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言い訳置き場

言い訳を書いていきます。誤字の報告などあればありがたいです。 ※唐突にみゅネタややぎゅにおの外の人のかけ算が混ざるのでご注意下さい。 日常はリンクのブログから。

2025'01.19.Sun
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2013'10.04.Fri
「ただいま〜……」

ジャンが静かに玄関に足を踏み入れると、リビングにはまだ明かりがついていた。しかし部屋は静かで出迎えもない。今日も間に合わなかったか、と肩を落とし、音を立てないよう靴を脱いだ。持ち帰ってきた仕事の入った鞄が重く感じる。

リビングにアルミンの姿はない。着替えるために寝室に向かうと、ベッドで眠る愛しい姿がある。

まだ1歳にもならない娘の無垢な寝顔に頬を緩ませる。柔らかい頬に触りたいが、起こしてしまうとことだ。

代わりに隣で眠るアルミンの額を撫でる。寝かしつけているうちに一緒に寝てしまったのだろう。いつでも変わらない愛しい寝顔だ。布団を掛けてやり、着替えを持って部屋を出る。さっさと着替えてキッチンに入れば夕食はあたためるだけだ。よくできた嫁に感謝をし、コンロに火をつける。あたたまるのを待ちながら食器を出していると、アルミンが起き出してきた。寝ぼけた声でお帰り、と言われ苦笑する。

「ただいま。寝てていいぞ」

「ん、大丈夫」

アルミンが冷蔵庫からもサラダなどを出してテーブルに並べていく。あたたまったシチューをついでジャンはテーブルについた。

「ジャン、あのね」

キッチンからアルミンが顔を出す。その手できれいなグラスがふたつ、ぶつかってちりんと鳴った。

「久しぶりに、どうですか?」

「……マジで?」

「その、あのね、せっかくワインをいただいたから」

「……もらう」

「う、うん」

一度消えたアルミンがワインボトルも手にして戻ってきた。コルクを開けようとするのを制してジャンがボトルを手にする。以前起こった惨事はまだ記憶に新しい。

無事にコルクを抜いてワインをつぎ、アルミンと向かい合ってグラスを合わせる。

「一週間お疲れさまでした」

「お母さんもお疲れさまでした」

「ふふ」

笑い合ってワインを口にする。昼間来ていたミカサの土産らしい。頓着しなさそうに見えて彼女の舌は優秀で、彼女にすすめられて外れだったことがなかった。

「今日はどうしてた?」

「1日いい子にしてたよ。大人しいわけじゃないけど、よく食べてよく寝てくれて、母は助かってますよ」

「誰に似たんだか」

「僕らふたりとも、手の掛かる子だったって散々脅されたのにねえ」

アルミンはワインを含んで笑う。やはり少し眠いようでどこか舌っ足らずだ。すこし緩んだ目元にどきりとしながら、平静を装って食事を詰め込む。

ジャンの食事につき合ってワインをあけたアルミンは、ジャンが食べ終えると食器を片づけに立った。その後ろ姿を見て、我慢できずに立ち上がる。シンクに立つアルミンを後ろから抱いて首筋に顔を埋めると身をすくませた。

「ジャン、お風呂沸いてるから」

「誘ったのお前だろ」

「……だめ」

唇を当てるとアルミンは身をよじり、濡れたままの手でジャンの肩を押し返す。

「……ま……待ってる、から」

「じゃあ一緒に」

「僕もう入ったよ。……メアリーが泣いても、聞こえないから」

「……ソッコー上がってくるから覚悟してろ」

「うう……」

名残惜しいアルミンの体温を手放して風呂に向かう。

アルミンからアルコールを持ち出してくるのは、いつからか合図のようになっていた。お互い淡泊ということはないが子どもができてからはやはりふたりきりの時間は減り、ゆっくり抱き合うということはなかなか難しい。

宣言通り体を洗うだけで風呂を出た。がっついてると思われても、今更アルミンに見られて恥ずかしい姿もなかった。ソファーでワインを楽しんでいたアルミンが、上半身は服も着ず出てきたジャンにぎょっとする。隣に座って腰を抱けば、グラスに歯を当てて視線をそらした。

「……もうちょっと、飲みたいんだけど」

「体あったまったろ」

グラスを奪ってテーブルに置き、そのままソファーに倒した。首を撫でて唇を吸う。アルコールが入った体は普段より少しあたたかい。柔らかい唇にキスを繰り返すと、アルミンの手がジャンの首に回される。

「ん……ジャン、疲れてない?」

「……疲れてるって言ったら、動いてくれるか?」

「馬鹿!」



*



目を開けると部屋の中はもう明るくなっていた。どうやら起こされたらしく、腹の上に娘がのぼっている。

「おはようメアリー」

「あう」

「わかってんのかねえ」

体を起こし、転がり落ちかけたメアリーをそのまま抱き上げた。寝室を出るとアルミンがすでにキッチンに立っている。

「おはよう」

「あ、おはよう。メアリーも起きたの、おはよう」

近づくとアルミンは包丁を離してメアリーの頬にキスをした。ジャンも顔を寄せると、笑って同様にキスをくれる。同じようにキスを返して、改めてアルミンを見た。

「何?何かついてる?」

「……足腰立たないぐらいしてやりてぇなぁ」

「……メアリー、パパにパンチして、パンチ」

何もわからないかわいい子は、無邪気に笑い声をあげた。
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