言い訳置き場
言い訳を書いていきます。誤字の報告などあればありがたいです。 ※唐突にみゅネタややぎゅにおの外の人のかけ算が混ざるのでご注意下さい。 日常はリンクのブログから。
2013'08.27.Tue
「アルミン、そこ終わったら……何見てんだ?」
「……ジャン、僕の前にもおつき合いしてた人いるんだよね」
しゃがみ込んだ後姿から嫌な予感がして、ジャンは思わず溜息をつきそうになる。眩しいほどの金髪黒いオーラを放って見えるほどのお怒りだ。
ジャンの部屋は大掃除の途中だった。ひとり暮らしを始めたときからつき合ってきたテレビが壊れ、おまけに本棚が決壊して使いものにならなくなったのだ。家電は同時に壊れるなどというがそんなに出費はできない、と嘆いていると、職場の先輩が電子レンジを譲ってくれることになったのだ。今まで使っていたものも確かにそろそろ怪しく、いっそ壊れてしまえば変えられるのにと思っていたのでありがたい言葉だ。
そんなわけで模様替えのついでに大掃除、ということで、休日返上で朝から働いていたのだが、手伝ってくれていたアルミンもついに集中力が途切れたらしい。日頃職業的に肉体労働をしているジャンとは体力の差は明白だ。できるだけ大きなものはジャンがしていたのだが、そろそろ休憩も考えていたところだった。
本棚の隙間から、一体何が出てきたというのだろう。ジャンが以前女性とつき合っていたというのは随分前のことで、今更長い髪が出てきたりということはないと思うのだが。
「どうした急に」
アルミンの後ろから覗きこめば、その手にあるのは指輪だった。げっ、と呻きそうになるのをこらえる。それは嫌というほどはっきり記憶している代物だ。
それなりに長くつき合った彼女だった。この部屋で大喧嘩をして別れたのだが、その時に指輪を投げつけられたのだ。大喧嘩とはいえどちらかがはっきりと悪かったというわけではなく、すれ違いの結果での別れだ。ジャンはどこに消えたのかわからない小さな貴金属を探すほどすぐにショックから回復はしなかったし、よりが戻ったら新しいのを買おうと思っていた。彼女が戻ってくることはなかったけれど。
勿論、今のジャンには何の未練もない。今ここで殺気を放つ、本来なら穏やかでかわいらしい子とおつき合いをしているのだ。今更今までの彼女が泣いてすがってきても突き放す自信があるぐらいには惚れている。
しかし誰かとつき合うという経験がジャンが初めてだというアルミンは、少しのことでも穏やかではいられないらしい。一体どれほど信用がないのかと少し悲しくもあるが、幼い嫉妬を見せられるのも満更ではなかった。少々面倒ではあるので、そう頻繁では困るけれども。
ジャンを一切振り返らず、アルミンは黙ったまま指輪を自分の指に通す。それがちゃっかり左手の薬指なのは、何を考えてなのだろうか。その指で正解ではあるのだが、ジャンとしては複雑だ。
指輪は勿論途中の節で止まってしまう。アルミンがいくらジャンと比べて華奢だとはいえ、――彼は立派な成人男子だ。同僚のように肉体労働をしているサシャやユミルならいざ知らず、普通のOLだった彼女の指と比べればアルミンの指の方が多少なりともたくましいだろう。
「あー、アルミン?」
「……頭ではわかるんだ。ジャンは今は僕を見てくれているし」
「ああ」
「でも、もっと小さくてかわいい子がジャンの側にいたんだなと思うと、ちょっと悲しい」
「おっ……まえなぁ!」
「わっ」
押し倒さんばかりの勢いでアルミンに抱きついた。さっきまでまとっていた殺気を引っ込めて、しゅんと肩を落としたアルミンがかわいくないはずがない。抱きしめてその髪を乱しながら丸い頭を撫でる。犬でも撫でるような勢いにアルミンに押し返されるが離さない。
「お前ほどかわいいやつがいるわけないだろう」
「……それ、いつも言ってたりして」
「言わねえよ」
「ふふ、ごめん、変なこと言って」
機嫌の直ったらしいアルミンから少し離れ、その手から指輪を引き抜いてゴミ箱に投げる。カランと景気のいい音を立てておさまった指輪にぽかんとして、アルミンが少し困ったようにジャンを見上げた。
