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言い訳置き場

言い訳を書いていきます。誤字の報告などあればありがたいです。 ※唐突にみゅネタややぎゅにおの外の人のかけ算が混ざるのでご注意下さい。 日常はリンクのブログから。

2025'01.19.Sun
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2012'03.08.Thu
「どうしたの?」

声をかけると藤内はびくりと肩を揺らした。彼はそのまま硬直してしまう。綾部が隣にしゃがみこんで顔を覗きこむと、目を真っ赤に泣き腫らしていた。何を泣くことがあるのかわからないが、黙ったまま頭を撫でてやる。頭巾はどこへ遣ったのか髪も振り乱し、まだ幼い体全体を使って泣いている。

かわいい後輩をずっと撫でていると、やがて弱々しい力で手を振り払われた。

「だいッ……だいじょうぶ、です」

「何が?」

「……」

「撫でたいから撫でてるだけだよ」

「ぼく、ぼくはっ」

ひくっとしゃくりあげ、藤内はそれきり声を出せずにいる。装束は汚れ、強く握った手は傷だらけだ。

「藤内」

いつもの調子で名を呼ぶと、藤内は遂にわっと大声を上げて泣き出した。両手で顔を覆い、腹から唸り声を上げて泣きじゃくる。言葉にならない悲鳴を聞いて、綾部は背を撫でてやった。ゆっくりと、あたためてやるつもりで。

「藤内。できることとできないことがあるよね。その中で、頑張ればできることとか、頑張ってもできないこととかがあって、できないといけないこともあってさ、嫌いでもやらなきゃいけなかったり、好きでもやりたくない気分のときがあったり、色々でしょう」

綾部は自分の空いた手を見つめる。この手が一番よく働くのは、穴を掘るときだろう。それでもこの手は穴を掘るためだけの手にはなれない。きっとそれと同じことだ。

「できないことがあっても死にゃしないよ。方法変えたらできることもあるんだからさ」

ぐい、と後輩を抱きよせて、外界から守るように覆ってやる。綾部の胸の中で泣き続ける彼は、綾部を疎ましく思うのだろうか。それでも熱を抱きしめ続けた。藤内は日の光にあたためられた匂いがする。

少しずつ落ち着いてきた藤内が綾部の胸を押し、抵抗せずに離れた。恐る恐るといった体で綾部を見上げる藤内は涙で顔は汚れ、鼻水も出ている。自分の頭巾を取って顔を拭いてやろうとすると逃げられたが、無理やり布を顔に押しつけた。

「おしまい?」

「……綾部先輩は」

「何?」

「何ができませんか?」

汗と涙でよれよれの藤内を見て、思わず笑いをこぼした、途端に恥ずかしくなったらしい藤内が今度は羞恥で顔を赤くし、もういいです、と立ち上がろうとする。それを抱き込んで逃がさない。

「とりあえず今は、藤内を笑わせることができないよ!」
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