言い訳置き場
言い訳を書いていきます。誤字の報告などあればありがたいです。 ※唐突にみゅネタややぎゅにおの外の人のかけ算が混ざるのでご注意下さい。 日常はリンクのブログから。
2012'03.24.Sat
「ん?」
誰かの声がした気がして富松は足を止めた。見渡すとぽかりと穴が開いている。あれはきっと四年生の穴掘り小僧、綾部喜八郎が掘った穴だろう。また保健委員辺りが落ちているのだろうか。思わず溜息をついて穴に近づき、覗きこむ。しかし穴の底にいたのは富松が想像した人物ではなく、一年は組の二廓伊助が困った顔でこちらを見上げていた。
「伊助?」
「あっ、富松先輩!すみませんが助けてくれませんか?出られなくて」
「ああ、ちょっと待ってろ、縄下ろしてやる。怪我はないな?」
「大丈夫です!」
迷子を捕まえるために用意していた縄を木に縛って戻り、反対側を穴の中へおろした。その縄を肩に回し、伊助を引き上げる。
「はぁっ、やっと出られた!」
「どうしたんだ?」
「……二年生の池田三郎次に落とされたんです」
「はぁ?」
「すぐ意地悪するんですよ!」
土を払いながら伊助は顔をしかめた。荷物を抱えていたから手伝おうと近づいたら、巻物をひとつ落としたから拾ってほしいと言われ、拾いに行った先に落とし穴があったらしい。
「しるしに気づかなかったぼくもぼくですけど、ほったらかして行くなんていくらなんでもひどいですよね〜」
「あいつ、しょうがねえ奴だな。昔はあんなにひねくれてなかったのに」
「そうなんですか?」
「まあ生意気は生意気だったけどな。どうしてあんなに……」
富松は言葉を切り、しばし回想する。ひと学年下の池田は何かと突っかかってくるやつだが勉強熱心で、一年の頃は素直に質問をしに来たこともある。そのたびに富松たちは、……。
――おれらのせいか?
「いや、でもおれらも穴に落としたり……は、したか……でもちゃんと助けに……行かなかったか?いや、行ったよな……」
「まあ、嫌いじゃないんですけどね」
「え?」
「三郎次のいじわるも、愛情表現みたいなもんなんですよね」
「だっ、だよなぁ!」
「こっちは迷惑ですけど」
「……だよな」
チクリと胸が痛むが気づかないふりをしてごまかす。もしや自分たちがいじめていたせいで、三郎次はあんなにひねくれてしまったのではないだろうか。
「あれ、三郎次」
「え」
伊助の声に振り返れば三郎次がこちらに向かって走ってくる姿がある。三郎次は縄を手にしていて、富松は思わず顔を覆った。いらんことした。
三郎次は富松とその影にいた伊助に気づき、はっとして足を止めた。睨むように富松を見た後、踵を返して戻っていく。
「なんですか、あれ」
「あ〜……」
おそらく、事故だったのだ。普段はいたずらばかりかもしれないが今回は偶然が重なった事故で、三郎次は助けるために縄を取りに行っていたのだろう。たまたま富松が通りかからなければ、誤解も解けてあたかもしれない。
「あ〜、伊助」
「じゃあ、ぼく行ってきます」
「へ?」
「忘れ物を届けなくちゃ」
伊助が懐から取り出したのは巻物だった。三郎次が落としたというものだろう。にこりと笑い、改めて礼を言って駆け出す伊助の背中を追う。
――あいつ、ほんとはわかってんじゃねえか?
「一年は組、恐るべし……」
用具委員の後輩を思い浮かべ、富松は乾いた笑いをこぼした。
誰かの声がした気がして富松は足を止めた。見渡すとぽかりと穴が開いている。あれはきっと四年生の穴掘り小僧、綾部喜八郎が掘った穴だろう。また保健委員辺りが落ちているのだろうか。思わず溜息をついて穴に近づき、覗きこむ。しかし穴の底にいたのは富松が想像した人物ではなく、一年は組の二廓伊助が困った顔でこちらを見上げていた。
「伊助?」
「あっ、富松先輩!すみませんが助けてくれませんか?出られなくて」
「ああ、ちょっと待ってろ、縄下ろしてやる。怪我はないな?」
「大丈夫です!」
迷子を捕まえるために用意していた縄を木に縛って戻り、反対側を穴の中へおろした。その縄を肩に回し、伊助を引き上げる。
「はぁっ、やっと出られた!」
「どうしたんだ?」
「……二年生の池田三郎次に落とされたんです」
「はぁ?」
「すぐ意地悪するんですよ!」
土を払いながら伊助は顔をしかめた。荷物を抱えていたから手伝おうと近づいたら、巻物をひとつ落としたから拾ってほしいと言われ、拾いに行った先に落とし穴があったらしい。
「しるしに気づかなかったぼくもぼくですけど、ほったらかして行くなんていくらなんでもひどいですよね〜」
「あいつ、しょうがねえ奴だな。昔はあんなにひねくれてなかったのに」
「そうなんですか?」
「まあ生意気は生意気だったけどな。どうしてあんなに……」
富松は言葉を切り、しばし回想する。ひと学年下の池田は何かと突っかかってくるやつだが勉強熱心で、一年の頃は素直に質問をしに来たこともある。そのたびに富松たちは、……。
――おれらのせいか?
「いや、でもおれらも穴に落としたり……は、したか……でもちゃんと助けに……行かなかったか?いや、行ったよな……」
「まあ、嫌いじゃないんですけどね」
「え?」
「三郎次のいじわるも、愛情表現みたいなもんなんですよね」
「だっ、だよなぁ!」
「こっちは迷惑ですけど」
「……だよな」
チクリと胸が痛むが気づかないふりをしてごまかす。もしや自分たちがいじめていたせいで、三郎次はあんなにひねくれてしまったのではないだろうか。
「あれ、三郎次」
「え」
伊助の声に振り返れば三郎次がこちらに向かって走ってくる姿がある。三郎次は縄を手にしていて、富松は思わず顔を覆った。いらんことした。
三郎次は富松とその影にいた伊助に気づき、はっとして足を止めた。睨むように富松を見た後、踵を返して戻っていく。
「なんですか、あれ」
「あ〜……」
おそらく、事故だったのだ。普段はいたずらばかりかもしれないが今回は偶然が重なった事故で、三郎次は助けるために縄を取りに行っていたのだろう。たまたま富松が通りかからなければ、誤解も解けてあたかもしれない。
「あ〜、伊助」
「じゃあ、ぼく行ってきます」
「へ?」
「忘れ物を届けなくちゃ」
伊助が懐から取り出したのは巻物だった。三郎次が落としたというものだろう。にこりと笑い、改めて礼を言って駆け出す伊助の背中を追う。
――あいつ、ほんとはわかってんじゃねえか?
「一年は組、恐るべし……」
用具委員の後輩を思い浮かべ、富松は乾いた笑いをこぼした。
PR
Post your Comment
カレンダー
カテゴリー
最新記事
ブログ内検索
アクセス解析
アクセス解析