言い訳置き場
言い訳を書いていきます。誤字の報告などあればありがたいです。 ※唐突にみゅネタややぎゅにおの外の人のかけ算が混ざるのでご注意下さい。 日常はリンクのブログから。
2013'12.27.Fri
「っは〜……だっる……」
もう若くねえなぁ、と思わずこぼし、山崎は崩れ落ちそうな体を引きずってどうにか自室に帰りついた。布団を敷いたまま出かけたのは正解だったと自分を褒める。例え布団や畳が傷もうとも、帰宅してそのまま眠れるのならそれも些細なことだった。明かりをつける間も惜しんで汚れた服を脱ぎ捨てて、さっさと着替えて布団に潜り込む。寒さには強い方だが、さすがに堪える季節になった。身を委ねるのをためらうほど布団はひやりとしている。布団の中で身震いするが、一刻でも早く眠りたくて体を抱いた。
しかし思っていたよりも、布団はほんのりと温かい気がする。それとも自分がそれほど冷えているのだろうか。
――ああ、嫌な季節だ。
もう二度と気温が下がることはないのではないかと危惧するほど暑かった夏は、じりじりと粘っていた割にはあっさりと役目を譲っていった。堪え性のない秋は、早くも冬に押されてろくに楽しませてもくれない。
尤も、山崎には季節を楽しむ余裕など一切なかった。ろくな家財のない貧乏長屋でひと月近くの張り込みは、向かいの家の瓦を数え続ける日々でもあった。
血と汗のにおいが鼻につき、帰ったら湯を浴びようと考えていたことを思い出す。しかし山崎はもう両目も伏せて、脳がどれほど信号を送っても、体に届く気がしない。気にしないと決めた山崎の鼻は、また別のにおいをかぎつけた。何だろうか、と考えているうちに睡魔が思考を奪っていく。
ああ、これは、干した布団のにおいだ。
翌朝、悲しいかな、怒鳴られるまで眠ってやろうと思っていた山崎の眠りは、耐えがたいほどの空腹で体を起こした。寝起きだというのにぐるぐると唸る腹の虫に顔をしかめて布団から這い出る。昨日散々走り回った体はまだ疲労を残していたが、起きたからには回復のためにも何か腹に詰め込みたい。屯所の気配を伺うとまだ早い時間のようだ。目が覚めたことを惜しむが仕方ない。山崎はあくびをかみ殺しながら着物を直し、部屋を出て食事に向かう。
「はぁ〜」
吐く息が白い。冷たい廊下を歩いていると、向かいからイヤホンを振り回しながら沖田がやってくる。
「ヨォ山崎、生きてたか」
「お帰りなさい。そっちも片づきましたか」
「多分」
「多分?」
「終わりそうだから帰ってきた」
「……また、副長に怒られますよ」
「知るか。……お前、くせぇな」
「はは、臭いますか」
「くせぇ。それで飯食いにきたらたたっ切るからな」
「ええ〜、俺腹の虫に起こされたのに〜」
しかしいつものポーカーフェイスをわずかにしかめた沖田は、問答無用で有言実行するだろう。しぶしぶ先に体を流すことにして部屋へ引き返す。朝の空気は身に刺すようで、まあ先に体をあたためるのも悪くない、と前向きに考えることにした。
部屋に戻ってまず目についたのは、昨日脱ぎ散らかした着物だった。なぜ起きたときに気づかなかったのか不思議なほど、強烈なにおいを発している。
あれだけ汗をかき、血を被れば当然といえば当然だ。とても他のものとは一緒に洗えない。せめて湯に浸けておこう、と着替えと一緒に掴み、風呂場へ向かう。
「おはよー」
「あっ、山崎さんおはようございます、お帰りなさい!風呂ですか?」
風呂場の前で会った後輩はどこか急いでいて、山崎を見てほっと息を吐いたようだった。どうしたのかと口を開きかけたところで、彼が山崎の腕にすがりつく。
「山崎さん!お願いがあります!」
「えっ、嫌」
「手が回ってないんで風呂掃除お願いします!」
「はぁ!?」
山崎が捕まえるより早く彼は素早く逃げ出した。あっという間に消えてしまった後輩を恨むも、そもそも自分に威厳がないせいだろうか、とすぐに諦めた。何か面倒な仕事でも押しつけられたのだろう。簡単に風呂掃除といっても屯所の風呂は一般家庭の広さとは違う。おまけに男ばかりが使うので、決してきれいとは言いがたい。まめな数人が頑張った程度ではいつでもきれいにとはいかなかった。普段なら山崎も気をつけるが、今日は手早く済ませると決めて、さっさと掃除に取りかかる。何も悪いことばかりではない。大手を振って一番風呂に入ることができるのだ。
――そして掃除が終わった頃に、幹部が風呂場に入ってくるのはよくあることだった。山崎が一番風呂に入ることができたのは数えるほどだ。とはいえ、いつもは快活な近藤が疲労を見せてやってきては、山崎でなくとも何も言えまい。
「局長お疲れ様です!」
