言い訳置き場
言い訳を書いていきます。誤字の報告などあればありがたいです。 ※唐突にみゅネタややぎゅにおの外の人のかけ算が混ざるのでご注意下さい。 日常はリンクのブログから。
2014'06.22.Sun
丸い小さな目から、ぼろぼろと涙が零れている。湯上りのまま首にかけていたタオルをその目に押しつけて、嗚咽を漏らすのに呆れて三郎次は勢いよくソファーの隣に座りこんだ。柔らかいソファーは勢いで沈み、その反動で丸い肩が三郎次にもたれてぶつかる。
「何ッ回泣くんだよ。映画館で泣いて、レンタル始まったら借りてきて泣いて、結局DVD買って、何で地上波放送わざわざ見てまた泣いて」
「うっ、うるさいっ、なぁ!」
一瞬顔を上げた伊助は三郎次を睨んだが、すぐにまたタオルに顔を押しつけた。テレビから流れるのは映画のスタッフロール。しっとりとした音楽はこの映画のラストに相応しく、目を凝らさなければ読めないほど小さな文字で関係者の名前が流れていく。それを一瞥し、三郎次はソファーに体を預けた。ずるりと体重をかけてくる伊助をそのままに、小さくすすり泣くのを聞いている。
「……ほんとに、心臓に悪いから、泣くなよ」
まだ水分を含んだ髪に頬を寄せる。すん、と鼻を鳴らして、伊助が三郎次を見上げた。
「……泣かせたくないですか?」
「勝手に泣いてろ」
「……あのね、泣いたらお腹すいたんです。ラーメン半分こしません?」
「デブ」
「一緒に太りません?」
「好きにしろ」
ぱっと伊助は立ち上がった。スンと鼻をすすって、台所へ向かっていく。散々泣いていた割にはフットワークの軽いことだ。エンドロールの途中のテレビのチャンネルを変え、適当に回すと天気予報が始まった。梅雨入りしたと言いながらさほど雨に降られた印象がないのは、運がいいからなのだろうか。
三郎次も立ち上がって台所に向かう。冷蔵庫から冷えた麦茶を取り出せば、僕も、と声だけ飛んでくる。わざと顔をしかめて、グラスをふたつ取り出した。
鍋ではぐらぐらとお湯が煮立っている。そこに落とされた乾麺を箸でつつく横顔はまだ泣いた名残が残っていて、首に巻かれたタオルで目元をぬぐってやった。
「泣きすぎ」
「あれで泣けない三郎次さんがおかしいんです。人でなし」
「おーおー、人でなしで結構。お茶はやらん」
「下さい!」
「ん」
乱暴に注いだそれを差し出す。握った冷たいグラスに頬を緩め、伊助は麺をほぐしながらグラスの縁に口をつけた。
「何か入れますか?」
「ネギ」
「たまご……」
「夜中にやめとけよ」
冷蔵庫からネギのタッパーを取り出して伊助に渡す。ざらざらと鍋に適当にネギを落とし、小袋に入ったスープも流し込む。醤油の香ばしい匂いが漂い、その気のなかった三郎次の胃袋も刺激した。
「三郎次さん、器」
「どんぶり?」
「半分にするからもっと小さくていいです」
「じゃああれか」
「うん、あれぐらい」
棚から取り出した器をシンクに並べる。一人前のインスタントラーメンを半分にした夜食を、伊助が箸と共に差し出した。
「明日雨ですか?」
「晴れのち雨。降水確率30パー」
「微妙だなぁ」
器を手に、立ったままラーメンをすする。湯気で汗を浮かせて、熱いスープを口にする。
「厚手のもの洗ってしまいたいんだけどな。あ、三郎次さんももう着ない羽織り物出しておいてくださいね」
「ああ」
「あとね、三郎次さん」
「何?」
「海に行きませんか、先輩」
「何ッ回泣くんだよ。映画館で泣いて、レンタル始まったら借りてきて泣いて、結局DVD買って、何で地上波放送わざわざ見てまた泣いて」
「うっ、うるさいっ、なぁ!」
一瞬顔を上げた伊助は三郎次を睨んだが、すぐにまたタオルに顔を押しつけた。テレビから流れるのは映画のスタッフロール。しっとりとした音楽はこの映画のラストに相応しく、目を凝らさなければ読めないほど小さな文字で関係者の名前が流れていく。それを一瞥し、三郎次はソファーに体を預けた。ずるりと体重をかけてくる伊助をそのままに、小さくすすり泣くのを聞いている。
「……ほんとに、心臓に悪いから、泣くなよ」
まだ水分を含んだ髪に頬を寄せる。すん、と鼻を鳴らして、伊助が三郎次を見上げた。
「……泣かせたくないですか?」
「勝手に泣いてろ」
「……あのね、泣いたらお腹すいたんです。ラーメン半分こしません?」
「デブ」
「一緒に太りません?」
「好きにしろ」
ぱっと伊助は立ち上がった。スンと鼻をすすって、台所へ向かっていく。散々泣いていた割にはフットワークの軽いことだ。エンドロールの途中のテレビのチャンネルを変え、適当に回すと天気予報が始まった。梅雨入りしたと言いながらさほど雨に降られた印象がないのは、運がいいからなのだろうか。
三郎次も立ち上がって台所に向かう。冷蔵庫から冷えた麦茶を取り出せば、僕も、と声だけ飛んでくる。わざと顔をしかめて、グラスをふたつ取り出した。
鍋ではぐらぐらとお湯が煮立っている。そこに落とされた乾麺を箸でつつく横顔はまだ泣いた名残が残っていて、首に巻かれたタオルで目元をぬぐってやった。
「泣きすぎ」
「あれで泣けない三郎次さんがおかしいんです。人でなし」
「おーおー、人でなしで結構。お茶はやらん」
「下さい!」
「ん」
乱暴に注いだそれを差し出す。握った冷たいグラスに頬を緩め、伊助は麺をほぐしながらグラスの縁に口をつけた。
「何か入れますか?」
「ネギ」
「たまご……」
「夜中にやめとけよ」
冷蔵庫からネギのタッパーを取り出して伊助に渡す。ざらざらと鍋に適当にネギを落とし、小袋に入ったスープも流し込む。醤油の香ばしい匂いが漂い、その気のなかった三郎次の胃袋も刺激した。
「三郎次さん、器」
「どんぶり?」
「半分にするからもっと小さくていいです」
「じゃああれか」
「うん、あれぐらい」
棚から取り出した器をシンクに並べる。一人前のインスタントラーメンを半分にした夜食を、伊助が箸と共に差し出した。
「明日雨ですか?」
「晴れのち雨。降水確率30パー」
「微妙だなぁ」
器を手に、立ったままラーメンをすする。湯気で汗を浮かせて、熱いスープを口にする。
「厚手のもの洗ってしまいたいんだけどな。あ、三郎次さんももう着ない羽織り物出しておいてくださいね」
「ああ」
「あとね、三郎次さん」
「何?」
「海に行きませんか、先輩」
PR
Post your Comment
カレンダー
カテゴリー
最新記事
ブログ内検索
アクセス解析
アクセス解析