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言い訳置き場

言い訳を書いていきます。誤字の報告などあればありがたいです。 ※唐突にみゅネタややぎゅにおの外の人のかけ算が混ざるのでご注意下さい。 日常はリンクのブログから。

2025'01.19.Sun
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2006'02.11.Sat
新しい着物も細かい細工のかんざしも何もいらない。



さぁ季節が変わるわ着物を作りましょう、今年の流行は何色でしょうね。柄にあわせて帯を、かんざしを、小物をそろえて。

私はいつも着せかえ人形。



着物は重い。帯は苦しい。かんざしは痛い。

どうせなら洋服を作ってくれないかしら。ふわっと広がるスカート、襟元はレースで作って。



だって着物はもう覚えてないほど作ったわ。お金もないくせに見栄を張って。

ええ素敵です、こちらもいいですね。



「…これは?」

「あぁ、失礼しました。誤って荷に混ざっていたのですよ」



おそらくは普通の娘が着るような着物なのだろう。生地も上等ではないようだし、柄も地味だ。



だから逃げた。目を盗んで袖を通して。

ほら結構似合うじゃない、私だって下町の娘と変わらないってことだわ。



この日初めて友達が出来た。この日初めて恋をした。



ねぇ私は何もいらない、



「…いい加減呆れているのでしょう」



いいえ、とすぐに声は返ってきた。大人の男の低い声。びっくりして涙が止まる。運転手も出て行った狭い車内に今気付いた。



「泣きたいなら泣いて、戻ったときには誰の前でも泣かないように」

「何故?」

「あなたが『悲しんで』ないているなどと誰も思わない」

「!」

「『ほら城の外は恐ろしかったでしょう?もう2度と外へ行きたいなんて思わないでしょう?』」

「いっ…嫌です」

「だから泣きなさい」

「…でも、あなた方が怒られるのではなくて?」

「通信機はついさっき故障しました」

「……ありがとう」



涙は止まっていたけれどしばらく泣いているふりをした。



かぶき町を案内してくれた女王さん。私が泣き止むまで待ってくれた副長さん。



ねぇ私は何もいらない、この城に私の欲しいものはない。
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2006'02.09.Thu
女に構っている暇はないのだ。



月が変わるとすっかり冷え込み、もうすぐにでも冬がやってきそうだった。今年の冬将軍は早い。

情けない政府の役人が白旗を揚げてから、何度冬がめぐったのだろう。その数字は実ははっきり覚えているが、考えないようにしている。

逃げても冬はやってくる。



指先が冷たくなってくるとひとりの女を思い出した。ずっと昔に出会った女。

今はどこで何をしているかわからない。いつかまた、とあの時口にしたけれど、もしかしたらあの後すぐにも死んだのかもしれない。確信などなかった。



白く冷えた女の指先は確実に他者を冷やした。

死体の中に生き残りを探す姿はとても人間とは思えなかった。



何故俺なんかに惚れたのだろう。何度となく思ってみる。

寒く凍てついた日に現れる女は、何を望んでいたのだろう。



逃げても冬はやってくる。女を思い出して動きが鈍る。



「桂さん、準備が整いました」

「…今行く」



雪の日にはあの女の声がする。あの女は雪から生まれたのだろう。

冬はいつものようにやってくる。また一冬、女の幻想に惑わされて過ごすのか。
2006'02.07.Tue
馬鹿ばっかりだ。



俺の世界は狭い。真選組なんて大げさな服を着ても、俺の世界はあの狭い貧乏道場で全てだ。

近藤さんと土方さん、その他大勢。俺の下僕の山崎。



ずっと子犬みたいだった男は猛犬だった。飼い主にだけ尻尾を振って腹を見せる。



大好き。あったかい生き物。従順で生意気。

唯一の遊び相手だった。俺に黙って大人になってしまうまでは。



「隊長〜、いつまで寝てんスか。副長来ますよ〜」

「…退」

「…なんですか?」



にこりと、一応笑うその笑顔。無言で呼ぶなと言ってくる。

回顧することは俺も嫌いだ。なぁだけど、お前なら俺の気持ちぐらいわかってんだろ?