「おー、山崎戻ってたか。張り込みご苦労だったな」
「いえ。どうぞ、ちょうど湧いたところですからごゆっくり」
「山崎はいいのか?」
「先に食事もらいますんで」
今回の捕り物は人数が多く流石に近藤も疲れたようだ。すまんなぁ、と謝る近藤に笑って見せて、近藤が休めるように風呂場を出る。もう沖田も食事を終えただろうから、今行っても追い出されることはないだろう。大体あの人は鼻がよすぎるのだ、とぼやきながら食事に向かう。
「あ、山崎さん!」
食堂に入るなり、袖を引かれて嫌な予感がする。振り返らずに中へ向かおうとするのに、逆にしっかりと腕を掴まれた。
「台所足りないんです!」
「俺だって腹ペコだよ!」
「さっきで全員帰ってきてみんなして食堂になだれ込んできてるんですよ!」
「もうやだ〜!」
結局台所に立たされた山崎は食欲旺盛な男たちの食事をどっさり作った後、自分の口に入らないまま台所を出た。他の隊士に謝られ、彼が今コンビニに山崎の分を買いに走ってくれている。
すっかりふてくされた山崎は、この際だからこのまま働いてやろうと、庭にたらいを持ち出して昨日汚れた服を洗っている。泥と血にまみれたそれは何度水を変えてもなかなかきれいにならない。
「……山崎!」
「はい?」
縁側から叫ばれて振り返れば、なぜか土方がこちらを全力で睨みつけている。何かしただろうか、と必死で振り返る。報告はまだだがそれはいつものことで、何より土方も随分疲れている様子だ。それほど手を焼く相手だったのだろうか。
殴られる準備をして山崎が身構えているが何もなく、ただ土方の深い溜息が聞こえる。恐る恐るそちらを見れば、顔にジャケットが投げられた。
「わっ」
「それも洗っとけ!」
「えー!ジャケットはクリーニング、うっわぁ、血でぼとぼと……」
土方を見れば忌々しげに顔をしかめ、煙草を咥えて火をつける。
「オメーは屯所の中でも隠れんぼか。どこ行ってもいやしねぇ」
「え?」
「なんでもねぇ」
「山崎さ〜ん、朝飯買ってきました〜」
コンビニの袋をぶら下げて後輩が帰ってきた。待ってました、と山崎はジャケットをたらいに投げて手を洗う。土方に気づいた後輩が慌てて挨拶をした。
「あ、そういえば、山崎さん昨日はよく寝れましたか?副長に頼まれて布団干しておいたんです」
屈託のない後輩の笑みに、土方の口から煙草が落ちた。山崎がそちらを見ると顔をそらされる。それに気づかずに後輩は他の買い出しと一緒に台所に戻っていった。あの鈍感さでは少なくとも監察に来ることはないだろう。
「副長」
「……何だ」
「俺、これから飯食って風呂入るんですけど、それからお部屋に伺ってもいいですか」
「たりめーだ、報告聞かなきゃなんねえからな」
「あ、ハイ……」
ですよね、と肩を落とすが、またどうしようもなく笑いがこみあげた。
世界はまだまだ生臭い。それでも、山崎はこの人がいるから笑えるのだ。
もう若くねえなぁ、と思わずこぼし、山崎は崩れ落ちそうな体を引きずってどうにか自室に帰りついた。布団を敷いたまま出かけたのは正解だったと自分を褒める。例え布団や畳が傷もうとも、帰宅してそのまま眠れるのならそれも些細なことだった。明かりをつける間も惜しんで汚れた服を脱ぎ捨てて、さっさと着替えて布団に潜り込む。寒さには強い方だが、さすがに堪える季節になった。身を委ねるのをためらうほど布団はひやりとしている。布団の中で身震いするが、一刻でも早く眠りたくて体を抱いた。
しかし思っていたよりも、布団はほんのりと温かい気がする。それとも自分がそれほど冷えているのだろうか。
――ああ、嫌な季節だ。
もう二度と気温が下がることはないのではないかと危惧するほど暑かった夏は、じりじりと粘っていた割にはあっさりと役目を譲っていった。堪え性のない秋は、早くも冬に押されてろくに楽しませてもくれない。
尤も、山崎には季節を楽しむ余裕など一切なかった。ろくな家財のない貧乏長屋でひと月近くの張り込みは、向かいの家の瓦を数え続ける日々でもあった。
血と汗のにおいが鼻につき、帰ったら湯を浴びようと考えていたことを思い出す。しかし山崎はもう両目も伏せて、脳がどれほど信号を送っても、体に届く気がしない。気にしないと決めた山崎の鼻は、また別のにおいをかぎつけた。何だろうか、と考えているうちに睡魔が思考を奪っていく。
ああ、これは、干した布団のにおいだ。
翌朝、悲しいかな、怒鳴られるまで眠ってやろうと思っていた山崎の眠りは、耐えがたいほどの空腹で体を起こした。寝起きだというのにぐるぐると唸る腹の虫に顔をしかめて布団から這い出る。昨日散々走り回った体はまだ疲労を残していたが、起きたからには回復のためにも何か腹に詰め込みたい。屯所の気配を伺うとまだ早い時間のようだ。目が覚めたことを惜しむが仕方ない。山崎はあくびをかみ殺しながら着物を直し、部屋を出て食事に向かう。
