言い訳置き場
言い訳を書いていきます。誤字の報告などあればありがたいです。 ※唐突にみゅネタややぎゅにおの外の人のかけ算が混ざるのでご注意下さい。 日常はリンクのブログから。
2012'08.02.Thu
「ごめんっ!」
「いや、大丈夫……」
鞄から飛び散ったノート類を眺め、ペンケースの中身が飛び散らなかっただけましだと左近は溜息をつく。左近とぶつかってしまった女子生徒はこれが左近の日常生活だとはつゆとも思わず、丁寧に謝ってくれる。それを適当にこなしながら、左近はノートをかき集めた。
「何やってんだ」
「いて」
ぱこんと何かで叩かれ、振り返るとノートを手にした三郎次が立っている。失礼なクラスメイトからノートを奪い返し、左近は黙ってそれを鞄にねじ込んだ。三郎次はその態度に顔をしかめたが、大きく息を吸って左近が立ち上がるのを待つ。そのまま行ってしまいそうになる左近を三郎次は腕を引いて引き留めた。
「ごめん!」
「別に!悪いのはぼくだから!」
「俺が悪かったに決まってんだろ!」
「だからもういいって!」
「素直に聞けよ!かわいくねーな!」
「どーせかわいくないですぅ」
「お前ってほんっと……やめた。なんで謝りにきて喧嘩しなくちゃなんねぇんだ」
「……」
「悪かった」
「……アイス」
「コンビニ」
「31」
「わーったよ!帰りにな!」
「よし、許す」
ふたりのやりとりを見ていた女子生徒は立ち上がり、恐る恐るとばかりに口を開いた。
「三郎次の彼女?」
「「違います」」
川西左近の最近の悩みはこれである。三郎次とは幼稚園に通っていた頃からの腐れ縁だ。しかし中学にあがってから、何度この問いを聞いただろう。男女間の友情を成立させたくない組織でもあるのだろうか。慎ましやかに日々を送りたい左近と違い、三郎次は水泳部のエースである。謙虚だとか謙遜だとか、そんな言葉とは無縁の彼はその気がなくてもよく目立った。その三郎次が下の学年に彼女がいるのをひた隠しにしているお陰で、周囲の勘違いはなくならない。天と地がひっくり返っても、左近が三郎次に恋心を抱くことはないだろう。
「何いちゃいちゃしてたの?」
「してない!」
知っている癖にからかってくるユキを睨みつけるが、けらけらと笑われるだけだ。
「お弁当持っていくから一緒に食べようよ。左近にきてもらったら途中でお弁当ぶちまけそうだし」
「乱太郎はどうしたんだよ」
「は組の連中に取られちゃった」
「……四郎兵衛も呼んできてよ」
前科持ちの左近は何も言い返せずに顔をしかめた。ユキを待つ間に左近は自分の席に戻り、前の席の机を借りてくっつける。
「左近」
「何?」
振り返ると久作だ。英語見せろ、と荒っぽい物言いは相手を選ぶ久作らしい。ノートを取り出して広げれば、久作も自分のノートを開いて見比べている。左近も弁当を取り出しながら一緒にのぞき込んだ。
「どう?」
「お前の訳大ざっぱすぎないか?」
「前これぐらいで大丈夫だったよ。会話だし」
「単語の訳おかしくないか?」
「え〜?ちゃんと調べたよ」
「今日の弁当誰?」
「お母さん。……ん?」
左近が辞書を取り出しながら顔を上げると、久作がさっさと弁当の包みを解いている。あっという間にふたが開けられ、唐揚げが消えた。
「何してんだよ!」
「ケチケチすんなよ」
「せめて一言断れよ」
「食べていい?」
「事後報告ですらないのかよ。だめに決まってるだろ、これはぼくのお弁当!ほら訳合ってる!」
「もう一個だけくれよ。辞書貸せ、これ、ほら成句乗ってる」
「唐揚げなくなるだろ!これは使い方違わない?」
「もらいっ」
「あっ!」
「あのさぁ」
「あ、お帰り」
戻ってきたユキを見て、久作は立ち上がって椅子を譲った。弁当を前にしかめっ面をしている左近を見て首を傾げる。
「今廊下であんたたちふたりがつき合ってるのかって聞かれたんだけど」
「「違います」」
「って言っといたわ。しろべーはパン買ってから来るって」
「次屋の送り迎えだな……」
「ここの訳ユキちゃんどうした?」
「ん〜?……これと同じ」
「ほらぁ!久作が違うんだって」
「え〜?三郎次捕まえてくる」
「あっ!」
最後にプチトマトを奪って久作は逃げていく。
「ぼくのお弁当が貧相に……」
