言い訳置き場
言い訳を書いていきます。誤字の報告などあればありがたいです。 ※唐突にみゅネタややぎゅにおの外の人のかけ算が混ざるのでご注意下さい。 日常はリンクのブログから。
2014'02.17.Mon
思えば、2月に入ってから随分とアルミンのことを知った。これまでが知らなかっただけかもしれないが、元々ジャンとアルミンは特別親しいわけでもなく、かといっていがみ合っていたわけでもない。無関心だった、というのが一番近いだろう。
ただジャンはそれほど敏感ではなく、たまたまアルミンの視線に気づくことが多かったのだ。こちらを見ている。目が合う。そしてその意味がわからないほど野暮でもなかった。
恋人ごっこを初めてから、アルミンと視線が合うことが増えたように思う。
――というのも、自分が見ているからだという自覚はあった。ふとした拍子にアルミンはどうしているだろうかと気になって顔を上げると、アルミンは視線に気づいたかのようにジャンを見る。目が合うとはにかんで微笑み、恥ずかしそうに目を逸らすのだ。それがどうして、かわいくないといえるだろう。そのたび伝染したようにジャンも頬を熱くした。
アルミンは実技は苦手だがいつもあきらめなかった。バカなやつだと思っていたが、恋人だと思えばかわいいものだ。座学が得意なのは周知のことで、誰からも頼りにされていた。誰にもわけへだてなく接しているようで、目立たない程度にアルミンはジャンの隣にいる。
誰も知らないのだ。アルミンが、恋人といるときにどんな顔をするのか。
つなぐというよりは包むように触れたアルミンの手はいつも熱い。緊張が伝わってくるようなそれは嫌いではない。
恋人ごっこの場所はいつの間にか誰も来ることのない倉庫になった。火の気のないそこは寒かったが、こっそりと現れるアルミンと並んで木箱に腰掛けていると隣の体温が伝わってくるようだった。
「今日お前何もないところで転けてなかったか?」
「ちっ、違うよ!ブーツの底がはがれちゃって」
「ブーツ?ちゃんと直したか?」
「うん、ミカサに手伝ってもらった。器用なんだよミカサ」
「お前が不器用すぎるだけだろ」
「うう……返す言葉もございません」
ジャンが笑うとアルミンもすぐに笑った。しかしその眉が寄ったかと思えば、派手にくしゃみをする。ぶるっと身震いをするので寒いかと聞けば首を振った。
「寒いのは平気だよ。開拓地はさすがに堪えたけど」
寒いといったらそれを理由に肩でも抱いてやろうと思っていたのに、と少しがっかりする。
言われてみれば、アルミンは体力こそないがジャンよりもよほどたくましい。ジャンの出身も決して田舎ではなかったが、環境としてはアルミンのいた地区とは随分違ったのだろう。
「大人の人に随分言われたなぁ、子どもは訓練兵になれるからいいよなって」
「……戻されたやつもけっこういるけどな」
「僕だってぎりぎりだ。まだ大丈夫かなんて確信もない。諦める気はないけど」
アルミンが目指しているのは、幼馴染みと同じ調査兵団だった。わざわざ危険な壁の外に行き、いつ死んでもおかしくない。アルミンなんかあっという間に死んじまうんだろうなと思うといい気分ではない。
「お前やっぱり調査兵団やめれば?死ぬこたねえよ。技巧に推薦されたんだろ」
ジャンの言葉に返事はなく、どうしたのかと隣を見る。どこかぽかんと、ただ驚きだけを浮かべて、それからアルミンは困ったように眉を寄せて笑った。
「僕がどこに行こうと、ミカサは調査兵団に行くと思うよ」
「は?」
「ミカサもエレンも憲兵団を選ぶことはできるだろうけど、エレンは昔から調査兵団を目指してたし、ミカサがエレンから離れるとは思えないし」
「いや、オレはお前の話を」
「え?」
更に困惑を見せたアルミンに、ジャンの方が動揺する。
――なんでこいつ、自分が心配されてると思わないんだ。
言葉を探してアルミンを見て、すぐに気がついた。恋人のふりと言いながら、アルミンはジャンがアルミンのことを好きだとは思っていないのだ。恋人だろうがなかろうが、アルミンの思いは一方通行のままなのだ。
相手がほしいとは思わないのか?思わないから――ふりだけなのか。
アルミンはもう一度くしゃみをして、話していたことを忘れてしまったかのようにジャンを促した。
「そろそろ戻ろうか。明日も早いしね」
「……ああ」
体温はこんなにも、名残惜しんでみせるくせに。
それから数日、何となくつまらなくてアルミンを避けた。2月がもう終わることはわかっていたが、ジャンは気に食わないものを甘んじて受け入れるほど大人にはなれなかったのだ。