「はぁ〜」
吐く息が白い。冷たい廊下を歩いていると、向かいからイヤホンを振り回しながら沖田がやってくる。
「ヨォ山崎、生きてたか」
「お帰りなさい。そっちも片づきましたか」
「多分」
「多分?」
「終わりそうだから帰ってきた」
「……また、副長に怒られますよ」
「知るか。……お前、くせぇな」
「はは、臭いますか」
「くせぇ。それで飯食いにきたらたたっ切るからな」
「ええ〜、俺腹の虫に起こされたのに〜」
しかしいつものポーカーフェイスをわずかにしかめた沖田は、問答無用で有言実行するだろう。しぶしぶ先に体を流すことにして部屋へ引き返す。朝の空気は身に刺すようで、まあ先に体をあたためるのも悪くない、と前向きに考えることにした。
部屋に戻ってまず目についたのは、昨日脱ぎ散らかした着物だった。なぜ起きたときに気づかなかったのか不思議なほど、強烈なにおいを発している。
あれだけ汗をかき、血を被れば当然といえば当然だ。とても他のものとは一緒に洗えない。せめて湯に浸けておこう、と着替えと一緒に掴み、風呂場へ向かう。
「おはよー」
「あっ、山崎さんおはようございます、お帰りなさい!風呂ですか?」
風呂場の前で会った後輩はどこか急いでいて、山崎を見てほっと息を吐いたようだった。どうしたのかと口を開きかけたところで、彼が山崎の腕にすがりつく。
「山崎さん!お願いがあります!」
「えっ、嫌」
「手が回ってないんで風呂掃除お願いします!」
「はぁ!?」
山崎が捕まえるより早く彼は素早く逃げ出した。あっという間に消えてしまった後輩を恨むも、そもそも自分に威厳がないせいだろうか、とすぐに諦めた。何か面倒な仕事でも押しつけられたのだろう。簡単に風呂掃除といっても屯所の風呂は一般家庭の広さとは違う。おまけに男ばかりが使うので、決してきれいとは言いがたい。まめな数人が頑張った程度ではいつでもきれいにとはいかなかった。普段なら山崎も気をつけるが、今日は手早く済ませると決めて、さっさと掃除に取りかかる。何も悪いことばかりではない。大手を振って一番風呂に入ることができるのだ。
――そして掃除が終わった頃に、幹部が風呂場に入ってくるのはよくあることだった。山崎が一番風呂に入ることができたのは数えるほどだ。とはいえ、いつもは快活な近藤が疲労を見せてやってきては、山崎でなくとも何も言えまい。
「局長お疲れ様です!」
「おー、山崎戻ってたか。張り込みご苦労だったな」
「いえ。どうぞ、ちょうど湧いたところですからごゆっくり」
「山崎はいいのか?」
「先に食事もらいますんで」
今回の捕り物は人数が多く流石に近藤も疲れたようだ。すまんなぁ、と謝る近藤に笑って見せて、近藤が休めるように風呂場を出る。もう沖田も食事を終えただろうから、今行っても追い出されることはないだろう。大体あの人は鼻がよすぎるのだ、とぼやきながら食事に向かう。
「あ、山崎さん!」
食堂に入るなり、袖を引かれて嫌な予感がする。振り返らずに中へ向かおうとするのに、逆にしっかりと腕を掴まれた。
「台所足りないんです!」
「俺だって腹ペコだよ!」
「さっきで全員帰ってきてみんなして食堂になだれ込んできてるんですよ!」
「もうやだ〜!」
結局台所に立たされた山崎は食欲旺盛な男たちの食事をどっさり作った後、自分の口に入らないまま台所を出た。他の隊士に謝られ、彼が今コンビニに山崎の分を買いに走ってくれている。
すっかりふてくされた山崎は、この際だからこのまま働いてやろうと、庭にたらいを持ち出して昨日汚れた服を洗っている。泥と血にまみれたそれは何度水を変えてもなかなかきれいにならない。
「……山崎!」
「はい?」
縁側から叫ばれて振り返れば、なぜか土方がこちらを全力で睨みつけている。何かしただろうか、と必死で振り返る。報告はまだだがそれはいつものことで、何より土方も随分疲れている様子だ。それほど手を焼く相手だったのだろうか。
殴られる準備をして山崎が身構えているが何もなく、ただ土方の深い溜息が聞こえる。恐る恐るそちらを見れば、顔にジャケットが投げられた。
「わっ」
「それも洗っとけ!」
「えー!ジャケットはクリーニング、うっわぁ、血でぼとぼと……」
土方を見れば忌々しげに顔をしかめ、煙草を咥えて火をつける。
「オメーは屯所の中でも隠れんぼか。どこ行ってもいやしねぇ」
「え?」
「なんでもねぇ」
「山崎さ〜ん、朝飯買ってきました〜」
