言い訳置き場
言い訳を書いていきます。誤字の報告などあればありがたいです。 ※唐突にみゅネタややぎゅにおの外の人のかけ算が混ざるのでご注意下さい。 日常はリンクのブログから。
2014'02.05.Wed
ドアが開くと、迎えてくれたのはふたりの笑顔だった。客人であるマルコはその贅沢な歓迎に笑顔を返し、母親に抱かれた娘の頬に手を伸ばす。それは予想以上の柔らかさで男の指先を受け、ドレスの手触りを思い出させた。娘はくすぐっそうに、しかし拒まず笑みをこぼす。
「久しぶり、メアリー。見ない間に随分お姉さんになったね」
「だって、メアリー。よかったね」
「アルミンも相変わらず元気そうでよかった」
「毎日この子に振り回されて、疲れている間もないよ」
どうぞ、と促され、マルコは部屋に招かれた。久しぶりに訪れる友人夫婦の家は何も変わらず……とはならず、あちこちに娘のためのものが増えている。まだ結婚の予定も相手もいないマルコには少しまぶしい光景だ。
「よう、ちょっと久しぶりだな」
「久しぶり、ジャン。今日のシェフはジャンですか」
台所から親友が顔を出す。比較的なんでもこなしてしまう彼は嫌味なことに努力している妻よりも料理がうまい。何度かそれで喧嘩をしているのを知っている身としては、結果的にはアルミンにとっても育児は随分楽だろう。
もうできているからとマルコは先にテーブルに座らされた。手伝うように言われたアルミンも台所に行ってしまい、マルコは手持ち無沙汰に部屋を見る。ふと小さな女の子がこちらをじっと見ていることに気づいて、笑いかけて手招きをした。彼女はぱっと花が咲くように笑い、小さな手足を動かしてマルコの膝までやってくる。
「わかるかな?マルコです」
「あう」
「マルコ。よろしくね」
幼い手を取って握手をする。わからないなりに何かおもしろかったのか、メアリーは笑い声を上げた。
ジャンの料理はある意味では男の料理で、簡単に言えばアルコールがよく合った。と言うよりはジャンは初めからそのつもりだったようである。必然的にマルコも飲まされ、料理と酒を楽しんだ。先日まで仕事で海外にいたマルコは、決して口に合わなかったわけではないが、やはり慣れた料理というのは嬉しいものだった。
「メアリー、おいで」
上機嫌のジャンに呼ばれて、娘は彼の膝に引き寄せられる。子どもが嫌いだと聞いたこともなかったが予想以上の子煩悩で、昔からジャンを知っていると面白い。膝に乗せた娘に額を寄せて、紅葉のような手でぴたぴたと頬を叩かれている。
「そんなんじゃメアリーがお嫁に行くとき大変じゃない?」
「誰にもやらねー」
「すぐそれだ」
ジャンの言葉はおきまりらしく、アルミンはあきれた素振りをしながらも笑っている。あの悪人面が父親なら挨拶にくるまだ見ぬ旦那様はさぞ怯えることだろう、と考えて、マルコも思わず口元を緩めた。
「メアリー、パパにちゅーして」
ジャンが頬を指させば、娘は愛らしい唇でそれに応える。へらへら笑ってジャンが娘を抱きしめるのにさすがに驚けば、アルミンも苦笑していた。
「なんかジャンが変なこと教えちゃったんだよね」
「あんなジャン見たらみんな驚くだろうなぁ」
「お義母さんは大笑いしてた」
「だろうね」
「あーもー誰にもやらねー。パパが一生養う。メアリー、パパと結婚しような」
「あーあ、出来あがっちゃって」
アルミンは立ち上がって台所に向かった。すぐに水を持って戻ってきて、ジャンから娘を引きはがして代わりにグラスを押しつける。
「だってな、お前、あんなにかわいいんだぞ」
「はいはい」
「うーん、見てはいけないものを見た気分」
マルコが今まで知らなかった親友の姿は、恥ずかしいほどだが憎めない。父親から解放された娘はテーブルに興味を持ったので、マルコは慌ててひっくり返されそうになった皿を捕まえた。アルミンは酔っ払いに絡まれて適当になだめている。
でもまあこれほどかわいければ仕方ないか、と思うほどに、彼らの子どもは愛らしい。マルコをじっと見上げる瞳は宝石のように輝いて、無垢な視線はくすぐったいほどだ。
ふと、ちょっとした悪戯心がわいてくる。
「メアリー、オレにもちゅーして」
先ほどジャンがそうしたように、マルコも彼女に頬を見せた。賢いメアリーはにこりと笑い、柔らかいそれでマルコに祝福を贈る。しっとりと柔らかいキスは人を魅了するには十分だ。
笑って顔を上げれば、――彼らの両親が、目を丸くしてこちらを見ている。これはさすがに怒られるだろうか、と先に謝れば、アルミンがまだ戸惑いを残したまま首を振った。
「人見知りはしないんだけど、さすがにそれはエレンにもおじいさまにもしなかったんだよね」
「お前いつの間にメアリーたぶらかしたんだよ……」
「え〜、挨拶しかしてないよ」
マルコの前で、メアリーばかりが何も知らずに笑っている。マルコが困ってメアリーを見たが、無邪気な、意味の取れない言葉が返ってくるだけだ。