時々アルミンの寂しそうな顔を見たが、ジャンはうまく避けた。露骨な素振りは見せず、いつも誰かといただけだ。
ただジャンはそれほど敏感ではなく、たまたまアルミンの視線に気づくことが多かったのだ。こちらを見ている。目が合う。そしてその意味がわからないほど野暮でもなかった。
恋人ごっこを初めてから、アルミンと視線が合うことが増えたように思う。
――というのも、自分が見ているからだという自覚はあった。ふとした拍子にアルミンはどうしているだろうかと気になって顔を上げると、アルミンは視線に気づいたかのようにジャンを見る。目が合うとはにかんで微笑み、恥ずかしそうに目を逸らすのだ。それがどうして、かわいくないといえるだろう。そのたび伝染したようにジャンも頬を熱くした。
アルミンは実技は苦手だがいつもあきらめなかった。バカなやつだと思っていたが、恋人だと思えばかわいいものだ。座学が得意なのは周知のことで、誰からも頼りにされていた。誰にもわけへだてなく接しているようで、目立たない程度にアルミンはジャンの隣にいる。
誰も知らないのだ。アルミンが、恋人といるときにどんな顔をするのか。
つなぐというよりは包むように触れたアルミンの手はいつも熱い。緊張が伝わってくるようなそれは嫌いではない。
恋人ごっこの場所はいつの間にか誰も来ることのない倉庫になった。火の気のないそこは寒かったが、こっそりと現れるアルミンと並んで木箱に腰掛けていると隣の体温が伝わってくるようだった。
「今日お前何もないところで転けてなかったか?」
「ちっ、違うよ!ブーツの底がはがれちゃって」
「ブーツ?ちゃんと直したか?」
「うん、ミカサに手伝ってもらった。器用なんだよミカサ」
「お前が不器用すぎるだけだろ」
「うう……返す言葉もございません」
ジャンが笑うとアルミンもすぐに笑った。しかしその眉が寄ったかと思えば、派手にくしゃみをする。ぶるっと身震いをするので寒いかと聞けば首を振った。
「寒いのは平気だよ。開拓地はさすがに堪えたけど」
寒いといったらそれを理由に肩でも抱いてやろうと思っていたのに、と少しがっかりする。
言われてみれば、アルミンは体力こそないがジャンよりもよほどたくましい。ジャンの出身も決して田舎ではなかったが、環境としてはアルミンのいた地区とは随分違ったのだろう。
「大人の人に随分言われたなぁ、子どもは訓練兵になれるからいいよなって」
「……戻されたやつもけっこういるけどな」
「僕だってぎりぎりだ。まだ大丈夫かなんて確信もない。諦める気はないけど」
アルミンが目指しているのは、幼馴染みと同じ調査兵団だった。わざわざ危険な壁の外に行き、いつ死んでもおかしくない。アルミンなんかあっという間に死んじまうんだろうなと思うといい気分ではない。
「お前やっぱり調査兵団やめれば?死ぬこたねえよ。技巧に推薦されたんだろ」
ジャンの言葉に返事はなく、どうしたのかと隣を見る。どこかぽかんと、ただ驚きだけを浮かべて、それからアルミンは困ったように眉を寄せて笑った。
「僕がどこに行こうと、ミカサは調査兵団に行くと思うよ」
「は?」
「ミカサもエレンも憲兵団を選ぶことはできるだろうけど、エレンは昔から調査兵団を目指してたし、ミカサがエレンから離れるとは思えないし」
「いや、オレはお前の話を」
「え?」
更に困惑を見せたアルミンに、ジャンの方が動揺する。
――なんでこいつ、自分が心配されてると思わないんだ。
言葉を探してアルミンを見て、すぐに気がついた。恋人のふりと言いながら、アルミンはジャンがアルミンのことを好きだとは思っていないのだ。恋人だろうがなかろうが、アルミンの思いは一方通行のままなのだ。
相手がほしいとは思わないのか?思わないから――ふりだけなのか。
アルミンはもう一度くしゃみをして、話していたことを忘れてしまったかのようにジャンを促した。
「そろそろ戻ろうか。明日も早いしね」
「……ああ」
体温はこんなにも、名残惜しんでみせるくせに。
それから数日、何となくつまらなくてアルミンを避けた。2月がもう終わることはわかっていたが、ジャンは気に食わないものを甘んじて受け入れるほど大人にはなれなかったのだ。
時々アルミンの寂しそうな顔を見たが、ジャンはうまく避けた。露骨な素振りは見せず、いつも誰かといただけだ。
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