言い訳置き場
言い訳を書いていきます。誤字の報告などあればありがたいです。 ※唐突にみゅネタややぎゅにおの外の人のかけ算が混ざるのでご注意下さい。 日常はリンクのブログから。
2013'01.24.Thu
「うう〜、早く帰ってこないかなぁ」
タカ丸は首を伸ばして辺りを見渡すが、きり丸がここを離れてからさほど時間は経っていない。しかし不安で仕方ないタカ丸は、一時でも早くこの温もりから解放されたかった。腕に抱いたのは、すやすやと眠る赤ん坊。授業で助けられたお礼にアルバイトを手伝うとは言ったが、まさか子守を任されるとは思ってもいなかった。
「斉藤、今……何してるんだ?」
「あっ、久々知くん助けっ……」
親しんだ声に振り返れば、そこに立つのは委員会の先輩――に違いないが、その身を包むのは女の着物だ。質のいい着物にすぐに実習の関係なのだろうと気づくが、久々知の方はタカ丸を見て眉間にしわを寄せる。
「……まさか、お前」
「え?……ちっ、ちちち違うっ!違うよ!?」
「だよな、髪結いで忍者で父親なんてキャラ濃すぎて」
「キャラの問題じゃないと思うけど」
「きり丸か」
「うん。本人は犬の散歩中。まあ自分で手伝うって言ったんだから、しょうがないんだけど」
「ふうん……実習に出るから髪結いを頼もうと思ったんだが、これじゃできないな」
「えっ!するっ!やりたいっ!」
「……じゃあ、代わりに抱いてよう。任せていいか?」
「うんっ!」
タカ丸の前に回った久々知が手を差し出した。赤ん坊を預けると久々知は意外と慣れた様子でそれを抱き、眠る赤ん坊に優しい視線を向ける。
「じゃあ、道具取ってくるから」
「ああ、ちゃんと見てるよ」
久々知は赤ん坊から顔を上げずに応えた。その様子に少し戸惑ったが、タカ丸は道具を取りに部屋へ走る。普段の久々知はどうでもいいからとあまり髪を触らせてくれないのだ。この機会を逃してはならない。
急いで道具を集めて久々知の所へ戻ると、かすかだが歌声が聞こえた。見れば久々知が片手で抱いた赤ん坊の手を握り、小さな体を揺らしている。
「あっ、ごめん起きちゃった?」
「大丈夫だ」
歌声は久々知の子守歌だった。赤ん坊は久々知に揺らされて機嫌よくしている。庭を臨んで座り、赤ん坊を抱く久々知の姿はとても不思議な光景だった。面倒見のいい先輩ではあるが、無条件に優しいわけではない。後ろに回って髪に櫛を通しながら、なぜだか緊張してしまう。
「えーっと、どうします?」
「商家の娘なんだ。少しぐらい派手でもいい」
「メイクは?」
「あとで三郎に頼む」
「わかった」
「いい子だな、この子は」
久々知は赤ん坊の頬を寄せる。きゃっきゃっと無邪気に笑う赤ん坊に、久々知も柔らかい笑みを返した。
「……久々知くん、子ども好き?」
「おれ兄弟多いんだ。上にふたりと下に4人いる」
「えっ!意外!」
「みんなやんちゃばかりだ。こんな大人しい子はうちにはいないぞ」
笑顔で赤ん坊をあやす久々知を見ていると、抱くだけで精一杯だった自分が情けなくなる。
久々知の指を握る小さな手。あったかいな、久々知は胸に抱いた赤ん坊を揺らして笑う。それは女物の着物を着ているせいなのか、見たことのないほど柔らかい表情だった。
「なんか、久々知くん」
「ん?」
「お母さんみたいだね」
「……ほめ言葉ではないよな」
「えーん、なんて言えばいいのかわかんないんだけど。髪、これでいい?」
「ああ」
「……」
久々知は顔を上げずに応えた。よほど赤ん坊を抱けるのが嬉しいと見え、ずっと構っている。変な髪型にしてやろうか、とわずかによぎったが、彼が怒ると怖いことは知っているのでやめておく。手際よく終わらせて声をかけたが、久々知はやはり仕上がりの確認もせず礼を言った。
「斉藤は兄弟はないのか」
「うん、ひとりっ子」
道具を片づけ、隣に座って一緒に赤ん坊を覗き込む。つぶらな瞳がきょろきょろと世間を見回していて、タカ丸の方に手を伸ばすのでとっさき体を引いた。それを久々知がけらけらと肩を揺らした。
「ああ、こんなところに」
通りかかったのは鉢屋だった。すっかり落ち着いている久々知を見て溜息をつく。
「あとは私とお前だけだ。先に終わらせてしまうからとっとと戻ってこい」
「はいはい。いい子でな」
最後にもう一度頬を寄せ、久々知はタカ丸の腕に赤ん坊を戻した。慌てて姿勢を正すタカ丸を笑い、立ち上がった久々知が体を傾ける。
「お前もいい子にしてろよ」
こつん、と額がぶつかる。ぽかんとするタカ丸には目もくれず、久々知は赤ん坊に手を振って歩きだした。放心したままその後ろ姿をただ眺めていたが、鉢屋が溜息をついたのではっと意識を取り戻す。
「気の毒だから言っておく。あいつは堅物に見えて、相当ずるがしこいぞ」
「あいつって、兵助くん?」
「本気になったらどんな手だって使う。赤ん坊でもな」
「……そ、それは」
