言い訳置き場
言い訳を書いていきます。誤字の報告などあればありがたいです。 ※唐突にみゅネタややぎゅにおの外の人のかけ算が混ざるのでご注意下さい。 日常はリンクのブログから。
2014'03.19.Wed
「どうも初めましてアルミンです」
「は、初めまして、富松と申します」
「ええと……緊張しますね」
初対面のふたりはぎこちなく挨拶をして、それきりどうしたものか困って黙り込んでしまった。この部屋でしなければならないことはわかっているのだが、アルミンは相手に選ばれた彼を見て途方に暮れる。もちろん、誰が相手でも戸惑いはしただろう。どう見ても、子どもなのだ。尤もアルミンとて14歳、子どもと言われたら子どもなのだが、隣に座っている彼は間違いなく年下だ。
「あッ……あの、アルミンさん!」
「は、はい」
「口吸いをしたことがありますか!」
顔を真っ赤にした彼の勢いに戸惑うが、言葉を失っていると彼ははっとしたように頭を抱えた。何か早口でまくしたて始めた彼に慌てるが、勢いは止まりそうにない。
「何でおれがこんなことになってんだ全部おれが悪いからだよなああそうだよなオレがいつまでたっても子どもで先輩たちにちっともついて行けないしいつまでたっても迷惑をかけてしまってちいとも上達しなくてそんなんだからくっ、口吸いだって」
「あっちょっと待ってわかった!キスのことね!?」
「きす?」
「あー、えーと、口吸いっていうの?ええと、富松くんは、したことは?」
「なッ……ないです」
「えっと……今いくつ?」
「12です」
「あ〜……」
この年頃の2歳差は大きい。自分が大人だと思わないが、同行するには少し気が引けてしまう。
「アルミンさんは?」
「えっ、え〜っと……あ、あるよ」
「じゃあ教えてくださいッ」
「えっ」
「おれがこんなんだから先輩はきっと何もして下さらないんです!おれだって、お、おれだって、ひとりの男です……」
段々声が小さくなる。誰だかわからないが、彼の愛しい人は優しい人であるらしい。アルミンでもこの子が相手ならそうするだろう。負けん気は強いだろうがあまりにも初心であるように見える。
「ええと……あの、僕でいいのかな?」
「目をつぶってます!」
「あ、うん、そうなんだけど」
それはそれで少し考えるものがあるが、ストレートな言葉はただ必死なのだろう。今にも興奮で倒れんばかりの少年を前に、アルミンは頭をひねる。
「じゃ富松くん、目を閉じて」
「は、はいっ」
ぎゅっと強く目を閉じる姿は微笑ましくて、やはり2つ下でも子どもだとしか思えなかった。自分がこれぐらいの年には恋愛どころではなかったなぁ、と思いながら、富松の頬に唇を当てる。
アルミンが離れると、彼はぽかんと口を開けてアルミンを見ていた。
「おしまい」
「あの……」
「練習なんていらないよ。好きな人と、すればいい。あー……えーと、僕も、好きな人としかしたくない」
「……お慕いしてる方がいらっしゃるので?」
「あはは、お慕いなんてそんな、立派な感情じゃない」
「いえ、自分のことばかりで取り乱して、アルミンさんのことまで考えが及ばす、大変失礼なことを申し上げました」
ぴしりと富松は背を正した。おや、とアルミンも釣られて姿勢を直す。
「きっと、自分が未熟であるので先輩は何もして下さらないのだと思い知りました。まだ戦にも出たことのないようなおれが、先輩と肩を並べようなどととんだ思い上がりです」
「戦?」
「おれは忍者です。いずれは戦に出ます。……戦に出れば先輩からの便りがないのは当然とわかってはおりましたが、つい不安になりました。あの優秀な先輩に、何かがあるはずがありません」
ぎぃ、と木の軋む音がして、見ればドアが開いている。この部屋を出てもいいらしい。富松はそれに気づき、きちんと正座をしてアルミンに頭を下げた。
「アルミンさんも兵士であると伺っております。どうぞ、ご武運を」
「あ、ありがとう。――富松くんも」
武運を――と、アルミンは口にすることはできなかった。富松は深い礼の後、つむじ風のように部屋を飛び出していく。残されたアルミンはゆっくり立ち上がり、ドアに向かった。
アルミンが訓練兵になったのは、12歳のときだった。あのときに、自分はあれほどの覚悟をしていただろうか。誰かが死ぬなどと、思っていただろうか。