コンビニの袋をぶら下げて後輩が帰ってきた。待ってました、と山崎はジャケットをたらいに投げて手を洗う。土方に気づいた後輩が慌てて挨拶をした。
「あ、そういえば、山崎さん昨日はよく寝れましたか?副長に頼まれて布団干しておいたんです」
屈託のない後輩の笑みに、土方の口から煙草が落ちた。山崎がそちらを見ると顔をそらされる。それに気づかずに後輩は他の買い出しと一緒に台所に戻っていった。あの鈍感さでは少なくとも監察に来ることはないだろう。
「副長」
「……何だ」
「俺、これから飯食って風呂入るんですけど、それからお部屋に伺ってもいいですか」
「たりめーだ、報告聞かなきゃなんねえからな」
「あ、ハイ……」
ですよね、と肩を落とすが、またどうしようもなく笑いがこみあげた。
世界はまだまだ生臭い。それでも、山崎はこの人がいるから笑えるのだ。
PR
2010'04.28.Wed
「神楽ー、おーい神楽さーん朝ですよー、飯食っちゃうよー」
「今行くアルー」
神楽の寝ている押し入れのふすまを叩き、銀時は大きなあくびをしながら台所へ向かう。
「かあちゃーん朝飯はビーフシチューがいい」
「誰が母ちゃんだ朝っぱらからなんてもん食う気だ何より牛肉買う金なんかねーよ」
「新八も朝からツッコミ大変だな」
「朝からボケないでくれますか」
いつも通りの朝食を机に並べながら、新八は神楽の押し入れを見る。いつもならすぐに出てくるのに、何かあったのだろうか。ガタッと戸が揺れる。銀時もそれを見たのか、しばらく考えて部屋を見回した。
「「――あっ!」」
銀時が押し入れの前まで戻り、ふすまに手をかけ一気に開けた。
「神楽ァッ押し入れに定春連れ込むなっつってるだろーが!」
「銀ちゃんのえっち!」
「ぎゃっ!」
中を確認する間も与えずに、勢いよくふすまは閉められた。指先をつめて、銀時が崩れこむ。
「テメ、ちょ、オイ指真っ赤になってきたよ折れたよこれ!」
「乙女の寝室を勝手に開けるのが悪いヨ!」
「乙女は押し入れで寝ねーよ!なんだよ反抗期か!?お父さんは娘にも手をあげるぞ!?」
「言外で俺をお母さんにするのやめて下さい」
「オイ神楽!いいから開けろ!定春は重量オーバーだって!」
「定春なんていないアル!」
「じゃあ何隠してんだ、犬か?猫か?男かっ!?」
「うっ!」
「……開けろコラー!」
「見苦しいですよお父さん」
「だってかーちゃん!」
「あーもーうるさいなー……」
どうにかふすまをあけようと銀時は格闘しているが、いかんせん相手は神楽だ。中から押さえられて開かないらしい。新八が寄っていって、何気なく反対側のふすまを開けてみる。からり。
「――邪魔してるぜィ」
「あ、どうも」
「一旦閉めてくれるかィ。着替えたら出ていくからよ」
「あ、ハイ」
からり、トン。再び押し入れを締めて、新八は何事もなかったかのように台所へ戻る。
「って新八コラー!今っすっげー聞き覚えのある声したぞ!」
「自分で確かめて下さいよ。沖田さーん、朝ご飯食べていきますかー?納豆とみそ汁しかないけど」
「しけてんなー」
「人んちの朝ご飯にケチつけてんじゃねえよ!神楽ちゃんッおとーさんは許しませんよッ!」
「そんなこと言わねえで許して下せぇよオトーサン」
ぎゃーっ!
バタン!と派手な音がして、新八がしゃもじと茶碗を持ったまま様子を見に行けば、倒れたふすまの下で銀時がもがいている。それをためらいもなく踏みつけて沖田が押し入れから降りた。
「じゃあ、また来るぜィ」
「おう、またな」
沖田を見送り、神楽はおなかがすいたと騒いでふすまを踏んだ。大人しくなった銀時を置いて新八と台所へ向かう。
「神楽ちゃんだめじゃん、ちゃんと泊めないで帰せって言ったでしょ。近藤さん心配してるよ」
「昨日は銀ちゃんが予想より早く帰ってきて出るタイミングなくしたネ。待ってたらうっかり寝てしまったアル」
「昨日は何してたの?」
「脱衣人生ゲーム」
「もー、風邪ひくよ。銀さーん、ご飯始めますよー?」
「……おー、置いといてくれ。俺朝の運動にあいつ追いかけて指詰めさせてくるわ」
「とっ捕まんないで下さいよー、あの人警察なんですからねー」
「銀ちゃんお土産買ってきてねー!」
「帰ってきたらお前ら説教だからなァァァ!」
---------
テンションが迷子。
「今行くアルー」
神楽の寝ている押し入れのふすまを叩き、銀時は大きなあくびをしながら台所へ向かう。
「かあちゃーん朝飯はビーフシチューがいい」
「誰が母ちゃんだ朝っぱらからなんてもん食う気だ何より牛肉買う金なんかねーよ」
「新八も朝からツッコミ大変だな」
「朝からボケないでくれますか」