「あの」
「指輪、買いに行くか」
「いっ、いい!いいよ!あんなの僕似合わないし!」
「嫌ならつけなくてもいい。持っててくれたらいい」
「……じゃあ、今じゃなくていい。僕も働き出して、ジャンに指輪を贈れるぐらい稼げるようになってから、僕に指輪をちょうだい」
「何年待たせる気だよ」
笑いながらキスをする。くすぐったそうに受け止められたキスは柔らかい。
「でもやっぱり買いに行く」
「えっ」
「安いのでいい。虫除けだ」
「……あー、うー……」
それはもう大丈夫、とアルミンは突然赤くなって俯いた。学生のアルミンには接する人が多いだろうと前から気にしていたのだが、アルミンの反応が思っていたものではないので気になった。頬を撫でて上を向かせると、視線をそらして小さくつぶやく。
「学祭の時に撮った写真に、キスマーク見えてるの混ざってて……」
「……あー、それは」
ジャンの知らぬところでさぞからかわれただろう。しかし恥じらう姿がかわいくて、反省する気は全く起きない。首筋に唇を当てると弾かれたように突き飛ばされる。しかし倒れそうになったのはアルミンのせいで、慌てて腕を掴んで引き留めた。
「もう!」
「ごめんって。ちょっと休憩するか。大体場所も作れたし、飯食いに行って一緒に本棚見に行こうぜ」
「あ、うん」
一緒に出掛けるのは久しぶりだ。アルミンが頬を綻ばせるのが愛しくて、やはりもう少し時間を作って出かけたいと思う。
食事の帰りにアクセサリーショップを通りかかって、中に引きこもうとすると真っ赤な顔で逃げられた。それをからかって追っていると、本屋に逃げ込んだアルミンが棚の前から動かなくなる。手に取ったそれを開き、ぱらぱらとページを送った後、一ページ目から開き直すので溜息をついて取り上げた。
「あっ」
「誰かさんには指輪よりこっちの方がいいようで」
「!」
いいから!と慌てるアルミンを無視してレジに向かう。家具屋に行くのにアルミンと一緒でよかったと思った。きっと棚に収まるのは、アルミンの本ばかりになるだろう。
「……ジャン、僕の前にもおつき合いしてた人いるんだよね」
しゃがみ込んだ後姿から嫌な予感がして、ジャンは思わず溜息をつきそうになる。眩しいほどの金髪黒いオーラを放って見えるほどのお怒りだ。
ジャンの部屋は大掃除の途中だった。ひとり暮らしを始めたときからつき合ってきたテレビが壊れ、おまけに本棚が決壊して使いものにならなくなったのだ。家電は同時に壊れるなどというがそんなに出費はできない、と嘆いていると、職場の先輩が電子レンジを譲ってくれることになったのだ。今まで使っていたものも確かにそろそろ怪しく、いっそ壊れてしまえば変えられるのにと思っていたのでありがたい言葉だ。
そんなわけで模様替えのついでに大掃除、ということで、休日返上で朝から働いていたのだが、手伝ってくれていたアルミンもついに集中力が途切れたらしい。日頃職業的に肉体労働をしているジャンとは体力の差は明白だ。できるだけ大きなものはジャンがしていたのだが、そろそろ休憩も考えていたところだった。
本棚の隙間から、一体何が出てきたというのだろう。ジャンが以前女性とつき合っていたというのは随分前のことで、今更長い髪が出てきたりということはないと思うのだが。
「どうした急に」
アルミンの後ろから覗きこめば、その手にあるのは指輪だった。げっ、と呻きそうになるのをこらえる。それは嫌というほどはっきり記憶している代物だ。
それなりに長くつき合った彼女だった。この部屋で大喧嘩をして別れたのだが、その時に指輪を投げつけられたのだ。大喧嘩とはいえどちらかがはっきりと悪かったというわけではなく、すれ違いの結果での別れだ。ジャンはどこに消えたのかわからない小さな貴金属を探すほどすぐにショックから回復はしなかったし、よりが戻ったら新しいのを買おうと思っていた。彼女が戻ってくることはなかったけれど。
