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言い訳置き場

言い訳を書いていきます。誤字の報告などあればありがたいです。 ※唐突にみゅネタややぎゅにおの外の人のかけ算が混ざるのでご注意下さい。 日常はリンクのブログから。

2025'01.11.Sat
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2009'10.09.Fri
謙也は多分SはSなんだと思うよ。あと光にたいしても多分Mとはちょっと違うよね。
年内に終わればいいなあ……

あー、ネタを忘れてゆく……














休日でも財前は容赦なく人を起こす。テスト期間でさえ遠慮なんてしなかったのだから、するはずがないのだ。しかし――なぜ眠いと言いながら、早朝から起き出すのだろう。ソファーに体を預けて眠る財前を見ながら、ファーストフードの朝食を口にする。謙也がトイレに立ったほんのわずかな間に、完全に夢の世界へと落ちていた財前の寝顔はかわいらしい。思いがけず年相応な表情を見た気がして、思わず携帯を取り出して寝顔を写真におさめた。シャッター音にも反応がない。そういえばよく誰もいない部室の隅でジャージにくるまっている姿を見る気がする。寝る子は育つ、なんて石田が言っていたのを思い出した。


かくんと頭を垂れて、重力に従った前髪が顔を隠した。どうしてかまうん、白石の言葉を思い出す。からかわれるのは謙也が相手をするからやろ、ほっといたら財前も飽きるって。いたって正しい白石の意見を聞いて驚いたのは、自分がそんなことにも気づかないほど財前に翻弄されていたからだ。結局こいつもガキやってことや、
「……俺もか」
携帯で時間を確認する。5時に集合してもう6時になろうとしているが、朝の店内は静かだ。いつ頃人が増えるのかは知らないが、こんな体勢だ、そのうち起きるだろう。――一度ぐらい、リベンジしたって罰は当たらないはずだ。音をたてないようにそっと立ち上がり、謙也は店を出た。外から窓を見上げると財前の姿が見えて、面白くなってそのまま背を向ける。いつまでもやられっぱなしではないと、あいつに教えてやらなければ。

 