いつも通りの朝食を机に並べながら、新八は神楽の押し入れを見る。いつもならすぐに出てくるのに、何かあったのだろうか。ガタッと戸が揺れる。銀時もそれを見たのか、しばらく考えて部屋を見回した。
「「――あっ!」」
銀時が押し入れの前まで戻り、ふすまに手をかけ一気に開けた。
「神楽ァッ押し入れに定春連れ込むなっつってるだろーが!」
「銀ちゃんのえっち!」
「ぎゃっ!」
中を確認する間も与えずに、勢いよくふすまは閉められた。指先をつめて、銀時が崩れこむ。
「テメ、ちょ、オイ指真っ赤になってきたよ折れたよこれ!」
「乙女の寝室を勝手に開けるのが悪いヨ!」
「乙女は押し入れで寝ねーよ!なんだよ反抗期か!?お父さんは娘にも手をあげるぞ!?」
「言外で俺をお母さんにするのやめて下さい」
「オイ神楽!いいから開けろ!定春は重量オーバーだって!」
「定春なんていないアル!」
「じゃあ何隠してんだ、犬か?猫か?男かっ!?」
「うっ!」
「……開けろコラー!」
「見苦しいですよお父さん」
「だってかーちゃん!」
「あーもーうるさいなー……」
どうにかふすまをあけようと銀時は格闘しているが、いかんせん相手は神楽だ。中から押さえられて開かないらしい。新八が寄っていって、何気なく反対側のふすまを開けてみる。からり。
「――邪魔してるぜィ」
「あ、どうも」
「一旦閉めてくれるかィ。着替えたら出ていくからよ」
「あ、ハイ」
からり、トン。再び押し入れを締めて、新八は何事もなかったかのように台所へ戻る。
「って新八コラー!今っすっげー聞き覚えのある声したぞ!」
「自分で確かめて下さいよ。沖田さーん、朝ご飯食べていきますかー?納豆とみそ汁しかないけど」
「しけてんなー」
「人んちの朝ご飯にケチつけてんじゃねえよ!神楽ちゃんッおとーさんは許しませんよッ!」
「そんなこと言わねえで許して下せぇよオトーサン」
ぎゃーっ!
バタン!と派手な音がして、新八がしゃもじと茶碗を持ったまま様子を見に行けば、倒れたふすまの下で銀時がもがいている。それをためらいもなく踏みつけて沖田が押し入れから降りた。
「じゃあ、また来るぜィ」
「おう、またな」
沖田を見送り、神楽はおなかがすいたと騒いでふすまを踏んだ。大人しくなった銀時を置いて新八と台所へ向かう。
「神楽ちゃんだめじゃん、ちゃんと泊めないで帰せって言ったでしょ。近藤さん心配してるよ」
「昨日は銀ちゃんが予想より早く帰ってきて出るタイミングなくしたネ。待ってたらうっかり寝てしまったアル」
「昨日は何してたの?」
「脱衣人生ゲーム」
「もー、風邪ひくよ。銀さーん、ご飯始めますよー?」
「……おー、置いといてくれ。俺朝の運動にあいつ追いかけて指詰めさせてくるわ」
「とっ捕まんないで下さいよー、あの人警察なんですからねー」
「銀ちゃんお土産買ってきてねー!」
「帰ってきたらお前ら説教だからなァァァ!」
---------
テンションが迷子。
2010'04.28.Wed
さぁ飲んで、女に勧められる酒を、男は勢いよく煽る。飲めや歌えの大騒ぎで座敷はひどくやかましい。何人もの女が出入りをして酒や食事を運び、途中でひっそり男と消える。山崎はこっそり溜息をついた。遊郭は禁止とはいえ探れば見つかるのは、所詮上の人間に需要があるからだろう。
隣の女が酒を足し、山崎は適当に酔ったふりをしてそれを口に運ぶ。どうも山崎をさりげなく誘ってくれる女は、彼から見れば変装時の参考にしかならない。
(布団まで行っちゃってもいいんだけど、別に困ってないしな……)
というよりもつい昨日、他人と夜を共にしている。ちらりとその相手を盗み見た。上司にしきりに酒を勧められ、断れないまま飲み続けている。そんなに強くないくせに。顔を真っ赤にして女に寄り添って笑う。怪しい口元に、女は頬を染めた。どんな甘い言葉をささやいたのだろう。
「どうかなさった?」
「……ええ少し、仕事が気になって」
「仕事熱心やねえ」
「……あなたも」
「え?」
「小指を贈った方はどちらに?」
「あ……」
女はとっさに左手を隠し、少しためらって山崎を見る。柔らかい表情に安心してか、彼女も緩く笑った。
「それがねえ、行方知れずなんです」
「そうなんですか」
「あの人も悪い人やったから、おナワになったんかねえ」
「会えなくても、いいもんですか」
「――あたしにはお客さんがおりますから」
「そうでした。……見せて」
女の左手を取る。失われた小指。誓った男のもとへ贈られているはずだが、今はどうなっているだろうか。古風な女だ。大方騙されていたんじゃなかろうか。今のこの時代で指切りなどはそうそうしないことだろう。
「やぁだ、お客さんったら」
耳に届く声。ほとんど無意識にその手を撫でた。
「あたしが欲しいんと違うやろ?」
