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言い訳置き場

言い訳を書いていきます。誤字の報告などあればありがたいです。 ※唐突にみゅネタややぎゅにおの外の人のかけ算が混ざるのでご注意下さい。 日常はリンクのブログから。

2025'01.19.Sun
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2006'11.06.Mon
いつからこんなに荷物が重くなったのだろう。恨みさえ覚えながら、船の横切る夜空を見上げる。吐き出した煙で紺が曇ったのが幽霊めいて、思わず手で振り払った。



実体のないものは恐ろしい。そこに姿がなくても土方を攻め続けるから。



「まだ起きてらしたんですか?」

「……」



各自が部屋で飲んでいるのでその食器の回収に、最近入ったばかりの見ない顔が部屋の前を通りかかる。最近入ったのだろう。



「お前は夜目がきくか?」

「え?まあ、鳥目ではないとは思います」

「夜の戦いもできるか」

「……わかりません」



夜は死者が混じる、と土方は思う。腕が鈍る。目が利かないだけじゃない。



「お前が、抱えているものは何だ」

「……恨み」



ひやりと冷たい声。ああ、隊士なんかじゃない。こいつは────



「あんたへの恨みだ」



抱えるものが多すぎる。亡霊に殺されるわけにはいかないほどに。



*



「ちょっ…トシ何で縁側で寝てんの!?飲みすぎ!」

「このままトドメさしやしょうか」



揺り起こされて目を開ける。世界は明るく煙っていた。視界に飛び込む四つの瞳。



「…重てえなあ」
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2006'10.28.Sat
たった一押し、それだけでお前に被害を与えることができる。



車道側を歩く男を見ながら考える。背後から大型トラックが迫ってきた。ほら、今だ。その一押しで、命を奪うことができる。

隣の女は男へ手を伸ばし、────その腕を取った。残念、死ねばよかったのにあんな男。



「逢い引きは終わりですかィ」



女と別れて帰ってきた奴に声をかければ、俺の首に掛かった双眼鏡を見て嫌そうな視線を送ってきた。でも今更説教する気にもならないのだろう、文句は何も言わない。どうだ、と聞いただけだ。



「異常なし」

「ほんとに仕事してんのか?」

「してまさァ。あんた待ってたんだぜ」



見回り、腕時計をしているかのように手首を叩く。舌打ちをした土方さんは、待ってろ、と中に入っていった。



憎らしい男だ。多分似たようなことを考えてるに違いない。



ピシッと隊服に着替えて出てきた男と歩き出す。どういう意図か、車道側を歩く男に警告した。突き飛ばしますぜ。



「できるもんならやってるだろうが」

「ですよね」



そんなわけで思い切り体を押してやった。

煙草に火をつけようとしていた副長さんは車道へ転がり出る。運の悪いことに車はなくて、すぐさま戻ってきて俺の胸ぐらにつかみかかった。



「総悟テメェ…」

「土方さんが鈍感なんで思わず」

「誰が鈍感だ、お前の押しで気づかねえ奴がいるかよ」

「……」

「ったく…殺してぇのはわかるが勘弁しろよ」

「……俺今度素っ裸で土方さんの部屋に夜這いに行きまさぁ」

「どんな嫌がらせだよ!?」



ああ、やっぱり鈍感か。俺だってこんな不愉快な思いを率先して伝えようとしてるわけじゃないけど、でも体が動いてしまうから。



「バカだなぁ」

「何でだよ」

「俺はあんたが好きなんですぜ」



鈍感野郎に最後のだめ押し。あとは野となれ山となれ。
2006'10.18.Wed
初めて俺を殴ったのは姉だった。

後にも先にも一度きり。理由なんて覚えてない。



「ばかだなぁ」

「ほっといて下さいよ」



渾身の力で打たれた頬を冷やしながら、山崎は仏頂面で睨んでくる。俺を睨む道理がわからねぇから鯉口を切ってやれば、一瞬でその目を引っ込めた。勤務時間中にミントンやっててタコ殴り、なんてどう考えてもお前が悪い。ばれないようにサボるのが常識だ。そのお陰で見事な平手打ちを見せてもらったけど。

しかし女じゃあるまいし、平手で打つか。そう呟くと山崎は笑う。笑ってから痛そうに顔をしかめた。馬鹿だ。



「あの人拳怪我してんですよ」

「……あーそっか、俺が撃ったバズーカ掠めたんだっけ」

「あんたかよ!」



小さなかすり傷ひとつでわーわー騒いで、俺の頭を叩いた。つい昨日のことだ。

ちらり、と山崎を見る。見続けると首を傾げて、おっさんがやっても可愛くねぇと頬を打ってやると悶絶した。本当に痛いらしい。加減しねぇな、鬼の副長。その冠を、さっさと俺に譲ればいいのに。



俺を打てるのは自分ぐらいだと、あの人は気付いてるんだろうか。殴らせてやってることに早く気付けばいいのに。
2006'09.29.Fri
来る、と思った瞬間には殴られている。別に避けられないわけじゃない。そっちの方が早く済むからだ。



よろけた体を支えて、顔を伏せたまま耐える。口の中は切らなかった。上等だ。怒鳴る声のボリュームが落ちたと思えば、一緒に叩かれていた片耳がのびていたらしい。ゆっくり回復してくる。

こいついつか殴ってやろう。好き勝手に殴りやがって。



好きでやってる仕事だから文句は言わない。だからといっていつまでも耐えられるものでもなかった。そろそろ堪忍袋の緒も限界だ。



ご用改めである!階下で聞き慣れた声が聞こえた。俺を再び殴ろうとしていた男がうろたえる。その隙に俺が男を殴りつけた。乱暴な足音が駆け上がってくる。



「あーあ、山崎」

「遅いですよ。無駄に殴られたし」



入ってきた沖田隊長と俺を見比べ、潜入先の雇い主は混乱している。間抜けな顔、もう一発ぐらい殴りたい。そうする前に、すっと局長が現れた。



どれだけ殴られても構わない。俺たちは誇り高き野良犬だ。
2006'08.30.Wed
しょせん、井の中の蛙だったわけで。



「ちょっと力があるぐらいで調子乗ってんじゃねぇぞ!」

「うるさいよ、負け犬の癖に」



好きに吠えてろ。

こっちはいらいらしているのだから、これ以上構わないでほしい。木刀を握り直して構えてやると、ようやく奴らは逃げ出した。



溜息を吐いて池まで歩く。神社の裏手にあるそこは小さな池がある。祭りの際に逃がされたと思われる金魚が泳いでいて、山崎はひとりになりたいときはここにきた。最近は特にくることが多い。



池を蛙が横切った。若葉の色の蛙は器用に水を掻き、縦横無尽に泳ぎ回る。



(…大海を知らず…)



ちょっとした手練だったのに。池の縁にしゃがみ込み、立てた木刀にすがって嘆く。



(……俺は弱かった)



江戸へあがる奴らがいるというから志願して加わって、そうしたら完全に下っ端だった。

夢見ていたのは未来。自分はしょせん子どもだったのだろう。道場の主であった近藤は勿論、荒っぽいが確実な強さの土方、それに自分よりも年下であるのに、周りの大人に負けない強い力と堂々としたたち振る舞いの沖田。



「あー…帰りたくねー」



水から上がった蛙が山崎を見つめた。指ではじいて水の中へ追い返す。
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