26. こころひらいて（真田）

閉じてんのはそっちだろ。



自分で言うのもなんだけど、至って素直に育てられた。

一生懸命やりなさい。そうすれば結果はついてくる。あと少し、あよ１秒早く、あと１本多く。

「真田〜っ！頼むよ！」

「だから、俺部活出てる時間なんかないんだって」

「じゃあちょっとだけ！今度の試合で助っ人だけでいいから！」

「…お前俺がちょっと助っ人に入ったからってうまくいくと思ってんの？」

「…どういう意味だよ」



あ、またやった。

俺の性格が悪いらしく、俺の言葉というのはほんとに素直に届かない。俺はチームワークという意味で言ったつもりだけど（それについては選抜で嫌というほど実感したし）、同じクラスのサッカー部員はむっとした表情。



「馬鹿にしてんのか、確かにうちは弱小だけど」

「そういう意味じゃねぇよ。俺が入ったってつながらねぇよ」

「やっぱり馬鹿にしてんじゃねーか」

「あのなぁ、じゃなくて…」



あーくそ、こういうとき英士なら簡単に説明してくれるのに。なんて言えばいいんだ？

やだな、こういうの。

性格が悪いのは俺じゃない。お前らが勝手にひがんでるから、俺からの言葉が曲がる。

いっそ完全に無視されてる中学の方がましだったかもなぁ。



「あーっと…ほら、俺部員の名前もしらねぇし、俺が入ったってギクシャクするだけだって」

「あぁ…大丈夫だろ、うち頼れるエースもいねぇし」

「……」



なんだよ、怒っといてそれ。

俺が入ってひとりでパーッと点取れってか？馬鹿にしてる。



「…因みに、相手は」

「洛葉」

「あ、無理」

「なんでぇ」

「前に選抜でやった。コーチの作戦でこっちの弱点全部向こうに教えてあったから、俺も調べられてる」

「なんだよそれ〜！いいじゃん大丈夫だって！今週の日曜、な！」

「日曜？じゃあ絶対無理。俺　選抜」

「くっそ〜…また負け決定だよ〜…」



…俺としては正直勝手に負けてくれって感じだけど。

部活に入らなかったのは勿論クラブチームに入ってたからだけど、興味がなかったわけじゃない。だけど入学したときに覗いてみた部活の雰囲気は最悪で、まともに練習してるのだって見たことない。



やっぱり学校は疲れる。本音を隠して喋るのは難しくて、話した本音は曲がって伝わる。

英士や結人なら、多少言葉が足りなくてもわかってくれるのに。

そりゃ、クラスの奴にだって心を開けば別かもしれないけど。…でも多分、素直に言ったら逆効果だろうしな。



「…練習なら付き合うけど」

「練習なんか誰も真面目にやってねぇよ」

「……」



勝てるわけねーじゃん。

大声で叫べたらどんなにいいか。