「ユウジ、財前知らん?」
「見とらんけど」
部室に入るなり聞こえてきた会話にどきりとする。謙也に気づいた白石が振り返り、財前知らん?と聞いてきた。
「いや、まだ見てへんけど」
「そっか……遅刻かな、珍しい」
「連絡してみよか」
ユウジが携帯を取り出して電話をかけている。自分がそわそわしている理由を知りながら、謙也は聞き耳を立てつつ着替え始めた。白石はユウジのそばにいて、のたりと動く謙也に気づかない。
「――あ!光?部活どないしてん、風邪?――は?どこって、お前がおる場所なんか知らんわ!どこやねん!……マクド?自分そんなとこで寝てたん?」
ジャージを落とした音は響かない。何やそれ、ユウジの声が妙に冷たく聞こえるのはなぜだろう。
「あーもう……とりあえずそこ動くな、迎えに行くから。ほなまたあとで」
「マクドて何?」
「何や知らんけどマクドで寝ててんて。あいつ声まだ寝とったし迎えに行ってくるわ、オサムちゃんきたらゆうといて」
「ほんなら俺のチャリ使いや」
白石からかぎを受け取り、ユウジが部室を出ていく。着替え終わっても落ち着かないままかばんの中を片づけてみたりとしてみたが、白石は特に気にしないようだ。難波のスピードスターがのんびりしてんねんからつっこめや!
自分につっこみを入れたくなって溜息をつく。こうしていても仕方がない。部室を出ようとドアを開けるとちょうどユウジが帰ってきたところで、ひっ、と声を漏らすと怪訝そうな顔をされる。そのユウジが手を引いているのに気づいてその先を見ると、朝会った姿のままの財前がそこにいた。――まさかずっと、あのまま寝ていたのだろうか。
「光連れてきたでー」
「ああ、……って財前くん、何やそのかっこ」
「こいつどうする?帰らす?わからんから一応連れてきたけど」
「えー、スウェットって……ラケットは?」
「ユウジ先輩のロッカーに」
「それは俺のや」
「…まあええか、今日昼間でやし、嫌やなかったらそのまま出ぇ」
「そーしますわ」
「白石ほんま光に甘いよなー。部長がそんなんでええんかい」
「ええやろ。財前くん十分実力あんねんから誰にも文句言わさんわ。なんでマクドで寝てたん?」
「そら、眠なって」
「イヤそうでなくて。またいつもの散歩か?」
「ハァ」
「ひとりやったんや」
「あー……そうみたいっすね。俺たまにすげーリアルな夢見るんで、誰かと一緒やった気ィしますけど夢やったんやろ
嘘つけ、と思うが謙也は口にできない。自分がこんなに小心者だったのかと思い知らされるのと同時に、財前が謙也を責めないことがショックだった。一言文句を言ってくれれば謝れるのに、どうしてなかったことにするのだろう。テスト前から毎日、ふたりで早朝の散歩をしているのに、財前はそんなそぶりを一切見せない。親しくなれたと思っているのは謙也ばかりなのか、学校で会えば以前と変わらない距離感だ。ユウジから借りたラケットの握りを確かめる財前を見ても、彼の方はこっちを見ない。
「謙也」
「……何?」
ユウジにどつかれながら部室を出ていく財前を見送っていると白石に呼ばれる。振り返った先の白石は、あまり機嫌がよろしくない。そら、ばれるわな。妙に穏やかな気持ちで説教を待つ。
「今日、散歩一緒やなかったん」
「一緒に行ったで」
「せやったら説明できるな」
「マクドで飯食っとったらあいつ寝よって、ちょーしのっとるからちょっといじめたろと思って置いて帰りましたすんません」
「何拗ねとんねん、開き直んなや」
「もーせやし俺が悪かったって、わかっとるっちゅーねん」
「ほななんで財前に謝らんの。調子乗っとるんは謙也やろ」
「……なんやねん」
「嫌われてへんと思っとったら痛い目見るで」
「……」
なんでどいつもこいつもあいつの味方やねん。とは怒られそうでとても言えない。それでも、素直に謝る気にはなれなかった。
 

白石から逃げてコートへ向かうと、さすがに目立つ財前が仲のいい部員に囲まれている。――Tシャツにスウェット、ピアスもなくて寝起きの姿。そんな財前が見れるのは自分だけだと思っていた。謙也だけが見れる特別な財前なんていなかった。少し考えたらわかりそうなものなのに。小石川が頭を撫でて何か言っている。おもしろくなさそうな表情のままの財前が目に残って、ラケットを手放してランニングに向かった。

 

 

「ざっ、財前!」
肩に置こうとした手は宙を描き、振り返った財前が真正面から謙也を見つめる。一瞬言葉が出てこなくて、何もできなかった手をゆっくり引き寄せて間をつないだ。
「い、一緒に帰らん?チャリないやろ、送るで」
「や、ええすわ。今日ユウジ先輩んち行くんで」
「あ、そ、そか」
「ほな、さいなら」
ユウジのラケットを回しながら部室へ戻る財前の背中に呆然とする。――うすうすと感じていたが、今日こそ確信した。財前は絶対謙也に体を触らせない。もしかして財前の遠回しな拒否なのだろうか。立ち尽くす謙也に挨拶をして後輩が帰っていく。何で財前はあんなにかわいげがないのだろう。白石が通りかかって顔をしかめる。
「謙也、何しとん。スピードスターの名が泣くで」
「……財前、俺のこと嫌いなんかな」
「……何を言い出すのかと思えば。嫌いなんやとしても今に始まったことちゃうやん。ぜぇんぶ、謙也の自業自得やしな」
「……ですよ、ね……」
部室からユウジが出てきて、その隣を歩く財前から目をそらす。――明日、電話がなかったらどうしよう。


 

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