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言い訳置き場

言い訳を書いていきます。誤字の報告などあればありがたいです。 ※唐突にみゅネタややぎゅにおの外の人のかけ算が混ざるのでご注意下さい。 日常はリンクのブログから。

2025'01.19.Sun
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2006'05.16.Tue
それが課せられた仕事ならば、死ぬまで罪を重ねましょう。



「待ってッ…!」

「!」



ガシッと掴まれた手の力は弱い。振り払おうとしたら出来たのをしなかったのは、声に聞き覚えがあったせいだ。どうした、と前を歩く土方が振り返る。



「芦屋さん?」

「────人違いではないですか?」

「…そう…かしら?私を見覚えではない?」

「生憎と。どなたとお間違えか存じませんが、私は山崎と申します」



対峙するのは、2ヵ月ほど前潜入していた店の奉公人。まさかこんなところで会うとは。



「…そうですか…いえ、失礼しました。突然行方の知れなくなった方にそっくりなもので…」

「世の中に似た人間は3人いると申しますから、そういうこともあるのでしょう。では、連れがあるので」

「お引き留めしましてすみません」

「いいえ、探している方にお会いできることをお祈りしますよ」



何度も謝る彼女を離れ、拗ねた様子で煙草をふかす土方のそばへ戻った。歩きながら事情を説明する。私服の時は油断出来ませんねとこぼしたのを愚痴と取ったのか、望むなら休みなく働かせてやるぜ、人事を握る男は恐ろしいことを真面目に言った。



「大嘘吐きだな」

「…ま、結構いい目見させてもらってますから」

「……あっ、テメ、さっきの女食ったろ!」

「やだなぁ舐めたぐらいですよ」

「……」



怒りたくとも怒れる立場ではない土方はぐぬと唸って口を閉じた。代わりにしきりと煙を吐き出す。



「何拗ねてんですか。俺が嘘吐かない相手なんてあんたぐらいですよ」

「…そうか」

「そうです。誰かさんがこき使うから、誰にも言えないことをいっぱい抱えてんです。その分嘘で補って」



山崎は笑うのに、土方が表情を暗くする。真面目さに呆れてしまい、彼の手から煙草を奪う。



「あんたが気にしてどうすんです」

「山崎」

「俺はあんたのための詐欺師なんですから、そんな情けない顔は困ります」



俺が嘘を吐く代わりに、あなたは嘘を吐かせることを忘れてはいけない。じゃなきゃ俺は
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2006'05.09.Tue
ぱっと咲いた大輪・手に入らぬ魔力。



「きれい」



警護などと言いながら、実質付き添いのようなものだった。将軍の植物園訪問などと言うくだらない企画、誰が通したんだ。煙草が吸いたくて仕方がないが、お姫様はバラの花に見入っている。職員に説明を聞きながら花に微笑みかけた。

────畜生、山崎め。何が悲しくてひとりで警護しなくてはならないのか。そりゃあ────人員削減を叫んだのは土方だったが、幾らなんでもこれはない。…気持ちを知るなら、尚更だ。



「まるで土方さまみたい」

「…その種は手がかからないらしいですよ」

「あら、そんな意味じゃありません────オレンジの大輪、強い力」

「……」



その力はあなたのために?そんなに簡単ではないのだ。無邪気に笑う笑顔こそ大輪の花のようで、まぶしい。



(────ありえねぇ…)



抱きしめて甘い言葉をひとつふたつ囁けば、この腕に落とす自信はあるのに。触れることもままならない、この壁を、



「土方さま?」

「…いえ。綺麗ですね」



自分に花などわからない。所詮女を落とす道具だから。

そばの花に手を伸ばす。滑らかな手触り、色は移りそうに強い。くらくらする。かすかに匂うのは、花か香か。



(…なんでよりにもよって、惚れるかなぁ…)



最低・最悪。苦しむばかり。

自分を恨めしく思いながら、花に例える。…そんな笑顔を見れるなら、花でもいい。だけど選んだのは守る道。



(…嫁に行かれたら泣くな俺…)
2006'04.21.Fri
濁っている。



女の水死体だ。とてもじゃないが見れるものではないと思ったが、それはまだ綺麗だった。絞め殺されてから川へ投げ込まれたらしい。発見が早かったのだろう。顔は青白いがひどく美しい女で、死体を発見した者は初め人魚だと思ったそうだ。