「……プロですねえ」
「わかるわよォ」
「俺も指切って送ろっかなー」
「愛しい人がおるんやね」
「……おりますねェ。あ、どうも」
注ぎ足された酒で唇を濡らした。
がははと豪快に近藤が笑う。上の者たちがこんな場に真選組を呼ぶことがあるのは、大概女に受けるからだ。沖田など寝入ってしまい女たちに囲まれておもちゃにされているが、どこまで彼が酔っているのかは分からない。
「……スパッと切っちゃって、リボンでもかけようか」
「お侍さんは刀があるからそれで切るんかしら」
「……どうやったの?」
「怖かったから包丁当てて、鉄瓶で叩いてもらった」
「……そっちの方が怖いよ」
「ふふ、せやからあたしは強いんよ」
「――うん、綺麗だ」
「その気もないのに誘わんといて。小指は後1本しかないんやから」
「はは、いい女だなぁ」
小指を失ったら、ラケットを握るのに支障が出るだろうか。ああ、それよりも刀が。
酒を煽りながら話は世間話へ移っていった。どんな話でも笑う女たちは、どこまで楽しんでいるのだろう。
(あんたのためなら、何本だって指を切って誓うけど)
ふっと思わず笑い、逆に女に酒を勧めた。注いでやりながら綺麗な指先を見る。
(誓われたいわけじゃないからなぁ)
土方が今夜、帰らないことは知っている。
隣の女が酒を足し、山崎は適当に酔ったふりをしてそれを口に運ぶ。どうも山崎をさりげなく誘ってくれる女は、彼から見れば変装時の参考にしかならない。
(布団まで行っちゃってもいいんだけど、別に困ってないしな……)
というよりもつい昨日、他人と夜を共にしている。ちらりとその相手を盗み見た。上司にしきりに酒を勧められ、断れないまま飲み続けている。そんなに強くないくせに。顔を真っ赤にして女に寄り添って笑う。怪しい口元に、女は頬を染めた。どんな甘い言葉をささやいたのだろう。
「どうかなさった?」
「……ええ少し、仕事が気になって」
「仕事熱心やねえ」
「……あなたも」
「え?」
「小指を贈った方はどちらに?」
「あ……」
女はとっさに左手を隠し、少しためらって山崎を見る。柔らかい表情に安心してか、彼女も緩く笑った。
「それがねえ、行方知れずなんです」
「そうなんですか」
「あの人も悪い人やったから、おナワになったんかねえ」
「会えなくても、いいもんですか」
「――あたしにはお客さんがおりますから」
「そうでした。……見せて」
女の左手を取る。失われた小指。誓った男のもとへ贈られているはずだが、今はどうなっているだろうか。古風な女だ。大方騙されていたんじゃなかろうか。今のこの時代で指切りなどはそうそうしないことだろう。
「やぁだ、お客さんったら」
耳に届く声。ほとんど無意識にその手を撫でた。
「あたしが欲しいんと違うやろ?」
「……プロですねえ」
「わかるわよォ」
「俺も指切って送ろっかなー」
「愛しい人がおるんやね」
「……おりますねェ。あ、どうも」
注ぎ足された酒で唇を濡らした。
がははと豪快に近藤が笑う。上の者たちがこんな場に真選組を呼ぶことがあるのは、大概女に受けるからだ。沖田など寝入ってしまい女たちに囲まれておもちゃにされているが、どこまで彼が酔っているのかは分からない。
「……スパッと切っちゃって、リボンでもかけようか」
「お侍さんは刀があるからそれで切るんかしら」
「……どうやったの?」
「怖かったから包丁当てて、鉄瓶で叩いてもらった」
「……そっちの方が怖いよ」
「ふふ、せやからあたしは強いんよ」
「――うん、綺麗だ」
「その気もないのに誘わんといて。小指は後1本しかないんやから」
「はは、いい女だなぁ」
小指を失ったら、ラケットを握るのに支障が出るだろうか。ああ、それよりも刀が。
酒を煽りながら話は世間話へ移っていった。どんな話でも笑う女たちは、どこまで楽しんでいるのだろう。
(あんたのためなら、何本だって指を切って誓うけど)
ふっと思わず笑い、逆に女に酒を勧めた。注いでやりながら綺麗な指先を見る。
(誓われたいわけじゃないからなぁ)
土方が今夜、帰らないことは知っている。
2008'09.30.Tue
生まれてこれまで五感に頼って生きてきた。全身で気配を感じながら。この年になって手に入れたのは経験による第六感。それでも、6つ目の感覚はただの勘だった。あれだけ頼りすぎてはいけないと、自分に言い聞かせていたはずなのに。
「……戻んねえのか」
「いえ、一時的なものだと」
「そうか」
「すいません」
深い溜息に知らずと緊張する。大体の表情の予測はつく。失った視覚の代わりに、聴覚と嗅覚が彼が煙を吐き出したと教えた。煙草はまだ残っているだろうか。いつも買いに行かされるのは自分の役割だ。
