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言い訳置き場

言い訳を書いていきます。誤字の報告などあればありがたいです。 ※唐突にみゅネタややぎゅにおの外の人のかけ算が混ざるのでご注意下さい。 日常はリンクのブログから。

2025'01.19.Sun
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2006'03.09.Thu
それでもあなたはそれをためらう。



1日だけでいいのです今日だけ今日限り、今夜限りでいいのです。お願い私を抱いていて。

外聞もなくすがり付いて必死であなたを引き止めた。文字通りの死ぬ覚悟。

ほんとうに今夜だけでいいのだってもう今夜で世界が変わってしまうから。



私を見つめる目は悲しい。今にも視界を塞ぎそうな目蓋が震えて、私が先に目を閉じた。

お願い、喉の奥から搾り出す、もう何度目かわからない懇願、あなたの耳に届いただろうか。



漆黒の制服姿を見かけるたびに胸をときめかされた。あなたも私も悪かったわけではないのに。

伸ばした手を見つめて、彼はためらいながら手を伸ばしたけれど、やっぱり私には触れなかった。



「…意気地なし」



堪えていた涙が零れる。こんなに苦しいのだからさっさと忘れてしまえばよかったのだ。こんな夜のような男のことなど。

私はただのん気に笑って過ごしていればよかったのだ。いずれ来る、この時のために。

顔も見知らぬ相手との婚約が決まり、もう以前ほど彼らに会うことはなくなるだろう。



怒るでもなく笑うでもなく、彼がこんな小娘相手に真剣な顔をしているのだからなお悔しい。

私がひどく泣きじゃくるただの小娘でも彼にとっては姫なのだ。わがままを言っても従順であっても、女にはならないのだ。



両手で顔を覆って彼を消した。視界から。それでも彼の気配はそこにある。

小娘の我侭もきけないのなら早く帰ってくれればいいのに。そうすれば私は大声で叫びながら泣けるのに。



あなたの指が、私の頭に触れた。

自分でも驚くほどに単純に涙が止まる。顔を上げると彼は困った顔をしていた。



「どうしていいかわからない」

「……手を握っていて下さる?」



それ以上何も望むまい。あなたの指先から発せられる熱だけを、私は糧とし笑いますから。
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