言い訳置き場
言い訳を書いていきます。誤字の報告などあればありがたいです。 ※唐突にみゅネタややぎゅにおの外の人のかけ算が混ざるのでご注意下さい。 日常はリンクのブログから。
あんまり考え込まず勢いだけで書いていたので、書きたかった部分だけ。
こういうつまんない会話が好きです。書いてると会話だけになっちゃうんだよなあ。
あと油性ペンネタが好きです。
「トリックオアトリート!」
「トリック!」
「……おっけー」
にっこりと笑った丸井の表情は、それはもう人を魅了するには十分だった。トリックをチョイスしたまま仁王は笑顔で凍りつく。……横着せずに、お菓子ぐらい買ってくればよかった。何かをあげれば満足するのだと知っていたのに。
「あ、幸村くーん!トリックオアトリート!」
「ふふ、ブン太おはよう。昨日妹がクッキー作ってたんだ、もらってきたよ」
「やった、幸村くん大好き!」
……トリックはいつくるのだろう。リアクションを避けるべく、仁王はとりあえず部室から逃げ出した。
食い意地の張ったの恋人は、日本では慣習どおりに浸透していないハロウィンというイベントがお気に入りで困る。毎年この様子だ。彼の言を借りるなら、クリスマスや誕生日はあくまで交換を前提としたプレゼントであるから違う、んだそうだ。
もうすっかり慣れたもので、丸井が教室に着いた頃にはすでに手にしていた紙袋が膨れていた。その中身は小さいお菓子ばかりだが、中には気合の入ったものも見られる。バレンタインんは照れてしまう女子なんかも渡しやすいのだろう。
「あー、俺10月が一番幸せかも」
「これが全部ブンちゃんの脂肪になるんじゃな」
「いーんだよ消費するから!」
「あ、丸井くんおはようー」
「おはよー!トリックオアトリート!」
「あはは!そっか、ハロウィンかぁ。何もないから飴あげるー」
「サンキュー!」
朝から機嫌がいいようだ。この調子なら仁王へのいたずらも忘れるかもしれない。しかし日頃散々からかっていることを考えると、気合の入った仕返しをされそうで怖い気もする。
「……ちなみにブンちゃん、俺へのいたずらは?」
「んー、そうだな……今日、泊まりに行っていい?」
「……ええよ?」
*
自分のくしゃみで目が覚めた。隣を見ると丸井はまだ眠っている。幸せそうな寝顔はよだれをたらしていて、さっきまであんなにも乱れた様子だったのが嘘のようだ。いたずららしいいたずらは行為の最中にもなくて、あえていうのならいつもよりも積極的だった、ということぐらいだろうか。いつもは嫌がるのに何度もねだられ、仁王が甘いお菓子をもらったようなものだ。
トイレに行って寝なおそう。丸井に布団をかけてトイレへ向かう。そろそろ布団を分厚いものにしてもいいだろうか、そんなことを考えながら。
スウェットをおろして、硬直する。見慣れた自分の息子に、あってはならないものがある。
部屋に戻ってドアを閉めると、ベッドの上で布団の塊が震えている。くっくっと笑い声が漏れていて、その塊を殴りつけた。
「ブンちゃん、油性ペン貸しなさい」
「やだ!」
「誰が粗品だ、誰が!」
布団を引きはがすと腹を抱え、うひゃひゃと奇妙な声を上げて笑い出した。がっくりと脱力してしまい、隣に座り込んで溜息をつく。
「も~……勘弁して。おしっこ引っ込んだわ……」
「ちゃんと裏っかわも見た?」
「……見たくないわ」
「トリックオアトリート!」
「……何が食いたいん」
「好きなお店で秋限定デザートやってんだよね」
「はいはい……で、誰が粗品だって?」
「こ・い・つ・が!」
「その粗品でアンアン言わされちゃってんのは誰かねえ」
「言ってやってるんだろ?あ~ん、だめえいっちゃう!って、言われたいんじゃねーの?」
「言わんくせに」
「言ってやろーか?粗品より上等なもん持ってきたらな」
「……はっ、ブンちゃんみたいなお子様には粗品で十分じゃ」
来年はこちらがいたずらを用意してやろう。くすくす笑い合いながら布団にもぐりこみ、毛布の下で熱をためていく。