言い訳置き場
言い訳を書いていきます。誤字の報告などあればありがたいです。 ※唐突にみゅネタややぎゅにおの外の人のかけ算が混ざるのでご注意下さい。 日常はリンクのブログから。
2014'02.09.Sun
「アルミン」
ミカサの声にどきりとして、反応したのはアルミンよりもジャンの方が早かった。そのあまりにもわかりやすい自分に呆れて、流石に恥じてジャンはすぐに視線を外す。アルミンは少し笑い、ジャンに断ってミカサの元へ向かった。
アルミンとふたりでいるところに誰かが来たことは初めてではない。人目を避けはしても結局は宿舎だ。完全にふたりきりに慣れるような場所などは早々に本当のカップルが陣取っている。
何を話しているのだろうか、とジャンはこっそりふたりを振り返った。訓練生活も一年を過ぎれば、鍛えられた肉体は性差を感じないことも多い。兵士としての能力の高いミカサはなおさらで、あいにくジャンはお目にかかったことはないが、噂によると彼女の腹筋は少し鍛えた程度の男では話にならないほど立派であるらしい。そのミカサと並ぶとともすればアルミンの方がよほど女らしく見える。
「わかった、エレンにも伝えておくね」
「お願い。探したけれど見つからなくて」
「多分ライナーたちといると思う」
「アルミンはここで何をしていたの?」
「ジャンと話をしてたんだ」
「そう……ここは寒いから、早くあたたかくして寝て」
「ありがとう、ミカサも体冷やさないようにね。おやすみ」
「おやすみなさい」
いつもクールなミカサが、わずかだが頬を緩めたような気がした。あれをそばで見るには、ジャンはどれほどの努力がいるのだろうか。走っても走っても、ジャンはミカサの視界に入らない。
ミカサと別れて戻ってくるアルミンをじっと見る。考えてみれは、告白した分ジャンよりもアルミンの方が男らしいと言えるのかもしれない。
「……それは嫌だな」
「何?」
「何でもない。ミカサなんて?」
「……気になる?」
「あ〜……」
目を細めたアルミンからそっと目をそらした。頭では、今はアルミンが「恋人」だとわかってはいるのだ。演じきれないジャンを冗談混じりだが責めるように、アルミンは最近こうしてジャンをからかった。
「ミカサがお世話になった人に手紙を書くから、もしあれば一緒に送るって」
「ふうん……」
「訓練兵になったときに知らせたきりだから、エレンにも何か書かせよう」
「あいつ手紙なんて書けるのか?」
「それは言い過ぎ」
アルミンは肩を揺らして小さく笑う。ミカサもアルミンも、エレンのような男のどこがいいのだろうか。以前簡単に聞いたときには、エレンとは幼馴染みであると言うだけではなく、ヒーローでもあるらしい。ジャンにはひねくれた正義感にしか見えなくても、それに引かれる者がいる。それもまたジャンにとっては気に食わないことだった。自分の言葉の力を、知らずに使う者は無責任だ。
「……そういえば、お前、オレのことあいつらにも言ってないのか」
もし話していればあのエレンが黙ってないだろう。それはジャンの思った通りで、アルミンはただ肩をすくめた。
「僕だって、何でも全部話すわけじゃないよ」
「気づきそうにもないもんな」
「ははっ、そうだね。僕だって自覚したときは驚いた」
「オレのどの辺りが優等生のお気に召したんだか」
「それは秘密。恥ずかしいから」
「オレのお願いでも?」
「うん。ジャンのお願いでも、教えてあげない」
笑うアルミンを、かわいいと思わないわけではない。先日の休みにはアルミンを避けるように実家に帰ったが、後で考えてみれば、共に過ごせそうな休みは他にはなかった。賢いアルミンはそのことにもう気づいているのだろうか。少しの罪悪感がジャンの態度を少し緩める。誰だって、好きな人との時間は大事だろう。
「寒いね、もう戻ろうか」
それでもアルミンは、あっさりとその時間に区切りをつける。恋人のふりと言いながら、ふたりの間に恋人らしいことなど何もなかった。
ふたりでいても、部屋にいても、アルミンの態度は変わらない。ただ、少し匂わすような会話があるかないかと言うだけだ。アルミンがそれでいいのかはわからない。ジャンはどこまで踏み込んでいいのかわからずに、ジャンは頷くしかなかった。