「山崎助勤」

「うん、扇屋のさ江だね」

「男でしょうか」

「うぅん…」



シクったかな。美しい魂の器を前に、山崎は唇を噛む。彼女はつい先日、土方の相手をした女だ。と言っても情報屋、本人だってただ殺されただけじゃあるまい。仏を前に手を合わせ、目を開けたときに人魚の瞳と目が合う。虚空を見る瞳は澄んでいた、山崎よりはよほど。



「ごめんね」



女はサイズの合わない襦袢を着せられていた。まだ湿ったそれに手をかけて脱がしていく。特に外傷はない。



「綺麗っスね。暴れなかったんでしょうか?」

「それか薬かなぁ。ちょっくら」

「! や、山崎助勤ッ」



死体の脚を担ぎ上げ、なかの秘所へと手を伸ばす。冷たい体に思わず眉をひそめた。



「────山崎助勤」

「あった」

「へ?」



そこから引き抜いた小さな小筒を掲げると、隊士は疲れた様子でしゃがみこんだ。上司がとんでもない趣味の持ち主だと誤解したようだ。確かに、趣味なら悪い。



「賢い女だからね」

「一言言って下さいよぉ…焦った…」

「傷がないかしっかり見てあげて」

「はい」



筒の蓋を慎重に開ける。中に入っていたのは白い粉。…筒と共に調べれば、誰が売りさばいている者か知れるだろう。



「…田代くん」

「はい?」

「俺、副長のために死ぬなら怖くないんだけど、変かな」

「…いいえ」

「……」

「俺だって、うちのツートップのためなら」

「…そうだね」



そうじゃない。俺なら局長のためには死なない。たったひとりのあの人のためになら。



(…腐ってるなぁ)



澄んだ目をした人魚が羨ましい。それはそう、色んな意味で。
2006'04.18.Tue
可愛いね、他愛のない夢を見て。



「気になる?」

「あっ…」

「いいよ、見てて。そのままやろう」

「……」



銀八は二者面談の資料をめくる。窓の前に立っていたそよは、しばらく迷ってまた外を見た。その下では山崎主催のバトミントン大会が行われている。山崎主催と言っても優勝者を山崎が奢る、と言う沖田や土方が決めたルールがあるだけで、山崎は全くの被害者だ。

長い髪の後ろ姿が見つめているのは、そんな騒ぎをしているバカのひとり。あんな奴のどこがいいのかねぇ、先生の方がいい男なのに。後ろ姿は返事をしない。
2006'04.03.Mon
夢見たわけじゃなかったの。



私をただの女だと思っているのはこの人だけかもしれない。一国の姫の部屋に上がり込み、横柄な口調で飯、と一言。馬鹿じゃないの。



私が黙っていると舌打ちをして布団に寝転がる。派手な柄の着物の裾が太股まではだけた。脚だけでも傷だらけ。この細い体躯には幾ら傷があるのだろう。



逃げ回るこの人は気まぐれに顔を出す。何も言わない。黙ってするりと入ってきて、見つからぬうちに去っていく。



私も子どもだから、夢を見たいときもあったの。好きでもなかったあなただけど、私をさらってくれたら一生ついていくと思ったわ。



こっそり簡単なものを持って来てもらうように頼む。今日は食欲がなかったから大丈夫だろう。

私へもってくる食事だから、あの人を満足させる量ではないだろうけど。



「お前んとこくるといい飯が食えるな」

「…そうですか」

「…だからって飯だけ目的に来てるわけじゃねぇよ」

「……」



ならどういう意味なのか。

育ちなのか性格なのか、立ち振る舞いを裏切って綺麗な食べ方をする。食うか、と問われるので首を降った。



「そよ」

「……」

「お前俺に惚れただろう」

「ついて行きません」

「…言うと思ったけどな」



人をあざ笑うように喉の奥で笑い声を上げて、彼の長い指がキセルを撫でる。



「もう来ねぇ」



────言うと思った。

夢は見る前に終わってしまうの。
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