言い訳置き場
言い訳を書いていきます。誤字の報告などあればありがたいです。 ※唐突にみゅネタややぎゅにおの外の人のかけ算が混ざるのでご注意下さい。 日常はリンクのブログから。
2013'02.06.Wed
「なんで女装で実習なんだ」
「なんでって、今回の実技は山田先生が担当だからだろ」
顔をしかめた竹谷に対し、久々知は涼しい顔で応えた。竹谷は深く溜息をつく。
「そんなことはわかってる。どうして女装限定なんだ。変化の術なら他になんだってあるだろ!?」
「今更だろ」
竹谷は隣を睨みつける。鏡を見ながら紅をさすその横顔を見ながら、お前はいいよな、と溜息をつけば、久々知は首をかしげる。その様子は竹谷から見れば嫌味にしか見えない。元々の整った顔立ちに、三郎が手を加えれば、どこからどう見ても女にしか見えない。それに対し、竹谷の方はといえば、どこをどう見ても「女装」にしか見えなかった。三郎には多少小奇麗にしたって無駄だ、と匙を投げられてしまったほどだ。
天然なのかわざとなのか、久々知は訳がわからない、といった顔をしている。三郎をあきらめて久々知を頼ってきたが、人選を間違えたかもしれない。
「竹谷は気にしすぎなんだ。伝子さんを見習えよ、なりきることが大事なんだ」
「そのなりきることができねーから苦労してるんだろうが。見かけだけでごまかせるやつとは難易度が違うんだよ」
「そこまで卑下することないだろ。こんなにかわいいのに」
「お前の目は節穴か」
下級生とは違い、体格はそうそう隠せるものではない。生物委員長として野山を駆け回っている竹谷は、女物の着物に収まるような体ではないのだ。
「そんなにか?」
「そんなにだろう。ちょちょっとするだけでかわいくなる兵子ちゃんとは違うんだよ」
「かわいいよ、竹子ちゃん」
「嘘つけ」
「信用ないなぁ」
ぐいと腕を引かれ、竹谷はそれにまかせて久々知と向き直る。くそ、なんでこんなにかわいく仕上がったやつにかわいいと言われなきゃならんのだ。馬鹿にされているとしか思えない。はっきりした目鼻立ちが、化粧でいつもよりも華やかになっている久々知が正面に迫る。こりゃ男性にお茶をごちそうしてもらう、なんて課題ちょろいだろうな、などとひがんでいるうちに、久々知の顔が迫った。
「え」
唇に触れるやわらかい感触。しっとりとまるでなじむようなそれは、実のところ、まったく知らないわけではない。しかし、これは。混乱しながらも思考よりも体が早く、久々知の体を突き飛ばす。しかし油断のせいかそこまで力は入らず、久々知の体が少し離れただけだった。
「な、え、おま」
「かわいいね」
「お、あ、おま」
「だからほら、容姿じゃないんだ。仕草や態度の問題だ」
にこりと笑う久々知は、なぜだか男らしく見え、それは言葉に恐ろしく説得力を与えた。
「嘘だろ……」
「嘘つきは竹子ちゃんの方じゃないか」
「はぁ?」
「おれがかわいいなんて、思ったことないだろ?」
きゅっと弧を描く、嘘つきだと言ったその唇の紅が乱れている。竹谷はばっと立ち上がり、着物の裾を翻して何も言わずに部屋を飛び出した。嘘つきは久々知の方じゃないか。このおれが、かわいいはずがない。廊下をがむしゃらに走った先で誰かにぶつかりそうになりたたらを踏む。それは学園では見たことのない美女だったが、竹谷、と呼ぶ声が鉢屋のものだった。
「お前も終わったのか。こっちはもういつでも出れるから……」
「な、なんだよ」
「……まーずいぶんかわいくしてもらっちゃって」
「はぁ!?」
「顔真っ赤。ま、その調子で男たぶらかすんだな」
「なんでって、今回の実技は山田先生が担当だからだろ」
顔をしかめた竹谷に対し、久々知は涼しい顔で応えた。竹谷は深く溜息をつく。
「そんなことはわかってる。どうして女装限定なんだ。変化の術なら他になんだってあるだろ!?」
「今更だろ」
竹谷は隣を睨みつける。鏡を見ながら紅をさすその横顔を見ながら、お前はいいよな、と溜息をつけば、久々知は首をかしげる。その様子は竹谷から見れば嫌味にしか見えない。元々の整った顔立ちに、三郎が手を加えれば、どこからどう見ても女にしか見えない。それに対し、竹谷の方はといえば、どこをどう見ても「女装」にしか見えなかった。三郎には多少小奇麗にしたって無駄だ、と匙を投げられてしまったほどだ。
天然なのかわざとなのか、久々知は訳がわからない、といった顔をしている。三郎をあきらめて久々知を頼ってきたが、人選を間違えたかもしれない。
「竹谷は気にしすぎなんだ。伝子さんを見習えよ、なりきることが大事なんだ」
「そのなりきることができねーから苦労してるんだろうが。見かけだけでごまかせるやつとは難易度が違うんだよ」
「そこまで卑下することないだろ。こんなにかわいいのに」
「お前の目は節穴か」
下級生とは違い、体格はそうそう隠せるものではない。生物委員長として野山を駆け回っている竹谷は、女物の着物に収まるような体ではないのだ。
「そんなにか?」
「そんなにだろう。ちょちょっとするだけでかわいくなる兵子ちゃんとは違うんだよ」
「かわいいよ、竹子ちゃん」
「嘘つけ」
「信用ないなぁ」
ぐいと腕を引かれ、竹谷はそれにまかせて久々知と向き直る。くそ、なんでこんなにかわいく仕上がったやつにかわいいと言われなきゃならんのだ。馬鹿にされているとしか思えない。はっきりした目鼻立ちが、化粧でいつもよりも華やかになっている久々知が正面に迫る。こりゃ男性にお茶をごちそうしてもらう、なんて課題ちょろいだろうな、などとひがんでいるうちに、久々知の顔が迫った。
「え」
唇に触れるやわらかい感触。しっとりとまるでなじむようなそれは、実のところ、まったく知らないわけではない。しかし、これは。混乱しながらも思考よりも体が早く、久々知の体を突き飛ばす。しかし油断のせいかそこまで力は入らず、久々知の体が少し離れただけだった。
「な、え、おま」
「かわいいね」
「お、あ、おま」
「だからほら、容姿じゃないんだ。仕草や態度の問題だ」
にこりと笑う久々知は、なぜだか男らしく見え、それは言葉に恐ろしく説得力を与えた。
「嘘だろ……」
「嘘つきは竹子ちゃんの方じゃないか」
「はぁ?」
「おれがかわいいなんて、思ったことないだろ?」
きゅっと弧を描く、嘘つきだと言ったその唇の紅が乱れている。竹谷はばっと立ち上がり、着物の裾を翻して何も言わずに部屋を飛び出した。嘘つきは久々知の方じゃないか。このおれが、かわいいはずがない。廊下をがむしゃらに走った先で誰かにぶつかりそうになりたたらを踏む。それは学園では見たことのない美女だったが、竹谷、と呼ぶ声が鉢屋のものだった。
「お前も終わったのか。こっちはもういつでも出れるから……」
「な、なんだよ」
「……まーずいぶんかわいくしてもらっちゃって」
「はぁ!?」
「顔真っ赤。ま、その調子で男たぶらかすんだな」
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