第104期訓練兵名物となりつつあったカップルが、先日喧嘩をしたらしい。普段は鬱陶しいほどの仲睦まじさだが、毎日そうというわけではない。たまの喧嘩も同期にしてみればいつものことなので気にせずにいたが、今回はいつもとは違うようだった。いつまで経ってもふたりは険悪なままで、周囲がそれにつき合うのも疲れてくるほどだ。男子一同はこのまま別れちまえ、とのろけに飽き飽きしていたが、女子の方は違ったらしい。
その日寮の部屋に戻ってきた彼氏の方は、今まで見たことがないほど表情を緩めて帰ってきた。否、あれは、彼女とつきあうことになった日と同じ表情だ。それはもう、誰が見たって彼らが仲直りしたのだ、してしまったのだとひと目でわかるほどにやけている。
「聞いてくれよ!」
運悪く捕まったマルコの助けを求める視線から、ジャンは他の同期同様巻き込まれる前に早々に逃げ出した。マルコには悪いが、のろけを聞かされるぐらいならあとでマルコに恨まれる方がましだった。断片的に焼き菓子がどうだと聞こえたから、話の内容も想像に難くない。
「あ、ジャン」
特に当てもなく部屋を出たジャンは、アルミンに呼ばれて振り返った。姿を見ないと思っていたが、どこに行っていたのだろう。
「あー、あの、ちょっと話さない?」
「いいけど」
なぜか改まった様子のアルミンが少しひっかかったが、それ以上気にせずにアルミンと並んで歩いた。食堂はカードゲームに興じる数人がいて、アルミンを見ると困ったように眉を下げた。
「ふたりがいいな……」
小さく告げる声にうっかりどきりとする。アルミンが自分に話をする以上のことを求めたことはないが、まさか、と少しだけ頭をよぎった。もし何か、もっと恋人らしいことをと求められたとき、自分はうまく拒めるのだろうか。
「……あの、すぐ終わるから、ちょっとだけ外でもいい?寒いのはわかってるんだけど」
「あ、ああ」
アルミンに促されて宿舎の外に出た。ドアを開けた瞬間身を切るような風にさらされて身震いする。アルミンがすぐだと言うから上着も取らずにきたが、これは一瞬であっても油断するべきではなかった。夜に目を凝らしてよく見れば雪がちらついていて、体を抱いてアルミンを見た。鼻を赤くして白い息を吐くアルミンは、やはり震えてジャンを見上げた。
「さっぶ!」
「うわぁ、ごめん」
「どうした?」
「あげる。これ渡したかっただけ」
早口で言い切って、アルミンはジャンの腕に何かを押しつけた。その包みを慌てて受け取る。アルミンの指が触れた気がしたが、冷たすぎてよくわからない。
「え?何?」
「みんなに内緒」
赤い顔でアルミンはジャンを残して中へ戻っていった。風にさらされたままジャンはぽかんと立ち尽くした。しかしすぐに寒さがジャンを現実に引き戻し、ジャンもすぐに宿舎に戻った。
外と比べられれば風がなないだけましと言うレベルの廊下でジャンは押しつけられたものを改めた。油紙の包みを開くとほんのりバターの香りが広がる。まだあたたかさの残るショートブレッドだ。とは言え包まれているのは3つだけ。何も言われなかったが、渡されたということは食べてもいいということなのだろうか。周りに誰もいないことを確認してそれを口に運ぶ。さっくり砕けた菓子のほのかな塩気が口に広がった。ひとつをあっという間に食べてしまい、少し考え、隠し持っていても他の誰かに食べられてしまう想像しかできなかったので、残りも食べてしまう。
決して食料に余裕はないが、兵士は体を作るためにも比較的多く支給を受けている。食事当番の時に少しちょろまかす程度のことはバレなくて、というよりはよほどでない限り目をつぶってくれているのか、女子はたまにこうして菓子の類を作っているようだ。アルミンもそれを誰かにもらって、分けてくれたのかもしれない。随分とかわいらしいことをする。
水がほしくて食堂に寄れば、マルコも逃げてきていたところだった。今は部屋に戻ったアルミンが捕まっているらしい。助けてやろうかと思ったが、ジャンがマルコに捕まってしまった。
「まったく、惚れた腫れたは勝手だけど、自分たちだけでやってほしいよね」
「無事仲直りしてたわけ?」
「そうみたい。女子が仲直りさせようと、お菓子焼いたんだって。なんかアルミンまで巻き込まれてたみたいだよ」
「アルミン?」
「なんて言ってたかなぁ、古い文献に、二月に恋人に贈り物をするイベントのことが書いてるんだって。贈り物は花とかお菓子とかあるみたいだけど……アルミンがそのことを教えたら、ついでに手伝わされたみたい。さっき初めてお菓子作った、って言ってたよ」
「……へえ」
胃の辺りを意識する。
じゃあ、あれは。あの赤い頬は、寒さのせいではなかったのかもしれなくて。
