言い訳置き場
言い訳を書いていきます。誤字の報告などあればありがたいです。 ※唐突にみゅネタややぎゅにおの外の人のかけ算が混ざるのでご注意下さい。 日常はリンクのブログから。
白石姉=椿、小春姉=千夏で固定。こんなんブログ載せてええんかなってぐらい妄想。
斜め前に立つ白石がだんだんいらいらしてきているのを眺めていた。我がテニス部の監督はそれに気づいていない。自分が監督であったことを思い出したかのように、いい気分で自分の過去を交えたいい話をしている。これ部長キレるんちゃうかな、財前が思ったのとほぼ同時、白石が渡辺の胸ぐらを掴んだ。勢いで彼のトレードマークの帽子が落ちる。
「し……白石?」
「えー加減黙りや、俺は今日急いどんねん」
「あ、はい、すいません」
「オサムちゃんの話は今度何時間でも聞いたるから、今日は帰んで」
「はい、すいませんでした。お引き留めして申し訳ない」
白石の顔は角度的に見えないが、一体どんな表情を浮かべているのだろう。真顔か般若か、あるいは笑顔か。突き放すように目上の人を解放した白石はほな解散!と一声かけてすぐさま着替えに向かう。部長に泣かされて崩れ落ちた監督を副部長が慰めているのはいつもの光景だが、あんなに必死な白石は初めて見たかもしれない。
「何なんやろなぁ、白石」
「俺が知るわけないでしょ」
謙也の言葉はさらっと流し、ラケットを振り回しながら財前も部室へ向かう。うんこか?と首を捻る謙也の背中をラケットで叩いて、あんたと一緒にすな、と言ってやった。
「そういや白石昼ぐらいからずっとそわそわしとったな~」
「ふーん」
「小春~!今日も一緒に帰ろうや~、送るし!」
「ごめんなさいね、今日は先約があんねん」
きゅっと制服のタイを締めた小春はすぐに間違うたわ、とそれをほどいた。女子の制服で帰る気なのかと思っていたが、いくら小春でもそれはさすがにしないのか。しかし先日女子制服で登校していたが、あれは家から着てきたのか、どこかで着替えたのだろうか。聞けば解決することを聞かずにくるくる考えていたら、今日はどっか寄るか?と謙也が聞いたのを聞き逃して生返事をしてしまう。
「お先ッ」
難波のスピードスター並に早着替えをすませた白石が部室を飛び出していく。蔵りんは早いわねえ、とカッターシャツのボタンをとめる小春の手つきを見ているユウジが気持ち悪い。
「小春の先約って何なん」
「ん?オンナ待たせとんねん」
どさっ!という物音に財前が振り返れば、ユウジが尻餅をついている。目が虚ろだ。謙也がそれを笑って小春に嫌な顔をされている。
「それ小春から一番聞きたないセリフやな」
「光、謙也にゆうたり」
「先輩俺オンナ待たせとるんで帰りますわ」
「うわぁぁぁ死ぬ!やめて!死んでまう!」
棒読みのセリフに謙也はユウジの隣にしゃがみ込んで頭を抱えた。アホばっか、財前のつぶやきに小春が笑う。
「ほなユウくん、お尻冷える前に帰りや」
「先輩、俺校門で待っとくんで飽きて帰る前に来て下さいね」
小春と連れ立って校門まで行くとそこには意外にも白石の姿がある。ただしその隣には女の姿があり、白石はその肩を抱いていた。女に興味のない財前でも素直に綺麗だと思える迫力のある美人で、白石と並ぶと絵になる。事実いつも白石に黄色い声援を送っている見覚えのある顔が、ぽかんとして立ち尽くしていた。
「ほんっまごめん!オサムちゃんは明日シメとくわ」
「ほんまに、待たされたおかげで変な男にいらんエネルギー使たわ」
「ごめん。エネルギー満たしに行こか。クレープでもケーキでも善哉でも、つーちゃんの好きなとこ行こ」
「アンタひと睨みで追い返しとったやないの、あんまり蔵ノ介くんに甘えなや」
