言い訳置き場
言い訳を書いていきます。誤字の報告などあればありがたいです。 ※唐突にみゅネタややぎゅにおの外の人のかけ算が混ざるのでご注意下さい。 日常はリンクのブログから。
いつかグレたんねん、と思いながらもおかんが大好きすぎて結局逆らえないのがいいと思います。
結局おとんもおかんも大好きやねんなー。
「明らかおとんの遺伝子のが弱そうやのに、なんで俺どこもかしこもおとん似なんやろ」
「そんなん、俺に愛されるためやろ」
「……ああ、動物の本能ってすごいんやな」
母親の言葉に納得してしまう自分が嫌だ。しかし事実、自分が母親似であったなら今日まで愛されて育ったか自信がない。アホなことゆうとらんとさっさと食べや、とあっさり流されて、母親もあまり得意ではない朝食を食べ始めた。
「ところであっくん、玄関にあった新しいシューズはもちろんおとんが買うてんな?」
「……さようでございますよ」
「ふぅん……」
今夜は父親の泣き顔が拝めるかもしれない。息子が何かをタネに父親をゆすったことなど簡単に見抜いてしまうくせに、息子は責めたりしないのだ。……機嫌にもよるのだが。
「おとんは?」
「昨日やり残した仕事あるゆうて早よ出た」
「そら残念やなぁ」
「心配されんでもいってらっしゃいのちゅーはしたったわ」
「いっつもしてへんやん!」
息子の切り替えしの何がお気に召したのか知らないが、母は笑って肩を震わせた。敦士にもしたろか?と聞いてくるので全力で拒否しておく。そんなことがばれたら父親が刃物を突きつけてきたって不思議じゃない。あの人は息子に嫉妬できるほど盲目的に妻を愛しているのだ。あるいは、自分にそっくりだからこそ息子が甘やかされていることが不満なのかもしれない。
「あ、おかん今日くんの?」
「……父兄参観やろ?謙也さんが多分間に合えへんしな、しゃーないから多分行くわ」
「別に大したことせえへんし、いいで別に」
「まあ気分で行くわ」
それならおそらく来ないだろう。あまり人付き合いが得意ではない母は行事ごとはサボりがちだ。小学校の運動会を見に来なかったこともある。父親とふたりで昼食を食べた記憶は鮮やかだ。
「ま、期待せんと待っとくわ」
*
「うわぁ……」
今廊下を通ったのは、母親ではないだろうか。ガチ私服で来やがった。スーツで来いとは言わない。しかし周りの友人たちのより親よりずっと若い母親が私服でいると、学校という場所にふさわしくない。ピアスじゃらじゃらやしあれ絶対いかついブーツで来とるわ。つうかもう授業終わんねんけど。
恐る恐る振り返って確認するとドアの脇からひょこんと顔を出して敦士を探す母親と目が合った。もう来ないものと思って油断していた。敦士を見つけると追い払うように手を振って、前を向けと言ってくる。自分は周りの父親がびびってるのに早よ気づけ、叫びそうになってぐっとこらえた。周りの女子がそわそわしだしたのを感じ、深く溜息をつく。嫌がらせとしか思えなかった。
落ち着かない数分を過ごし、授業が終わるなり立ち上がって母親に詰め寄る。忍足くんのお父さんなん?と絡んでくる子は適当にあしらい、母親がひらひらと振る手を捕まえた。
「おかん何しにきてん!」
「来てほしいんかな思て。まあそこで白石さんと会うて話しとったから遅なったけど」
「おかんTPOって知っとるか」
「も~ええやん俺が何着ようと。白石さん爆笑で許してくれたわ」
「さいっあく……」
「お前のおかんはかっこええやろ?」
ぐいと顎を持ち上げられて、見上げた顔は満面の笑みだ。悪い顔しとる、と言ってやると鼻で笑われる。
「チンピラにしか見えへん」
「口塞ぐで」
「すんません」
「許したらん」
悪態をつきながら母親が額にキスを落とした。ひっ、と思わず悲鳴を上げて硬直する。その様子に満足したように笑って、ぐしゃぐしゃと頭を撫でられた。
「ほんま、敦士制服着て学校おったら昔の謙也さんまんまやな」
「……ああ、それね」
「ほんなら俺帰るな、懇談会とか出たないし」
「早よ帰れ!」
まるで台風一過だ。ぎゃあぎゃあ騒ぎ出した周囲が煩わしい。敦士は今傷心なのだ、そっとしておいてくれないだろうか。
(『謙也先輩』見に来たんかい……)
あの夫婦は互いに盲目的すぎる。せめてこのかわいそうな息子に、もう少し愛を分けたってよさそうなものを。しかし結局はあんな両親が好きなのだからしょうがない。このツケは今度父親にたっぷり返してもらうことにして、今はこの状況のことを考えることにしよう。