言い訳置き場
言い訳を書いていきます。誤字の報告などあればありがたいです。 ※唐突にみゅネタややぎゅにおの外の人のかけ算が混ざるのでご注意下さい。 日常はリンクのブログから。
2013'09.22.Sun
「もうやだ」
「……やだって言われても」
「もう嫌だ。無理です。耐えられない。笠井くんが優しく抱きしめて頑張って下さいって言ってくれないと俺はもうキーボードを叩けない」
「じゃあ諦めて単位落とすんですね」
「鬼かッ」
背後でだらだらしている笠井を睨みつければ、きょとんとしたあと、にっこりと笑う。
「かわいい恋人になんてことを。レポートが終わらなくてデートドタキャンされて、それでもレポートが終わるまで健気に待ってくれてるなんて、俺なら絶対手放しませんよ」
「……すみませんでした」
「いいえ、慣れてますから」
澄まして麦茶を飲む笠井を見て、三上は肩を落とす。そう言われてしまえばその通りなのだ。確かに昨日中に終わらせておく予定だったレポートを今日まで引きずっているのは自分のせいで、揚句徹夜で早朝まで続けていたらいつの間にか眠っており、笠井には何も連絡をしていなかった。待ち合わせしていた時間になっても現れない三上を待つことはせず、すぐに三上のアパートにやってきた笠井はもったいないほどよくできた恋人である。
「ほら、もう1時ですよ。メール提出とはいえ2時までなんでしょ」
「ぐうう……」
「もー、どうせほとんどできてるんでしょ?あと一息じゃないですか」
「まとまんねえんだよ」
「行き当たりばったり」
「うるせえ」
「……ははっ」
「何だよ」
「三上先輩、いっつも変わんないね」
「はぁ?」
「何してるときでも、一回投げ出そうとしますよね」
「……そうか?」
「諦めるでしょ」
「……」
「でも、諦めてからやる気に火が着くの。違います?」
笠井はひどく楽しげだ。改めて言葉にされると何と返せばいいのかわからない。それは自分でもうすうす感じていたことで、要するに負けず嫌いなのだろうと思う。しかしわかった風の笠井は気に食わない。
三上が再びパソコン向き直ると笠井は大人しくなった。さっき三上のスマートフォンを奪っていったのでゲームでもしているのだろう。本人は未だに古い携帯で粘っている。
頭の中に浮かんでいた結論をどうにか言葉にまとめ、後は数度確認した。字数を勘違いしていないことを確認し、最後に忘れてはいけないひと仕事。教授へのメールにレポートのファイルがちゃんと添付されているかを確認した後、送信ボタンを押した。ぱっと画面が切り替わり、メールが正しく送信されたことを知らせる。メール提出と言う素晴らしい仕組みを作り上げた文明に感謝して、大きくガッツポーズを決めた。
どうだ、とばかりに笠井を振り返れば、いつの間にか床に転がって丸くなっている。顔を隠すように小さくなってしまっているが、これは完全に寝入ってしまっているだろう。そっと腕をどけてみると、予想通り気持ちよさそうに眠る笠井に溜息をついた。悪いのは自分だ。わかっていても、少々不満は残る。頬をつついたり肩を叩いたりしてみるが起きそうにもない。
諦めて、一息つこうと立ち上がる。ずっとクーラーをかけていた室内では夏であることも忘れていたが、窓越しに蝉の鳴き声が聞こえてくる。麦茶を入れて部屋に戻り、笠井の側にしゃがんでむき出しの足に触れた。クーラーですっかり冷えてしまって冷たくなっていて、タオルケットを引っ張って下半身にかけてやる。
開いたままのパソコンで、笠井が見たいと言っていた、今日見に行く予定だった映画の時間を調べた。レイトショーもあることを確認する。辺りを探し、笠井が持ったままであることを思い出してその手からスマートフォンを取り返した。
身動きひとつせず眠る姿は昔から変わらない。レイトショーに間に合う頃に起こせばいいだろう。手放していた間の着信などを確認しながら、三上も隣に横になる。
これから夏が始まる。友人たちとはバイトの合間の遊びの予定をいろいろたてたが、笠井とは何の約束もしていない。笠井からも特に何も言ってくることはなく、改めてどこかにと思っても、今更特別笠井と行きたいと思うような場所もなかった。なんだかんだとつき合いは長く、ネタが尽きた、とでもいうのかもしれない。
きっとこの夏も季節など関係なく、どちらかの家でこうしてだらけていることがほとんどになるような気がした。
それとも、言わないだけで笠井は何か思っているのだろうか。言葉の足りない男だと知ってはいるが、三上はいつも見逃してしまう。
何か夏らしいことに誘おうか。
