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言い訳置き場

言い訳を書いていきます。誤字の報告などあればありがたいです。 ※唐突にみゅネタややぎゅにおの外の人のかけ算が混ざるのでご注意下さい。 日常はリンクのブログから。

2025'01.19.Sun
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2006'08.07.Mon
(げっ)



どんと突き飛ばされてしりもちをついた。ぐいと唇を拭い、神楽は仁王立ちで銀八を見下ろす。



「バカにすんなヨ」

「神楽…」

「銀ちゃんのバカ!」



去り際にすねを思い切り蹴り飛ばされ、弁慶さえ泣く箇所を神楽に蹴られては、悶絶する他にない。銀八は埃っぽい廊下で身悶える。



キスをした。正確には、された。



神楽の思いを知ってはいたのだ。それを大人のずるさでやり過ごしてきた。四肢を伸ばして、冷たい廊下で体を冷やす。

夏休みに入ったが、彼の担任するクラスの大半は補習で学校に来ている。神楽も補習組だ。



(……生徒と……あ〜!)



何がまずいって、自分も惹かれてしまっている点が。

無人の廊下で頭を抱えた。
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2006'08.05.Sat
あっと思った瞬間は既に時遅し、伸ばした脚に獲物がかかった。



…じゃなかった。引っかかったのは女の子。

起き上がって腕からこぼしたものをかき集めているのを感じながら、高杉は狸寝入りをやめるタイミングを考える。転がってきた何かが手に触れて、思わず目を開けるとリップクリーム、それを取ろうとした彼女の手が一瞬触れた。



さらりと流れた黒髪が視界をよぎる。髪の間から覗いた目が、高杉の視線とかち合った。



(…うおっ)



誰につまづいてしまったのかわかった彼女は、リップクリームも残して逃げていく。高杉につまづいたときに擦りむきでもしたのか、若干足を気にした後ろ姿。



(……クリティカル)



内心ガッツポーズを決めて、高杉はリップクリームを拾って追いかけた。

おい、と声をかけた瞬間、彼女はかすかに悲鳴を上げてノート類をまた落とした。それを拾うのを手伝って、ついでにリップクリームも返す。彼女の脳裏によぎったのは「もりのくまさん」だったが、それは高杉の知るところではない。



「怪我してんじゃん」

「あ」

「悪かったな」

「い、いえっ、私…」



保健室行こうぜ、無理やり引っ張っていって既知の養護員に治療させた。困惑しながらも礼を言って彼女が帰るなり、高杉は表情を崩す。



「めっちゃ可愛くねぇ!?」

「…あれはやめとけ、貴様の手に負える相手じゃない。先祖は貴族だ殿様だと言う生粋のお姫様じゃ」

「まじで!?」

「……」



しまった、火をつけた。陸奥は頭を抱え、実はオタクというこの問題児がどこで脚を滑らせたのか考え始めた。
2006'08.03.Thu
山崎は地味なくせに足が速い。だけど別に陸上部にいるわけではなく、彼らと張り合って負ける程度の速さで、地味な特技だ。

非常に、便利。



「山崎ィ、パン買ってきて」

「……この時間から、あの激戦区へ行けと?」

「だからお前に頼んでるんじゃねぇか」

「……」

「お・ね・が・い」

「行ってきますッ」

「…あんなに必死になるほど俺のこと…」

「真っ青だったぞ」



土方のつっこみにウン知ってる、と可愛らしく応えてみれば、鬼だと罵られた。鬼はどっちだ。



「戻ったら上いるって言っとけ」

「…りょうか〜い」



そんなこと言わなくとも、今更じゃないか。勿論言ってやるつもりはない。土方を見送るついでに廊下を覗くと、山崎が走って戻ってきた。土方は一瞥しただけで先に行ってしまう。



「山崎ィ」

「はいっ!?」

「殺されてくんない」

「買ってきたのに何その仕打ち!」



笑いながら教室を見て、土方がいないとわかると山崎は廊下を走っていった。それと同じ速度で、恋に似たものも去っていく。



よく走る男だ────沖田は遅くはないが、早くもない。どちらかと言えば持久力はない方だ。

だからやめたのかもしれない。



(…走れる人間は、自由に見える)



角を曲がりそこねて転んだ山崎が見えた。
2006'08.01.Tue
座っていても定規を通したように真っ直ぐ伸びた背筋は、それだけでその人間性を表していた。それを思い出して鏡の前で意識してはみるものの、自分はどうも猫背だった。



(…卑屈)



明日から夏休みだ。とは言え山崎は補習で学校へ来ることになっているので、気分まで夏休みとは言い難い。型通りの夏休みルールを、既に生徒以上に浮かれている銀八に代わって土方が解説している。

斜め前、長い髪が肩にかかっている。自分も惰性で髪は伸びているが、あのようにはいかない。



(あ、また)



見た。教壇で銀八とやかましく口論する土方を、彼女は目で追い時々笑う。山崎には備わっていない、柔らかい笑顔だ。



(美人…)

「もういいっしょ、終わり!くれぐれも俺の手を煩わすことだけはしないように!合コンのメンバーが足りないときは呼ぶように!解散ッ!」



最低だとブーイングをしつつも、休みに浮かれる生徒はぞろぞろと帰っていく。



じっと見つめてしまっていた後ろ姿がすっと立ち上がり、山崎は何故だか椅子から転げ落ちた。派手な音が教室中に響き、大丈夫ですか、一番近くの彼女が一番早かった。機敏な動きで山崎のそばにしゃがみこみ、しこたまぶつけた後頭部をさするのを心配そうに見つめてくる。



「おいおい山崎くん、少ないんだから脳みそこぼさないように気をつけなさい」

「脳まで糖が達してる人に言われたくねースよ…あ、あの、大丈夫だから」

「そうですか?」

「おい、そんなんほったらかして帰るぞ」

「!」



山崎へ伸ばされかけていた手が引っ込み、彼女がすっと立ち上がる。ああ…綺麗だな。姿勢の美しい彼女は、既にメロメロに人のものだ。



「じゃあ山崎さん、新学期に。補習頑張ってね」

「…うん、徳川さんも、アレ」



アレ、を指さすと彼女は顔を真っ赤にした。再度土方に呼ばれ、彼女は手を振って教室を出ていく。



(…立てば芍薬座れば牡丹、歩く姿は百合の花…)
2006'07.12.Wed
生まれて初めて神へ跪いた。



今確かに、この手でひとりの人間を奪った。人生を、過去を、未来、命、心、



震える両手をかたく握り締めた。痛みを感じない。赤い両手。

熱かった血はすぐ冷えた。体の芯まで狂いそうに冷たい。



「ごくろーさん」

「……隊長」

「恨む相手はテメェの真上だ」



今日は非番だったはずの沖田が手ぬぐいを差し出す。うまく呼吸が出来ない。

真上、土方。そう、こんな話は聞いてない。



「バカだねィ、さっさと覚悟決めねぇから」

「……やるときは出来る子でしょ」

「よく言うぜ」



吐きそうだ。



空は見事な夕焼けだった。赤い銀河が俺を睨む。
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