言い訳置き場
言い訳を書いていきます。誤字の報告などあればありがたいです。 ※唐突にみゅネタややぎゅにおの外の人のかけ算が混ざるのでご注意下さい。 日常はリンクのブログから。
2013'10.08.Tue
「初めのお店に戻る?」
「あー、そうすっか……」
もう何を見たかも思い出せない。溜息をつくジャンを見てアルミンは肩を揺らして笑う。
「悪いな、つき合わせて」
「いいよ、僕は楽しい」
言葉通り楽しげな様子でアルミンが笑うので、ほっとしてジャンも少し頬を緩めた。職場の上司が結婚することになり、みんなでお祝いをしよう、というところまではよかった。どういうわけかお鉢が回ってきたのがジャンのところで、何だかんだと都合をつけて逃げられた結果、ジャンが休日を潰してお祝いを買いに行くことになったのだ。決して嫌いではないしお世話になった上司だ、祝いたい気持ちは本物である。しかし改めて祝いの品をと言われても、気を使うばかりでなかなか決められない。助けてもらうつもりでアルミンをつき合わせているが、決定打になるようなものに出会えないまま休憩となった。
頼んだ食事が届いて姿勢を正す。テーブルに並べられたランチセットにふたりで手を合わせた。よく行く店は満席で、休むことを優先して初めて入る店だった。旬のパスタにフォークを絡めて口に運ぶ。ひと口目で、ジャンは少しためらった。咀嚼もそこそこに呑み込んで、アルミンを見る。
「……アルミン、そっちは」
「うーん、とね……」
アルミンはドリアを崩したスプーンを手に、苦笑いを浮かべてジャンを見る。
「……た、食べられなくはない、かな」
「食べられなくは、ないな」
外れだ。後悔しても今更遅いが、食べられないというほどまずいわけではない。しかし空腹すらもフォローしてくれない食事はなかなか進まず、どうにか食べた後にはふたりも言葉少なになっている。食後のコーヒーはまだおいしいと思えたので、それだけが救いだった。アルミンがメニューを振り返る。
「……多分、ここ、甘いものは美味しいんだと思う」
「あー、なるほどな……」
ここでいいと思えたのは、人が入っていたからだ。店内を見回せば、それぞれのテーブルの注文はデザートがほとんどのようである。完全にしくじった食事を忘れようとコーヒーを口にし、ジャンは深く息を吐く。
「夜はうちで食おうぜ」
「賛成。もう今日は冒険したくない」
「今日つき合わせたし、オレ作るわ」
「和食がいいです」
「賛成」
そうと決まればあとはしなければならないことを終わらせるだけだ。ピッと伝票を取り上げ、立ち上がってレジに向かう。出遅れたアルミンが慌ててついてきて財布を出した。
「いい」
「いいよ、出す。今日はイーブンにさせて下さい」
「……だな」
素直においしいと言えたなら、ジャンとしても喜ばせ甲斐があるというものだ。会計を済ませ、気分を変えて、といきたいが、まだ仕事は何も終わっていない。
「やっぱ無難に食器にしとくか」
「いいんじゃないかなぁ。多分インテリア系はお嫁さんの方が結構もらうんじゃない?」
「だな。最初の店どこだった?」
「上の階」
素直に始めに目をつけたもので決めてしまっておけばよかった。シンプルな雑貨をそろえた店に戻り、さっき見ていたペアの食器をもう一度確認する。特に変わったデザインでもなく使い勝手もよさそうで、少し気になるのは重さだが、上司は車で持ち帰るだろうからこの際ジャンが持ち運ぶ手間は忘れることにしよう。
店員に声をかけて新しいものを出してもらっているうちに、アルミンは何か別の物に興味を惹かれたようで、ふらふらと離れて行った。
「こちらでお間違いないですか?」
「あ、はい」
丁寧な手つきで取り出された食器を確認する。欠けやヒビがないかも一緒に確認し、先に会計を済ませてラッピングも頼むことにした。それを待つ間にジャンも食器の棚をまた振り返る。使っていたカップの取っ手が取れてしまったことを思い出したのだが、いくつか見てもっと安物でもいいだろうかと考える。誰か客が来るわけでもなしに、とアルミンを思い出し、彼の姿を探すと何か熱心に見ているので近づいていく。