ぼくが単純だってことでしょうか。タカ丸が小さくこぼした言葉に応えるように、腕の中の赤ん坊が笑い声をあげた。
タカ丸は首を伸ばして辺りを見渡すが、きり丸がここを離れてからさほど時間は経っていない。しかし不安で仕方ないタカ丸は、一時でも早くこの温もりから解放されたかった。腕に抱いたのは、すやすやと眠る赤ん坊。授業で助けられたお礼にアルバイトを手伝うとは言ったが、まさか子守を任されるとは思ってもいなかった。
「斉藤、今……何してるんだ?」
「あっ、久々知くん助けっ……」
親しんだ声に振り返れば、そこに立つのは委員会の先輩――に違いないが、その身を包むのは女の着物だ。質のいい着物にすぐに実習の関係なのだろうと気づくが、久々知の方はタカ丸を見て眉間にしわを寄せる。
「……まさか、お前」
「え?……ちっ、ちちち違うっ!違うよ!?」
「だよな、髪結いで忍者で父親なんてキャラ濃すぎて」
「キャラの問題じゃないと思うけど」
「きり丸か」
「うん。本人は犬の散歩中。まあ自分で手伝うって言ったんだから、しょうがないんだけど」
「ふうん……実習に出るから髪結いを頼もうと思ったんだが、これじゃできないな」
「えっ!するっ!やりたいっ!」
「……じゃあ、代わりに抱いてよう。任せていいか?」
「うんっ!」
タカ丸の前に回った久々知が手を差し出した。赤ん坊を預けると久々知は意外と慣れた様子でそれを抱き、眠る赤ん坊に優しい視線を向ける。
「じゃあ、道具取ってくるから」
「ああ、ちゃんと見てるよ」
久々知は赤ん坊から顔を上げずに応えた。その様子に少し戸惑ったが、タカ丸は道具を取りに部屋へ走る。普段の久々知はどうでもいいからとあまり髪を触らせてくれないのだ。この機会を逃してはならない。
急いで道具を集めて久々知の所へ戻ると、かすかだが歌声が聞こえた。見れば久々知が片手で抱いた赤ん坊の手を握り、小さな体を揺らしている。
「あっ、ごめん起きちゃった?」
「大丈夫だ」
歌声は久々知の子守歌だった。赤ん坊は久々知に揺らされて機嫌よくしている。庭を臨んで座り、赤ん坊を抱く久々知の姿はとても不思議な光景だった。面倒見のいい先輩ではあるが、無条件に優しいわけではない。後ろに回って髪に櫛を通しながら、なぜだか緊張してしまう。
「えーっと、どうします?」
「商家の娘なんだ。少しぐらい派手でもいい」
「メイクは?」
「あとで三郎に頼む」
「わかった」
「いい子だな、この子は」
久々知は赤ん坊の頬を寄せる。きゃっきゃっと無邪気に笑う赤ん坊に、久々知も柔らかい笑みを返した。
「……久々知くん、子ども好き?」
「おれ兄弟多いんだ。上にふたりと下に4人いる」
「えっ!意外!」
「みんなやんちゃばかりだ。こんな大人しい子はうちにはいないぞ」
笑顔で赤ん坊をあやす久々知を見ていると、抱くだけで精一杯だった自分が情けなくなる。
久々知の指を握る小さな手。あったかいな、久々知は胸に抱いた赤ん坊を揺らして笑う。それは女物の着物を着ているせいなのか、見たことのないほど柔らかい表情だった。
「なんか、久々知くん」
「ん?」
「お母さんみたいだね」
「……ほめ言葉ではないよな」
「えーん、なんて言えばいいのかわかんないんだけど。髪、これでいい?」
「ああ」
「……」
久々知は顔を上げずに応えた。よほど赤ん坊を抱けるのが嬉しいと見え、ずっと構っている。変な髪型にしてやろうか、とわずかによぎったが、彼が怒ると怖いことは知っているのでやめておく。手際よく終わらせて声をかけたが、久々知はやはり仕上がりの確認もせず礼を言った。
「斉藤は兄弟はないのか」
「うん、ひとりっ子」
道具を片づけ、隣に座って一緒に赤ん坊を覗き込む。つぶらな瞳がきょろきょろと世間を見回していて、タカ丸の方に手を伸ばすのでとっさき体を引いた。それを久々知がけらけらと肩を揺らした。
「ああ、こんなところに」
通りかかったのは鉢屋だった。すっかり落ち着いている久々知を見て溜息をつく。
「あとは私とお前だけだ。先に終わらせてしまうからとっとと戻ってこい」
「はいはい。いい子でな」
最後にもう一度頬を寄せ、久々知はタカ丸の腕に赤ん坊を戻した。慌てて姿勢を正すタカ丸を笑い、立ち上がった久々知が体を傾ける。
「お前もいい子にしてろよ」
こつん、と額がぶつかる。ぽかんとするタカ丸には目もくれず、久々知は赤ん坊に手を振って歩きだした。放心したままその後ろ姿をただ眺めていたが、鉢屋が溜息をついたのではっと意識を取り戻す。
「気の毒だから言っておく。あいつは堅物に見えて、相当ずるがしこいぞ」
「あいつって、兵助くん?」
「本気になったらどんな手だって使う。赤ん坊でもな」
「……そ、それは」
ぼくが単純だってことでしょうか。タカ丸が小さくこぼした言葉に応えるように、腕の中の赤ん坊が笑い声をあげた。
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