廊下を横柄な足音が歩いてきた。もう聞き飽きた足の裏。山崎じゃなくとも誰だかわかる。



「オラッ、何タラタラしてんだよ。山崎、米が炊けてねぇって大騒ぎになってんぞ」

「えぇっ!?嘘ォ〜〜」



山崎がパタパタと廊下を走っていく。その後ろ姿を見つめている、自分の目線を自覚しているんだろうか。

────何が鬼の副長だ。ひとりの部下に入れ込んでやられちまって、そんなにやけた表情。



「…調子乗ってると」

「あ?」

「いつか噛み付かれますぜィ」



真っ黒な猫を白昼夢に見る。馬鹿な奴。なんて顔で笑ってんだよ。

山崎を俺に返せと、言うタイミングがなくなってくる。
2006'02.06.Mon
呼吸。



今自分の生きている証がこの流れる血と荒い息しかない。肌を舐める液体と肺を軋ませる空気。

全てが憎いのだと言うと笑われたことがあったのを何故か思い出した。



────悪夢なら見飽きた。隣で寝ていた桂が心配そうに体を起こしかけたのを押さえつける。



今夜は月夜で、外は明るかった。こんな夜でも悪夢を見る。じとりと汗をかいていた。

呼吸を整えて布団を抜け出す。顔の傷が疼く。血が流れ出す。いつまでも塞がらない傷は、油断すると俺を血に染めた。



色んなものが怖かったのだ。初めて戦場へ出たときのおののき、人を斬ったときの衝動。

憎かったのではない。怖がった。



俺を斬った刃を覚えている。既に生き物の熱を吸いすぎて熱くなった凶器だった。

俺の肌に噛み付いた瞬間に一気に熱を増して、解けて俺の中に潜り込む。



好き、と俺に言ったのは誰だったか、忘れている。違う、忘れたことにしている。

生きて戻る約束はしたが、片目がない。



傷が疼く。全身を恐怖で包み込んだ裂け目。

俺はこうして誰かの血で汚れていく。
2006'02.05.Sun
「イッテ…」



口噛んだ。チクショ…無傷でここまできといて何やってんだ。

外は戦火。昼でも夜でも戦だ。この場所もばれているのかもしれない。



「坂田」

「…どーも」



仏頂面に水を渡された。不景気な面をしてるのはこっちも同じか。

最期に笑ったのはいつだろう。去年か、先月か、昨日か。もしかしたら戦場を駆け回っていたさっき、自分は笑ったかもしれない。斬りすぎるとわからなくなる。



しゃがみこんだ俺の傍にそいつは立ったままだった。

静かに怒っているのがわかる。こいつは全てが許せないのだ。無力な自分さえも。

お互い口をつぐんで、俺は水を飲む。ぬるい水でも傷にしみた。



もうずっと花を見ていない。そこにあるはずの空も見ていない。

どうして俺はこんな戦場なんかで、命をかけて戦ってるんだろう。ノリだったのになぁ。ノリで戦場に来た奴も真剣に戦ってる奴も、命は一個なんだから笑えない。国のためにと張り切ってた奴が今日死んだ。真剣な奴ほど死ぬのが早い気がする。逃げないのだろう。



話をしない相棒は濡れて光る。赤じゃない。色んな色が混ざっていて、少し気分が悪くなる。

体中に匂いが染み付いている。死の匂い。生の匂い。つまんねぇ意地にしがみついてる俺だ。

隣の存在感は何を考えてるんだろう。死ぬことだろうか。生きることだろうか。



女が抱きたい。甘いものが食いたい。賭け事がしたい。

もう戦場は飽きた。



「…なぁ、お前」

「……なんだ」

「隣座って、ちょっと話しようよ」

「はぁ?」

「俺、やっばい」

「……」

「話がしたくてしょうがない」

「何で…こんな事態に」



だって話がしたい。生きていたい。

こんな暗い世界にいるのに視界なんて信じられない。誰か俺の声を聞いて返してくれよ。欲しいのはこんな冷たい光じゃない。



「ねえ何の話でもいいよ」

「…お前…女いた?」

「いたいた。いー女。髪結いやってた。んで俺ヒモだったの」

「最悪だな」

「最悪ついでに戦ってみたかったから置いてきちゃった。生きてんのかなぁ」

「さぁな」

「女抱きてぇー」



いつかこの日の話をするよ。多分そう遠くないうちに。

もう終わりは見えている。俺達は負けだ。
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