「何かあったか?」
「んー、マグカップ。見てると欲しくなるんだけど、うちにたくさんあるし別にいらないんだよね」
「……うちに置いとけば?」
「え?」
アルミンが手にしていたカップと色違いのカップを手に取った。重すぎないそれを手の中で遊ばせて黙ってしまったアルミンを見ると、ほのかに頬を染めている。どう答えるのか待とうかと様子を見ていたが、時間がかかりそうなのでアルミンの手の中のカップを奪い、ふたつ手にしてレジに向かった。
「ジャン!」
「あ、こっちも追加で、自宅用です」
「ジャン、待って、自分で買うから!」
「鯖の味噌煮が食べたい」
「……わかった。晩ご飯僕が作る」
どう見ても納得していない顔でアルミンが渋々手を下げた。すねたような反応に笑いをこらえ、改めて会計を済ませてプレゼントと一緒に受け取る。カップの方をアルミンに持たせて店を出た。その間ずっとアルミンは無言で、思った以上に機嫌を損ねたのかと少し不安がよぎる。そのつもりは全くないのだが、アルミンは時々子ども扱いされているようでジャンの行為が気になることがあるらしい。
様子を伺うように呼びかければ、こちらを見ないまま下げた手にそっとアルミンの手が触れてきた。滅多にない行動に驚いてアルミンを見る。
「アルミン?」
「……ジャンがかっこよくてずるい……」
「……お前ぐらいだぜ、それだけべた褒めしてくれるの」
「絶対嘘だもん」
突然すねたアルミンを笑い、つないだ手に力を込める。隣の恥ずかしがり屋は耳まで赤くして俯いた。
「あ、あと色紙も買わなきゃなんねえんだ」
「うん」
「お前も本屋行くって言ってたな」
「……う、うん」
「それからスーパー行って」
「……や、やっぱり手」
「離さない」
「うう……」
変な汗かく、と言うアルミンのぼやき通りつないだ手には熱がこもっている。しかし勿論その程度では逃がしてやる気にはならなかった。
「あー、そうすっか……」
もう何を見たかも思い出せない。溜息をつくジャンを見てアルミンは肩を揺らして笑う。
「悪いな、つき合わせて」
「いいよ、僕は楽しい」
言葉通り楽しげな様子でアルミンが笑うので、ほっとしてジャンも少し頬を緩めた。職場の上司が結婚することになり、みんなでお祝いをしよう、というところまではよかった。どういうわけかお鉢が回ってきたのがジャンのところで、何だかんだと都合をつけて逃げられた結果、ジャンが休日を潰してお祝いを買いに行くことになったのだ。決して嫌いではないしお世話になった上司だ、祝いたい気持ちは本物である。しかし改めて祝いの品をと言われても、気を使うばかりでなかなか決められない。助けてもらうつもりでアルミンをつき合わせているが、決定打になるようなものに出会えないまま休憩となった。
頼んだ食事が届いて姿勢を正す。テーブルに並べられたランチセットにふたりで手を合わせた。よく行く店は満席で、休むことを優先して初めて入る店だった。旬のパスタにフォークを絡めて口に運ぶ。ひと口目で、ジャンは少しためらった。咀嚼もそこそこに呑み込んで、アルミンを見る。
「……アルミン、そっちは」
「うーん、とね……」
アルミンはドリアを崩したスプーンを手に、苦笑いを浮かべてジャンを見る。
「……た、食べられなくはない、かな」
「食べられなくは、ないな」
外れだ。後悔しても今更遅いが、食べられないというほどまずいわけではない。しかし空腹すらもフォローしてくれない食事はなかなか進まず、どうにか食べた後にはふたりも言葉少なになっている。食後のコーヒーはまだおいしいと思えたので、それだけが救いだった。アルミンがメニューを振り返る。
「……多分、ここ、甘いものは美味しいんだと思う」
「あー、なるほどな……」
