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言い訳置き場

言い訳を書いていきます。誤字の報告などあればありがたいです。 ※唐突にみゅネタややぎゅにおの外の人のかけ算が混ざるのでご注意下さい。 日常はリンクのブログから。

2025'01.19.Sun
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2006'02.23.Thu
だって大人は私を置いていく。



今日も傘をさして一人で歩く。江戸にはもう大分慣れた。

時々、私が殺しかけた人間に会う。こんなに可愛い少女を見て、一目散に逃げ出すけど。



万事屋に転がり込んだのはほとんど無理矢理だったけど、銀ちゃんは何も言わない。

勝手にチョコ食べちゃったり部屋を汚したりして文句を言われるけど、それでも追い出そうとしたことはない。食費がかかってしゃーねえと言う癖に。



マミーもあんな頭のうっすらとしたおっさんじゃなくて銀ちゃんみたいな男に惚れればよかったのに。そしたらきっと傍にいてくれた。

ねえマミー、あなたの長男は今何処にいるの?なんだか無性に会いたい。

貰った傘が似合う女になったかどうか見てもらいたい。



男は馬鹿な生き物なのよ。

マミーを見てたら女も馬鹿だってことがわかったけど。



傘をすかして太陽が足元に影を落とす。晴れた日は私の影は赤い。まるく地面を切り取って、転がりながら移動する。

銀ちゃんもパピーも誰も知らない。私が女だってこと。

男の大人が一番馬鹿だ。



くるくる



江戸に来てから散歩が楽しい。昔の江戸は知らないけど、今の江戸は瞬きする間に世界が変わる。天人が来たせいだという人もあれば、天人が来たお陰だという人もいる。

町は明るい。マミーにも見せてあげたかった。



…変な人もいるけど。



「よーチャイナ」

「今日も堂々とサボってるな、税金泥棒め」

「税金払ってから言いやがれ。言っとくが俺はちゃんと税金払ってんだぜィ」

「エセおまわり」



団子屋の店先でお茶をすすっているのはエセ警官。本物ではあるけど。

傘を回しながら近付いていくと持ち手を掴まれた。そのまま傘を渡して隣に座り、勝手に団子を食べると殴られた。



団子を食べながら隣を見る。蜂蜜色の甘そうな髪が日を透かす。時々傘を貸してやりたくなる。昔見かけた誰かに似てる。

日の下を歩くあんたが羨ましい。



私が女だってことをこいつは知ってる。一度だけ道を外したから。
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2006'02.20.Mon
死ぬことは怖くなかったの。



傷口を吸って血を吐き出した。多分薬は塗られていないだろうとは思うけど念のため。

あぁ、しくじったわ。こんなミスをしたのは久しぶり。あそこで眼鏡を落としたのがまずかった。

とりあえず追っ手は撒いた。帰るルートは大丈夫だろうか。念のため遠回りして帰ろうかしら…いや、この出血は少しまずい。危険でも近道で帰ろう。



あー…しまった。今日はあの子がいるんだった。

よりにもよって今日じゃなくてもいいのに。やっちゃったなぁ。
2006'02.15.Wed
たまには黙っていたらどうなのと言ってみたらほんとうに黙り込んだ。



今度は今度で黙って見つめてくるから、黙って矢印で外を指差したら黙って振り返った。出て行けといったつもりだったけど彼は縁側に落ち着いてしまい、お茶も出していないのに自分で持ってきた団子にかぶりつく。



根元からぐっとマスカラを塗る。仕事を始めてから覚えた。



びっくりするほど無言だった。

瞬きの音が聞こえるほどに。



静かに 静かに 回想する。

弟と走り回った記憶、父の言葉、最期。



映画みたいに簡単じゃない。だからヒロインのようなラストシーンなんて期待してない。

だって現に現れた王子様はこんなゴリラだし。どうせなら、…顔だけなら、どっかの馬鹿みたいな男なら。



白馬に乗った王子様も、ハッピーエンドも期待してない。

欲しいのは確かなものだけだ。



瞬きのあとに息を吐く。

つりあがった睫毛は夢を乗せている。私だけが知ってる夢を。



振り返れば彼はのんきに庭を眺めていて、私のことなんて忘れているんじゃないかと思えた。ここはうちの庭だけど、彼の家のように似合う。



「庭を綺麗にしてますね」



映画のように行けばいいのに。

黙って進むストーリー、出来ればハッピーエンドを望むけど。
2006'02.14.Tue
あさましい。



自分の中に棲む女が憎い。

憎い。憎い、ほんとうに。



男が戦地へ向かったのはもう何年か前のことだ。

添い遂げる約束をした男。自分も男も回りに流されていただけだったけれど、だけれども。



私だって女だった。

そこに幸せがあると、思っていた。

不安も不幸も見えなかった。



私に何一つ寄越したことのない男は野の花を差し出し、不器用な言葉を残した。

生きて帰ってくる気があったのかどうか知らない。

あの花の色や形を覚えているのに、男の言葉は忘れてしまった。



あのときから自分が女であることが憎い。

女でなければ共に出た。女でなければ残されなかった。



女でなければよかった。

戻ってこない男を待っている、女が嫌で仕方がなかった。

お前と住むはずだった家にひとりで住み、お前と食らうはずの飯をひとりで食むのか。ひとりで生きろというのか。



――――女であることを、武器に出来るほど強くない。



ひとりで生きろというのか。

わたしは女になってしまうというのに。
2006'02.12.Sun
初めて人を殺した。



甘やかされて育ったせいか、人を憎むと言うことが出来なかった。

ものを壊されても新しくなったし、兄弟がないから喧嘩をしたことも見たこともなかった。



道楽で船を始めたときも何一つ障害はなかった。指定した通りのいい船が出来て満足だった。船酔いするタチだとわかったときも、迷惑をかけた人たちは文句ひとつ言わなかった。



だから憎んでもいない相手を殺すなんて思いも寄らなかった。



『正しい殺生』までのプロセスは至って簡単。

真面目な桂に『抵抗戦』に誘われ、迷っている間に俺は参加することになっていた。噂が広がり収集がつかなっていたが、違うと否定してもいつものように済むだろうと思った。



父ががっかりした顔を見せた。



それだけだった。怒りもしないし、けなしもしない。ただ残念がった。



だけど初めてそんな顔を見て、ほんとに悪いことをしたような気になって、俺は戦場へ行くことになったのだった。



要するに俺は子どもだった。



「あ〜……せったァ」

「……」



陸奥が目を丸くしてこっちを見た。

俺の手には煙の昇る拳銃。今し方、ひとりの男を撃ち殺したばかりの。



「…怪我ァないか」

「……あぁ」

「正当防衛じゃから警察呼ばんとの」



立ち尽くす陸奥へ近づいて手を引く。死体が握るナイフ。

俺は怖いから剣を捨てたのだ。



「…のぅおんし、これでもわしに着いてくるんか?」

「ッ…教えろ!」

「誰がおんしに人殺しを覚えろと言うか」

「…」

「戦場でなければ何人殺しても覚えちゅう。『正しい殺人』は、あっこだけじゃ」



思えばあの頃自分は大人だと思っていた。女抱いたことがあるだけで大人になったと思っていた。



そりゃあこんなろくでもない大人になるのは道理だ。

敵があってもやっぱり憎み方を知らない。
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