勿論、今のジャンには何の未練もない。今ここで殺気を放つ、本来なら穏やかでかわいらしい子とおつき合いをしているのだ。今更今までの彼女が泣いてすがってきても突き放す自信があるぐらいには惚れている。
しかし誰かとつき合うという経験がジャンが初めてだというアルミンは、少しのことでも穏やかではいられないらしい。一体どれほど信用がないのかと少し悲しくもあるが、幼い嫉妬を見せられるのも満更ではなかった。少々面倒ではあるので、そう頻繁では困るけれども。
ジャンを一切振り返らず、アルミンは黙ったまま指輪を自分の指に通す。それがちゃっかり左手の薬指なのは、何を考えてなのだろうか。その指で正解ではあるのだが、ジャンとしては複雑だ。
指輪は勿論途中の節で止まってしまう。アルミンがいくらジャンと比べて華奢だとはいえ、――彼は立派な成人男子だ。同僚のように肉体労働をしているサシャやユミルならいざ知らず、普通のOLだった彼女の指と比べればアルミンの指の方が多少なりともたくましいだろう。
「あー、アルミン?」
「……頭ではわかるんだ。ジャンは今は僕を見てくれているし」
「ああ」
「でも、もっと小さくてかわいい子がジャンの側にいたんだなと思うと、ちょっと悲しい」
「おっ……まえなぁ!」
「わっ」
押し倒さんばかりの勢いでアルミンに抱きついた。さっきまでまとっていた殺気を引っ込めて、しゅんと肩を落としたアルミンがかわいくないはずがない。抱きしめてその髪を乱しながら丸い頭を撫でる。犬でも撫でるような勢いにアルミンに押し返されるが離さない。
「お前ほどかわいいやつがいるわけないだろう」
「……それ、いつも言ってたりして」
「言わねえよ」
「ふふ、ごめん、変なこと言って」
機嫌の直ったらしいアルミンから少し離れ、その手から指輪を引き抜いてゴミ箱に投げる。カランと景気のいい音を立てておさまった指輪にぽかんとして、アルミンが少し困ったようにジャンを見上げた。
「あの」
「指輪、買いに行くか」
「いっ、いい!いいよ!あんなの僕似合わないし!」
「嫌ならつけなくてもいい。持っててくれたらいい」
「……じゃあ、今じゃなくていい。僕も働き出して、ジャンに指輪を贈れるぐらい稼げるようになってから、僕に指輪をちょうだい」
「何年待たせる気だよ」
笑いながらキスをする。くすぐったそうに受け止められたキスは柔らかい。
「でもやっぱり買いに行く」
「えっ」
「安いのでいい。虫除けだ」
「……あー、うー……」
それはもう大丈夫、とアルミンは突然赤くなって俯いた。学生のアルミンには接する人が多いだろうと前から気にしていたのだが、アルミンの反応が思っていたものではないので気になった。頬を撫でて上を向かせると、視線をそらして小さくつぶやく。
「学祭の時に撮った写真に、キスマーク見えてるの混ざってて……」
「……あー、それは」
ジャンの知らぬところでさぞからかわれただろう。しかし恥じらう姿がかわいくて、反省する気は全く起きない。首筋に唇を当てると弾かれたように突き飛ばされる。しかし倒れそうになったのはアルミンのせいで、慌てて腕を掴んで引き留めた。
「もう!」
「ごめんって。ちょっと休憩するか。大体場所も作れたし、飯食いに行って一緒に本棚見に行こうぜ」
「あ、うん」
一緒に出掛けるのは久しぶりだ。アルミンが頬を綻ばせるのが愛しくて、やはりもう少し時間を作って出かけたいと思う。
食事の帰りにアクセサリーショップを通りかかって、中に引きこもうとすると真っ赤な顔で逃げられた。それをからかって追っていると、本屋に逃げ込んだアルミンが棚の前から動かなくなる。手に取ったそれを開き、ぱらぱらとページを送った後、一ページ目から開き直すので溜息をついて取り上げた。
「あっ」
「誰かさんには指輪よりこっちの方がいいようで」
「!」
いいから!と慌てるアルミンを無視してレジに向かう。家具屋に行くのにアルミンと一緒でよかったと思った。きっと棚に収まるのは、アルミンの本ばかりになるだろう。
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