ここでいいと思えたのは、人が入っていたからだ。店内を見回せば、それぞれのテーブルの注文はデザートがほとんどのようである。完全にしくじった食事を忘れようとコーヒーを口にし、ジャンは深く息を吐く。
「夜はうちで食おうぜ」
「賛成。もう今日は冒険したくない」
「今日つき合わせたし、オレ作るわ」
「和食がいいです」
「賛成」
そうと決まればあとはしなければならないことを終わらせるだけだ。ピッと伝票を取り上げ、立ち上がってレジに向かう。出遅れたアルミンが慌ててついてきて財布を出した。
「いい」
「いいよ、出す。今日はイーブンにさせて下さい」
「……だな」
素直においしいと言えたなら、ジャンとしても喜ばせ甲斐があるというものだ。会計を済ませ、気分を変えて、といきたいが、まだ仕事は何も終わっていない。
「やっぱ無難に食器にしとくか」
「いいんじゃないかなぁ。多分インテリア系はお嫁さんの方が結構もらうんじゃない?」
「だな。最初の店どこだった?」
「上の階」
素直に始めに目をつけたもので決めてしまっておけばよかった。シンプルな雑貨をそろえた店に戻り、さっき見ていたペアの食器をもう一度確認する。特に変わったデザインでもなく使い勝手もよさそうで、少し気になるのは重さだが、上司は車で持ち帰るだろうからこの際ジャンが持ち運ぶ手間は忘れることにしよう。
店員に声をかけて新しいものを出してもらっているうちに、アルミンは何か別の物に興味を惹かれたようで、ふらふらと離れて行った。
「こちらでお間違いないですか?」
「あ、はい」
丁寧な手つきで取り出された食器を確認する。欠けやヒビがないかも一緒に確認し、先に会計を済ませてラッピングも頼むことにした。それを待つ間にジャンも食器の棚をまた振り返る。使っていたカップの取っ手が取れてしまったことを思い出したのだが、いくつか見てもっと安物でもいいだろうかと考える。誰か客が来るわけでもなしに、とアルミンを思い出し、彼の姿を探すと何か熱心に見ているので近づいていく。
「何かあったか?」
「んー、マグカップ。見てると欲しくなるんだけど、うちにたくさんあるし別にいらないんだよね」
「……うちに置いとけば?」
「え?」
アルミンが手にしていたカップと色違いのカップを手に取った。重すぎないそれを手の中で遊ばせて黙ってしまったアルミンを見ると、ほのかに頬を染めている。どう答えるのか待とうかと様子を見ていたが、時間がかかりそうなのでアルミンの手の中のカップを奪い、ふたつ手にしてレジに向かった。
「ジャン!」
「あ、こっちも追加で、自宅用です」
「ジャン、待って、自分で買うから!」
「鯖の味噌煮が食べたい」
「……わかった。晩ご飯僕が作る」
どう見ても納得していない顔でアルミンが渋々手を下げた。すねたような反応に笑いをこらえ、改めて会計を済ませてプレゼントと一緒に受け取る。カップの方をアルミンに持たせて店を出た。その間ずっとアルミンは無言で、思った以上に機嫌を損ねたのかと少し不安がよぎる。そのつもりは全くないのだが、アルミンは時々子ども扱いされているようでジャンの行為が気になることがあるらしい。
様子を伺うように呼びかければ、こちらを見ないまま下げた手にそっとアルミンの手が触れてきた。滅多にない行動に驚いてアルミンを見る。
「アルミン?」
「……ジャンがかっこよくてずるい……」
「……お前ぐらいだぜ、それだけべた褒めしてくれるの」
「絶対嘘だもん」
突然すねたアルミンを笑い、つないだ手に力を込める。隣の恥ずかしがり屋は耳まで赤くして俯いた。
「あ、あと色紙も買わなきゃなんねえんだ」
「うん」
「お前も本屋行くって言ってたな」
「……う、うん」
「それからスーパー行って」
「……や、やっぱり手」
「離さない」
「うう……」
変な汗かく、と言うアルミンのぼやき通りつないだ手には熱がこもっている。しかし勿論その程度では逃がしてやる気にはならなかった。
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