「パパ以外には初めてのキスになっちゃったねぇ。マルコのお嫁さんにしてもらう?」
「オレは許さねえからな!」
「久しぶり、メアリー。見ない間に随分お姉さんになったね」
「だって、メアリー。よかったね」
「アルミンも相変わらず元気そうでよかった」
「毎日この子に振り回されて、疲れている間もないよ」
どうぞ、と促され、マルコは部屋に招かれた。久しぶりに訪れる友人夫婦の家は何も変わらず……とはならず、あちこちに娘のためのものが増えている。まだ結婚の予定も相手もいないマルコには少しまぶしい光景だ。
「よう、ちょっと久しぶりだな」
「久しぶり、ジャン。今日のシェフはジャンですか」
台所から親友が顔を出す。比較的なんでもこなしてしまう彼は嫌味なことに努力している妻よりも料理がうまい。何度かそれで喧嘩をしているのを知っている身としては、結果的にはアルミンにとっても育児は随分楽だろう。
もうできているからとマルコは先にテーブルに座らされた。手伝うように言われたアルミンも台所に行ってしまい、マルコは手持ち無沙汰に部屋を見る。ふと小さな女の子がこちらをじっと見ていることに気づいて、笑いかけて手招きをした。彼女はぱっと花が咲くように笑い、小さな手足を動かしてマルコの膝までやってくる。
「わかるかな?マルコです」
「あう」
「マルコ。よろしくね」
幼い手を取って握手をする。わからないなりに何かおもしろかったのか、メアリーは笑い声を上げた。
ジャンの料理はある意味では男の料理で、簡単に言えばアルコールがよく合った。と言うよりはジャンは初めからそのつもりだったようである。必然的にマルコも飲まされ、料理と酒を楽しんだ。先日まで仕事で海外にいたマルコは、決して口に合わなかったわけではないが、やはり慣れた料理というのは嬉しいものだった。
「メアリー、おいで」
上機嫌のジャンに呼ばれて、娘は彼の膝に引き寄せられる。子どもが嫌いだと聞いたこともなかったが予想以上の子煩悩で、昔からジャンを知っていると面白い。膝に乗せた娘に額を寄せて、紅葉のような手でぴたぴたと頬を叩かれている。
「そんなんじゃメアリーがお嫁に行くとき大変じゃない?」
「誰にもやらねー」
「すぐそれだ」
ジャンの言葉はおきまりらしく、アルミンはあきれた素振りをしながらも笑っている。あの悪人面が父親なら挨拶にくるまだ見ぬ旦那様はさぞ怯えることだろう、と考えて、マルコも思わず口元を緩めた。
「メアリー、パパにちゅーして」
ジャンが頬を指させば、娘は愛らしい唇でそれに応える。へらへら笑ってジャンが娘を抱きしめるのにさすがに驚けば、アルミンも苦笑していた。
「なんかジャンが変なこと教えちゃったんだよね」
「あんなジャン見たらみんな驚くだろうなぁ」
「お義母さんは大笑いしてた」
「だろうね」
「あーもー誰にもやらねー。パパが一生養う。メアリー、パパと結婚しような」
「あーあ、出来あがっちゃって」
アルミンは立ち上がって台所に向かった。すぐに水を持って戻ってきて、ジャンから娘を引きはがして代わりにグラスを押しつける。
「だってな、お前、あんなにかわいいんだぞ」
「はいはい」
「うーん、見てはいけないものを見た気分」
マルコが今まで知らなかった親友の姿は、恥ずかしいほどだが憎めない。父親から解放された娘はテーブルに興味を持ったので、マルコは慌ててひっくり返されそうになった皿を捕まえた。アルミンは酔っ払いに絡まれて適当になだめている。
でもまあこれほどかわいければ仕方ないか、と思うほどに、彼らの子どもは愛らしい。マルコをじっと見上げる瞳は宝石のように輝いて、無垢な視線はくすぐったいほどだ。
ふと、ちょっとした悪戯心がわいてくる。
「メアリー、オレにもちゅーして」
先ほどジャンがそうしたように、マルコも彼女に頬を見せた。賢いメアリーはにこりと笑い、柔らかいそれでマルコに祝福を贈る。しっとりと柔らかいキスは人を魅了するには十分だ。
笑って顔を上げれば、――彼らの両親が、目を丸くしてこちらを見ている。これはさすがに怒られるだろうか、と先に謝れば、アルミンがまだ戸惑いを残したまま首を振った。
「人見知りはしないんだけど、さすがにそれはエレンにもおじいさまにもしなかったんだよね」
「お前いつの間にメアリーたぶらかしたんだよ……」
「え〜、挨拶しかしてないよ」
マルコの前で、メアリーばかりが何も知らずに笑っている。マルコが困ってメアリーを見たが、無邪気な、意味の取れない言葉が返ってくるだけだ。
「パパ以外には初めてのキスになっちゃったねぇ。マルコのお嫁さんにしてもらう?」
「オレは許さねえからな!」
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