声が聞きたくなって、部屋を出てからアルミンは走り出した。
「は、初めまして、富松と申します」
「ええと……緊張しますね」
初対面のふたりはぎこちなく挨拶をして、それきりどうしたものか困って黙り込んでしまった。この部屋でしなければならないことはわかっているのだが、アルミンは相手に選ばれた彼を見て途方に暮れる。もちろん、誰が相手でも戸惑いはしただろう。どう見ても、子どもなのだ。尤もアルミンとて14歳、子どもと言われたら子どもなのだが、隣に座っている彼は間違いなく年下だ。
「あッ……あの、アルミンさん!」
「は、はい」
「口吸いをしたことがありますか!」
顔を真っ赤にした彼の勢いに戸惑うが、言葉を失っていると彼ははっとしたように頭を抱えた。何か早口でまくしたて始めた彼に慌てるが、勢いは止まりそうにない。
「何でおれがこんなことになってんだ全部おれが悪いからだよなああそうだよなオレがいつまでたっても子どもで先輩たちにちっともついて行けないしいつまでたっても迷惑をかけてしまってちいとも上達しなくてそんなんだからくっ、口吸いだって」
「あっちょっと待ってわかった!キスのことね!?」
「きす?」
「あー、えーと、口吸いっていうの?ええと、富松くんは、したことは?」
「なッ……ないです」
「えっと……今いくつ?」
「12です」
「あ〜……」
この年頃の2歳差は大きい。自分が大人だと思わないが、同行するには少し気が引けてしまう。
「アルミンさんは?」
「えっ、え〜っと……あ、あるよ」
「じゃあ教えてくださいッ」
「えっ」
「おれがこんなんだから先輩はきっと何もして下さらないんです!おれだって、お、おれだって、ひとりの男です……」
段々声が小さくなる。誰だかわからないが、彼の愛しい人は優しい人であるらしい。アルミンでもこの子が相手ならそうするだろう。負けん気は強いだろうがあまりにも初心であるように見える。
「ええと……あの、僕でいいのかな?」
「目をつぶってます!」
「あ、うん、そうなんだけど」
それはそれで少し考えるものがあるが、ストレートな言葉はただ必死なのだろう。今にも興奮で倒れんばかりの少年を前に、アルミンは頭をひねる。
「じゃ富松くん、目を閉じて」
「は、はいっ」
ぎゅっと強く目を閉じる姿は微笑ましくて、やはり2つ下でも子どもだとしか思えなかった。自分がこれぐらいの年には恋愛どころではなかったなぁ、と思いながら、富松の頬に唇を当てる。
アルミンが離れると、彼はぽかんと口を開けてアルミンを見ていた。
「おしまい」
「あの……」
「練習なんていらないよ。好きな人と、すればいい。あー……えーと、僕も、好きな人としかしたくない」
「……お慕いしてる方がいらっしゃるので?」
「あはは、お慕いなんてそんな、立派な感情じゃない」
「いえ、自分のことばかりで取り乱して、アルミンさんのことまで考えが及ばす、大変失礼なことを申し上げました」
ぴしりと富松は背を正した。おや、とアルミンも釣られて姿勢を直す。
「きっと、自分が未熟であるので先輩は何もして下さらないのだと思い知りました。まだ戦にも出たことのないようなおれが、先輩と肩を並べようなどととんだ思い上がりです」
「戦?」
「おれは忍者です。いずれは戦に出ます。……戦に出れば先輩からの便りがないのは当然とわかってはおりましたが、つい不安になりました。あの優秀な先輩に、何かがあるはずがありません」
ぎぃ、と木の軋む音がして、見ればドアが開いている。この部屋を出てもいいらしい。富松はそれに気づき、きちんと正座をしてアルミンに頭を下げた。
「アルミンさんも兵士であると伺っております。どうぞ、ご武運を」
「あ、ありがとう。――富松くんも」
武運を――と、アルミンは口にすることはできなかった。富松は深い礼の後、つむじ風のように部屋を飛び出していく。残されたアルミンはゆっくり立ち上がり、ドアに向かった。
アルミンが訓練兵になったのは、12歳のときだった。あのときに、自分はあれほどの覚悟をしていただろうか。誰かが死ぬなどと、思っていただろうか。
声が聞きたくなって、部屋を出てからアルミンは走り出した。
PR
Post your Comment
カレンダー
カテゴリー
最新記事
ブログ内検索
アクセス解析
アクセス解析