溜息混じりに投げかけられた言葉に、初めてもうひとり女がいたのに気づく。こちらもまた目を引く容姿で、よく見ればふたりとも近所の女子校の制服姿だ。
「あれ白石部長の彼女かなんかっすか?」
「あら、光見たことない?あの人お姉さんやで」
「……は?」
「隣はアタシのお姉様。千夏ちゃん、待たせてごめんなぁ」
「あ、小春ちゃん。部活お疲れさん。……お友達?」
「後輩や。財前光くん、かわいいやろ」
「かわいいなぁ」
「人のもんやけどな」
「世間のイケメンで人のもんやないイケメンをお姉様はほとんど見たことがありません。ユウくんぐらいや、さっさとあんたのもんにしたり」
「……先輩お姉さんおったんすね」
「綺麗やろ?全部特殊メイクやけどな」
「初対面の子にバラしなや」
小春の姉はけらけら笑い、改めて姉の千夏です、と簡単に挨拶をした。財前も会釈を返してから、ずっと気になっていた白石たちを見る。
「あれな、いつものことやから気にせんとき」
「ハァ……」
「蔵りんのお姉さん、椿さんって言うんやけど、あの通り弟大好きやねん。まあ蔵りんも椿さん大好きやねんけどな」
「……どーりで部長に彼女おらんわけや」
「なかなか鋭いね、光くん」
千夏に笑いかけられて悪い気はしない。しかし姉の髪を撫でて恍惚と見つめ合っている姿を見れば、白石がどんな美人にも興味を示さないのも容易に納得できる。
こはるぅ!校舎からの声に小春か溜息をついた。素直にちなっちゃんとデートやって言うたらよかった、と額を押さえる。
「小春!」
「光ッ」
「……もうひとりウザいのきましたわ」
「何?あのイケメンも人のもん?」
「俺のです」
「……うわー、またイケメンの無駄遣いや……」
「小春ッ!オンナと待ち合わせってどういう……あれ、千夏さん……」
「ちなっちゃんのことや!今朝言うたこと忘れたん?」
「あ……あー!千夏さんと買い物って言うとったな!なんや~びっくりした~。1回死んだわ」
「ユウくん相変わらず健気やなぁ」
「光!お前頼むから冗談でもあんなん言わんとって!死んでまう!」
「俺置いてそんな下らん理由で死んだら墓前で浮気したりますわ。蘇るやろ」
「絶対そんなんさせん!」
「じゃあ俺が浮気せんよう一瞬でも目ぇ離さんと俺見といて下さいね」
「……小春……あたし光くん好きやわ」
「気ィ合うと思うわ」
小春たちの会話を耳にしながらも追求はしない。それよりも目を輝かせている謙也にチャリは?と聞いてやる。
「……あ」
「……早よ取ってこな先帰りますよ」
「すぐ戻るから待っとって!小春ッ光引き留めといてな!」
「はいはい」
言いながら走り出した謙也に小春の返事は聞こえなかっただろう。
「光、あんたまだ自転車通学の許可証もらっとらんの?」
「謙也さんおったらいらんし」
「まあ謙也が幸せならええけど」
「せや、ユウくんも一緒に買い物行く?」
「何買いに行くんすか?」
「下着」
次の瞬間ユウジがフリーズし、それを笑った姉を弟がたしなめる。俺千夏さん好きやわ、財前の言葉に小春は苦笑しただけだった。
「小春に計算してもらって完璧なデコルテ作ろかなと。夏やしね」
「ちなみに部長らも一緒ですか」
「そう。まああそこはふたりでベタベタしたいだけや」
「光ーっ帰ろー!」
キイッと走り込んできた謙也にうなづいて、そのまま荷台にまたがった。バイバイ、と手を振る小春たちに挨拶をし、ふたりの世界に入り込んでいる白石は無視して校門を出る。
「なんか食べに行くかー?」
「……謙也先輩って弟おるんでしたっけ」
「おう。あんま似てへんけどな。似とるけど似てへん」
「何やそれ」
「顔は俺のがイケメンやしー、めっちゃおとなしいで」
「そら兄貴がやかましかったらそうなりますわ」
「うちの1年やで」
「へー」
「……あかんで!?」
「なんも言うてません」