言い訳置き場
言い訳を書いていきます。誤字の報告などあればありがたいです。 ※唐突にみゅネタややぎゅにおの外の人のかけ算が混ざるのでご注意下さい。 日常はリンクのブログから。
友達とずっとけんひかけんひかゆってたら遂に女体化の扉を開きました。めっちゃキモい謙也と常に憂鬱な顔をしている光ちゃん。あと百合百合しい光ちゃんとくららちゃん。
今回はなんかちょっと長い?よくわからない。
あー、光ってほんまドMやなぁー。何で謙也がええねん。
⑩
『あ、謙也先輩おはようございます』
「おはよう……」
『散歩、行きません?』
「……行く。いつものとこ行ったらええな」
『いつも?』
「やから、戎橋」
『何なんすかいつもって。まぁええけど、ほな戎橋で』
「……は?」
謙也の声を聞く前に財前は電話を切った。寝ぼけ眼で見るディスプレイはぼやけているが、ついさっき財前と話していたことに間違いはない。何変なこと言ってんねん。ベッドから這い出て着替えながら、財前のことを考える。
昨日の朝、財前は何かに怒って帰ってしまった。そのくせ部活ではいつもと変わらずにひょうひょうとして、謙也と目が合えば適当な挨拶もした。今朝のことなどなかったかのような態度でいたから謙也も何も言わなかったが、今朝も誘ってきたということは、財前の気まぐれだったのだろうと思う。ここ数日で財前が気分屋だということは十分すぎるほど体感した。あまり自分が一喜一憂するようなことはきっとない。
いつも通り待ち合わせをしている戎橋に着くと、今日は謙也の方が早かったようだ。まだ動かないかに道楽を眺めながらしばらく待つと、視界にいつものスウェットを見かけて視線を送る。その瞬間謙也は凍りつき、瞬きを繰り返した。こっちへ向かってくるのはいつもの財前のはずなのに、その隣に女がいる。べったりと腕を組んでいて財前が歩きにくそうにしているほどだ。謙也を見つけた財前が女に何か言いながら腕を外したが、女は嫌そうだ。しかし少しの会話の後にっこり笑い、財前に手を振って離れていく。自分たちよりもかなり年上だ。
「お待たせしました」
「……今の、彼女?」
「ハァ?ちゃうし。あの人が俺の彼女やったら兄貴に殺されるっちゅーねん」
「え、誰?」
「姉」
「ねーちゃんおるんや?」
「兄嫁ですけど。同窓会行ってそのまんまオールしとったんやけど、さっき駅で捕まって」
「ハァ……びっくりした」
「何で」
「や、自分普通に年上の女でも転がしそうやん」
「……どんなイメージなんすか俺」
謙也に背を向けるように歩きだした財前は、それでも気を悪くしたわけではないようだ。財前を追いかけて歩くとふと後頭部に寝癖があるのに気づいて、何げなく手を伸ばして撫でつける。振り返らずに何すか、と聞いてくる財前は、気づいていたようだ。
「寝癖ぐらい直してから出てきぃや」
「朝っぱらから謙也先輩みたいにばっちり決めてられませんわ」
「ば、ばっちりて、フツーに着替えて来とるだけやん!」
「ふうん。それでフツーなんやったら、あんたデートするん大騒ぎやろな」
「……財前も、いくら早朝ったって着替えるぐらいしてきぃや」
「嫌やし。どうせ帰って制服に着替えんのに」
「ほんまめんどくさがりやな」
「先輩は周り気にしすぎっすわ」
「せんよりええやろ」
「面倒な人やな」
「なんやねん。朝から人呼び出しといてダメ出しかい。わざわざ出てきてやってんねや、礼ぐらい言いや」
「ハァ?知らんわ。嫌なんやったらこんかったらええのに」
「なッ……」
「来とるってことは嫌やないんやろ。アホちゃう」
「ア……アホて!お前先輩に暴言吐きすぎや!