「命拾っただけ誉めてやる。あとは引っ込んでろ」
「はい」
「なげぇ休暇をやる。但し戻ったときにゃ休めると思うな」
「はいっ!」
土方が立ち上がり、畳を踏み、障子、閉まった後に廊下の軋みが遠ざかる。切り捨てられなかっただけで上等、無様に生き長らえたとは思わない。死ねば終わりだ。
ほの暗い。今が夜中であることは関係ないのだろう。昔山の中で濃い霧に遭遇したことがあるのと似ている。もっと真面目に修行をしていればよかった。後悔はいつも後でするのだ。
手探りで屯所内ぐらいは歩けるだろうが、出歩いたところで無様な姿を見せびらかすだけだ。
誰かが近づいてくる軋み。土方ではない。さっき出ていったばかりだ、用事を一度で済ませぬことはないし、足音はもう少し重い。近藤ならばなお豪快だ。これはもう少し若い、
「沖田隊長」
「……邪魔するぜィ」
「どうぞ。ちょっと座布団がわからないので、すみませんがご自分で」
「おう。……ほんとに見えねえんだな」
「情けないことです」
「何、たまにゃ休め。他の監察が張り切ってくれる」
「はは……」
「忍者の修行積んでる監察はテメェぐらいなもんだからな。便利でしょうがねえ」
よっこいせ、と目の前に座った沖田に顔を向ける。今一瞬匂ったのは。
「医務室に何の用が?」
「……ここはテメェの部屋だぜィ」
「わかってます。あなたが、医務室に行ったでしょう。匂いがする」
「ったく……見えねえくせに厄介なやつだな」
「……お怪我を?」
「見るな」
「……見えませんよ」
「目がないから見えてんだろうが。隠してんだぜィ、これでも」
「……わかりました」
畳に手をつき、い草をなぞるように沖田に近づく。強くなる消毒液の匂いに血が混じる。ひどいけがだろうか。
衣装に手をかけると隊服のままだ。はっきりとはわからないが、いつもならば彼は寝ている頃のはずだ。普段屯所では着ていないジャケットを脱がし、ベストに触れる。深くはいた息を耳元で感じた。
「あんたらしくもない、けがなんて」
「黙ってろよ。せっかく眠いの我慢して、夜を待って医務室行ったんでィ」
「ばかだな」
シャツの前をくつろげて、直接肌に触れると少し冷たい。そのままなで下ろすと包帯が触れた。脇腹。
「……弱るもんだな、人ってのはよ」
「……あんたの姉さんは、葬式に出なかったからって恨むような女ですか」
「違う」
それでも。
人は死人を忘れられないから弱くもあり強くもある。当てずっぽうで頬を寄せるとどこかに触れ、沖田に顎を捕まれキスをやり直した。包帯を撫でると体の緊張が伝わってくる。肩を押したが沖田は逆らわなかったので畳の上でけが人同士が重なりあう。
「……電気、ついてんだけど」
「見えませんよ」
「山崎、」
「あんたが傷つくのが俺のせいじゃなくてよかった」
「……半分はテメェのせいだ」
「沖田隊長」
「二度とみっともないとこ見せんじゃねーぞ。叩っ斬ってやる」
視力が戻る頃には沖田はもう泣かないだろう。指先に触れた涙を舐めて、幼い子がすがるように抱きしめた。
「……戻んねえのか」
「いえ、一時的なものだと」
「そうか」
「すいません」
深い溜息に知らずと緊張する。大体の表情の予測はつく。失った視覚の代わりに、聴覚と嗅覚が彼が煙を吐き出したと教えた。煙草はまだ残っているだろうか。いつも買いに行かされるのは自分の役割だ。
「命拾っただけ誉めてやる。あとは引っ込んでろ」
「はい」
「なげぇ休暇をやる。但し戻ったときにゃ休めると思うな」
「はいっ!」
土方が立ち上がり、畳を踏み、障子、閉まった後に廊下の軋みが遠ざかる。切り捨てられなかっただけで上等、無様に生き長らえたとは思わない。死ねば終わりだ。
ほの暗い。今が夜中であることは関係ないのだろう。昔山の中で濃い霧に遭遇したことがあるのと似ている。もっと真面目に修行をしていればよかった。後悔はいつも後でするのだ。
手探りで屯所内ぐらいは歩けるだろうが、出歩いたところで無様な姿を見せびらかすだけだ。
誰かが近づいてくる軋み。土方ではない。さっき出ていったばかりだ、用事を一度で済ませぬことはないし、足音はもう少し重い。近藤ならばなお豪快だ。これはもう少し若い、
「沖田隊長」
「……邪魔するぜィ」
「どうぞ。ちょっと座布団がわからないので、すみませんがご自分で」
「おう。……ほんとに見えねえんだな」
「情けないことです」
「何、たまにゃ休め。他の監察が張り切ってくれる」
「はは……」
「忍者の修行積んでる監察はテメェぐらいなもんだからな。便利でしょうがねえ」
よっこいせ、と目の前に座った沖田に顔を向ける。今一瞬匂ったのは。
「医務室に何の用が?」