「まあお似合いに見えなくはないわね」
ユキは左近の正面に座って弁当を広げた。左近も促されてしぶしぶ箸を取る。四郎兵衛は多分遅いだろう。
「女子ってどうしてすぐくっつけたがるんだろう」
「三郎次と久作で左近を取り合ってるらしいって噂も聞いたことあるわよ」
「はぁ!?」
「ま、久作なんかガード高いしね、みんな妬いてんじゃない。いただきます!」
「ぼくらをどう見たらカップルに見えるんだか」
「左近の恋愛運は悪くないんだけどなぁ」
ユキはおかずのイカリングを通して左近を見る。仏頂面を向けてやるとユキは笑って口に運んだ。
「それずっと言ってるけどあてになるの?」
「結構当たるようにはなってきたけどまだ勉強中だからね」
ユキの占いはそこそこ当たるらしい。左近はきょうみがないので、あまり興味がないので詳しく聞いたことはなかった。
「長いおつき合いをするわよ。逆に言うと、その人を逃したら一生縁がないわね」
「それは嫌だ」
「あら。男子に興味のない左近でもそう思うの」
「行き遅れに見られるのは嫌だ」
「見栄っ張り」
ユキは笑いながら焦げた卵焼きをを分けてくれる。彼氏の乱太郎は捕まらなかったようだが、彼の体を心配したクラスメイトが救出したのだろう。自分で作るのやめたら、思わず呟くと机の下で蹴られた。
「ごめん〜遅くなっちゃった」
「お帰りしろべー」
「左近、また三郎次と喧嘩してたの?」
違うクラスの四郎兵衛にまでバレている。隣の椅子を引っ張ってきて四郎兵衛も加わり、ようやく落ち着いて昼食が始まる。
「あいつが悪いんだよ!ぼくのノート借りたまま返すの忘れててさ、休み時間ずっと探してたのにどこにもいないし、見つからないまま授業始まっちゃってぼくがノート忘れたことになったんだから」
「それ何時間目?」
「3時間目」
「ぼくその前の休み時間、三郎次見たよ。一年生の教室の方にいた」
「あいつ……帰りにアイスおごらせることにしたから四郎兵衛も一緒に行こう!」
「わーい!アイス食べる!」
「……左近が恋愛するところなんて、想像つかないわね」
「こんなかわいくない女で、恋愛できるとも思ってないよ」
「泣きついてくる日が楽しみだわ」
「いや、大丈夫……」
鞄から飛び散ったノート類を眺め、ペンケースの中身が飛び散らなかっただけましだと左近は溜息をつく。左近とぶつかってしまった女子生徒はこれが左近の日常生活だとはつゆとも思わず、丁寧に謝ってくれる。それを適当にこなしながら、左近はノートをかき集めた。
「何やってんだ」
「いて」
ぱこんと何かで叩かれ、振り返るとノートを手にした三郎次が立っている。失礼なクラスメイトからノートを奪い返し、左近は黙ってそれを鞄にねじ込んだ。三郎次はその態度に顔をしかめたが、大きく息を吸って左近が立ち上がるのを待つ。そのまま行ってしまいそうになる左近を三郎次は腕を引いて引き留めた。
「ごめん!」
「別に!悪いのはぼくだから!」
「俺が悪かったに決まってんだろ!」
「だからもういいって!」
「素直に聞けよ!かわいくねーな!」
「どーせかわいくないですぅ」
「お前ってほんっと……やめた。なんで謝りにきて喧嘩しなくちゃなんねぇんだ」
「……」
「悪かった」
「……アイス」
「コンビニ」
「31」
「わーったよ!帰りにな!」
「よし、許す」
ふたりのやりとりを見ていた女子生徒は立ち上がり、恐る恐るとばかりに口を開いた。
「三郎次の彼女?」
「「違います」」
川西左近の最近の悩みはこれである。三郎次とは幼稚園に通っていた頃からの腐れ縁だ。しかし中学にあがってから、何度この問いを聞いただろう。男女間の友情を成立させたくない組織でもあるのだろうか。慎ましやかに日々を送りたい左近と違い、三郎次は水泳部のエースである。謙虚だとか謙遜だとか、そんな言葉とは無縁の彼はその気がなくてもよく目立った。その三郎次が下の学年に彼女がいるのをひた隠しにしているお陰で、周囲の勘違いはなくならない。天と地がひっくり返っても、左近が三郎次に恋心を抱くことはないだろう。
「何いちゃいちゃしてたの?」
「してない!」
知っている癖にからかってくるユキを睨みつけるが、けらけらと笑われるだけだ。
