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言い訳置き場

言い訳を書いていきます。誤字の報告などあればありがたいです。 ※唐突にみゅネタややぎゅにおの外の人のかけ算が混ざるのでご注意下さい。 日常はリンクのブログから。

2025'01.19.Sun
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2012'07.26.Thu
目が覚めた。伊助はその瞬間には布団から飛び出し、同室の庄左ヱ門が起きるほどの勢いで部屋の戸を開ける。

「晴れたっ!」

「……先にご飯食べるんだよ」

「うんっ」

伊助はぱぱっと着替えを済ませて布団もあげ、あっという間に部屋を飛び出していった。庄左ヱ門は目をこすりながら外を見る。朝日が照らす庭では小鳥の声がして、新しい朝を歓迎しているのは伊助だけではなかったのだと言っているようだ。

「いい天気だなぁ……」



部屋を飛び出した伊助は真っ先に食堂に来ていた。まだ時間は早く、食堂には低学年の姿はない。五年生の先輩がそろっているのを見つけ、朝食を受け取る前に机に向かう。長い実習に行っていたが、今日が帰りだったのか。

「久々知先輩!」

「伊助か、早いな。こっちはさっき着いたばかりだ」

「お帰りなさい」

委員会の先輩である久々知は少し疲れた様子ではあったが、伊助に笑顔を見せた。周りの五年生も変わらずに笑顔で、誰も怪我をしなかったようで安心する。

「こんなに早くからどうしたんだ?今日は休みだろ」

「こんな洗濯日和にゆっくり寝ていられません!」

「……ああ」

ここ数日天気が不安定で、雨が続いていた。久々知の苦笑の意味がわからず伊助は首を傾げたが、久々知は気にするなと笑う。

「忙しいんだろ。早く食べちゃいな」

「あっ、失礼します!」

くるっと体を返して朝食を貰いにいく伊助の背中に、五年生たちは思わず笑みを漏らした。



食事を終えた伊助はすぐに部屋へ戻った。ここ数日のせいで溜まってしまった洗濯物を両腕に抱える。

「庄ちゃんのもあとで持ってきてね!」

「うん……」

どうやら二度寝していたらしい庄左ヱ門は寝ぼけた声で答えた。あとで取りに来た方がいいかもしれない。伊助は苦笑しながら部屋を出た。晴れ渡る青空を笑顔で見上げる。待ちに待った、洗濯日和だ。

井戸までやって来て気合いを入れる。今日は徹底的に、思う存分洗濯をするのだ!



クラスメイトたちが億劫がる掃除や洗濯は、伊助は嫌いではなかった。きれいなことは気持ちがいい。先日の雨で汚してしまった装束もきれいに汚れを落とし、いい気分で干しに向かった。その頃になって他の一年生たちが起きてくる。長屋からの挨拶にご機嫌で応えると、彼らは誰も理由を聞かなかった。

風にはためく洗濯物を満足げに見上げ、伊助ははっとひらめいた。実習から帰った久々知は疲れているだろうから、代わりに洗濯物を預かろう。彼が不在の間、火薬委員会は大混乱であった。日頃いかに久々知が支えてくれているのかを痛感し、久々知が戻ったら今までのお礼をしようと思っていたのだ。

そうと決まれば伊助はすぐに五年長屋へ走った。久々知の部屋は知っている。土井からの伝達事項を伝えにきたことがあるその部屋を訪ねると、出てきたのは同室の尾浜の方だった。

「久々知先輩は……」

「死んでる」

「えっ」

「ほら」

開け放された室内を見ると、ぞんざいに広げられた布団に突っ伏した久々知の姿があった。着替えもしないまま眠っているようだ。

「あの、久々知先輩の制服を洗って差し上げようと思ったのですが」

「臭いよ〜?」

「大丈夫です!でもお休み中なら」

「ちょっと待ってて」

尾浜は久々知に近づき、寝ている久々知の体をひっくり返す。伊助が止める間もなく、尾浜はためらいなく久々知の服を引きはがした。襲いかかっているとも言えるような乱暴さだが、久々知が覚醒する気配はない。相当疲れているようだ。

尾浜は本体は裸で転がして、着物を手に伊助の元へ戻ってくる。一度臭いをかいでみて、しかめっ面で伊助を見た。

「ほんとにいいの?」

「はいっ!あの、よかったら尾浜先輩のも」

伊助が言い終わるよりも早く尾浜は褌一枚になった。どうやら五年生ともなると、実習の疲れは相当なものになるらしい。受け取った着物からは汗や土、そして火薬の匂いかする。



汚れた着物を抱えて井戸に戻り、伊助は洗濯を再開した。小さなほつれなども気になって、乾いたらきれいに直して返そう、などと思いながら、汚れた水を何度も換える。五年生ともなれば体が大きく、当然着物も大きい。簡単に引き受けすぎただろうか、と尾浜の分をちらりと見て考える。しかし日が高いうちに干してしまわなくては乾かない。

「伊助!」

「あ、三郎次!……先輩、なんですか?」

顔を上げると二年の池田が立っている。眉間に皺を寄せて、伊助を睨むように見ていた。その瞬間、今日は久々知が戻る前にもう一度硝煙倉の掃除をする予定にしていたことを思い出す。

「何してんだよ!タカ丸さん心配してるぞ!」

「すみませんっ!洗濯日和だったので、つい……」

いつもはいがみ合ってしまう三郎次だが、今日ばかりは自分に非がある。三郎次は更に言葉を続けようとして、伊助の手元に気がついた。伊助が握るその色は、学年の生徒ならば何年生のものかすぐわかる。

「久々知先輩、戻られてるのか」

「はい。今はお休みになられてます。あの、これ干したらすぐに行きますので!」

「……もうふたりで片づけるからいい。お前はそれをやっちゃえよ」

「いえ、気になるので行きます!」

「お前なぁ!」

「だってタカ丸さん掃除下手なんですもん!」

「はっきり言うなよ……」

顔をしかめながら好きにしろ、とぼやいて戻っていく三郎次の背中を見送り、伊助は洗濯を再開した。桶の水は濁って、制服の汚れを物語る。あの優秀な久々知がぐったりするほどの実習とは、一体どんなものなのだろう。一年生の自分には全く想像つかない。そうして経験を積んで強くなった者は、忍術学園を卒業するのだ。

ふと寂しくなって、伊助は手を止めてじっと濃紺を見る。言い表せないもの悲しさに首を振り、汚れた水を捨てた。



洗濯物を干した頃に久々知がのそりとやってきた。予備の制服をきちんと着込んではいるが、その目はまだ少し眠そうである。

「伊助、勘右衛門から聞いた。悪いな」

「いえ、いつもお世話になってるんだからこれぐらい。それに洗濯は好きですから!」

「ありがとう。正直に言うと助かる。伊助はいい子だな」

風にはためく己の制服を見て、久々知は伊助の頭を撫でた。ほめられるようなことをした覚えはないからくすぐったいが、素直に嬉しい。

「ぼく、決めました」

「ん?」

「これからタカ丸さんが実習に行った後も、疲れていたらお洗濯を手伝います!」

「……助かるだろうな」

久々知はしみじみと言葉を噛み締める。それからいたずらっぽく笑い、三郎次は?と問うてきた。伊助も同じように笑って返す。

「仕方ないから洗ってあげますよ!」
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