「……わかりにくいんだよ」
「何?」
「なんでもねぇ」
ミカサの声にどきりとして、反応したのはアルミンよりもジャンの方が早かった。そのあまりにもわかりやすい自分に呆れて、流石に恥じてジャンはすぐに視線を外す。アルミンは少し笑い、ジャンに断ってミカサの元へ向かった。
アルミンとふたりでいるところに誰かが来たことは初めてではない。人目を避けはしても結局は宿舎だ。完全にふたりきりに慣れるような場所などは早々に本当のカップルが陣取っている。
何を話しているのだろうか、とジャンはこっそりふたりを振り返った。訓練生活も一年を過ぎれば、鍛えられた肉体は性差を感じないことも多い。兵士としての能力の高いミカサはなおさらで、あいにくジャンはお目にかかったことはないが、噂によると彼女の腹筋は少し鍛えた程度の男では話にならないほど立派であるらしい。そのミカサと並ぶとともすればアルミンの方がよほど女らしく見える。
「わかった、エレンにも伝えておくね」
「お願い。探したけれど見つからなくて」
「多分ライナーたちといると思う」
「アルミンはここで何をしていたの?」
「ジャンと話をしてたんだ」
「そう……ここは寒いから、早くあたたかくして寝て」
「ありがとう、ミカサも体冷やさないようにね。おやすみ」
「おやすみなさい」
いつもクールなミカサが、わずかだが頬を緩めたような気がした。あれをそばで見るには、ジャンはどれほどの努力がいるのだろうか。走っても走っても、ジャンはミカサの視界に入らない。
ミカサと別れて戻ってくるアルミンをじっと見る。考えてみれは、告白した分ジャンよりもアルミンの方が男らしいと言えるのかもしれない。
「……それは嫌だな」
「何?」
「何でもない。ミカサなんて?」
「……気になる?」
「あ〜……」
目を細めたアルミンからそっと目をそらした。頭では、今はアルミンが「恋人」だとわかってはいるのだ。演じきれないジャンを冗談混じりだが責めるように、アルミンは最近こうしてジャンをからかった。
「ミカサがお世話になった人に手紙を書くから、もしあれば一緒に送るって」
「ふうん……」
「訓練兵になったときに知らせたきりだから、エレンにも何か書かせよう」
「あいつ手紙なんて書けるのか?」
「それは言い過ぎ」
アルミンは肩を揺らして小さく笑う。ミカサもアルミンも、エレンのような男のどこがいいのだろうか。以前簡単に聞いたときには、エレンとは幼馴染みであると言うだけではなく、ヒーローでもあるらしい。ジャンにはひねくれた正義感にしか見えなくても、それに引かれる者がいる。それもまたジャンにとっては気に食わないことだった。自分の言葉の力を、知らずに使う者は無責任だ。
「……そういえば、お前、オレのことあいつらにも言ってないのか」
もし話していればあのエレンが黙ってないだろう。それはジャンの思った通りで、アルミンはただ肩をすくめた。
「僕だって、何でも全部話すわけじゃないよ」
「気づきそうにもないもんな」
「ははっ、そうだね。僕だって自覚したときは驚いた」
「オレのどの辺りが優等生のお気に召したんだか」
「それは秘密。恥ずかしいから」
「オレのお願いでも?」
「うん。ジャンのお願いでも、教えてあげない」
笑うアルミンを、かわいいと思わないわけではない。先日の休みにはアルミンを避けるように実家に帰ったが、後で考えてみれば、共に過ごせそうな休みは他にはなかった。賢いアルミンはそのことにもう気づいているのだろうか。少しの罪悪感がジャンの態度を少し緩める。誰だって、好きな人との時間は大事だろう。
「寒いね、もう戻ろうか」
それでもアルミンは、あっさりとその時間に区切りをつける。恋人のふりと言いながら、ふたりの間に恋人らしいことなど何もなかった。
ふたりでいても、部屋にいても、アルミンの態度は変わらない。ただ、少し匂わすような会話があるかないかと言うだけだ。アルミンがそれでいいのかはわからない。ジャンはどこまで踏み込んでいいのかわからずに、ジャンは頷くしかなかった。
第104期訓練兵名物となりつつあったカップルが、先日喧嘩をしたらしい。普段は鬱陶しいほどの仲睦まじさだが、毎日そうというわけではない。たまの喧嘩も同期にしてみればいつものことなので気にせずにいたが、今回はいつもとは違うようだった。いつまで経ってもふたりは険悪なままで、周囲がそれにつき合うのも疲れてくるほどだ。男子一同はこのまま別れちまえ、とのろけに飽き飽きしていたが、女子の方は違ったらしい。