「お弁当持っていくから一緒に食べようよ。左近にきてもらったら途中でお弁当ぶちまけそうだし」
「乱太郎はどうしたんだよ」
「は組の連中に取られちゃった」
「……四郎兵衛も呼んできてよ」
前科持ちの左近は何も言い返せずに顔をしかめた。ユキを待つ間に左近は自分の席に戻り、前の席の机を借りてくっつける。
「左近」
「何?」
振り返ると久作だ。英語見せろ、と荒っぽい物言いは相手を選ぶ久作らしい。ノートを取り出して広げれば、久作も自分のノートを開いて見比べている。左近も弁当を取り出しながら一緒にのぞき込んだ。
「どう?」
「お前の訳大ざっぱすぎないか?」
「前これぐらいで大丈夫だったよ。会話だし」
「単語の訳おかしくないか?」
「え〜?ちゃんと調べたよ」
「今日の弁当誰?」
「お母さん。……ん?」
左近が辞書を取り出しながら顔を上げると、久作がさっさと弁当の包みを解いている。あっという間にふたが開けられ、唐揚げが消えた。
「何してんだよ!」
「ケチケチすんなよ」
「せめて一言断れよ」
「食べていい?」
「事後報告ですらないのかよ。だめに決まってるだろ、これはぼくのお弁当!ほら訳合ってる!」
「もう一個だけくれよ。辞書貸せ、これ、ほら成句乗ってる」
「唐揚げなくなるだろ!これは使い方違わない?」
「もらいっ」
「あっ!」
「あのさぁ」
「あ、お帰り」
戻ってきたユキを見て、久作は立ち上がって椅子を譲った。弁当を前にしかめっ面をしている左近を見て首を傾げる。
「今廊下であんたたちふたりがつき合ってるのかって聞かれたんだけど」
「「違います」」
「って言っといたわ。しろべーはパン買ってから来るって」
「次屋の送り迎えだな……」
「ここの訳ユキちゃんどうした?」
「ん〜?……これと同じ」
「ほらぁ!久作が違うんだって」
「え〜?三郎次捕まえてくる」
「あっ!」
最後にプチトマトを奪って久作は逃げていく。
「ぼくのお弁当が貧相に……」
「まあお似合いに見えなくはないわね」
ユキは左近の正面に座って弁当を広げた。左近も促されてしぶしぶ箸を取る。四郎兵衛は多分遅いだろう。
「女子ってどうしてすぐくっつけたがるんだろう」
「三郎次と久作で左近を取り合ってるらしいって噂も聞いたことあるわよ」
「はぁ!?」
「ま、久作なんかガード高いしね、みんな妬いてんじゃない。いただきます!」
「ぼくらをどう見たらカップルに見えるんだか」
「左近の恋愛運は悪くないんだけどなぁ」
ユキはおかずのイカリングを通して左近を見る。仏頂面を向けてやるとユキは笑って口に運んだ。
「それずっと言ってるけどあてになるの?」
「結構当たるようにはなってきたけどまだ勉強中だからね」
ユキの占いはそこそこ当たるらしい。左近はきょうみがないので、あまり興味がないので詳しく聞いたことはなかった。
「長いおつき合いをするわよ。逆に言うと、その人を逃したら一生縁がないわね」
「それは嫌だ」
「あら。男子に興味のない左近でもそう思うの」
「行き遅れに見られるのは嫌だ」
「見栄っ張り」
ユキは笑いながら焦げた卵焼きをを分けてくれる。彼氏の乱太郎は捕まらなかったようだが、彼の体を心配したクラスメイトが救出したのだろう。自分で作るのやめたら、思わず呟くと机の下で蹴られた。
「ごめん〜遅くなっちゃった」
「お帰りしろべー」
「左近、また三郎次と喧嘩してたの?」
違うクラスの四郎兵衛にまでバレている。隣の椅子を引っ張ってきて四郎兵衛も加わり、ようやく落ち着いて昼食が始まる。
「あいつが悪いんだよ!ぼくのノート借りたまま返すの忘れててさ、休み時間ずっと探してたのにどこにもいないし、見つからないまま授業始まっちゃってぼくがノート忘れたことになったんだから」
「それ何時間目?」
「3時間目」
「ぼくその前の休み時間、三郎次見たよ。一年生の教室の方にいた」
「あいつ……帰りにアイスおごらせることにしたから四郎兵衛も一緒に行こう!」
「わーい!アイス食べる!」
「……左近が恋愛するところなんて、想像つかないわね」
「こんなかわいくない女で、恋愛できるとも思ってないよ」
「泣きついてくる日が楽しみだわ」
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