服を脱がしていく。その間も惜しむようにキスを深め、その合間にお互いの名前を呼び続けた。
あぁ、と深く、甘い声を上げる。
ジャンの唇が触れる場所から溶けていくように、マルコは劣情に溺れていった。
始めに拒んだのはマルコだった。ジャンが好きだという思いは、一生誰にも言わないつもりでいた。マルコには結婚を約束した彼女がいて、ジャンにも今はパートナーがいる。
それでも、理性では抑えられないほど、マルコはジャンを求めていたのだった。
「っていうジャンマル下さい」
「アルミン、正座」
マルコの言葉に何で、と不満を露わにしたアルミンをとにかくソファーに正座させた。隣で笑っていたジャンにも正座、と言い渡し、やはり不満そうなジャンにも同様に姿勢を正させる。マルコは深く溜息をつき、アルミンの「作品」をプリントアウトしたコピー用紙をテーブルに叩きつける。
「あのね、アルミン!」
「マルコはマルジャンがよかった?」
「オレどっちでもいいけど」
「ジャンは黙ってて」
自体はややこしく面倒くさい。マルコは感情任せに怒鳴りそうなのを押さえつけ、深く溜息をつく。
ジャンとの付き合いは長い。その間に、彼に告白をされたということは事実であった。ゲイであるジャンからの告白を、ただ男同士であるという理由で断ったわけではない。マルコにはジャンよりも長い付き合いの彼女がいて、結婚の約束をしていることも事実だった。そしてジャンの今のパートナーがアルミンであることも事実だ。
「あのね、どうしてこういうことになるの!」
「だって萌えたんだもん……」
かわいらしく拗ねてみせるアルミンに、マルコは何度目かわからない溜息をついた。アルミンは決して悪い人ではない。悪意があってこんなことをしているわけではなく、ましてやジャンやマルコを傷つけようとしているわけではないこともわかっている。しかし。
――腐男子って、やっぱりよくわからない。
「……とにかく、もう二度とこういうのは書かないでくれ」
「えー、オレも読みてえのに」
「ジャン!」
「マルジャンでもいいぜ?」
「もう君たちとの会話疲れる……」
マルコは頭を抱えて溜息をついた。ソファーで膨れっ面をしているアルミンが、自分の知らぬところで彼女と知り合って意気投合していることはまだ知らずにいるのだった。
「マルコ」
力のないマルコの抵抗など物ともせず、ジャンは顔を寄せる。出会った頃よりも年を経て肉を落とした頬は男らしく、少し鋭い目は今は甘えるようにマルコだけを見つめている。マルコ、とただ呼ぶ声は、切羽詰まったものだった。
見ていたDVDはもう本編を終了し、メニュー画面のBGMをただ流している。これがもっと激しい曲であれば誤魔化したのに、別れのシーンに使われた曲は切なくもムード作りの役にしかたたなかった。
ジャンの体温を、拒めない自分がいる。
「マルコ、マルコ」
「ジャン、駄目だ」
「マルコ」
ほとんど伸し掛かるように、マルコはソファーに押しつけられる。額同士が触れて息を飲んだ。
「マルコ」
「駄目だ、ジャン、君にはアルミンがいて、僕にも」
「なんで駄目なんだよ。オレはまだ、マルコのことが好きだ。アルミンのことだって傷つけたいわけじゃない、それでも、どうしてお前もオレを好きなのに、触れちゃいけないんだ」
「ジャン、僕は」
「好きだろ、オレのこと」
「やめてくれ」
「マルコ」
言葉と共に熱い息がかかる。それと同時に泣きたくなる。それはもう何度も、自分に聞いて、答えを出してきたことだ。もうきちんと消化したはずなのに、ジャンの言葉ひとつ、仕草ひとつで呼び起されてしまう。
「マルコ」
「ジャン、駄目だ」
それでも、もう彼の目を拒めない。
震える唇が重なる。たった一瞬の熱でも焼けるように体が熱くなり、すぐにジャンを引き離そうとした手は先手を取ってジャンに捕まれる。さっきまでのじれったさが嘘のように、噛みつくようなキスは決定的で、もうふたりは自分を止めることができなかった。
お互いを強く抱きしめ、唇を合わせる。熱い息に溺れるように貪って、濡れた舌を絡ませあい、性急な手つきがもどかしく服を脱がしていく。その間も惜しむようにキスを深め、その合間にお互いの名前を呼び続けた。
あぁ、と深く、甘い声を上げる。
ジャンの唇が触れる場所から溶けていくように、マルコは劣情に溺れていった。
始めに拒んだのはマルコだった。ジャンが好きだという思いは、一生誰にも言わないつもりでいた。マルコには結婚を約束した彼女がいて、ジャンにも今はパートナーがいる。
それでも、理性では抑えられないほど、マルコはジャンを求めていたのだった。
「っていうジャンマル下さい」
「アルミン、正座」
マルコの言葉に何で、と不満を露わにしたアルミンをとにかくソファーに正座させた。隣で笑っていたジャンにも正座、と言い渡し、やはり不満そうなジャンにも同様に姿勢を正させる。マルコは深く溜息をつき、アルミンの「作品」をプリントアウトしたコピー用紙をテーブルに叩きつける。
「あのね、アルミン!」
「マルコはマルジャンがよかった?」
「オレどっちでもいいけど」
「ジャンは黙ってて」
自体はややこしく面倒くさい。マルコは感情任せに怒鳴りそうなのを押さえつけ、深く溜息をつく。
ジャンとの付き合いは長い。その間に、彼に告白をされたということは事実であった。ゲイであるジャンからの告白を、ただ男同士であるという理由で断ったわけではない。マルコにはジャンよりも長い付き合いの彼女がいて、結婚の約束をしていることも事実だった。そしてジャンの今のパートナーがアルミンであることも事実だ。
「あのね、どうしてこういうことになるの!」
「だって萌えたんだもん……」
かわいらしく拗ねてみせるアルミンに、マルコは何度目かわからない溜息をついた。アルミンは決して悪い人ではない。悪意があってこんなことをしているわけではなく、ましてやジャンやマルコを傷つけようとしているわけではないこともわかっている。しかし。
――腐男子って、やっぱりよくわからない。
「……とにかく、もう二度とこういうのは書かないでくれ」
「えー、オレも読みてえのに」
「ジャン!」
「マルジャンでもいいぜ?」
「もう君たちとの会話疲れる……」
マルコは頭を抱えて溜息をついた。ソファーで膨れっ面をしているアルミンが、自分の知らぬところで彼女と知り合って意気投合していることはまだ知らずにいるのだった。
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