「あーうるさ」
「あのなぁ、せやったら俺呼ぶな!なんで俺呼ぶねん!」
「そんなん先輩に会いたいからやん」
「え」
「会いたない人呼んでどないすんねん」
「……俺に会いたいから、俺呼んどんの?」
「今日何で呼ばれたと思ったんスか」
「嫌がらせやと思っとった」
「……アホやなぁ。俺が嫌がらせにこんな労力使うと思います?嫌がらせするんやったらもっと陰険にやるわ」
「こっわ!」
「マクド寄ってきません?」
「……おう。今日は財布持ってきた」
「ほな先輩のおごりで」
「なんでやねん!」
会話に合わせて口は回るが、心臓がどきどきしている。なんて?こいつ何て言った?陰険に、じゃない、もっと前。もう1回言って、とか言ったらキモいかな、キモいよな。……俺に会いたいって?どの面下げてそんなかわいらしいことを、と思ってから、無表情だったのを確認したことを思い出した。それでも謙也には、財前のその無表情の意味がわからない。どんな思いでそう口にしているのか、知りたいと思うのは自然な感情であるはずだ。
学校帰りによく寄るファーストフードの店に、こんな時間に来るのは初めてだ。謙也に500円玉を渡し、メニューだけ告げて財前は階段を上がっていく。お願いしますぐらい言わんかい、思いながらもふたり分の注文をした。商品が出てくるまでの間に深呼吸をして、どうにか自分を落ち着かせる。財前の言うことなんて大して意味はないのかもしれない。言葉少なに話す代わりにはっきりした単語を選ぶから、どきっとさせられているだけで、実際は呼びやすかったら、という程度なのだろう。そう言い聞かせながらスマイルと共に差し出されたトレイを手にし、階段を上がる。窓側の席に財前を見つけたが、腕を組んで目をつぶっている。トレイを置いて、こんなとこで寝んな、と頭を叩いてやると謙也を睨んできた。こんな表情ばかりはよく見せる。
「遅い」
「そんなに経ってへんわ!ファーストフード舐めんな!」
「いただきます」
「お礼は!」
「先輩ちっさいっすね」
「……」
黙って財前の前に座る。この態度にはあきれてしまって、もう何に突っ込んでもだめだとわかってしまった。
「……なぁ、ユウジと散歩する日もあるんよな」
「あ?ないっすよ」
「え?」
「あの人と散歩したってしゃーないっしょ」
「でもふたりで会うやろ?何しとんの?」
「話してます」
「自分ら何の話すんの?」
「謙也先輩が聞いてもわからん話」
「聞いてみなわからんやん」
「……謙也先輩ネットします?」
「パソコンはあるけど俺は使ってへん」
「ほんならわかりませんわ」
「インターネットってなんやようわからん」
「わからんでええと思いますよ」
「なんやそれはそれで仲間外れみたいで嫌なんやけど」
「そんなに俺のこと知りたい?」
「へ?」
「先輩、質問ばっか」
「ッ……ざ、財前が何も話さへんから」
「そんなに俺と話したいんすか?」
「……話じゃなかったら何すんねん」
「さあ、俺は会えるだけでええんで」
「会うったって、毎日会うとるやん」
「そうでした?」
「は?会うとるやろ!朝も、部活でも」
「俺謙也先輩に会うといっつも久しぶりって言いたなるんすわ」
「何やねん。何やったらオサムちゃんよりよう顔見とるわ」
「そーですか?……あ、でも最近会いましたね、昨日の夜」
「は?会うたっけ。俺ずっと家におったけど」
「覚えてへんの?夢で会うたのに?」
紙コップを手にし、氷を鳴らして財前がこっちを見た。にやりと口元を緩ませ、上目がちに向けられる表情にどきりとする。ストローで氷をかき交ぜる音にはっとして、財前を見返した。
「どこて!?」
「夢で」
「覚えてるわけないやん!つーかお前の夢なんか知るか!」
「えー?覚えてへんのぉ?ええコトしたったのにぃ?」
ふっと息をもらすように笑い、財前は飲み物だけ手にして立ち上がる。
「帰りましょ。学校行かな」
⋆
部室に入って謙也は凍りついた。何してん、白石に押されて中へ入るがそれ以上動けずにいると、白石に気づいて苦笑する。着替えずに椅子に座って携帯をいじっている財前を後ろから小春が抱きしめている。ただそれだけの図なのに、なぜか苦しい。
「小春先輩、重い」
「光ちゃんなんやええ匂いするわー」
「出かけにファブリーズかぶってもて」
「何で!?」
「甥っ子にぶっかけられたんすわ」
「こら光ぅ!小春に触んなや!」
「あんたの目は節穴か。どう見えてんねん」
「んもう!心配せんでもアタシはユウくん一筋やで!」
「小春!」
「ユウくん!」
財前から離れて抱き合うバカップルの姿にはっとする。
「謙也、大丈夫か?」
「へっ!?何が?」
ふっと謙也を見た財前にどきりとする。それで思い出して財前に近づくと、ぱっと立ち上がった。それに焦って手を取ろうとすると避けられ、何すか、と冷たい目がむけられる。
「あ……や、朝、釣り返すの忘れとったから」
「朝?」
「マクド行ったやん」
「夢でも見たんすか?」
「え」
「光いじめたんなや、謙也と朝の散歩行ったんやろ」
「チッ……そこ、置いといて下さい」
ユウジの助け舟にほっとしたのは一瞬で、背中を向けた財前は謙也を見ずに着替え始めた。動けない謙也の肩を叩くユウジは笑っている。
「何か嫌われるようなことしたん?」
「……え、俺なんかした……?」
ぽかんとする謙也を一度振り返り、財前が笑った。――からかわれた。理解した謙也に部室中で笑いが起こる。
「財前!」
「謙也先輩、アホやなあ。ほんまあほやわ。さっさと気づいたらええのに」
「うっわ、めっさ腹立つ!俺は自分らと違って純粋やねんからからかうなや!」
「そこのことちゃうんやけど、まーええか」
謙也に手を差し出す財前を睨みながら、手のひらに小銭を落とす。満足げに笑う財前にそれ以上何も言えなくなって、げらげら笑いながら謙也の肩を叩くユウジを突き飛ばした。