「……ここはテメェの部屋だぜィ」
「わかってます。あなたが、医務室に行ったでしょう。匂いがする」
「ったく……見えねえくせに厄介なやつだな」
「……お怪我を?」
「見るな」
「……見えませんよ」
「目がないから見えてんだろうが。隠してんだぜィ、これでも」
「……わかりました」
畳に手をつき、い草をなぞるように沖田に近づく。強くなる消毒液の匂いに血が混じる。ひどいけがだろうか。
衣装に手をかけると隊服のままだ。はっきりとはわからないが、いつもならば彼は寝ている頃のはずだ。普段屯所では着ていないジャケットを脱がし、ベストに触れる。深くはいた息を耳元で感じた。
「あんたらしくもない、けがなんて」
「黙ってろよ。せっかく眠いの我慢して、夜を待って医務室行ったんでィ」
「ばかだな」
シャツの前をくつろげて、直接肌に触れると少し冷たい。そのままなで下ろすと包帯が触れた。脇腹。
「……弱るもんだな、人ってのはよ」
「……あんたの姉さんは、葬式に出なかったからって恨むような女ですか」
「違う」
それでも。
人は死人を忘れられないから弱くもあり強くもある。当てずっぽうで頬を寄せるとどこかに触れ、沖田に顎を捕まれキスをやり直した。包帯を撫でると体の緊張が伝わってくる。肩を押したが沖田は逆らわなかったので畳の上でけが人同士が重なりあう。
「……電気、ついてんだけど」
「見えませんよ」
「山崎、」
「あんたが傷つくのが俺のせいじゃなくてよかった」
「……半分はテメェのせいだ」
「沖田隊長」
「二度とみっともないとこ見せんじゃねーぞ。叩っ斬ってやる」
視力が戻る頃には沖田はもう泣かないだろう。指先に触れた涙を舐めて、幼い子がすがるように抱きしめた。
2008'09.10.Wed
いいかトシ、人という字は人と人が背中を預け、支え合って生きていくことをあらわしてるだろ?だからもうむちゃはしてくれるなと、山崎に伝えといてくれ。お前の言いたいことはわかる、確かにあいつは器用ですばしっこいから、少ない監察の中でも特に優秀だ。お前が使いやすいのもわかるし、山崎がよかれと思って動いてくれてるんだとわかってる。それでも、俺がやりきれない。こんなことを言うのは局長失格かな、なあトシ、
だいたい近藤さんは甘いんでさァ。今回だって、あんたが罰せられるべきじゃないのかィ。山崎の奴に言っといてくだせえ、人という字は片方が楽して片方が片方を支えてるから成り立ってる。お前はわざわざ辛い方を選んでるんだから、それを表に出すんじゃねえと。あんたや山崎がそんなんだから近藤さんが甘やかすんでさァ。血を流そうが首が飛ぼうが、折れちまわねえで役者を立ててもらわなきゃ困りますぜ。聞いてんですかィ、なあ、土方さん、
あ、副長……ご心配をおかけいたしました。怪我はこの通り、明日にでもまた飛び出せます。やだなあ、そんな顔しないで下さいよ。あんたが迷ってどうするんですか。人という字は、足元を見ながらひとりで歩いてるんですよ。でもその目が見てるのは、己の道です。あんたは何も見誤っちゃいない。誰がなんと言おうと、俺はあんたについていきます。……ね、副長、顔を上げて下さいよ。あんたに謝られちまったら、情けなくてしょうがない。あんたは鬼になりなさい、犬畜生一匹、あごで使ってかまわない。血も涙も、俺があんたの代わりに流しますから。ねえ副長、土方さん、俺はあんたという人が好きですよ。
だいたい近藤さんは甘いんでさァ。今回だって、あんたが罰せられるべきじゃないのかィ。山崎の奴に言っといてくだせえ、人という字は片方が楽して片方が片方を支えてるから成り立ってる。お前はわざわざ辛い方を選んでるんだから、それを表に出すんじゃねえと。あんたや山崎がそんなんだから近藤さんが甘やかすんでさァ。血を流そうが首が飛ぼうが、折れちまわねえで役者を立ててもらわなきゃ困りますぜ。聞いてんですかィ、なあ、土方さん、
あ、副長……ご心配をおかけいたしました。怪我はこの通り、明日にでもまた飛び出せます。やだなあ、そんな顔しないで下さいよ。あんたが迷ってどうするんですか。人という字は、足元を見ながらひとりで歩いてるんですよ。でもその目が見てるのは、己の道です。あんたは何も見誤っちゃいない。誰がなんと言おうと、俺はあんたについていきます。……ね、副長、顔を上げて下さいよ。あんたに謝られちまったら、情けなくてしょうがない。あんたは鬼になりなさい、犬畜生一匹、あごで使ってかまわない。血も涙も、俺があんたの代わりに流しますから。ねえ副長、土方さん、俺はあんたという人が好きですよ。
カレンダー
カテゴリー
最新記事
ブログ内検索
アクセス解析
アクセス解析