その日寮の部屋に戻ってきた彼氏の方は、今まで見たことがないほど表情を緩めて帰ってきた。否、あれは、彼女とつきあうことになった日と同じ表情だ。それはもう、誰が見たって彼らが仲直りしたのだ、してしまったのだとひと目でわかるほどにやけている。
「聞いてくれよ!」
運悪く捕まったマルコの助けを求める視線から、ジャンは他の同期同様巻き込まれる前に早々に逃げ出した。マルコには悪いが、のろけを聞かされるぐらいならあとでマルコに恨まれる方がましだった。断片的に焼き菓子がどうだと聞こえたから、話の内容も想像に難くない。
「あ、ジャン」
特に当てもなく部屋を出たジャンは、アルミンに呼ばれて振り返った。姿を見ないと思っていたが、どこに行っていたのだろう。
「あー、あの、ちょっと話さない?」
「いいけど」
なぜか改まった様子のアルミンが少しひっかかったが、それ以上気にせずにアルミンと並んで歩いた。食堂はカードゲームに興じる数人がいて、アルミンを見ると困ったように眉を下げた。
「ふたりがいいな……」
小さく告げる声にうっかりどきりとする。アルミンが自分に話をする以上のことを求めたことはないが、まさか、と少しだけ頭をよぎった。もし何か、もっと恋人らしいことをと求められたとき、自分はうまく拒めるのだろうか。
「……あの、すぐ終わるから、ちょっとだけ外でもいい?寒いのはわかってるんだけど」
「あ、ああ」
アルミンに促されて宿舎の外に出た。ドアを開けた瞬間身を切るような風にさらされて身震いする。アルミンがすぐだと言うから上着も取らずにきたが、これは一瞬であっても油断するべきではなかった。夜に目を凝らしてよく見れば雪がちらついていて、体を抱いてアルミンを見た。鼻を赤くして白い息を吐くアルミンは、やはり震えてジャンを見上げた。
「さっぶ!」
「うわぁ、ごめん」
「どうした?」
「あげる。これ渡したかっただけ」
早口で言い切って、アルミンはジャンの腕に何かを押しつけた。その包みを慌てて受け取る。アルミンの指が触れた気がしたが、冷たすぎてよくわからない。
「え?何?」
「みんなに内緒」
赤い顔でアルミンはジャンを残して中へ戻っていった。風にさらされたままジャンはぽかんと立ち尽くした。しかしすぐに寒さがジャンを現実に引き戻し、ジャンもすぐに宿舎に戻った。
外と比べられれば風がなないだけましと言うレベルの廊下でジャンは押しつけられたものを改めた。油紙の包みを開くとほんのりバターの香りが広がる。まだあたたかさの残るショートブレッドだ。とは言え包まれているのは3つだけ。何も言われなかったが、渡されたということは食べてもいいということなのだろうか。周りに誰もいないことを確認してそれを口に運ぶ。さっくり砕けた菓子のほのかな塩気が口に広がった。ひとつをあっという間に食べてしまい、少し考え、隠し持っていても他の誰かに食べられてしまう想像しかできなかったので、残りも食べてしまう。
決して食料に余裕はないが、兵士は体を作るためにも比較的多く支給を受けている。食事当番の時に少しちょろまかす程度のことはバレなくて、というよりはよほどでない限り目をつぶってくれているのか、女子はたまにこうして菓子の類を作っているようだ。アルミンもそれを誰かにもらって、分けてくれたのかもしれない。随分とかわいらしいことをする。
水がほしくて食堂に寄れば、マルコも逃げてきていたところだった。今は部屋に戻ったアルミンが捕まっているらしい。助けてやろうかと思ったが、ジャンがマルコに捕まってしまった。
「まったく、惚れた腫れたは勝手だけど、自分たちだけでやってほしいよね」
「無事仲直りしてたわけ?」
「そうみたい。女子が仲直りさせようと、お菓子焼いたんだって。なんかアルミンまで巻き込まれてたみたいだよ」
「アルミン?」
「なんて言ってたかなぁ、古い文献に、二月に恋人に贈り物をするイベントのことが書いてるんだって。贈り物は花とかお菓子とかあるみたいだけど……アルミンがそのことを教えたら、ついでに手伝わされたみたい。さっき初めてお菓子作った、って言ってたよ」
「……へえ」
胃の辺りを意識する。
じゃあ、あれは。あの赤い頬は、寒さのせいではなかったのかもしれなくて。
「……わかりにくいんだよ」
「何?」
「なんでもねぇ」
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