特に何も思いつかないまま、三上もゆっくりと眠りに落ちていった。
「……やだって言われても」
「もう嫌だ。無理です。耐えられない。笠井くんが優しく抱きしめて頑張って下さいって言ってくれないと俺はもうキーボードを叩けない」
「じゃあ諦めて単位落とすんですね」
「鬼かッ」
背後でだらだらしている笠井を睨みつければ、きょとんとしたあと、にっこりと笑う。
「かわいい恋人になんてことを。レポートが終わらなくてデートドタキャンされて、それでもレポートが終わるまで健気に待ってくれてるなんて、俺なら絶対手放しませんよ」
「……すみませんでした」
「いいえ、慣れてますから」
澄まして麦茶を飲む笠井を見て、三上は肩を落とす。そう言われてしまえばその通りなのだ。確かに昨日中に終わらせておく予定だったレポートを今日まで引きずっているのは自分のせいで、揚句徹夜で早朝まで続けていたらいつの間にか眠っており、笠井には何も連絡をしていなかった。待ち合わせしていた時間になっても現れない三上を待つことはせず、すぐに三上のアパートにやってきた笠井はもったいないほどよくできた恋人である。
「ほら、もう1時ですよ。メール提出とはいえ2時までなんでしょ」
「ぐうう……」
「もー、どうせほとんどできてるんでしょ?あと一息じゃないですか」
「まとまんねえんだよ」
「行き当たりばったり」
「うるせえ」
「……ははっ」
「何だよ」
「三上先輩、いっつも変わんないね」
「はぁ?」
「何してるときでも、一回投げ出そうとしますよね」
「……そうか?」
「諦めるでしょ」
「……」
「でも、諦めてからやる気に火が着くの。違います?」
笠井はひどく楽しげだ。改めて言葉にされると何と返せばいいのかわからない。それは自分でもうすうす感じていたことで、要するに負けず嫌いなのだろうと思う。しかしわかった風の笠井は気に食わない。
三上が再びパソコン向き直ると笠井は大人しくなった。さっき三上のスマートフォンを奪っていったのでゲームでもしているのだろう。本人は未だに古い携帯で粘っている。
頭の中に浮かんでいた結論をどうにか言葉にまとめ、後は数度確認した。字数を勘違いしていないことを確認し、最後に忘れてはいけないひと仕事。教授へのメールにレポートのファイルがちゃんと添付されているかを確認した後、送信ボタンを押した。ぱっと画面が切り替わり、メールが正しく送信されたことを知らせる。メール提出と言う素晴らしい仕組みを作り上げた文明に感謝して、大きくガッツポーズを決めた。
どうだ、とばかりに笠井を振り返れば、いつの間にか床に転がって丸くなっている。顔を隠すように小さくなってしまっているが、これは完全に寝入ってしまっているだろう。そっと腕をどけてみると、予想通り気持ちよさそうに眠る笠井に溜息をついた。悪いのは自分だ。わかっていても、少々不満は残る。頬をつついたり肩を叩いたりしてみるが起きそうにもない。
諦めて、一息つこうと立ち上がる。ずっとクーラーをかけていた室内では夏であることも忘れていたが、窓越しに蝉の鳴き声が聞こえてくる。麦茶を入れて部屋に戻り、笠井の側にしゃがんでむき出しの足に触れた。クーラーですっかり冷えてしまって冷たくなっていて、タオルケットを引っ張って下半身にかけてやる。
開いたままのパソコンで、笠井が見たいと言っていた、今日見に行く予定だった映画の時間を調べた。レイトショーもあることを確認する。辺りを探し、笠井が持ったままであることを思い出してその手からスマートフォンを取り返した。
身動きひとつせず眠る姿は昔から変わらない。レイトショーに間に合う頃に起こせばいいだろう。手放していた間の着信などを確認しながら、三上も隣に横になる。
これから夏が始まる。友人たちとはバイトの合間の遊びの予定をいろいろたてたが、笠井とは何の約束もしていない。笠井からも特に何も言ってくることはなく、改めてどこかにと思っても、今更特別笠井と行きたいと思うような場所もなかった。なんだかんだとつき合いは長く、ネタが尽きた、とでもいうのかもしれない。
きっとこの夏も季節など関係なく、どちらかの家でこうしてだらけていることがほとんどになるような気がした。
それとも、言わないだけで笠井は何か思っているのだろうか。言葉の足りない男だと知ってはいるが、三上はいつも見逃してしまう。
何か夏らしいことに誘おうか。
特に何も思いつかないまま、三上もゆっくりと眠りに落ちていった。
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