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言い訳置き場

言い訳を書いていきます。誤字の報告などあればありがたいです。 ※唐突にみゅネタややぎゅにおの外の人のかけ算が混ざるのでご注意下さい。 日常はリンクのブログから。

2025'05.10.Sat
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2006'03.07.Tue
君のためならあの星にだって手が届くと思ってた。



そんな幻想を抱いていた。

親元を離れるのを一番不安がったのは最後まで本人だった。泣きじゃくるのを俺が無理矢理電車に載せた。やっぱり東京まで一緒に行こうか、と甘いことを言う彼の両親を俺が突っぱねた。大丈夫俺が守るから。偉そうなことを言って。



電車に乗ってからも泣き続けるのを俺は黙って見ていた。こういうときに話しかけても聞いてくれないのは経験でわかっているし、何より適当なことを言って体面を取り繕っていたら俺まで泣きそうな気がしたから。

俺だって不安がないわけじゃない。だってのん気に田舎で暮らしていた小学生がふたり、ふたりで東京まで向かうのだから。電車にだってろくに乗ったことがないのに、ましてや子どもだけで出かけるなんて。



そしていざ着いた東京では最悪のパターンとして思い描いたとおり、迷子になった。

今思えば運のいい話、あからさまにおのぼりさんだった俺達を見かねて声をかけてくれた親切な人の導きで俺達は道を見つけた。

この道を真っ直ぐ行けば、俺達の家になるはずの寮がある。



東京は怖いと俺は思った。

泣きじゃくっていた本人は、いざ着いてしまえば興味深々に辺りを見回し、俺はといえば人の量の多さに酔った。

情けなくも手を引かれ、気分も最悪で俺はほとんど泣きそうだった。



「一番星」



間抜けな声に顔を上げた。

明るい空に一番星、いつのまにか夜に近付いていた空に、星が輝いて俺を見下ろしていた。



ここでも星が見える。

気が抜けた拍子に涙か零れた。

見て見ぬふりなんて器用なことが出来ないあいつは、焦って俺の顔を拭う。



「だ、大丈夫?」

「大丈夫」



しっかりと手を握って歩き出す。

いつだって一番星を探して誓うよ、俺はここで強くなる。この手の先を守れるように。
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